
続く超円高。就活市場はどうなる?
── 少なくない学生が、ばく然と「地元・安定・大手」を求めてしまい、就活でつまずきがちです。
【内田】学生の責任だけでなく、周りの影響も大きいでしょうね。就活生の親や大学に訴えたいのですが、安定成長時代の価値観を押しつけても学生を不幸にするだけです。
今、日本では大手でさえも破綻し、逆に、斜陽産業といわれた企業が復活するなど、以前なら考えられないことが起きています。従来の常識を思い切って切り換える必要があります。学生も自分を信じて進んでほしいですね。
── 震災、円高、新興国の台頭などが報道を賑わしています。今後の日本経済の見通しは?
【内田】まず震災の復興需要で、今年度下期は高い成長率を達成するでしょう。しかし、企業は業績のV字回復は一時的と捉えており、採用枠が大幅に上方修正される可能性は低いと思います。就活でも気は緩めない方がいいと思います。
── 超円高も問題視されています。
【内田】現在、主要な国の通貨に対して円だけが高く、結果的に新興国市場などで日本企業が苦しくなっています。通貨安の韓国やドイツ、米国の企業にシェアを奪われている状態です。中部の輸出企業の利益が減れば、地域全体の採用計画にも影響が出てきます。
── この円高、いつまで続くのでしょうか?
【内田】欧州の財政問題と海外の景気に加えて、政治スケジュールも影響します。来年、米国では大統領選、中国も指導者層が交代します。米中にとって、円高は自国の輸出企業の競争力が増して、国内の景気回復につながります。国内で支持を得るために都合がいい。政治の節目となる来年の秋頃までは続きそうです。
── 外需型の輸出企業には影響が大きいですね。
【内田】外需型だけではありません。内需型の食品やビール、医薬品も海外へ目を向けています。円高の時に海外企業を買収するのはお買い得だからです。市場の境目がなくなり、人材もグローバルに活躍できるスキルが必要とされるでしょう。

国内市場はもう終わった?
── 内需はもう将来性がないのですか?
【内田】少なくとも画一的な商品を誰もが買ってくれるというマス市場は期待できません。自動車や家電製品などの買い換え期間も長期化しています。
一方、売れているのはスマートフォン、HV車、3Dテレビなど、これまで世の中になかった商品です。シニア市場など新たな市場もすでに生まれています。介護支援ロボットなどの分野も期待できそうです。欧州はもちろん中国もあと数年で少子高齢化が加速しますから、日本で国内向けに開発したシニア向け商品の競争力も高まります。
── 次世代エネルギーや省エネも注目です。
【内田】国の支援で普及が推進される分野は拡大が期待できます。国の戦略や方針と合致してトレンドに乗れそうな業種や企業を見きわめるのも、就活での大きなポイントだと思います。
国内市場は少子高齢化でジリ貧と考えられていますが、製品開発や本社機能として重要です。海外進出の拠点機能も果たすため、賢明な企業は将来のためにも国内市場を維持していくはずです。
── 海外シフトや外国人採用を増やす企業が目立ちます。日本人はもう必要ないのでしょうか?
【内田】そうとは限りません。実は、海外に進出し成功している企業ほど国内の採用人数も増やしています。国内でブラックボックス化する技術は必要ですし、海外のコントロールタワーとしての日本人を採用する企業は増えると思います。
ただし、いくら国内採用でも「日本語しかできない」「日本のスタンダードの経理しか知らない」では難しく、グローバルなスキルアップが求められますね。

業界・企業情報は ここを見る!
── 今、良い企業の条件とは何でしょう?
【内田】ひとつはリスク分散の有無ですね。特定のマーケットや特定の取引先、単一のヒット商品にばかり収益を依存する会社は、今はよくても不確実性の高い将来にはリスクがあります。
たとえば、自動車部品を作りながら、その技術を応用して福祉分野やアイディア商品の開発に成功しているような多様性が強さにつながると思います。
── 企業研究する際の注意点はありますか?
【内田】書店には就職ハウツー本や業界研究本が並んでいますが、情報源がそれだけでは心許ないですし、他の就活生と変わりません。さらにレベルアップした資料に目を通してほしい。たとえば株式相場の関連情報です。株を売買する人は企業の将来も先読みしていますし、学生にとっても先読みの感覚は重要です。
── 今、経済の情報は世にあふれかえっています。学生としてはどれを判断基準にすればよいのか分からなくなりそうです。
【内田】経済は複雑で、全ての事象を予測することは困難です。あいまいで簡単には割り切れないのです。
「日本は加工貿易国で、自国通貨が高くなると売れなくなる」と一般的に理解されていますよね。しかし必ずしもそうではない。海外工場で生産した完成品を輸入したり、他国へ輸出している家電メーカーなどは円高の影響はありません。
同じ業界でも企業ごとに見ると、単純な構図では語れなくなっています。
ですから業界をひとくくりで見てしまうのは、とても危険です。ゼロサムで経済を考えるのではなく、幅広く柔軟に捉えた方がいいと思いますね。
── 専門家ごとにまったく異なる経済分析や予測が出ることがありますよね。学生は戸惑ってしまいます。
【内田】情報発信する人の立ち位置でコメントが変わることはあるでしょうね。外資系であれば場合によっては日本企業と逆の立場で発言するかもしれません。
── 今後、注目していくべき分野はありますか?
【内田】具体的には言いづらいですが、自らマーケットを作り出していく企業や人材が生き残れる時代だと思います。たとえば三河にプラモデルの会社があります。完成度が非常に高く、マニアから熱烈に支持されています。規模は小さくても一定の熱心な顧客が存在するニッチなマーケットの成功例といえるでしょう。
そうした情報は大手メディアの「人気企業ランキング」には決して出てきません。しかし日々の新聞・ネット・地元経済紙などを読んで入ればヒントは随所に見つかります。経済紙を読むときも大きな見出しだけではなく、一見マイナーな事柄にも目を向けてみてください。

就活シーズンの前にすべきこと
── 経団連の提唱で就活シーズン開始が秋に延び、短期決戦になります。怖いのは学生が焦りからミスマッチに陥ってしまうことですが。
【内田】始まるまでの時間が増えるのですから、今から業界研究・企業研究に取り組んでほしいですね。就活が終わる頃にやっと目指すべき道が見えてきて、でも時間切れになってしまった、という残念なケースも多いですから。悔いのないようしっかり取り組んでほしいです。
── 就活シーズンの始まる前にしっかり蓄積しておこうということですね。
【内田】とはいえ、じっくり情報を吟味してから動けるほどの余裕はありません。アクティブに動きながら、情報収集も進めて絞り込んでいくバランス感覚が必要です。重要なのは自分で考えることです。
早めの時点で実際に企業にアプローチをかけて、インターンシップで職場を体験することも有効です。それが難しいなら企業にヒアリングするだけでも、そこから得られるものは多いと思います。
就活生の皆さんには成長力がありそうな企業を研究段階で絞れるようになってほしいと思います。自分を信じて企業研究に取り組み、本当にやりたいことを見つけてください。