これからも前向きに 名大社会長ブログ

カテゴリ「本を読む 映画を観る」の記事一覧:

映画「658km、陽子の旅」

映画コラムニスト研修会の課題作品。
マイナー作品ながら前評判が高く上映2日目に観ることになったが、
評価は次第に下がっていった(笑)。
確かに賛否は分かれると思う。

それは映画がつまらないということではなく、観る者を選ぶということ。
研修会の課題作として語り合うには相応しい作品。
一つ一つのシーンにお互いの解釈を共有できたのはよかった。

本作は最初から最後まで菊地凛子オンリー。
ほぼ彼女が映画を独占。
中途半端でコミュ障の42歳の独身女性を完璧に演じる。

映画の途中までは全く共感できない。
自分の近くにいればあまり近づきたくない。
CSにクレームを入れながらイカ墨パスタ(それもコンビニの)を食べる姿も、
だらしなく寝ている姿もイライラさせる。

役どころは違うが、そんな演技をさせたら彼女は抜群じゃないか。
昨年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の北条義時の妻役も本当に腹が立った。
それだけ上手かったということ。
彼女のおかげで二番目の妻役の堀田真由を愛おしく好きになってしまった。
そんな役を見事に演じられるのが“化け物級演技”といわれる所以か。

しかし、途中からなぜか応援したくなった。
彼女は658kmの旅で繰り広げられる出来事に翻弄される。
その中で懸命に動き、次第に変わっていく姿を僕らは正面から受け止める。

心の中で、ガンバレ!とかヨカッタネ!なんて呟いたりする。
主人公と一緒に旅を続ける感覚に陥る。
結局は喜んで付き合っている。

映画は至ってシンプル。
テーマ設定も驚くべきはない。
ヒッチハイクの道中もよくあるケース。

それでいい。
生きるか死ぬかの経験で人は変わるのではなく、ふとした出来事や言葉で人は変わる。
そこには人との触れ合いがある。
キャリア形成とは別次元だが、その道のりで代えがたい価値観を掴むことにもなる。

なるほど、ヒッチハイクは人を成長させるのか・・・。
57歳でヒッチハイクは怪しさ満点だが、
僕も旅を通しての出会いに新たな可能性を生むかもしれない。
青森に向かって独り旅でもしてみるかな。

本作とは関係のない締め方になってしまったが、そんな見方ができるのもいい。
次回の研修会も楽しみにしたい。

映画「君たちはどう生きるか」

予告編も宣伝も一切ない本作。
逆にそれが宣伝効果になりヒットしているように思える。
僕が観に行った時もかなりの混み具合。
普段混まない映画ばかり観ているせいか、窮屈さを感じてしまった(笑)。

アニメ作品の場合、気になる点の一つに声優が誰かということ。
今回も有名な役者陣の配役だが、僕は柴咲コウしか分からなかった。
これはネタバレにはならないよね?

エンディングで流れる名前を見ながら、
「へ~、どの役だっけ?」
なんて考えるも全然分からず。
映画に集中していたことにしておこう。

10年前「風立ちぬ」を観た時にブログにも書いたが、
僕は宮崎駿作品をあまり観ていない。
映画コラムニストとしては失格かもしれないが、
みなさんが想うほど気持ちが動かない。
日本人として何か欠けているのか・・・。

本作も当初、予定はなかった。
しかし、あちこちで賛否両論の声があるので、気になり、
それが理由で観に行った。
人は宮崎作品らしいというが、そうなんだろうか。
その点も僕はあまり理解していない。

ただ言えるのは僕が抱いていたイメージとは全然違ったということ。
それはタイトルであり、ポスターの印象。
5年前に読んだ「君たちはどう生きるか」のイメージが残っていたせいもある。
(マンガじゃなく原作を読めよ・・・)

ポスターの雰囲気も過去の作品とはテイストが異なる。
それがイメージと異なったが、結論としては宮崎作品らしいということか。
描かれるタッチは変わりようはないよね。

その表現自体が素人なんだろう。
宮崎作品に詳しいファンは僕とは異なる見方をしているはず。
どうやら過去の作品へのオマージュも含まれているようだし・・・。

人は歳を取ると過去を懐かしみ、それを再び伝えたいと思うのか。
積み重ねた経験を新たなメッセージとして加えて。
そんな作品作りを宮崎監督はしたかったのか。

一度、引退を表明した監督が戻ってくるのはそんな意味もあったりして。
よく分からないけど・・・。
本作が宮崎作品の代表作になるのかは僕には分からない。
どこまで高い評価を得られるのかも分からない。

しかし、アニメ作品が日本映画を牽引している事実は本作からも感じ取れる。
僕たちや日本映画がどう生きていくかも、
しっかりと考えていきたい。

映画「裸足になって」

前回観たのはウクライナ映画だったが、今回はアルジェリア映画。
フランスとの合作だが、初めて観る国の作品。

いかに僕らは何も知らないか。
どんな国でも映画が作られ、多くのメッセージを抱きながら世に発信する。
制作された日本映画の何分の一しか観れない中で、
こうした国の映画を観れるのは貴重なのかもしれない。

もっともっと公開される機会があると国が置かれた状況も理解が進む。
その国で力を発揮する作り手や俳優の才能にも気づくことができる。
この映画を通して強く感じた。

本作はバレエダンサーを目指す少女が挫折を乗り越え新たな道を模索するストーリー。
僕のチープな表現だと軽い青春映画に思えるかもしれないがそうではない。
そこには内戦が続いたアルジェリアという国の現実と
理不尽な環境下で精一杯生きていく逞しさを感じるのだ。

表現は悪いが舞台が日本なら、すぐ諦め別の道に向かうか、
もっと過保護に育てられていくだろう。
いかに自分たちがぬるい生活をしているか映画は教えてくれる。

それだけでも映画を観る価値はある。
だが、ここは躍動する主人公フーリアの姿を追いかけるべき。

フーリアを演じるのはリナ・クードリ。
活躍している舞台は国内なのか海外なのかも知らない。
初めて観る女優さん。
きっと自国でも人気は高いだろう。
映画の中では10代だが、実際は30歳。

年齢の話はどうでもいい。
彼女が素晴らしい。
声が出なくなった辛い演技も立派だが、そのダンスは美しく情熱的。
彼女と共に一緒に取り組むろう者の女性たちもステキだ。
それぞれ悩みを抱えているが、徐々に輝いていく。
その懸命な姿には素直に感動。

ひとつのキッカケがいろんな人を巻き込み前に進ませる。
起きた事件は必ずしも不幸を運ぶわけではない。
別の形で幸せな姿を呼び込む。
それは自分自身が変わることによって・・・。
結局は自分次第か。
今の若者に教えてあげたい。

シンプルであるがとても爽やかで素敵な映画を観ることができた。
もっと多くの国の映画を観なきゃいけないね。

「低学歴国」ニッポン

書店でふらふらと眺めながら手に取った一冊。
たまにはこんな選び方も必要。
目的外の書籍から有効的な情報を得られることも多い。
やはり街に出ないとね・・・。

先日まで大学で授業をしていた事もあり、タイトルや帯のコピーが気になった。
毎回、学生のリアクションペーパーを読みながら、
(学生はリアぺと呼ぶ)
僕がそう感じることもあった。

僕が教えていた大学は愛知県の私学ではトップ。
勝手に優秀な学生ばかりだろうと思い込んでいる。
しかし、現時点ではそうとはいえない。

僕の感覚知でしかないが、レベルは年々広がっているように感じる。
優秀な学生は本当に優秀。
一方でそうじゃないと思うことも・・・。

授業に魅力を感じないとか、つまらないとか、そもそも寝ている。
そんな学生もいるだろう。
自分の授業をしっかり聞け!という驕った考えはない。
その点でいえば、リアぺを1行、2行で提出する学生も理解はできる。

しかしだ。
簡単な漢字もひらがな。
文章は幼稚。
言い方は失礼だが、小学校2.3年レベルと感じることも。
それがワザとなら大物。
あえて自分の評価を落とすような書き方をするなら、むしろ頼もしい。
残念だが、そこまでは思わない。

本書の第3章にあるように、
二極化する「入試」、形骸化する「偏差値」
がまさに当てはまると感じる。

総合型や推薦型の入試が悪いとは思わない。
一定のハードルを越えた者が利用するのは適切。
一人の親としてスムーズに志望校に入ってくれれば、余計な心配もなくなる。
子供は2人とも一般入試で進学したが、親もハラハラするのは事実だし、
思い通りにいかないこともあった。

ただ思うのは、その守るべきハードルは壊れていないか。
もちろん全入時代なので、生き残りをかける大学の言い分もあるだろう。
僕が教えていた大学はそこまで高くないはずだが、
私学は60%(21年度)が総合型と推薦型。

知らなかったが、志望理由書の書き方講座を提供する塾や予備校が急増しているという。
一般受験のためではない塾の存在・・・。
ニーズがあるのなら仕方のないことか。
それで本当に実力が身につけばいいが、単なるテクニックだけなら、ちょっと怖い。
こんな手法で今後のキャリアを描いていこうとするなら、もっと怖い。
これは僕の拡大解釈に過ぎないが、学生の質問内容からそれをイメージさせる。

他にも知らなかったことは多数。
”教育ムラ”のルールだったり、
教員不足の実態だったり、
「ギフテッド」の割合だったり・・・。
本書を読み、軽いショックを受けた。

そんな環境の中で僕らは若者を育て、活かす必要がある。
もちろん、僕らにはない能力の持ち主も多い。

まずは実態を理解することが大切。
こちらを意識して真摯に向き合っていきたいね。

映画「キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩」

本作はウクライナとポーランドの合作。
舞台は第二次世界大戦のウクライナ。
当時はポーランド領スタニスワブフ。

まさにロシア侵攻の真っただ中で作られた作品。
いや、制作は少し前で侵攻を予測してたのか。
ウクライナは常に時代に翻弄されているのか・・・。

穿った見方をすればロシア批判とも受け止められる。
ウクライナの悲痛なメッセージとも受け取れる。
確かにここで描かれるロシア(当時のソ連)は酷い。
今も昔も変わらないのかもしれない。

しかし、本作はそんな偏見で短絡的は見せ方はしない。
戦争がもたらす悲劇を平凡な家庭を中心に描いている。

どんな国であれ戦争は悲劇をもたらす。
僕らがニュースで目にするのは軍隊が爆撃を繰り返すシーンや崩壊した街の姿。
傷ついた家族も目にするがその日常までは分からない。

時代は違えども、いつも犠牲になるのは何の罪もない普通の家庭。
その事実は今も昔も変わらない。
同じ過ちをいつも繰り返すのか・・・。

映画は戦争の無意味さを家族の絆を通して教えてくれる。
本作には戦闘シーンや銃撃シーンは出てこない。
厳密にいえば、一度だけ発砲シーンはあるが、
戦争映画にありがちな戦車や戦闘機も登場しない。

描かれるのはほぼ家庭内。
それも戦争によって親を亡くした子供とその子供の面倒を見る家族が中心。
子供に罪はない。
ドイツ人だろうとポーランド人だろうとウクライナ人だろうユダヤ人だろうと関係ない。
お互い好きな歌を歌う。
クリスマスソング「キャロル・オブ・ザ・ベル」が幸せをもたらすと信じて・・・。
とても無垢だ。

その子供たちの愛らしい姿や歌声がより戦争の悲惨さを映し出す。
せつなくやりきれなくなる。
国や大人たちのエゴに振り回される。

本作はフィクションだろう。
実際に描かれる物語は存在しない。
だが、そんなことはどうでもいい。
それに近いことや、
もっと悲しい事実は世界のあちこちで起きている。

僕らはそれに目を背けることなく向き合わなきゃいけない。
必ずラストシーンのような世界が待っていると・・・。
感動で流す涙があれば過ちは繰り返さないと。

そう信じていたいけどね。
観ておいてよかった作品。

映画「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」

僕自身の傾向として超娯楽大作はあまり観ない。
アベンジャーズシリーズもワイルド・スピードシリーズも観ていない。
007やミッションインポッシブルは観なきゃと思いながら、ほぼ観ていない。

大きな理由があるわけではなく、ただの傾向性。
その流れでいけば本作も観ないジャンル。
しかし、他のシリーズとは違う。
80年代、映画に育てられた身としては観なきゃいけない。

2008年の「クリスタル・スカルの王国」以外は若かりし頃、観た。
当時、相当興奮した記憶はある。
内容はほぼ忘れてしまったが・・・。

ジョンウィリアムズのテーマ曲が流れると自然と体が踊りだす。
実際に踊ることはないが、そんな状態。
わくわく感が体を覆う。

ハリソンフォードは歳を取ったが、僕も歳を取った。
当時のような興奮状態に陥るか不安だったが、それは杞憂に終わった。
最初から最後まで興奮しっぱなし。

僕もまだくたびれてはいない。
50代が大いに楽しめるエンターテインメント作品。
154分の上映時間も長く感じることはなかった。

それにしても時代の描き方もCGも見事。
昔のハリソンフォードが映し出される姿を
「なぜ?なぜ?」と心で呟いていたのは他のお客さんも同じではないか。
今や何でもできる時代ですね・・・。

今のハリソンフォードも凄い。
実年齢は80歳。
あの軽快な動きはどこまでが本当でどこまでが作りものだろうか。
そっくりのスタントに表情だけ合成したのか。
それともかなり鍛えたのか。
自分ももっと頑張らねばと思ってしまった。

今回の監督はスピルバーグではなく、ジェームズ・マンゴールド。
2020年に観た「フォードvsフェラーリ」の監督で、これも素晴らしい作品。
この2作しか知らないが、メリハリの利く盛り上げ方が上手い監督。

若い世代からすればアベンジャーズシリーズや
ワイルド・スピードシリーズの方が面白いのかもしれない。
しかし、一定の経験を重ねたオジサン、オバサンは圧倒的にインディ・ジョーンズ。

対抗意識を燃やすわけではないが、まだまだ若い連中には負けない。
動き回っていこうじゃないか。
家族への想いも大切にしてね。

憧れを超えた侍たち 世界一への記録

映画館で観たかったが、タイミングが合わず見逃した作品。
嬉しいことにAmazonプライムで公開されたので、早々に観ることができた。
素直に感動。
スポーツの醍醐味を味わうことができた今回のWBC。

最近、野球を見ることは少なかった。
地元ドラゴンズの不甲斐なさもあるが、野球場に行くことも、TV観戦もない。
せいぜいスポーツニュースを見て、落胆する程度。
自分の中で盛り上がりはなかった。

しかし、このWBCは違った。
日を追うごとにゾクゾク、ワクワクしていい緊張感が体を覆った。
ほとんど見ることのなかった中継も、
時間の都合がつけばスマホなど横道に逸れることなく集中した。

負けたらその場で終了のトーナメントは面白い。
誰しもそうだと思うが、二転三転した準決勝は抜群に面白かった。
何度も見ている映像も飽きることはない。
その度に感動してしまう自分の単純さを嘆きながらも、喜んでしまう。
もちろん決勝も・・・。

それをまとめ上げた今回のドキュメンタリー。
栗山監督の発言や行動を中心にチーム作りが明らかになっていく。
野球ファンだけでなく、経営陣やリーダーも見た方がいいんだろうね。

選手の心模様も人間ぽっくていい。
佐々木投手は20歳そこそこ。
息子と同い年なので、いくら立派に見えても精神的な幼さは残る。
それが却って清々しい。

不振の村上選手も同様。
僕らは無責任に勝手なことをいうが、そのプレッシャーは本人しか分からない。
無責任な僕らが同じ立場なら一瞬にして消え去っていた。
スーパースターだって人間なんだ。
大谷翔平は違うかもしれないけど(笑)。

その人間らしさを感じることができたのもこのドキュメンタリー。
同じプロ同士でも若手はダルビッシュに緊張するし、
大勢のファンが囲む姿を選手はバスから撮影するし。
バッテリーの何気ない会話も普段の番組では見ることができない。

栗山監督はこれで無職というが、講演なんかは引っ張りだこだろう。
そうそう、一昨日、北海道で開催された全就研の講演も栗山監督。
本来、僕は参加予定だったが、大学の授業があり参加できず。
参加したFネットのメンバーが羨ましくて仕方ない。

すこぶる野球ファンじゃなくても感動を与えてもらったWBC。
このドキュメンタリーも見て損はないね。

以上、北海道からでした(笑)。

映画「リバー、流れないでよ」

面白い。
何度もクスクスと笑ってしまった。
そして途中からはウルっときたり。

ゲラゲラ笑ったり、感動して涙を流す映画ではない。
しかし、とても心地いい時間を送ることができた。

内容は全く違うが、近い作品でいえば5年前の「カメラを止めるな」
映画はアイデア勝負であることを教えてくれる。
きっと予算はない。
いや間違いなく使えるお金は少ない低予算映画。

知っている俳優は本上まなみと近藤芳正くらい。
ほぼ知らない俳優陣が映画内を駆け巡る。
それもそのはず。
メインは劇団「ヨーロッパ企画」の俳優陣。
人気のある劇団のようだが、
僕は劇団を主宰する上田誠も劇団名も初めて知った。

同時に機会があれば観たいとも思った。
奇想天外な演出で観客を喜ばすのだろう。
映画の内容から容易に想像できる。

その劇団の俳優陣が素晴らしい。
主役ミコト役の藤谷理子はとてもチャーミング。
彼女の動きを見ているだけで画面に吸い込まれていく。

映画の舞台は京都の貴船。
昨年お邪魔した場所が全面的なロケ地。
実在する老舗料理旅館「ふじや」で繰り広げられる。
雰囲気もよさよう。
誰が川床に連れてってくれないかな・・・。
とどうでもいいことも強烈に感じたり。

本作はそれほど大きな話題にはなっていない。
しかし、レビューを読むととても評判がいい。

解説には
「冬の京都・貴船を舞台に繰り返す2分間のタイムループから
抜け出せなくなった人々の混乱を描いた群像コメディ」

と紹介されているが、これでは何のことか分からない。

その方がいい。
ネタバレは面白さは半減させる。
ただこれをネタバレさせるのはとても難しい。
かなりの表現力が求められる。

だから僕はネタバレしない。
映画を観て、
「なるほど、2分間のタイムループって、こういうことなのね」
と感心してもらえばいい。
確かに納得してしまう。

映画はお金をかけなくてもいくらでも面白い作品はできる。
それを改めて教えてもらった。
こんな作品を多くの方に観てもらい、
新たな才能が注目され活躍の場が広がることを願いたい。

映画「To Leslie トゥ・レスリー」

どん底まで堕ちたシングルマザーの再生物語。
この類の映画は数多く存在すると思う。
どん底への堕ち方も様々だが、凡人から見ればあり得ないどうしようもなさ。

同情すること点なんて一つもない。
共感することもなければ、腹立たしくなるだけのこと。
不快な気持ちも持ちながら、映画は進んでいく。

しかし、どこかで少し願っている面もある。
なんとか立ち直ってほしい。
このままアル中女で終わらないでほしい、と。

全く共感できず腹立たしいだけの女性が、
もがきながらも立ち直る姿を見せるとなぜか素直に嬉しくなる。
よかった、よかったと自分事のように喜んでしまう。

実に不思議。
どんなキッカケがあるかは別に人が堕ちるのは難しくない。
主人公のようにアル中になってしまえばいとも簡単。
僕だって大した努力もしなくても、堕ちることは可能。

しかし、そこから這い上がるのは難しい。
何度も同じ過ちを繰り返し、反省はするが結局は戻ることはない。
だから堕ちない努力をするしかない。
堕ちたら二度と戻れないと思いながら・・・。

ついて回るのは他責。
どんな場合もそう。
自責であればもっと早く立ち直っていたと思うが、悪いのは自分じゃないと考える。
映画は間接的にそれを教えてくれる。

アル中のシングルマザーは醜いだけ。
だが、そこから脱したシングルマザーはとても可愛らしい。
人なんて分かりやすい存在なんだ。

それを見事に演じたのがアンドレア・ライズボロー。
彼女の演技が凄い。
半端ないダメさは演技とは思えない。
彼女の表情や発言に振り回されながら、気づいた時には応援している。
心の中で「ガンバレ!」と呟く。
そんなオッサンは多いんじゃないかな。

彼女がアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたのも頷ける。
とても42歳とは思えない。
自分と同世代かと思ってしまった。
ラストは10歳以上若返った気がしたけど。

どんな場合でも勘違いしちゃいけない。
身の丈を理解しなきゃいけない。
そんなことを教えてくれた映画。

まずはお酒をほどほどにしないと、僕も同じ運命を辿ってしまうかも。
いい勉強になりました。

キネマ旬報95回全史 最終回

前回の続きで、2人の映画監督の作品から・・・。

是枝作品は「そして父になる」(13年6位)、「海街diary」(15年4位)、
「三度目の殺人」(17年8位)、「万引き家族」(18年1位)。
濱口作品は「ハッピーアワー」(15年3位)「寝ても覚めても」(18年4位)、
「ドライブ・マイ・カー」(21年1位)、「偶然と想像」(21年3位)。
リンクの通り、観ていない作品は少ない。

他にも10年代は西川美和、河瀬直美ら女性監督や
石井裕也、白石和彌ら個性的な監督の活躍が目立った。
個人的には白石和彌監督作品にやられた。
あれこれ書きたいが、作品名は割愛。

外国映画に目を向けるとやはりクリントイーストウッド。
「インビクタス」(10年2位)、「ヒアアフター」(11年8位)、「J・エドガー」(12年9位)、
「ジャージー・ボーイズ」(14年1位)、「アメリカン・スナイパー」(15年2位)、
「ハドソン川の奇跡」(16年1位)、「15時17分、パリ行き」(18年6位)、
「運び屋」(19年4位)とすさまじい。

ランクインしていない作品を探す方が難しい。
このジイさん、どこまでやるの?
と思ってしまう。

そして韓国作品。
「息もできない」(10年1位)、「パラサイト半地下の家族」(20年1位)、
「はちどり」(20年2位)も強烈なインパクト。

韓国映画に限らず社会的格差、分断を描いた外国映画が評価されたのもこの年代の特徴。
映画は時代を映す鏡でもあるね。
そう考えると僕は仕事としてこれからも寄り添っていかねばならない。

WHY?
まあ特に理由はないけど・・・。

時間を掛けてこの1冊を読み終えた。
その都度、作品を調べたり、昔のブログをチェックしたり。
自分としてもいい振り返りができた。

まだ観ていない名作、秀作も多い。
知らない作品は数知れず。
じっくり時間を掛けて向き合いたいが、
どうしても上映中の映画を優先するので、そのあたりは当面先。
老後の楽しみか・・・。

このシリーズは自分のために書いたブログなので、
読んでもらっても面白くもないと思うが、これはこれで・・・。

今日で本当に終了。
お疲れ様でした。
(自分に)