いやあ~、シビレた。
痺れた映画だった。

僕はさほどカーレースには興味はない。
山本左近氏は応援しているが、F1もル・マン24もほとんど見たことがない。
過酷なレースであることは知っているが、その程度のこと。

それでも大いに興奮する。
手に汗握るシーンが繰り返される。
車好きならより楽しめるはず。

こんな表現をするとアクション性の高い映画に思われるが、そればかりではない。
男同士の友情と意地を賭けた戦いであり、
企業のプライド、個人の名誉欲を描いた映画でもある。

本作は1966年のル・マン24時間耐久レースを描いた実話。
その背景にあるフォードとフェラーリの攻防も面白い。
そんな事実があったとはこの映画を観るまで知らなかった。
短絡的に互いの技術力を競っていると思っていた。
無知は罪ですね(笑)。

褒め称える友人が多く、それにつられて観たわけだが、これは大正解。
間もなく公開も終わりそうなので、男同士の熱いドラマに興味のある人は、お早めに。

1960年代の色使いも巧みだし、ハラハラドキドキするレース展開も見ものだし、
実在する企業トップの人物像も上手く表現されている。
そして何よりいいいのがダブル主演のクリスチャン・ベールとマット・ディモン。
特にクリスチャン・ベールの役作りは尊敬を超える。

映画の最後にモデルとなったケン・マイルズとキャロル・シェルビーの写真が紹介されるが、
ケン・マイルズはクリスチャン・ベールにそっくり。
クリスチャン・ベールが完璧な役作りをしたということ。
「バイス」でもそのこだわりに感動したが、本作でも凄まじいものを感じた。
とてもバットマンと同人物とは思えない。

映画の中の登場人物もそうだが、とことんこだわる男はいつの時代もカッコいい。
こんな生き様を見せつけられると一体自分は何をやっているんだ…
と余計なオーバーラップをしてしまう。

そして、ところどろこ笑わせるところ、泣かせるところがあるのもいい。
勝負にこだわるマット・ディモン扮するシェルビーは意外にこっすいしね。
まあ、それも含め熱き戦いなんだろう。

そして、エンディングで示されたル・マンでのフォードの成績。
これは一体、どんなメッセージなんだろうか?
賞賛とも皮肉とも受け止められる。
アメリカ全体に発したメッセージとも受け止められる。
一番何が大切なのかと・・・。

本作は153分と長い作品だが、時間の長さを感じることはなかった。
いやいや、面白かった。