采配 采配
(2011/11/17)
落合博満

商品詳細を見る

今、この時期に本書を読む僕はただのミーハーなのかもしれない。しかし、それでも構わない。
ドラゴンズが優勝し落合監督が退任したこのタイミングで、どのようなチーム作りをしてきたかに深く興味を持ってしまったのだから・・・。
きっと読者は野球ファンよりも仕事に何らかの課題を持つビジネスマンや経営者が多いだろう。それだけ仕事を遂行していく上でヒントとなる言葉が多く詰め込まれている。
目的はあくまでも日本一強いチームを作ること。
その目的を達成するにはどうすればいいのか、それだけを考えてチームを作ってきた。ゲームがつまらないなど批判を受ける事もあったが、8年間で4度の優勝という実績を見れば否定はできない。ビジネスと一緒で結果が問われる世界なのだ。
ドラゴンズ史上最も成績を残しているのも関わらず、本人の認識は違うようだ。8年に4回も優勝したのではなく、4回も負けてしまったという認識。常に目標は日本一なのだ。
また、選手の見方や評価も企業の経営者に近い。
それは大学を中退してサラリーマン生活を5年送った事も少なからず影響しているのだろう。著者の戦略策定の比較や参考対象は他チームではなく、企業にあるように思えてならない。ビジネス層を読者の対象としている理由もあるだろうが、発せられる言葉の端々にそれを感じるのだ。
そして、選手への接し方もプロと言える。
どんな接し方が選手にプレッシャーを与え、どんな言葉を使うことが選手の思考能力を高め、どんな起用方法が競争意識を高めるということを根拠を持って示している。そこにはうわべだけでない愛情を持ちながら・・・。
本書を読みながら「オシムの言葉」を思い出した。表現の違いがあるにせよ、選手への想いは通ずるものがあった。練習の厳しさも同様であるが・・・。
タイトルの「采配」。このタイトルの意味はチームでの采配を指すのではない。それは本書のラストに書かれてある。なるほどね・・・。
読み終えた後、もう一年、落合氏の采配が見たくなってしまった。
そんな1冊であった。