業界リサーチ2018

所得水準が伸び、少しずつ内需の拡大傾向に。

生活インフラ関連 建設・不動産/衣料/流通・小売・商社

建設・不動産

名古屋駅前の再開発で、
地元建設業界の追い風に。

国内を鳥瞰すれば、アベノミクスの旧第二の矢として発表された公共事業の拡大、そして震災復旧工事、東京五輪開催に伴う競技場施設の建設、首都圏の再開発と高層ビル建設など、建設活況に湧いている。東海エリアにおいては、2027年に営業運転開始を予定するリニア中央新幹線の開通工事に伴う名古屋駅再開発が始まり、工事需要が増大。技能職不足と人件費の上昇が続きそうだ。

すでに大名古屋ビルヂングやKITTEも開業し、名古屋駅は超高層ビルの密集地になったと言えるが、2016年7月〜9月にかけてシンフォニー豊田ビルが順次開業。2017年4月にはJRゲートタワーが開業予定。駅南では、名鉄が主導する駅ビルの建て替え計画が進行している。また、商業ビルではないが、中京テレビも、2017年秋に社屋をささしまライブ24地区に本社を移転する予定で、すでに新キャンパスを開いた愛知大学も、2017年春に第2期工事を終える予定だ。

所得水準も地価も上昇傾向の愛知県。

名古屋駅の再開発が進み、短期間で巨大なビルが建つと、空きテナントが発生しないか不安の声も一部で上がったが、現在おおむね満室状態が続いている。当然ながら地価も高騰中だ。2016年3月、愛知県が公表した地価公示は、住宅地では4年連続上昇し、商業地では3年連続上昇とのことだった。駅前を見れば、過去愛知万博が開かれた2005年の名古屋景気のような上昇ムードを感じずにはいられない。リーマンショック以降、所得水準が伸びているのは東京と愛知だけと伝える経済誌もある。

住宅については、2015年度の全国の新設住宅着工数は前年比4.6%増。愛知県で見ると、持家は2.7%増、貸家は20.4%増、給与住宅は13.2%減、分譲住宅は3.6%増という結果だ。緩やかながら回復傾向にあると見られ、これも所得水準の伸びている愛知だからこその結果と言えるかもしれない。一方、リフォーム・リノベーションについては、成長分野であり、ハウスメーカーはもちろん、設備メーカー、マンションデベロッパーまでもが参入。競争の激化でさらに業界が活気づきそうだ。

衣料

東海エリアは、ファストファッションブランド
が台頭。素材メーカーが生き残る。

百貨店やショッピングセンターでの衣料品の売れ行きが伸び悩む中、各ファストファッションブランドが一気に台頭。しかし、価格競争は熾烈ゆえに、商品の製造コストと品質のバランスをうまくコントロールすることが今後の生き残りのカギとなる。国内で独走していたユニクロはやや暗雲の兆しで、2016年8月期の業績見通しを大幅に下方修正(GUは好調)した。対して、国内2位のしまむらは好調。「グローバルワーク」などを有するアダストリアは、2016年2月期の売上が2000億円、営業利益160億円(ともに連結)を突破した。各紳士服チェーンも軒並み健闘している。

こうした知名度やブランド力を持った大手に対して地方のメーカーは、苦戦を強いられているが、東海エリアにも創業歴の長いメーカーがある。また、このエリアでは素材メーカーの拠点が多く、例えば愛知県一宮市の毛織メーカーは、愛知ブランド企業に認定されているところが多い。同市をはじめ、稲沢、津島、江南、岐阜県羽島周辺は、「尾州」と呼ばれ、国内最大の毛織物の産地だ。尾州の毛織物メーカーは、国内大手アパレルメーカーからのオーダーに対応し、水準の高さを顕示している。

流通・小売・商社

名古屋の流通業界は、
名古屋駅の過熱ぶりに注目。

2015年、流通や小売はインバウンド特需(※)を受け、一時的な恩恵を受けた。だが今や雲行きは怪しい。東海エリアでは、現在、ジェイアール名古屋タカシマヤがこの地域の一番店。2017年にオープン予定のJRゲートタワー内に、タカシマヤゲートタワーモールも開業。これに続きリニア開業に伴う名鉄百貨店の大改造計画も控えているので、名古屋駅の盛り上がりは計り知れない。また、生まれ変わったばかりの大名古屋ビルヂングには、イセタンハウスが誕生し、新たに百貨店店競争に参入している。

スーパーマーケット部門では、東海エリアで馴染み深いユニーグループ・ホールディングスがファミリーマートと経営統合。再編による巻き返しを狙う。ショッピングモールは首都圏を中心に展開中のららぽーとが名古屋市港区に初上陸。家具関連ではイケアが愛知県長久手市にオープン予定だ。

商社は、かつてこのエリアが衣料・繊維生産の一大拠点だった背景もあり、その専門商社が多い。しかし、やはりモノづくりの集積地であることから、機械などの設備を扱う商社も躍進中。近年は、メーカーと設備の共同開発に着手し、海外進出に力を入れる商社も目立つ。

(※)2015年、訪日外国人客の増加によって、百貨店や各種量販店の売り上げが激増した現象。ホテルも稼働率が急上昇。