業界リサーチ2018

業界インタビュー/和菓子製造・販売

株式会社 両口屋是清
専務取締役 大島千世子氏

名古屋生まれの和菓子どころ、両口屋是清。江戸期からの創業という老舗の事業継続の秘訣やこだわり、和菓子にかける思いなどを、同社専務取締役大島千世子氏に聞いた。

東海エリアにも多くの和菓子屋があります。中でも御社は老舗中の老舗。長らく事業を続けてこられた秘訣は何であると思われますか?

創業から380年ほど経ちましたが、本当にいろいろな局面に遭遇してきたのではないかと思います。時代を揺るがす出来事に見舞われるたびに、社員はさまざまな選択を迫られ、その都度ベストだと思う手段や方法を選んできたのではないでしょうか。つまり、時代に合わせた動き方をすることで、両口屋是清の体制は変化していきました。これが今日まで事業を続けてこられたひとつの大きな要因ではないかと考えます。

御社が和菓子をつくるにあたって、心がけていることはありますか?

現代は昔に比べて季節を感じる機会が減りました。そこで私たちは季節感を大切にするとともに、日本の伝統を大切にした和菓子づくりを継続しています。例えば、お月見。これは9月の十五夜に空を眺めるのが定番ですが、実は10月には十三夜というお月見行事もあり、一方の月しか眺めないのは、「片見月」として縁起が悪いと言われていました。ゆえに、店頭では十三夜までお月見菓子を販売しています。すると、たまにお客様から「なぜ10月にお月見菓子が売っているのか」と聞かれる事もあるのですが、その際「片見月」という日本文化をお伝えすることができますよね。このように私たちは、和菓子の製造と販売を通じ、良き日本文化を伝えることができる存在であると捉えています。

常に時代に合わせて動き、体制を変えてきた。

「時代に合わせる」と述べられましたが、昨今の時代に合わせた新しいアプローチはありますか?

かつて和菓子は家庭でつくられ、人々の日常生活に密接に関わっていました。しかし現在、和菓子をつくる家庭は減少傾向にあり、店で購入する方が多いです。結果として、和菓子と出会うことが非日常になりつつある時代になっています。そこで、少しでも和菓子を日常的な食べ物として感じていただきたいとの思いから、従来とは異なるコンセプトを設けた店をつくりました。10年前、表参道ヒルズにつくった和カフェがそれであり、直近の事例としては2016年4月、新宿NEWoManに開いた「結(ゆい)」が挙げられます。こちらはエキナカに店舗を構え、出勤や帰宅途中の皆さまの目に止まります。私たちは多くの店舗を百貨店に出店していますが、仮に百貨店にあまり足を運ばない方でも、毎日通るエキナカで和菓子を見かけてもらう機会が増えれば、その方の日常に少しずつ寄り添っていくことができると信じています。このように、和菓子をご提供する側から、消費者に歩み寄るという姿勢も大変重要であり、実際に「結」をご利用された方が和菓子のおいしさに気づいてくださり、「また来ます」とおしゃっていただけることも増えています。表参道のカフェ、エキナカの新店舗は、先ほども述べた時代に合わせて動き方を変えていく当社の姿勢を示した好例です。

各和菓子メーカーは、手を取り合って業界を盛り上げようとする動きがあります。

業界の特徴について、就活生に伝えておきたいことはありませんか?

私は、ほかの和菓子メーカーを競合と捉えていません。和菓子業界は、皆で手を取り合って努力を重ねています。他社の皆さんと海外視察に行ったり、互いにアイデアを話し合ったりすることなども多く、業界全体を盛り上げていこうととても前向きです。百貨店の地下に足を運べば、私たちの店舗だけでなく、他社の店舗もたくさん。ある日両口屋是清の和菓子を買われた方は、別の日に他社の和菓子を買われることも往々にしてございます。もちろんその逆も然り。ですから、他社で和菓子を買われるお客さまも常に自分たちのお客さまだと認識することが大切だと考えます。だからこそ、会社の垣根を超えて業界を活気づけようとする動きは、今後も継続されていくでしょう。

株式会社 両口屋是清

名古屋を代表する老舗菓子メーカー。「千なり」「二人静」「をちこち」など、代表菓子が多数。お茶会の和菓子の受注製造も行う。店舗は、東海エリアをはじめ、北は東北、南は九州まで展開。

創業・設立/1634年(寛永11年) 資本金/2億円 売上高/非公開

http://www.ryoguchiya-korekiyo.co.jp