その日、週初めの月曜日にも関わらず男は良い感じに酔っぱらっていた。

 

終電に乗り、なんとか乗り過ごすことなく最寄り駅で下車し、帰路についていた。

 

男は何気なく、ポケットからスマホを取り出した。

 

当たり前のようにスマホを片手に持ち、歩いていく。

 

歩きスマホは危険と言われながらも、自分なら問題ないと思っていたのだ。

 

何事もなく、家まで200mほどまで近づいていた。

 

と、その瞬間・・・

 

ドンッ!

 

男は何かにぶつかり、前のめりにこけたのだ。

 

男は、何が起こったかわからなかったが、酔いがすごい早さで醒めていったのである。

 

なぜなら、つまずいた場所は用水路。

 

そして、つまずいた拍子にスマホを用水路に落としてしまったからだ。

 

時刻は0時過ぎ。幸い、人通りもクルマ通りも少ない時間帯である。

 

男は、用水路に落ちたスマホを救出しようと行動した。

 

カバンを下ろし、上着を脱ぎ、ズボンをまくり、用水路へと向かった。

 

みなさんにわかってもらえるだろうか?

 

薄暗い中、用水路に飛び込む恐怖感を・・・

 

男は、その恐怖に恐れることなく、用水路へと入っていった。

 

幸い、深さはヒザ下までだったため、問題はなかった。

 

男は、両手を入れ、スマホを手探りで探していた。

 

その時の用水路に流れる水の感触は何とも言い難い不快な気持ちにさせられた。

 

不幸中の幸いともいえるだろう、スマホを見つけることができたのだ。

 

それも、水没による故障がなく起動していたのだ。

 

男は家の外にある水道でスマホと汚れた両手、クツを洗った。

 

入念に汚れた手を洗っている時に、ふと右腕に痛みが走った。

 

(倒れた拍子に少し擦れたのかな?!)

 

男はそんな気持ちで家の中へ入る。

 

明るい部屋で腕を見ると、かなりの範囲で傷ついていたのだ。

 

右腕が1番ひどかったが、他にも左ふくらはぎすり傷、右膝下すり傷、右胸青あざ・・・

 

とほぼ全体に損傷があったのだ。

 

男は後悔した。とてつもなく後悔した。

 

(30歳超えて何をやっているんだ!明日からの仕事に支障が出たらどうするんだ!)

 

翌日以降、想像以上に右腕の傷が痛んだ。パソコンの入力業務、文字を書くことすら容易ではなかった。

 

歳のせいだろうか、なかなか傷が塞がらず、痛みが引いてきたのは、1週間かかった。

 

 

 

さらに、男が入った用水路を明るい時間帯に見ると、これまた驚愕した。

汚い!あまりにも汚い!!

 

ここにスマホを落とし、素手で拾い上げたのかと考えると・・・

 

 

 

普段、何気なく歩きながらスマホを見ている方がいらっしゃたら、今後は気を付けて頂きたい。

 

 

 

追伸.スマホは今も起動しており、絶賛活用中である。

 

 

冨田