コロナ後の世界を見てみたい。
いま強くそう思う。
半年前とは全く違う、不透明で、危険で、不確実な世界の上に自分がいることがわかる。
感染の不安、経済の先行き、会社のこと、生活のこと、親しい人たちについて。
このネガティヴ情報が溢れた時代で漠然に不安に思う。
このコロナ体験は、今までの経験、知恵、知識、直感、身体もあてにならないような事態が来ていることを教えてくれる。
仮説を持つこと、計画すること、行動すること、改善することこそ仕事そのものだと思ってきたし、
社内でもそう言ってきたけど、それを簡単に無意味にするような事態が目の前に起こっている。
こんな時、どうしたらいいのか。
馬鹿みたいに嘆き悲しんだり、無かったようにただ目の前のことを耐え忍んだりするだけでは面白くない。
どうせ、今はどこにも行けないし、たくさんの人と出会うのも今は難しいし、そんな場も思いつかない。
オンラインも趣味でないし(個人的には業務だけでたくさん)ネットの世界はもっと趣味ではない。
こう言う時は単純で、僕はいつも本を読む。
読書が心の平穏も、考える力も、前を向く気力も与えてくれる。
教養のためとか、知識のためとか、勉強のためにとか、そういう読書は不純だ。
本は面白いか?面白くないか?それだけでいい。
僕にとって面白いものは、世界を違う見方で見せてくれるもの、新しい視点で解釈させてくれるものだ。
新しい視点は、自分の生きていく手段や、選択肢を増やし、やれることを増やしてくれる。
もっと自由に、もっと自分らしい、気持ちの良い生き方・考え方を作れるような視点や解釈を
僕は一冊の本から得てきたし、これからもそうするだろう。

昔、気取って、斜め読みして少しだけわかったような気がしていた古典を、
今しっかりと読むと全く違った新鮮な驚きと発見がある。
そんな気分で気軽に丸善で手に取った赤い本がこの

『武器としての「資本論」』白井聡著

かの有名な、すこぶる難解なマルクスの資本論についての入門書だが、
内容はすこぶる丁寧でわかりやすい。そして作者の語り口が優しい。

・なぜ格差社会が生まれるのか
・なぜ上司が嫌な態度をとるのか
・なぜ自己啓発書を何冊読んでも救われないか
・なぜ人生がつまらないか

といった疑問を、

・それは資本主義という近代特有の仕組みだから
・万物が「商品化」されたから
と明確に答えてくれる。

単純化を恐れずに言うと、家族や共同体の、複雑な贈与と交換の関係性から生まれる人間の手段としての生産力が、
次第に解体され分解され労働力という形で商品化されていく無限の工程を資本主義という。
この世界では、できるだけあらゆるものをより商品化した方が勝者である。
上記のような疑問は、資本主義の価値観が内面化され、人間の精神を蝕んできた結果であると。
著者はそのもっとも進んだ資本主義を「新自由主義(ネオリベラリズム)」にみている。
(詳細は読んでください)
こういう考え方は一見極端な気がするし、左翼的な紋切り型な気もする。
けれど商品の二重性(商品の持つ使用価値と交換価値)においてマルクスは資本主義は商品の交換価値(量的なもの)を実現し価値増殖を達成することを第一とするため、使用価値(質的なもの)に関しては独自の無関心が生ずる、と言います。
作者はそれ引用し、量は豊富になるけど質は最低に向かうのは、資本主義の内在論理からして必然的なことだと言う指摘はなかなか説得力があります。
さらに今の社会の息苦しさ、生き辛さを説明していく工程で、「商品」「包摂」「剰余価値」「本源的蓄積」「階級闘争」といった資本論を理解する上で重要なキー概念を平明に語っていくこの読書体験は、まさしく「資本論」という武器を僕らに与えてくれる。以上、高井でした。