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「戦略がすべて」とは、なんと挑発的タイトルだろう。
そんなことを考えながらこの題名につられてこの本を手に取る自分はすでに作者の戦略にはまっている。
まあそれもいいだろう。いわばこれはそういう類の本(いわゆるハウツー本)だ。
 <Amazonの要約>
 ビジネス市場、芸能界、労働市場、教育現場、国家事業、ネット社会……
 どの世界にも各々の「ルール」があり、成功の「方程式」が存在する。
 ムダな努力を重ねて肩を落とす前に、「戦略」を手に入れて世界をコントロールする側に立て。…AKB48からオリンピック、就職活動、地方創生、炎上商法まで社会の諸問題を緻密に分析。日本人が取るべき選択を示唆した現在社会の「勝者の書」。
 
まあ、この要約は大げさに感じるが、もちろん学びもある。
各分野のケーススタディが24もの項目に分けて簡潔にまとめられている。
例えば本書は現在の大学教育や組織について「適切な戦略目標と説明責任」が必要であるとして、京都大学の「権限集中よりも合意形成」を唱えた総長の件を例に出して、優秀な人材を大学で作るための戦略を明示する。
どこの組織でも、当社も含め、「適切な戦略目標と説明責任」や「権限集中よりも合意形成」を実行することができているだろうか?
大事だけどできていないと思う。
けれどまあ多くはこのあたりは分かっているけどできないんだよね〜が続くハウツー本として読めるだろう。
だいたい業界を一新したような企業戦略は、事後的には成功の理由を説明できるし、なろほどと感心するのだが、
その法則を一般化して自分もやってみようと思うとあまりうまくいかない場合が多い。
同じ状況を再現するのは不可能だし、何より実際は複雑にいろいろな事象があるのでどの戦略がうまくいくのかはかなり難しいものになる。
だから僕らはできるだけたくさんのケースを学び、それについてできるだけ深く考えるべきなのだ。
僕がこの本を読んで一番面白かったのは最終章の「戦略を持てない日本人のために」だ。
作者はこれまで日本人の美徳とされてきた価値観。
勤勉に頑張って品質を高めた商品が必ず勝つ。
もしもそのような価値観が絶対であれば(世界から見て)現在の日本の没落はきっと起こらないだろうし、さらに先の戦争での敗北もなかっただろうと言う。
例えば「ジャパンアズナンバーワン」と言われた1990年前後に日本は一時的には成功したかに見えた。
しかし、日本には優れた戦術はあったが、戦略がないために最終的には失敗している。
これは「失敗の本質」(中公文庫)であるような太平洋戦争の緒戦で手痛い敗北を喫したアメリカがその失敗から学んで、航空戦力を重視して日本軍が苦手な物量作戦に重点を置いて勝利したのと対照的だと言う。
仕事をする上で具象的な「戦術」はたくさんできてくるのだが長期的な視野に立った抽象的な「戦略」は難しい。
「仕事は真面目にコツコツやっていれば必ず報われる」
これは真実ではない一部に場面があると思う。
もしかしたらある人たちにとって都合の良い戦術かもしれない。
もちろんそんな価値がなくなるのはゾッとするのだが、しかし現実に長期に真面目に頑張っても、一瞬で無駄なものに変わってしまう例はいっぱいある。
ましてや、人工知能(AI)やICTの技術の恩恵は、今こそ人間の労働の役割と意味について長期的に深く考えるべきと言っている。
努力は美徳だと思うが、あなたの努力が無駄にならないためには戦略が必要なのだ。
以上、とりとめのない感想です。高井でした。