これからも前向きに 名大社会長ブログ

カテゴリ「本を読む 映画を観る」の記事一覧:

映画「おとなの事情 スマホをのぞいたら」

気軽に楽しめる一本。

いや、そうでもないかな?
人によってはひやひやしながら観てしまうかもしれない。
そう思うと無責任に気軽とは言い切れない。

出演者はほぼ7人に限られ、それもレストランのあるスペースだけで展開される100分間。
派手なアクションもなければ、壮大なスケールのロケーションも演出もない。

それでも飽きることなく、時にドキドキし、
時に感動し、時に笑える時間帯は十分に楽しめる。
全員に罪があり、全員に罪がない。

それほど話題でない本作をここまで紹介しても、
知らない人からすればさっぱり映画の内容は分からないだろう。
まあ、いつものことか・・・。

簡単に説明すれば、ある出来事がきっかけに1年に1度、
3組の夫婦と一人の独身が集まりパーティーを行う。
そこでひょんなことからスマホに届くメールや電話を全員に公開するというもの。

この時点でそれは勘弁してという人はこの映画は避けて通りたいはず。
それぞれが誰にも知られたくないメールがあったり。
それは奥さん、または旦那さんにも絶対バラしたくないメールや電話が・・・。

僕は知らなかったが本作は世界18か国でリメイクされたイタリアのコメディ映画。
本家本元はスマホとは無縁なはずだが、個人の秘密が暴露されるのは同じで、
万国共通でそれが原因で修羅場を招くようだ。

無責任に観るには面白いが、自分がその当事者になるとビビるかも。
僕はな~んも怖くないけどね(汗)。

密室劇でダレることなく楽しめるのは役者陣の上手さによるところが大きい。
唯一知らなかったチャラい雇われ店長役の渕上泰史さんもいい存在感を出し、場を作っていた。

個人的に印象的でいい意味で悲しかったのが常盤貴子さん。
彼女のイメージは「京都人の密かな愉しみ」の若女将。
上品で古風的な着物が似合う役が似合う。

それが本作では子供を3人抱える45歳のパート主婦。
ガミガミと田口浩正扮する旦那を罵る。
(彼の絶妙な演技も素晴らしいが・・・)
反撃されると開き直り、なんとノー●●姿を露にしてしまう。
その弾け方がイメージをぶち壊し、いい意味で悲しかった。

それぞれの夫婦らにストーリーがあり、結果的には映画のまとめたい方向に向かう。
気分よく観終えれたのはよかった。
いや、それも人によりけりか・・・。

鑑賞後、改めて誓ったこと。
嫁さんのスマホは見ない。
僕のスマホは見せない。
やましいところは何一つないが、それが円満の秘訣。

そんなことを思ったのだった。

心理的安全性のつくりかた

以前、株式会社パフのホサカ先生が本書を紹介し、
自身の行動を踏まえながらとても上手くプレゼンする機会があった。
最初は「オレにはあんまし関係ないかも・・・」と思っていたが、
話を聞くにつれ自分の足りていない点が露になった感じ。

この年末年始に手に取った。
久々にこの類の書籍を読んで、自分の至らなさを実感。
キャリアカウンセラーの端くれとしても理解して損はないと直感的にも感じた。
今後、キャリアにおける相談は心理的安全性に紐づく点は多くなると予測するし・・・。
キャリアカウンセラーとして何もやってないけどね(笑)。

今の自分の立場でいえば、完全な形でその状況を作るのは難しい。
チームやリーダーシップにおける心理的安全性を作ったとしても、
僕に対してそこまで作るのは容易ではない。

相手は少なからず身構えてしまう。
その身構えを完璧に壊してしまうと単なる「ユルい職場」になりかねない。
そんな点でいえば僕はその心理的安全性が何なのかを知り、
実務より上手く機能しているか気を配る方がいい。
そのために学び。
もちろん自分の実務を放棄するのではなく、実践することも大事だけど。

僕らはどうしても過去のリーダーを見ながら、自分がどうあるべきかを考える。
未来のリーダーからは学ぶことができない。
どうあるべきかは過去との比較になり、その段階では間違っていないが、
これからの姿と比較しようと思うとたちまち迷ってしまう。
目の前が理想的なリーダーばかりであれば苦労はしない。

実際はそうではないし、個人として優秀であればあるほどその罠に陥りやすい。
自分の経験を絡ませ、その正攻法を語りがちになる。
僕もそう。
相手の立場になったつもりではいるが、実際は自分側。

思考と行動を一直線にしてしまう。
行動に対してのキッカケ作りと、みかえりを考えながら言葉も発しないと求める行動にも繋がらない。
本書は感情のコントロールを主題にしている思ったが、読んでみると科学的。

どんなものにも分析が必要。
ただそれは難解な答えを求めているのではない。
自分自身が注意をすればできること。
リーダーが心理的安全性を理解していれば特殊な技術がいるわけではない。
「心理的柔軟性」を身に付ける必要はあるが・・・。
その方法は3つあるので、理解したい方は読んでみてね(笑)。

質問の仕方も大事。
ロジカルに理解したいがために「なぜ?なぜ?」を連発してしまう。
論理的思考力の学びすぎか・・・。

心理的安全性を考えれば「なぜ」ではなく、「なに」「どこ」と聞いた方がいい。
ちょっと遠回りになるかもしれないが、その方が意見は出やすい。
論理的思考が強すぎると心理的にはプレッシャーになるかもね。

そんなことを思いながら読んでいた。
この年齢になっても常に何かを吸収しなければならない。

今年も勉強していきます。
すぐ忘れちゃうけどね(笑)

「映画 えんとつ町のプペル」

上手く乗せられて観た映画といっていい。
僕が普段観る映画の中ではジャンル外。
しかし、たまにはこんな作品もいい。

子供向けといえなくもないが、いい大人が観ても十分楽しむことができる。
親子連れでドラえもんを観て親が感動してしまうように・・・。

キングコング西野亮廣氏が何度も「ハンカチでは足りずバスタオルが必要」と
発するように中にはそんな人もいるだろう。
かなり大袈裟だと思うが、コアなファンはそうなるかもね(笑)。

本作を選んだのは、西野さんのvoicyを聴くようになったのがそもそも。
彼のこれまでの実績(世間との軋轢を含め)や創作活動は知っていた。
そこからかなりの才能の持ち主であることも十分理解していた。

しかし、映画まで観ることになるとは・・・。
理由は「キンコン西野マーケティング講座【上級編】」に申し込んだため。
オンラインの講演は有料で5300円が掛かる。

それには本作のチケットが3枚付いてくる。
単純に映画料金がこの講演代にあたる。
クラウドファンディングを駆使する西野氏ならではの戦略だが、
ここに彼の事業家としてのセンスも感じる。

その講座は彼がひたすら喋っていたが、その辺のつまらない講演よりはよほど面白かった。
お客さんの分け方とかプロセスエコノミーの考え方は十分学びにもなった。
そんな意味ではお値打ちな企画。

せっかくチケットが3枚あるのでたまには家族でとも思ったが、そんなはずもなくいつものように一人。
残りのチケットは映画コラムニスト仲間に差し上げた。
こんな時、ムビチケの存在はいいね。
スムーズな受け渡しで映画も簡単に予約できる。
前売り券の扱いも変わってくるわけだ。

とここまで書いて、ほとんど映画の内容に触れていない。
いつものブログと同じだがいつも以上に触れていない。

原作は絵本。
とても分かりやすいストーリー。
初めて知る内容だが、どこか懐かしさも感じる。
信じること、頑張ること、諦めないことの大切さがビシバシと伝わる。
西野さんの熱い想いと一緒に・・・。

また、声優陣はピッタリはまる。
主役ルビッチの芦田愛菜ちゃん、ごみ人間プペルの窪田正孝さんはじめ、
他の方々も配役は素晴らしい。
そんな映画だった。

それにしてもこんな作品の絵を描き、作詞作曲までやってしまう西野氏。
僕はクリエイターというよりも事業家だと思っていたが、
やっぱりクリエイターなんだね。
いや、次代のマーケッターか・・・。

社会の構造が変化していくのを知るには観ておくべき作品かもしれない。

銀河を渡る

本書は約2年間、寝かせていたことになる。
出版と同時に購入したものの、いずれと思っているうちに時間だけが過ぎていった。
最新のビジネス事例でもなければ、直近の自分の課題でもない。

空いた時間にゆっくりと好きに読めばいい本。
本来、読書の幸せって、そんなところにあると思うが、
目まぐるしい毎日を繰り返すうちに楽しみ方も変わったかもしれない。

改めて感じた。
沢木耕太郎は僕が最も好きな作家だと。
作家というよりはルポライター。
本書でいえばエッセイストだ。

本書は2018年まで25年間のエッセイが収められている。
「歩く」「見る」「書く」「暮らす」「別れる」の5部構成。
沢木氏特有のスポーツ、旅、映画、人などなど。

僕はその切り口や語り口が好きだし、こだわってないようでこだわりを持っているのが好きだ。
そして、不思議に思うのは、なぜ、沢木氏はこんなに人を惹きつけるのか。
それは読者のことをいっているのではない。

取材される対象がことごとく彼に好意的で全てを明かしていく。
一般的に取材対象となる側は一定の距離を置きたがる。
相当な信頼関係ができれば別だが、沢木氏の場合はことごとくといっていい。

提灯記事を書くわけでも、饒舌に営業しまくるわけでもない。
義理堅く律儀なのは間違いない。
しかし、失礼な言い方をすれば、かなり自分勝手な人物。

新卒で入社した会社を1日いや半日で退職したのも象徴的だが、
自分の都合で海外へも飛び立ってしまう。
それが当然であるように思えるし、周りはそれが悪いことというより好意的に受け入れる。
僕もそこに惹かれる一人だし、憧れ羨ましく思う。
これほど偶然を自分のものにしてきた方もいないだろう。

その代表的なエピソードが高倉健さんとの出会いから最後の別れまで。
何をもって日本を代表する寡黙な俳優が沢木氏に心を開いたのか。
特別な存在なのは、このエッセイからも容易に想像できる。

お互いリスペクトする要素が多かったというのか。
なんだかチープな表現・・・。
ただこの関係性だけでも泣ける。

もう少し時間的余裕ができたら、過去の作品も読み返してみたい。
僕の感情もかなり変わっているだろう。
と同時に新作も期待したい。

いつまで精力的な活動をされるかわからないし、今、この時間をどう過ごすかも知らない。
果たして東京オリンピックも取材するのだろうか。
70代半ばの体はキツいと思うけど。
それでもこの先も楽しみにしていきたい。

本書を読み改めて好きな作家と認識したので・・・。

「両利きの経営」を読む

何を今更?と思われるかもしれないが、ようやく先日読み終えた。
最初に言っておこう。
名大社のリーダー以上のメンバーは絶対読んでおくべき。

もう既に読んでいたとしたらすみません。
ぜひ、感想を共有してもらいたい。

本書はあちこちで話題になっているので、ブログで紹介するまでもないかもしれない。
ブログに書いた「両利きの組織をつくる」「コーポレート・トランスフォーメーション」等、
関連する書籍では触れている。

本書で紹介される企業は名のある大手ばかり。
その栄枯盛衰が克明に語られているわけだが、共通するのが本書のテーマ。
分かりやすい例だと富士フィルムとコダック。
今更語るまでもなく企業の行く末は知っての通り。

第三者が無責任にいうのは許されないが、頭では理解できる。
実際、コダックの経営陣も優秀な方ばかりだからわかっていたはずだ。
しかし、決断し実行できなかったから気がついた時には手遅れになっていた。

家族企業、零細企業を含めれば日本には300万社はあるという。
そこで消えていく理由もさほど変わらない。
変化対応ができていれば、
(もちろん違う問題もたくさん)
存続していたはず。

それは名大社にもいえる。
今後の取り組み次第で成長も衰退もどちらもあり得る。
そのための「両利きの経営」。

知の探策=自身・自社の既存の認知の範囲を超えて、特に認知をを広げていこうとする行為
知の深化=自身・自社の持つ一定分野の知を継続して深掘りし、磨きこんでいく行為

優秀なうちの幹部であれば、「あ~、そうか・・・」と納得するはず。
そこを今までないがしろにしたわけではないが、中途半端な挑み方しかできなかった。
コロナ禍の世になり、それがより鮮明にあぶりだされたが今。
このタイミングで臨まなければ手遅れになるかもしれない。
そんな危機感を持つ必要も・・・。

だからこそリーダー以上は読んでおくべき。
そこで求められる3つの行動とは・・・。
これは僕を始め経営陣の重要事項。

半年、1年で片付く問題ではなく、2年、3年かかるかもしれない。
それでも終わらないかもしれない。
だが、諦めず取り組んでいくべき事柄。
そのための組織作りと。
2021年の最重要項目ですね・・・。

本書の最後に書いてある一文。
恐竜はユニコーンを打ち負かすことができるし、ユニコーンはすぐに恐竜になりうる。

受け止めていきましょう。

映画「ニューヨーク 親切なロシア料理店」

12月に相応しい心温まる作品。
なんで12月に相応しいの?と思われるかもしれないが、
大体クリスマスシーズンにはハートウォーミングが多いのが業界の習わし。
ほんとかどうかは定かではないが、そんな気がする。

それに合わせたかのような映画タイトル。
原題「The kindness of strangers」を訳しても、このタイトルとは程遠い。
似ても似つかない。

まるで「愛と青春の旅立ち」のようだ。
まあ、それは許そう。
あながち映画の中身がそれに沿っているから・・・。

ニューヨークが舞台でロシア料理レストランを中心に繰り広げられるし。
そう思うと安易なタイトルか、やっぱり(笑)。

僕は正統派アメリカ映画と思っていたが、それも違う。
デンマーク・カナダ・スウェーデン・ドイツ・フランスの合作。
アメリカもロシアも一切関係なし。
どうしたらこんな合作が生まれるか映画を観ても皆目見当はつかない。
ロネ・シェルフィグ監督がデンマーク出身なのでその繋がりくらいしか理解できない。

勝手な想像に過ぎないし、多分、その想像は間違っていると思うが、
この映画に描かれる世界は万国共通の深いテーマとも受け取れる。
DV、犯罪、リストラ、不倫などそれぞれの事情を抱えた人たちがもがきながらも支えあう。

それも偽善でもなく打算でもなく純粋な気持ちで・・・。
こんな映画を観ると殺伐としたニューヨークの景色も違った色に見える。
それは悪くない。

支えあう人がお互いに立派かといえば、それも嘘。
どこか間違っているし病んでいる。
それでも前を向く気持ちに心を奪われ映画に感情移入していく。
そのあたりも12月らしさといえるのか・・・。

最近の外国映画の俳優はとんと分からなくなっているが、本作もそう。
誰一人として知らない。
その中で僕が惹かれたのは唯一まともな人物ともいえるアリス役のアンドレア・ライズボロー。

ショートカットで颯爽と働く姿は美しく、少し影を感じさせるのもいい。
他にどんな作品があるかググってみたが、惹かれる画像は出てこない。
正直、ろくな画像がない。

そう思うのは僕だけ?
とどうでもいいことを感じてしまった。
単純なハッピーエンドも悪くないが、こんな感じで終わるハッピーエンドも救われる。

結局、人は人でしか救えない。
それはお互いの関係性が希薄であっても、人間同士だから繋がれる。
幸せな気分になれる映画を年末に観れるのはありがたい。

映画「ばるぼら」

自分一人の選択であれば、本作を選んだどうかは微妙。
気にはなっているが、モーレツに観たいと思う映画でなかったのは正直なところ。
映画評論仲間のヤブさん、コヤマさんとの課題作品となり鑑賞する機会を得た。

結論からすれば、この作品を評することでお酒を楽しむことができる。
作品の意図について互いの見解を述べたり、
手塚治虫氏の原作を並べながら昭和と現代を比べたりと話題は十分。
いい題材となった。

しかし、これも結論だけいっておこう。
大ヒットはしない。
万民に受ける作品ではない。
R15なので「鬼滅の刃」ファンを巻き込むこともできない。

ただ声を大にしていえば、テレビ小説「エール」のファンは観るべき。
さらにいえば、二階堂ふみファンは絶対に観るべき。
もしかしたら相当のショックを受けるかもしれないが、それを恐れずに観るべきだ。

それにしても彼女の演技はすさまじい。
それは本作に限らず、僕が過去観た作品でも同じ。
比べれば「翔んで埼玉」「SCOOP!」なんてかわいいもの。
流れとしては「この国の空」や「私の男」に近い。

より大胆な演技で、爽やかな朝の国民の顔を見事に裏切っている。
(「エール」は一度も観ていないが・・・)
この高尚な映画ブログでは卑猥なことは書けないが、
そのすべてを葬り去る演技は稲垣吾郎さえもダメ人間に陥れる。

妄想なのか、リアルなのか、文学的なのか、哲学的なのか、
観る者は翻弄され自分の居場所さえ分からなくなる。
そんな雰囲気を持つ映画。
いやはや、これはやはり大ヒットしない。

監督は手塚治虫氏の息子である手塚真氏。
どうだろう。
どれだけの人が知っているだろうか。

僕らの世代の邦画マニアで知らない人はいないが、一般的には認知は低いのでは。
僕が学生の頃、自主映画界ではカリスマ的な存在だった。
当時、話題だった「星くず兄弟の伝説」という訳分からない作品を観た記憶はある。
残念ながら前衛的すぎて理解できなかった。

35年経った今でもある意味、前衛的。
それを創作する者はいつの時代になっても、その感性は持ち続けるものだろう。

それにしても死人であるばるぼらこと二階堂ふみに対して稲垣吾郎ってヤツは・・・。
これはかなり衝撃的。
映画の解釈を含め、そのシーンだけでも観る価値はあるのかも。

やはり映画仲間の存在は大切。
また、鑑賞会をやりましょう。
ありがとうございました。

映画「スパイの妻」

ようやく映画コラムニストの仕事も戻ってきた。
最新作ではない。

本作を観たのは11月下旬。
上映している映画館も少ないかも。
まあ、ブログが休止していたからやむを得ない。
僕のブログを読んで観たくなる人は溢れんばかりだが、ご勘弁願いたい。

ヴェネチィア国際映画祭銀獅子賞を受賞した話題作。
要は最優秀監督ということ。

そうなると期待値がグッと上がるが、
海外の評価の高さが国内の評価とイコールとは限らない。
海外から観た日本の描き方、喋り方、文化の見せ方と
国内のそれとはそもそも感じ方も違うだろう。

いい意味でも悪い意味でも僕らが観る外国映画の理解は難しい。
それと同じではないか。

それは素人感覚?
まだ未熟な映画コラムニストの証なのかもしれない。

誤解を恐れずにいえば、本作の評価も賛否が分かれる。
少し前に観た「朝が来る」あたりと比べれば評価の差が激しくなるのではないか。
それは映画の解釈にも差が出るだろう。

反戦映画とみるか、恋愛映画とみるか、
ハッピーエンドとみるか、不幸な結末とみるか、捉え方も様々。
見方を変えれば、蒼井優演じる聡子のセリフも大きな意味があったり、
単なる感情であったり。

しかし、僕らはそのセリフに惑わされ、
戦時中という特別な時代に気持ちを持っていかれる。
これも黒澤監督の思うツボなのか。

だから映画は面白く、どこまでいっても不可思議な世界。
飲んで語っても終わることはない。

本作はその時代背景の作り方や映像美も魅力だが、カット割りも見どころ。
相米慎二作品の助監督を務めた影響か、長回しを多用している。
それがリアリティと緊張感を生み、上手く時代を反映している。

そのあたりも評価を得るポイントだったりして・・・。
あまり映画祭の受賞ポイントは変わっていないのかな(笑)。

それでも日本映画が海外で評価を受けることは大切。
どんどんその魅力を発信させ、全世界で観てもらう機会と作るべき。
ボヤっとしていると隣国に追い抜かれてしまうしね。

日本らしい作品をこれからも期待したい。
僕らはどこまでいっても日本人だしね。

映画監督論。を読みながら

今週は秋の映画強化週間。
最近観た作品はすでにアップしてしまった。
どうしようか…と悩みながら楽天マガジンを開くといいネタがあった。

毎年、この時期に「BRUTUS」は映画特集を行うのか。
昨年もこの雑誌を読み「キミはシネマコンシェルジュになれるのか」というブログを書いていた。

今年は映画監督論。という特集。
20名の監督の鑑賞論を中心に様々な角度から映画の楽しみ方を取り上げている。
その視点が他の雑誌と異なり興味深い。

監督と映画プロデューサーとの関係や宣伝マンとのやりとり等、
裏側に世界をリアルに知れるのも大きい。
映画の世界では監督が一番偉いような気もするが、
実際はいくら有能な監督でもプロデューサーに選ばなければ作品は撮れない。
こだわりすぎても嫌われたらおしまい。

各国の宣伝マンがうまくリードしないと目論見通りの興行成績も収められないし、
好き勝手に撮ればいいというわけではない。
だから最近はワガママな監督が減ってきたのかな?

また、本誌には30名のシネマコンシェルジュが映画監督論を述べている。
そろそろ僕も呼ばれてもいいと思うのだが、今年も声が掛からなかった。
だが、納得せざるを得ない。
30名のシネマコンシェルジュは得意分野や専門性がはっきりして、紹介する作品も特徴的。

僕には半分も分からない世界。
一年を通して観る本数も桁が違う。
残念だが、僕の映画コラムニストとしての活動では未熟だということ。
もっと本数を稼ぎ得意分野でエッジを立てなければ・・・。

話は戻り映画監督論。
話題のクリストファー・ノーランからS・クレイグ・サラーまで20名。
日本人では大林宣彦、相米慎二、伊丹十三、今泉力哉監督が取り上げられていた。

大林監督も相米監督も好きな監督。
僕が最も映画を観た1980年代を代表する映画監督。
大林監督については以前ブログにも書いているので、今回は相米監督。
もう亡くなられて19年が経過する。
53歳なんて僕よりも若いじゃないか・・・。

相米監督のデビュー作は「翔んだカップル」。
2作目は「セーラー服と機関銃」。

はっきり言っておこう。
薬師丸ひろ子を育てたのは角川春樹でも大林宣彦でもなく相米慎二。
彼が薬師丸ひろ子を大女優に育てたのだ。
この2作とも単なるアイドル映画ではない。

「セーラー服と機関銃」は ”カイカ~ン”というセリフとともに大ヒットしたが作品もいい。
それ以上に「翔んだカップル」は素晴らしい青春映画。
僕は完全に薬師丸ひろ子にノックアウトされた。

長回しにこだわり徹底的なリハーサルを行うという。
そこで薬師丸ひろ子も鍛えられたのだろう。
今でもあのシーンを思い出すとジーンとしてしまう。

改めて調べると1985年には「ラブホテル」「台風クラブ」
「雪の断章 情熱」と話題作を3本も撮っていた。
それが寿命を短くしたのか。
今でも惜しい監督を早くに亡くしたと思う。
好きな監督の一人だった。

遺作となった「風花」を観たいが、Amazonプライムでは有料でも観れない。
Amazonさん、何とかしてね。

最近、監督で映画を選ぶことは少なくなった。
個人的には白石和彌監督くらい。
それがいいことかどうか。

たまにはお酒を飲みながら、好きな監督について論じあってもいいかもね。

映画「緊急事態宣言」

最近、またコロナ感染者が増えている。
ついに第3波の襲来なのか・・・。
そんなニュースを見ると辛くなるが、
自分たちができるのは感染予防を心掛け、会社として万全な体制を整えていくだけ。

一日も早く収束して欲しいが、withコロナで対応していくしかないのだろう。
本作はそんな中で作られ5本のオムニバスで構成されている。
Amazonプライムで公開された直後に4本を観て、最後の1本をつい最近、観終えた。

すでに観た人は多いと思うが、あまり話題にはなっていない。
それが作品の正当な評価かもしれないが、おヒマな人はその感覚を味わってほしい。

かなり賛否両論ある作品で、話題の監督が独特の感性で仕上げている。
真剣なのか、遊び感覚なのかは分からない。
今、目の前の現実と近未来が入り混じる。

再びコロナ感染者が増える中で、以前のような緊張感がない今、
本作を見せつけられるといい緊張感を生むんじゃないか。
そんなふうに思ったり・・・。

僕が5本のオムニバスで一番響いたのは「デリバリー2020」。
いつもはネタバレしないように注意しているが、今日は大いにネタバレさせよう。

離れ離れで暮らす家族が誕生日祝いをオンラインで行う。
コロナ禍なので、一堂に集まることができない。
そこには本来、誕生日祝いをされる父親は不在。
理由はコロナウイルスに感染し、死を迎えたため。

なんとなくシュール。
実際、そんなことが現実に起きてもおかしくない。
この作品に登場するのは3人のみ。
お母さん役の渡辺真知子さんは味がありますね・・・。

ともすれば1日の撮影で映画は完成する。
出演者はお互いに顔を合わせることはない。
それを踏まえての制作であり公開か・・・。

映画館での上映が前提ではなく、短期間、最少のスタッフでの制作。
オムニバスはそんな作品をまとめているが、これも時代の反映。

10年後、この作品の真価が問われるだろう。
個人的にいえば、この作品が忘れ去られるのが、いい時代だと思うのだが・・・。
そんな未来を期待したい。