これからも前向きに 名大社会長ブログ

カテゴリ「本を読む 映画を観る」の記事一覧:

映画「ムーンライト」

monn17041

今年のアカデミー作品賞受賞作品。
僕が海外の作品賞を観ることは珍しい。
大学時代は義務的な面も含め観ていたが、どうも感覚が異なる作品が多かった。
思うように感動しなかったのだ。

僕の文化レベルが低いだけかもしれないが、
揺さぶられる作品が少なかったのは事実。
そんなことを思うとこの映画は実にレア。
アカデミー賞の発表で名優が間違えて読んでしまったことも
少なからず影響しているかもしれない(笑)。

この作品ほど、先が読めない映画はなかった。
どんな映画でもある程度先行きが読め、結論をイメージできるわけだが、
(外れることも多いけど・・・)
本作はどんな展開になるかは全くみえない。
先は全然分からなかった。

それは人種や文化の違いもあるだろうが、
映画が持つメッセージに僕がついていけなっただけのこと。
それだけ複雑で情緒的だ。

この映画のポスターをよく眺めてみると一人の人物でないことが分かるはず。
それぞれの年代を生きている証明なのだが、当然、同一人物ではない。
(映画上は同一人物だけど・・・)

しかし、その繋がり感は見事であり、
その肉体の変化を含め生き様はひとりの人物である。
僕の意味不明な表現は映画を観れば納得できるはず(笑)。
映画のテーマが新しいとはいえないが、
そのカメラワークや展開手法は新たな世界を築いている。
そんなふうに思ってしまった。
偉そうだけど。

この映画を観ながら、世界は違うが「愚行録」を思い出してしまった。
関係性において近いとも感じる。
そして、イジメや育児放棄で与える影響は万国共通。
ひ弱な日本人も屈強なアメリカ人も関係ない。

育つ環境が悪ければ、子供は健やかには育たない。
筋骨隆々の黒人だがらタフというのは先入観にすぎない。
どんな人種だろうと悩みは常に抱えている。
それを知りえただけでも本作を観た価値はある。

これからはとても難しい時代。
だからこそ純粋に懸命に孤独と戦い生きなければならない。
そのことをムーンライトが教えてくれた。

テレビじゃ言えない

takesi17041

なぜか著者の本を買ってしまう。
芸能関係者の書籍をほとんど読むことがないのに何故か買ってしまうのだ。
理由は分からない。
映画と一緒で、たけし氏が特別なことを言ってくれると勝手に期待してしまうのだろう。

書かれている内容は大体くだらない。
それは本人が一番わかっていることだと思うが、どうでもいい話が多い。
しかし、その遠慮のなさと時折、突く本質がたまらなく面白い。
ちょっとくらいの有名人ならまず書くことはできない。
百戦錬磨、いくつもの危ない橋を渡ってきたからこそ、
平気でモノが言えるだろうし、それが芸風としても認められるのだろう。

読んだ内容も次の章に移っていくと同時に忘れてしまう。
記憶に残ることなく、瞬く間に消えていく。
それは読み手である僕の能力のなさかもしれないが、実際、そんな感じ。
ただ印象に残る言葉や著者が持っている本来の優しさを感じることもできる。
優しさは高倉健、タモリ、デビット・ボウイらのエピソードはそれ。
なぜいいお付き合いができるかは、本書に書かれていないたけし氏の魅力。
相手にしか分からない魅力があるに違いない。

なんて、僕がエラそうに書いたところで、
たけし氏に言わせれば”ネットは「バカのための拡声器」”に過ぎない。
僕のブログやスタッフブログの決め事として、他人の誹謗中傷はしないことにしている。
反対意見があれば、それは理由をつけてハッキリいうこと。
非難になるかもしれないが、誹謗中傷ではない。
そこは間違えてはいけない。

その点では「バカのための拡声器」ではないと思うのだが、
現実は僕のバカバカしい内容ではそんなふうに捉えられても仕方ない。
まあ、今更、かしこぶってもいけないし、ブログも止めるわけにいかない。
別に止めても困る人もいないし、僕も楽になれるので止めても問題ないのだが、
自分の中ではそれが許されない。理由はない。
やると決めたらやるだけのこと。
会社じゃ言えないことをブログで言ってるだけかもしれないし・・・(笑)。

本書を読むとなぜテレビの魅力が落ちているのかも分かる。
じゃあ連載中の雑誌は大丈夫なのかというとそうでもないだろう。
「バカのための拡声器」に押されてしまってるのも事実。
何が正しいのかは自分で判断するしかない。
たけし氏の考えと同じわけだ(笑)。

たまにはこの手の書籍もいい。
いつまでも毒を吐いていただきたい。

映画「湯を沸かすほどの熱い愛」

yu17031

昨年公開された映画だがタイミングを逃し観ることができなかった。
作品の評判も良かったが、主演の宮沢りえさんの評価も高く
キネマ旬報はじめいくつもの賞を受賞していた。
DVDでしか観ることはできないと諦めていたが、
なんと家から一番近い映画館「中川コロナ」で18日(土)より2週間公開されるのを知った。

これは運がいい。
早速、昨日、朝一番で観に行った。
思わず泣いてしまった。
お涙頂戴映画であるのは否定しないし、そんなシーンも多い。
そんな演出にまんまと乗ってしまった。

少し前に観た「愚行録」はブログにも書いた通り、気分の悪い映画だった。
登場人物は不幸で、不幸のまま生きていく。
本作品も基本、登場人物は不幸である。
厳密にいえば不幸を背負った過去を持つ。

しかし、生き方が変われば、そんな不幸も幸せに変換できる。
正しく愛を注入すれば、みんなハッピーになれるのだ。
それを一身に背負い、見事に生き抜くのが宮沢りえさん演じる主役の幸野双葉。

公開されしばらく経つので、ネタバレしても問題ないだろう。
少しだけ触れておく。
末期がんを宣告され余命2ヶ月を激しく生きていく。
それは家族のため。そして、自分のため。
それを涙なくしては観ることができない。

その真っ直ぐさ、母親らしさ、圧倒的な人間的強さと優しさ。
最後の最後まで自分の果たすべき目標に向かい生きていく。
「死」という恐怖に立ち向かいながらも懸命に生きる。
いやあ~、ステキな映画だった。
昨年観ていたら、僕のベストテンの上位に食い込んでいただろう(笑)。

作品そのものも見どころだが、出演者一人ひとりも見どころ。
これほど上手いキャスティングの作品も少ない。

まずは宮沢りえさん。
主演女優賞総なめは当然ともいえる。
やつれていく姿も含め、感動的。

娘役の二人も最高だと思う。
杉咲花さんは圧倒的存在感。
Cook DoのCMで回鍋肉を勢いよく食べる姿しか知らなかったが、こんな上手いとは。
子役の伊東蒼ちゃんも小学生とは思えない演技。
オダギリジョーもそのだらしなさや抜け感もいい。
一人ひとりの役回りで作品のリアルさが高まっていく。
そんなことを感じてしまった。

この作品の肝はハグ。
ハグというよりは抱きしめると言った方がいいのかもしれないが、それが人を幸せに導いていく。
重要なシーンでそれがみられていく。

タイミングよく公開してくれてよかった。
今回は中川コロナに感謝ですね(笑)。

春に散る

haru17031

沢木耕太郎氏のノンフィクションはほとんど読んでると言っていい。
一方で、ちょくちょく書いている小説は一度も読んだことがない。
正直なところ、それほど魅力に感じない。

しかし、本書は出版された瞬間に盲目的に購入してしまった。
大きな理由はボクシングを物語のベースにしているから。
僕はボクシングに精通しているわけでも、好きなスポーツでもない。
たまたまTVでやってれば興味深く観るが、その程度のこと。
しかし、ボクシングというワードに惹かれ、買ってしまった。

沢木氏の代表作は数多い。
その中で僕が好きな作品は「敗れざる者たち」「一瞬の夏」「コホーネス<肝っ玉>」。
「深夜特急」もメチャクチャ好きだが、
スポーツノンフィクションは圧倒的にボクシングになる。
特に「一瞬の夏」の興奮度はたまらない。

その興奮を体が勝手に求めたのだろう。
上下巻でトータル846ページの長い作品だが、僕はもっと長くてもいいと感じた。
世界チャンピオンへの道のりをもっとゆっくり描いてもよかったのではないか。
その後の世界をもっと引っ張ってもいいのではないかと・・・。

読み終えて感じたこと。
沢木氏はこの小説を書きたくて仕方なかったのではないか。
僕の勝手な読み方でしかないが、著者がこれまで取材してきたスポーツの分野や
人の生き方をひとまとめにしてしまった小説。
集大成だろう。
そんな感じがしてならない。

取材対象者をオーバーラップさせながら、
ペンを走らせていたのではなかろうかと思う。
それが読み手に興奮を与えれば何も言うことはない。
僕も上手く乗せられた一人。
ちょっとした感動と興奮を与えてくれた。

小説を読むこと自体少ない。読むにしてもビジネス小説がほとんど。
ほとんどというより100%だろう。
何年振りか分からないくらいのビジネスもの以外の小説を読んだ。
たまには気分転換に読むのもいいかも。
別世界にいかないとつまらない人間になってしまう。

次回作を期待したい。
すぐには書かないだろうけど(笑)。

映画「愚行録」

gukou17021

言い方は悪いが、とても気分の悪い映画である。
登場人物もまともな人間はほとんどいない。
ごくごく少数。

映画が進行していくうちに嫌悪感も増してくる。
それでもグイグイ引き込まれるから不思議だ。
嫌な気分にさせられながらもその人物に共感する面もあるから不思議だ。
人としての愚かさを描きながら、同時にその愚かさが誰もが存在する
弱さとして体に染み込むことを監督は計算に入れているのかもしれない。

映画の評論なんか読むと2017年の最高傑作とか、
予想できない衝撃的作品など、高評価も多い。
そう思う方も多いだろう。
僕も20代で周りとの人間関係が希薄な時代はそう感じていたのかもしれない。
それが家庭を持ち家族の平和を思い、生活のバランスをとるようになってからは、
この作品を最高傑作と評するのは難しい。
もっとまともな方向に進みたいし、まともな作品を選びたい。

本作品を観ると、つくづく育ってきた家系や環境が、
その後の人生において大きな影響を与えることがよくわかる。
その影響がこの作品の中で大きな影響を与えているのだろう。
むっ、変な表現(笑)。

登場人物が各々嫌な人間に映っていく。
その笑顔の裏にある本当の顔。
語ることで、また、語らないことで見える本質的なエゴ。
この映画では普通のこととして出演者に役割を与えている。
それが実に残酷だと言えるのではないか。

それを上手く演技するのが2人の主役。
主人公の妻夫木聡くんと妹役の満島ひかりさん。
この2人の重くせつない演技によって、この映画を嫌悪感へと導く。

こんなことばかり書くと配給会社に叱られる。
悪口を言うなと怒鳴られそうだ。
言っておくが、これは批判でも悪口でもない。
僕なりの正当な評価であり、むしろ褒め言葉(笑)。
それは理解してもらいたい。

この映画のキーマンとして殺される主婦役がある。
この女優が松本若菜さん。
表面的に美しく優しい、そしてしたたかな悪女を上手く演じている。
どっかで見覚えのある女優・・・。

映画を観ながらずっと考えていたが全然思いつかない。
エンドロールで、フッと思い出した。
そうだ。あの子だ。

10年前の「仮面ライダー電王」に出ていた。
当時、幼稚園の息子と毎週観ていた。
仮面ライダー役は今を時めく佐藤健くん。
そのお姉さん役をコミカルに演じていた。
随分と久しぶりに観た。
厳しい業界の中で生き残っていてよかった。
映画を観終わった後、そんなどうでもいいことが頭の中をよぎった。

「仕掛けられた3度の衝撃。あなたの日常が壊される。」
このキャッチコピーは観る者次第だが、憂鬱になるのは事実である。

「熔ける」を読む

toke17021 (1)

単行本は買うつもりがなかった。
もったいないと感じたから・・・。
今回、文庫本が出版されたので読むことにした。

セコいと思われるかもしれないが、僕なりに本選びをしている。
何でもかんでもむやみやたらに買えばいいというものではない。

カジノで子会社から借り入れた総額106億円を使い切ってしまった真実は
スキャンダラスで面白いんだけど、もったいないと感じたのだ。

なぜ、もったいないと感じたのか。
単純にくだらない内容と想像したから・・・。
それでも読む価値はあると思う。
これも一人の経営者の姿であり、その辺のフィクションよりは相当刺激的。

一時期よりは話題性はないものの著者の井高氏は大王製紙の御曹司。
同族企業の3代目だ。
僕とは2歳しか年齢は違わない。
血筋や学歴は雲泥の差があるが、同世代。
環境は違うとはいえ同じ時代を生きてきた。
世代的価値観が合致してもおかしくはない。

しかし、残念ながら共感する面はまるでなかった。
だったら読まなければいいのだが、
反面教師の意味でも読んでおくべきと体が勝手に反応したのだ。

106億を賭博で使ってしまうなんて僕にはできることではない。
そんな勇気を持ち合わせていない。
しかし、可能性はゼロではない。
少なからず高揚感も味わいたい気持ちもあるだろう。
だが、それを楽しみたい勇気はない。

著者は言う。
「バクチをやる人間は、結局のところ皆バクチに向いていない。」のだろう。
皮肉なことに、「バクチをやらない人間ほどバクチに向いている」のである。

それが本当かどうかはわからない。
僕はギャンブルをやらないので、もしかしたら向いているのかもしれない。
どうでもいい話だが・・・。

井高氏には再生してもらいたいと思う。
井高氏を擁護する声もある。
きっと周りからは好かれる人物なんだろう。

しかし、こうも思う。
経営者として成功しても、華麗なる交遊関係があるにしても、
こんなふうになってはいけない。
間違いなく失格者。
それは間違いない。こうなってはいけない。

映画「サバイバルファミリー」

saba17021

結構な割合で映画のことをブログに書いている。
ネタ不足とも余程ヒマとも思われなくはないが、
これも映画コラムニストとして大事な仕事。
いつでも職業が変えられるような地道な活動が必要なのだ(笑)。
それにしてはレベルが低くて通用しないと言われるだろうけど・・・。

さて、本作品、映画館で何度も予告編を観るうちに惹き込まれていった。
なんとなく予想がつく家族コメディだが、
どんなラストを迎えるのか、それも気になり観ることにした。
安心したラストで映画が終わるのはすっきりした気持ちで映画館を後にできる。
体の中にモヤモヤが残らないのがいい。

そして、一見バラバラな家族が過酷な旅?ツアー?経験を通して、
ひとつのまとまりになっていくのもいい。
詳細を話すとネタバレになるので抑えておくが、
一つのシーン、一つの会話でまとまり感が成立していく。

この家族は父、母、息子、娘の4人。
順番は違えど、うちと同じ。
普段あまり会話がない、父親が軽視されている、そのくせ威張っている、それも同じ(涙)。
父親は仕事人間でどんな状況であろうと会社に行こうとする。
観ていると滑稽だが、それも同じ。
なってこった(笑)。

そして、いざというときに役に立たない。
ここは正直分からないが、電気、ガス、ネット、
交通機関などすべてのインフラが停止したら、何もできないかもしれない。
農家の倅のくせに何の知識もないし、自分で火を起こしたこともない。
無責任に映画を楽しむのはいいが、同じ状況になった場合、
自分は家族が守れるだろうかと心配になってしまった。

そんな見方もできるが単純に楽しめる映画。
ノンストップで進んでいく展開はアクション性は低いもののハラハラさせられる。
あんなロケもよくやれたもんだと感心してしまう。
あっという間の2時間だった。

本作の母親役は深津絵里さん。
息子は大学生なので、いいおばさんの設定。
こんな役柄は初めてじゃないだろうか。
しかし、それを見事に演じているし、可愛らしさも保っている。
何よりすっぴんで泥まみれになる姿を違和感なく当たり前に演じれるのもステキだ。
いい女優さんだなあ~。

こんな映画は家族揃って笑いながら観るのがいいだろう。
僕は一人で観たんだけど・・・。
家族をお持ちな方、
それも大学生とか高校生あたりのお子さんはいる家庭は是非、ご一緒に・・・。

キレイゴトぬきの就活論

kire17021

3年前に「就活のコノヤロー」の感想をブログに書いた。
そのブログを読んだ著者の石渡さんから
「一度、お会いして話がしたい。」という連絡を直接頂いた。
著書の内容は結構過激だったので、「ヤバい、これは殴られるかな・・・」と恐る恐るお会いした。
何てことはないとてもいい方で、当時の就職環境について情報交換をさせて頂いた。
本書からのネタ利用の許可も頂き、講演で何度か使わせてもらった。
当時の学生の行動特性を上手く描いていた。

そんな方の就活論。
帯には「就活生必見」と書かれているが、採用に関わる者にも参考になる点は多い。
中小企業の経営者も今の実態を把握しておくにはもってこいだとも思う。
僕もこの手の情報は詳しいつもりだが、
(当たり前か・・・笑)
新鮮な面も多かった。

導入部分は面白いし、あるあるである。
「就活で夢を持つべき」「就活は現実を見るべき」の激論。
どちらも一理あるが、使い方による。
一緒に話されたら、混乱するのは当然のこと。
売り手市場であろうが、買い手市場であろうが、ホンネとタテマエは両立する。
本書で書かれていることも当事者にとっては、ごく一般的な話。
学歴フィルターでもエントリーシートでも・・・。
ブラック企業の視点も同様だろう。
その言葉ばかりが先行しているが、表面的ばかり捉えてしまうと別の方向に向かってしまう。

就活生が本書を読んで、落胆する場面はあるかもしれないが、結果的には安心するんじゃないかな。
書かれている内容で気持ちがラクになるだろう。
僕も「普通でいい」とか「定番ネタ」でいいというのは共感するところ。
そろそろそんな時代になってもいいんじゃないかと思う。

巻末には著者の選ぶ優良企業リスト300社がごく簡単に紹介されている。
僕自身も知らない会社が多い。
地元の企業は100%知っているが、他のエリアは意外と知らない企業が多い。
業界28年のオジサンもその程度なので、就活生が知らないのは当然といえば当然。
興味の沸きそうな企業は更に調べてみるといい。

そこで感じたこと。
300社の紹介がされているが、東海地区の企業がもっと紹介されてもいいんじゃないかと。
これはエゴ?(笑)。
大変失礼しました。

「学生時代に力を入れたこと」を略して「ガクチカ」と呼ばれていることは知らなかった。
こんな立場になっても、まだまだですね。
反省・・・(苦笑)。

映画「恋妻家宮本」

koisai17021

とっても小さな作品である。
歴史が塗り替えられたり、人がドタバタと死ぬわけでもない。
子離れした夫婦が喧嘩したり、仲良くしたりするだけの映画。
大きな事件が起きるわけではない。
ただ、それだけのこと。

といきなり身も蓋もないことを書いているが、それでも観るべき愛らしい映画である。
観終わった後はホンワカするし、一緒に吉田拓郎の曲を歌いたくなってしまう。
シアワセな気分になれるのだ。

もしかしたら高校生が観ても何も響かないかもしれない。
20代のカップルが観ても「ふ~ん」と頷くだけかもしれない。
ちょうど50歳を迎えた僕だからこそ、世代的共感も含め、感じる面が多かったといえる。

阿部寛さん扮する主人公宮本陽平は僕と同じ50歳。
できちゃった婚したので、一人息子は既に自立しているわけだが、
同じような立場にあるのは間違いない。
もしくは数年後、全く同じ環境に遭遇するとも考えられる。
そして、陽平と同じような妄想をしてしまいそうだ。
僕自身、嫁さんの本心がわからず、もしかしたら・・・。
なんて、映画を観ながらオーバーラップさせてしまった(笑)。

きっと世の中の大半のオジサン連中は似たり寄ったりで、
女心とやらを理解しないまま、これまで生きてきたんじゃないだろうか。
単に仲間を求めているだけかな・・・(汗)。
さすがに息子に自分の存在価値を聞くことはないと思うが、
そんな不安な気持ちにさせられるのは分からなくもない。
いかん、いかん、だんだんドツボにはまっていきそうだ。

そんな女心が分からない陽平だが、ステキな人物でもある。
「優しさ」のシーンはグッとくる。
詳しくはネタバレになるので、何も言わない。

そして、何より魅力的なのは妻役の天海祐希さん。
あのサバサバした感じは以前からとても好きだったが、
本作でも余すところなくそれを演じている。
これ以上の配役はないだろう。

彼女だったら、この先ずっと夫婦二人でも仲良くやっていける。
いかん、いかん、そんなことをいうと今が満足していないみたいだ。
そんなことはない。
見捨てられないように、女心とやらをもう少し理解しないといけない。
しっかりと言葉で伝えないといけない。
映画を観て、反省してしまった。

それでも料理教室に通いたい願望が生まれてきたけど・・・(笑)。

ちょっと驚き、キネマ旬報

僕は一年に1回だけキネマ旬報を買っている。
学生時代はちょくちょく買っていたが、
働くようになってからは2月の特別号だけ。
かれこれ30年ちょっと。
過去の雑誌は今でも本棚に並んでいる。

理由は明白。前年のベストテンが発表されるからだ。
昨年はそれなりに映画館で観たが、
それまではあまり足を運んでいなかったので、この号を参考にしながらDVDを借りていた。
少し前にブログで僕のベストテンを発表したように昨年は邦画を結構観たので、
自分の評価と比較しながら読んでいた。

やっぱり随分と異なる。
僕がトップに挙げた「日本で一番悪い奴ら」は箸にも棒にも掛からなかったし、
それなりに期待した「聖の青春」もそれほど評価は高くない。
意外と「君の名は。」は評価が高かった。

僕が参考にするのは評論家が選ぶベストテンよりも読者選出のベストテン。
評論家が選ぶ作品は芸術性が強く、またマニアックな作品が多い。
その点、読者選出はちょっと映画に詳しい素人集団なで(本当かな?)娯楽作品が多く、
僕も何とか追いかけることができる。

kine17021

それがである。
今年は珍しいことに評論家選出も読者選出もベストテン1位、2位が一緒だった。
それも日本映画も外国映画も一緒だった。

こんな偶然は僕が知る限りないのではないか。
調べようと思えば調べられるが、面倒なのでそれはしない。

日本映画は1位「この世界の片隅に」2位「シン・ゴジラ」。
外国映画は1位「ハドソン川の奇跡」2位「キャロル」。
唯一「キャロル」は観ていないが、まあまあ、納得できる順位なんだろう。
3/4の作品を観ていてよかった。
これも何十年ぶりじゃないのかな(笑)。

宮崎祐治氏の映画街路図も面白い。

kine17022

イラストとストレートなキャッチでその映画をすべて語ってしまう。

と定番の情報は載っている今号だが、物足りない面もある。
日本映画やアジア映画、欧米映画の総括が書かれていない。
例年であれば総括する情報(ヒット作や売上高、トレンド)が掲載され、
それを読み映画業界の経済事情を把握するのだが、今年はそれがない。

「君の名は。」効果で書くまでもないのかもしれないが、寂しい。
他にも掲載すべき情報が少ないと思うのは僕だけだろうか。
キネマ旬報をパラパラ読みながら、そんなことを感じてしまった。

今年はどれだけの作品が観れるかどうかは分からないが、
気持ちの向くまま映画を観続けたいと思う。