これからも前向きに 名大社会長ブログ

カテゴリ「本を読む 映画を観る」の記事一覧:

映画「レヴェナント: 蘇えりし者」

reve16041

何度も映画館で予告編を見せつけられた。
何となくストーリーは読めた気がするが、何度となく観るうちに、
またディカプリオがオスカー受賞を報告を聞きた段階で、
これは観なければと思ってしまった。

実に単純なストーリー。
少し前に観た「マネー・ショート 華麗なる大逆転」の難解さとは比較にならない。
言い方は悪いが、ただの復讐劇である。
息子を殺された父親の壮絶な生き様を表しているだけ。

しかし、2時間半を越える上映時間は全く気にならない。
のしかかる映像の迫力が映画館全体を緊張感で覆っていた。
両隣りの席が空いていたから良かったが、
時々「うわっ」とか「お~っ」というようなため息にも似た声が自然と出てしまった。
今年観た映画の中では(まだ10本目ですが)、一番面白かった。
あくまでも現時点で・・・。

ディカプリオ扮するグラスの熊との格闘シーンはCGだと思うが、
それ以外はほぼ自然のあるがままを撮影しているのだろう。
あの極寒の風景を観ているだけで、こちらまで寒気が及んでくる。
魚を鷲掴みにして食べるシーン、
馬の死体を寝袋(?)代わりにするシーン、
熊に引きずられるシーン、
傷だらけの身体を火で消毒するシーン、
目を覆いたくなるが見逃せないシーンが鮮明に記憶に残る。

僕の友人はあの環境だと3分しか生きられないと言っていた。
僕は映画を観ながら、半日しか生き残れないなと感じていた。
少しだけ僕の方が長生き(笑)。

凄まじい生命力だった。
子を想う親はここまで強くなれるのか。
とため息に似た声は完全にため息に変わった。

僕は特にディカプリオが好きなわけではない。
いくつか作品は観ているが、大きく印象が残っていたわけではない。
しかし、本作は違う。
これだけ迫力ある演技は初めて観た。
それだけでも感動もの。

今回はいつもに比べ真面目に書いた映評ブログ。
(そうでもない?)
次回は真面目に書く日本映画に出会ってみたい。

「天才」を読む

kakuei164

これはフィクションなのか、ノンフィクションなのか。
書かれている内容は当然、ノンフィクション。
一人称の文章がどれほど説得力があるかはともかく、
著者・石原慎太郎氏が多くの書籍を参考に書き上げた力作であるのは言うまでもない。
まるで本人が本当に語っているかのごとく進行するその生涯は真実の積み重ねだろう。

しかし、僕はどうしてもフィクションの要素が入り混じっているように思えてしょうがない。
当時の事なんてかすかなニュースでの記憶でしかないし、
政治に対しての関心度が低いのでフィクションと証明するものはひとつもない。
僕が何かの説得材料を持つことはあり得ないが、
感覚的にそう思えてしまった。

ただこれが高度成長期の政治の世界。
何十億のお金をためらいもなく使うのも不思議ではなかったのだ。
それが特別なことではない。そんな時代。
日本の政治史を知る上には貴重な一冊なのかな。
う~む、政治に関心が持てない・・・(苦笑)。

僕の周りでは本書を絶賛する方が結構いた。
その分、期待し過ぎてしまったのかもしれない。
もっとドラマチックな展開を思い描いていた。
それがフィクションとノンフィクションとの違いだろうか。
田中角栄氏のイメージを超えることはなかった。

何の先入観を持たずに読んでいたら、もっと面白く感じたのかもしれない。
だが、あれだけ話題になり増刷されると期待が膨らんでしまう。
それは僕の勝手で誰も悪いことではないな(笑)。

どこが面白かったかといえば、著者による長い後書き。
石原氏の心模様が分かった気がして一番楽しめた。
やはり歳を取ってしまったような気もするし・・・。

個人的にはロッキード事件あたりの事をもっと突っ込んで欲しかった。
でも、その点をクローズアップした書籍は多数あるはず。

今、Amazonで「田中角栄」で検索したら522件も出てきたし・・・(笑)。
それだけ絵にも話題にもなる人物なのだろう。
う~ん、さすがですね・・・。

何ともとりとめのないブログになってしまった。
ネタ不足と言われても仕方ない。

政治家の本はほとんど読まないがたまには手にしてみるものいい。

映画「スポットライト 世紀のスクープ」

 

spot16042

この映画にはいろんな捉え方があると思う。

まずはアカデミー賞作品賞&作品賞を受賞した社会派ドラマで
米国の暗部を映し出した秀作ということ。
実話を基に製作された作品で当時のことは話題になっていたと思うが僕にその記憶はない。
日本で大きなニュースにならなかったのか、単純に僕に関心がなかったのか。
アメリカ同時多発テロばかりがクローズアップされていた時期なので、
見過ごしていた可能性がある。

本作の登場人物がカトリック教会の組織ぐるみの隠ぺいを暴き、大罪を暴いていった。
社会派ドラマなので暗くてセリフについていくのに大変な部分があったが、
同時に爽快感も味わえたのも事実。
ジャーナリストのあるべき姿を感じさせてくれた。

そうなると、最近、正義を貫くジャーナリストの存在ってどうなんだろう。
きっと正義感の強いジャーナリストも沢山いると思うが、
最近の国内のニュースを見ると、
どうでもいいことを懸命にスクープするジャーナリストも少なくない。
映画を観ながら、そんなことも感じてしまった。
映画の感想とは全然違いますね(笑)。

違うことといえばもう一つ感じることがあった。
この映画の背景にあるのは神父による性的虐待事件。
映画の中ではその虐待を犯した神父は相当数(確か90人くらい)になる。
なぜそんなことが起きたのか。
それは日本では起き得ることなのか。
そんなことを考えてしまった。

ここからは素人発言なので、間違っていたらごめんなさい。
そもそも日本は信仰心が薄いため、
キリスト教のように毎週教会に通うような機会はない。
僧侶も神様のような存在ではないし、天皇も神ではない。

最近、「古事記」の勉強をしているが、
日本が誕生する際、登場する神は絶対的な存在とは言い難い。
過ちも犯す。
それがかえって日本人の他の宗教に対しての許容範囲の広さ、懐の深さ、
適切な表現が浮かばないが、うまく適応しているのではないだろうか。

絶対的存在であるべき側と絶対的存在を受け入れる側との構造が
このような事件を生み出したのではないのだろうか。
読む方によっては意味不明かもしれませんね。
すみません・・・。

この映画を観ながら、日本人でよかったと思ってしまった。
これも「古事記」の影響だろうか(笑)。
これも映画と関係なくて、すみません。

先日観た「マネー・ショート」といい、本作品といい、
最近、アメリカのネガティブな真実を描く映画が多いと思う。
それは僕のたまたまかもしれないが、
何かのメッセージと感じるのはただの勘違いだろうか・・・。

「電通とFIFA」を読む

den16041

名作ドラマ『ハゲタカ』のオープニングに
「人生の悲劇は二つしかない。
ひとつは金のない悲劇、もうひとつは金のある悲劇。」

というナレーションが流れる。
『ハゲタカ』は企業買収をテーマにしたドラマなので、本書とは全く関係がない。
しかし、読み終えた時、なぜかこのナレーションが頭に浮かんだ。

ワールドカップが悲劇の方向に向かうとは思わないが、
結局、お金に振り回され、物事が進み、
ある種の悲劇を生んでいることは間違いないのだろう。
サッカーはスポーツでありビジネス。
大きなお金が動かなければ、
メッシやロナウドにあれだけの報酬が支払われることはない。
ここに描かれている電通の役割が大きな貢献をしているとも言える。

だから僕にはどこが正しいのかは分からない。
多額の裏金が重要案件を左右するのは明らかにおかしいが、
すべてを否定することも難しい。
しかし、ハゲタカたちが群がれば、
冒頭の金のある悲劇に繋がるわけだ。

こういった書籍を読むと、
自分にとって正しいビジネスとは何かと考えさせられてしまう。
売上を上げ、利益を残すことは重要だが、人の道を外してはいけない。
当然あるべき姿だが、
こういった事象を見ると正しさが霞んでしまうのも事実。
どう倫理観を自分の中に持ち続けるがが大事なんだろうな。

あとがきにも書いてあるが、著者は天下の電通を敵に回し、
よく書けたものだと感心してしまう。
出版社もそのリスクを抱える勇気も必要か。
それともこの程度では何の影響も与えないってことか・・・。
別世界すぎて、全くイメージできない(苦笑)。

本書の中では元日本代表監督のジーコ氏が数少ないまっとうな人。
全うすぎると世の中を上手く渡れないのを証明しているけど・・・。
何事にもオモテとウラがある。
それを知っておくだけでもいいかもしれない。
そうでもないかな・・・(笑)

シャープ崩壊

sharp164

最近、何かと騒がしい。
先週のセブン&アイ・ホールディングス鈴木会長の突然の引退も世間を騒がせた。
あまりにも強いカリスマは身の引き方も難しい。
さらに難しいのがリーダーシップのあり方。
鈴木会長の実績は言うまでもないが、
後継者を育成すべきリーダーシップはどこまで持ち合わせてたのだろうか。
僕のような未熟な経営者が語るべきではないが、
あの年齢まで続けてしまうのは正しいのだろうか。

企業は人で成り立っている以上、どう組織をまとめるか、どんな人事を行うかが重要。
その中でどうリーダーシップを発揮するかで、会社なんてコロッと変わってしまう。
それは会社の大小は関係ない。
うちのような小さな会社であっても簡単な事なんてひとつもない。

本書もまさにこれに当てはまる。
液晶事業への巨大投資が今のシャープの騒がしさの原因だが、
権力者による人事抗争も大きな要素。
本書を読むまで表面的な人事しか知らなかったが、
こんな道で企業が崩壊していくのだとよく理解できた。

しかし、この手の話って、よく耳にしたり。
ビジネス小説でもありそうだったり・・・。
会社がダメになっていくパターンって、そんなに多くないのだと思う。
今回のシャープの一連の流れもレアなケースではなく、ありがちなケースじゃないのかな。

他人の事は無責任に言えてしまう。
自分が当事者だとそんな客観視はできないだろうけど・・・(苦笑)。

ここにも企業内における権力抗争が描かれているが、大きな問題はリーダーシップのあり方。
強すぎるリーダーは権力を持ち過ぎワンマンに陥る。
弱いリーダーは決断ができず求心力が下がる。
本書にはシャープの歴代の経営者の人間性が書かれているが、
それを読むだけでもリーダーシップ研修を受けているよう。
ケーススタディとしては怖すぎるが・・・。

本書は今年の2月までの事が描かれている。
鴻海(ホンハイ)に買収されるのか、
産業革新機構の出資を受け国有化になるのか、ここで終わる。
結果はニュースの通り。

先週の日経に掲載されていた記事「シャープの選択」は続編なのだろう。
そこには「俺たちは外資系なんだぜ。」なんて皮肉っぽく書かれている。
これから一体どうなるんだろう。

10年後、笑い話として語られるのか、
シャープなんていう会社があったな、なんて懐かしく思われるのか。
僕には分からない。

自分たちがそんな存在にならないよう反面教師としてみるしかない。

「古事記」を読む。

kojiki1604

今回、初めて「古事記」を読んだ。
マンガだけど・・・。
それも漫画家は里中満智子さん。
名前は存じ上げていたが、レディースコミックの大御所。
代表作も全然知らない。
これまで読んだことがないから当然とも言える。

そもそも普段、マンガを読むことはほとんどないので、
自分自身の中でもレアな体験だ。
では、なぜ、今回そうなったのか?。

今日9日に「古事記に学ぶ集い」という勉強会に参加することになったため。
それも主催者として・・・。
名大社のセミナールームを使用し約20名の方にお越し頂き、
勉強会を実施することになったのだ。

僕はこの分野には疎い。半端なく疎い。
日本史において戦国時代や明治維新ならまだ何とかついていけるが、
日本が誕生した頃の話になると何も語ることはできない。

「古事記」や「日本書紀」も日本史で習っただけで、
書物を読んだことは一度もなかった。
日本を知る上で必要だとは感じていたが、手は全く動かなかった。

今年1月に開催した「次世代のファミリービジネスを作る会」の懇親会で、
たまたま八咫烏の話題となり、古事記が取り上げられた。
何かとご一緒する経営者仲間の櫻山氏がその分野に精通しており、
勢いに乗って勉強会を行うことを決めてしまった。

伝説の「ハゲタカ」上映会に続く久々の企画。
伝説のシリーズをご存じない方はこちら・・・。
雨の第1回ハゲタカ鑑賞会
ハゲタカとサキアテジョーグー
ハゲタカとサキアテジョーグー 2
いよいよ最終回!ハゲタカ鑑賞会
出会えてよかった。「ハゲタカ鑑賞会」
ハゲタカ会in名古屋

そのため主催者の一人となる僕も何も知らないでは許されない。
かといって、難解な古事記をこの多忙なタイミングで読む自信もない。
櫻山さんが推薦してくれた分かりやすくハードルが低いこのマンガを読むこととした。

う~ん、自分は日本のことを何も知らない・・・。
これが正直な感想。
神がどう生まれ、天皇がどう生まれ、身近である熱田神宮や伊勢神宮はどんな存在なのか、
これまで考えなかった自分自身が情けない。
そんな感想を持ってしまった。

今日の勉強会は遠くは京都からも参加者があり、関心度の高い強者が熱く語ってくれるだろう。
僕はダンマリで懇親会の設営だけに集中する一日となりそう。
僕が鍛えさせてもらういい機会になればいい(笑)。
と前向きに解釈しておく。

このマンガ「古事記」も1回読んだだけではモノにならない。
勉強会前にもう1回読むことができるかな・・・。

映画「マネー・ショート 華麗なる大逆転」

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遅ればせながら映画館へ行ってきた。
矢継ぎ早に出るセリフ、時代時代を瞬間的に映し出す映像。
単純に楽しめる映画であった。

しかし、笑えるも笑えない映画でもあった。
本作は実話も基に製作され、時代背景はリーマンショック前。
金融工学に踊らされている2000年代後半を描いている。
思い出せば少し前の時代。
この映画を観たほとんどの人がリアルにこの時期を過ごしているはずだ。

もし、この映画で描かれている異常な世界がなければ世の中は大きく変わっていたと思う。
「クレジット・デフォルト・スワップ」という金融取引なんて素人には分かり得ぬ世界だし、
サブプライムローンなんてインチキなシステムもその当時は絶賛されていた。

よくよく考えれば不思議である。
この異常とも思えるウォール街の世界がなければリーマンショックは起きなかっただろうし、
リーマンショックがなければ今の日本経済も全然違う方向に向かっていたかもしれない。

ということは、僕がこうして名大社のトップとして仕事をしていることもなかった。
今、僕が存在するのはリーマンショックの影響で、会社が落ち込んだ理由が大きい。
それがなければ僕が名大社の社長になることはなかっただろう。
となると、不思議な話だが、この作品と僕は遠いところで繋がっていることになる。
笑えるも笑えない映画というのは正しいのではないか・・・。
映画終了後は放心状態に陥ってしまった。
それは大袈裟だけど・・・。

言い方は悪いかもしれないが、この映画に登場する人物はほとんど働いていない。
汗を流して働いていない。
実際は忙しくは働いているが、何かを生み出しているわけでもなく、
お金の動きを入念に見ているだけ。
それで大儲けできること自体がやはりおかしいと考えるべき。
虚業と呼ばれても不思議ではない。
ただ、それは繰り返されることで、僕がその中に巻き込まれることも十分考えられる。
すでにがんじがらめになっているという噂もある。
それはウソです・・・(笑)。

本作を観た時、「ウルフ・オブ・ウォールストリート」を思い出した。
この作品より時代に対する批判が強かったのが救いなのかもしれない。
娯楽映画として楽しめるのも事実だが、
先行きの不安感を抱きたいのであれば観ておく映画だと思う。
なんじゃそれ・・・(笑)。

映画「家族はつらいよ」

kazoku1603

山田洋次監督はいつも変わらない。
いつまで経っても昭和の香りがする。
妻夫木聡くんも蒼井優ちゃんも今風の格好はしているものの昭和を感じさせる。
そのセリフ回し、玄関で必ず誰かがズッコケる、
壁にかけてある額縁が傾く、兄貴が弟にちょっかいを出す・・・。
典型的なパターン。
絶対と言っていいほど家族を描く山田作品には盛り込まれている。

それが観る者に安心感を与えるのかもしれない。
メチャクチャ笑えるわけでも、メチャクチャ泣けるわけでもない。
少しだけ笑えて、少しだけ泣ける。

寅さんにしたって、そんな映画だった。
ノスタルジックな雰囲気が僕らを昭和に戻していく。
今の中高生が観たら、ちょっと昔の映画だと思ってしまうだろう。

これもユーモアなのかもしれないが、映画の所々に山田作品が顔を出す。
東京家族のポスターであったり、寅さんのDVDであったり・・・。
ストーリーとは全く関係ないので、詳細を語っていもいいのだけれど、
それは止めておくことにしたい(笑)。
ユーモア以外の意味はあるのだろうか・・・。

多くの人が言ってるように本作は3年前の「東京家族」とほぼ同じキャスト。
夫婦設定も恋人関係も一緒。
蒼井優ちゃんはいつも自転車に乗っている。
その姿は凛々しくも可愛らしい。
とここまで、いろいろ書いてきたが、映画の内容には一切触れていない。

いつもの全く参考にならない映評ブログになってしまいそうなので、少しだけ触れておこう。
橋爪功さん扮するオヤジさんは昔よくあった家では何もしない父親。
「これじゃあ、捨てられるわ」と無責任に観ていたが、僕の遠い存在ではない。
いつも酔っぱらって帰ってくるし、服も脱ぎっぱなし。
さすがに靴下は裏返しで脱がないが、いや、たまにあるかな・・・
メチャ近い存在かもしれない。

ということは、いずれ僕も嫁さんに捨てられる時が来るかもしれない。
少しだけドキッとした。
僕の周りは同じような親父たちばかりだと思うけど。
あっ、仲間を増やそうとしているな・・・。

超大作でも社会派ドラマでもない。
ドラマのスケールもはっきり言って小さい。
それでもつい観てしまうのは、僕にまだ人間らしさが残っていて、
ホッとする瞬間を求めているのかもしれない。
やっぱりこれでは映画の参考にはならないな(笑)。
松竹ぽくっていいけど・・・。

それにしても山田洋次監督、以前より増して映画を撮っていると思う。
いつまでも精力的に活動してもらいたい。

もうひとつのプロ野球

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書籍を購入する際に選ぶ基準は、好きな作家かどうか、書籍広告のコピー、
知人・友人のおススメ、書店で感覚的に選ぶ、そんなところ。
加えればもう一つ。
毎週に日曜日に掲載されている中日新聞や日経新聞の書評。
こちらも結構参考にしている。

本書は確か中日新聞の書評欄に取り上げられていた。
もし、その紙面を読んでいなければ、この本の存在に気付かなかったし、
購入はしなかっただろう。

元々、スポーツノンフィクションは好きなジャンルである。
最近はめっきりご無沙汰だが、Numberをよく読んでいた頃、その類の書籍を好んで買っていた。
沢木耕太郎氏の影響が強いかと思うが、スポーツノンフィクションの世界にハマった時期があった。
金子達仁、小松成美、戸塚啓あたりも読んでいた。
今でも「中田英寿 鼓動」(小松成美著)は名著だと思う。
息子に読め!読め!と言っても、なかなか読まないけど・・・(苦笑)。

本書もジャンルとしてはスポーツノンフィクションにあたるだろう。
しかし、僕がこれまで読んできた類とは全然異なる。
まずワクワクも興奮もしない。感動もしない。
少しやるせない気持ちになる。これが正直な感想。
こんなことを書いてしまうと読み手のヤル気を失くさせてしまうし、
退屈な書籍と捉えられてしまうだろう。
決してそうではない。
読む価値はある。
無駄に広がった野球の世界を含め、若者の行動特性を含め、学ぶべき点は多い。

スポーツ紙も読まないので実態はサッパリ知らないが、
本書には独立リーグの現状がガッカリするほど克明に書かれている。
それは球団の置かれた環境とその配下にある選手の生き様が描かれている。
こんな世界があるとは想像もしていなかった。
厳密にいえば、想像しようとも思わなかった。
しかし、そこには自らの全てを賭けて戦う選手の姿があった。
こう表現すると聞こえはいいとは思うが、実際のところ、かなり中途半端。
物凄く失礼な言い方になってしまうが(申し訳ありません)、短絡的な行動も多い。

月収3万円でも稼いでいればプロとして認められるのだろうが、自己満足に過ぎない面もある。
国内であろうが海外であろうが関係ない。
そのチャレンジ精神には敬服するが、「努力は裏切らない」とはちょっと異なる。
本書は野球界を取り上げているが、きっとサッカー界でも芸能界でもアートの分野でも
同様のことが言えるだろうし、同じような人たちがどんな世界にもたむろはしているのだろう。

本書では、野球ができる環境を求めて彷徨う人たちを”ノマドリーガー”と呼んでいるが、
そんな人が社会で通用しないかといえば、そうではない。
きちんと自らの方向性と覚悟さえ決めれば、それを受け止めてくれる企業や社会は存在する。
人生の落伍者でもないし、下層社会への転落でもない。
その精神性をうまく生かせば求められる人物像にもなり得る。
そのあたりでは著者の考えとは異なるが、それはあくまでも一般論の話。
著者が間近で見てきた世界の方が説得力はあるだろう。

う~ん、なんだろうな、この切ない感覚。
沢木耕太郎氏の「敗れざる者たち」のちょっと頼りない平成版といったところか・・・。

映画「女が眠る時」

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公開から2日目、休日の昼間に出掛けたのだが、観客は僕を含め5名。
シネコンの中では最も小さい劇場での上映だったが、それでもがら空き状態。
「そんなに話題性がないのか・・・」と映画を観る前は思ったものだが、
鑑賞後は、「それもしょうがない・・・。」とも感じてしまった。

それはこの作品が観るに値しないと言っているわけではなく、
一般受けするにはちょっと難しいということ。
休日に家族とかカップルで観るには確かに相応しくない。
平日のレイトショーあたりの方が観客数は伸びるのではないだろうか。

予備知識を持たずして観たため、どんなストーリー展開になるのか全く読めない。
いつもであれば映画の途中段階でラストシーンを何となくイメージするがそれも全然できない。
一つひとつのシーンが現実なのか夢なのかも映画に入り込んでも理解できない。
観ている側もあっちにもこっちにも引っ張られる。
それが恐ろしさを増幅させ緊張感を与える。

映画の主役はビートたけし氏演じる初老の男だが、
ストーリーはあくまでも作家役の西島秀俊氏が中心。
どうみても主役は西島氏だと思う。
それにしても作家であんな鍛えられた肉体はないよな(笑)。
三島由紀夫くらいじゃないかな・・・。

それはさておき、この作家の微妙な心理状況の描き方は秀逸。
人間の下劣な好奇心を含め巧みに描いている。
だれでもあの環境下に身を置くことも考えられる。
そして、映画は謎だらけ。
最後まで謎だらけ。
明確な回答があると思うが、観客に解を委ねているといっても
言い過ぎではないのではなかろうか。
それが僕の印象。

従って、「面白い!」という人もいれば、「全然わけ分からん!」という人もいるだろう。
あれだけの狭い空間(映画はホテルとその半径5キロくらいしか動かないので・・・)で退屈にもさせず、
数日間の設定で物語を完結させる力はさすがだと思う。
アップの映し方とか細かな照明の具合とかは演出にいい影響を与えていた。

ここまで書いたところでどんな映画かはさっぱり分からないだろう。
それでいい。
興行成績を求める映画ではないと思うので、時間に余裕がありマニアの人が観ればいい。
僕が時間に余裕があり、マニアというわけではないけど・・・。