これからも前向きに 名大社会長ブログ

カテゴリ「本を読む 映画を観る」の記事一覧:

映画「悪人」

悪人 スタンダード・エディション [DVD] 悪人 スタンダード・エディション [DVD]
(2011/03/18)
妻夫木 聡、深津絵里 他

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ようやく観ることができた。
かなり暗いテーマでありながら、昨年の映画賞を総なめにした作品。(だからこそなのかもしれない。)
結局のところ、この映画に本当の悪人は登場しない。それぞれが生きる上での陰と孤独を抱え、それを上手く表現できずに生きている。ちょっとしたズレから、全てが崩れていってしまう。
日々の自分の行動を改めて見つめ直す必要を感じると共に、観ていて辛い思いになる映画であった。
それは一人の生きる者として、親として、辛さを覚えるのであった。子を抱える親の心境は被害者であろうと加害者であろうと同じなのであろう。
この手の映画は20年前であれば、評価は高いが誰も見ない部類にあたると思うが、最近は作品の評価と共に多くの方に観られる。とてもいい事だ。
原作を読んだ事がなければ、脚本を手掛けた吉田修一の存在も知らなかった。監督の李相日もフラガールで知るぐらい。何年に一度しか映画を撮らない(撮れない?)生き方は、何れ周防正行のように、こだわりにこだわった作品を手掛けていくのだろうか。もっと多くの作品を創って、メッセージを発してもらえればいいけど。
ただ、こういった若手監督や作家が活躍する事はいいこと。大好きな日本映画を今後も提供してもらいたい。
映画はとても地味。しかし、全く飽きさせない。俳優の表情もいい。寒々しい景色もいい。観た後は重い気分にもなるが、観ておく必要のある映画だ。

いねむり先生

いねむり先生 いねむり先生
(2011/04/05)
伊集院 静

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1年ぶりに読んだ小説。
以前は伊集院氏の小説も好んで読んでいた事はあったが、30代に入ることから、ほとんど小説自体を読まなくなってしまった。読まなくなってしまったというよりは、読む余裕がなくなったというか、もっとゴールに直結するものを求めていたのが本当のところだろう。
ビジネス書や自己啓発本やノンフィクションの類がそれである。必要な事を多く学んだのは事実だし、今の生活においても、そこが中心なのは変わらない。しかし、それだけではつまらない人間であると、読みとおして感じてしまった。
この本書を読んだ前後に、伊集院氏を取材した「情熱大陸」をYouTubeで観た。
小説というものが、どんな存在であるかを語っていた。人の人生を変えることはできないが、人の悲しみに寄り添う事ができる、それが小説であるということ。彼の使命感を思い知った。オトコだ。
この「いねむり先生」も私小説ながら、その想いが十分伝わる作品。
本書や先日ブログにも書いた「大人の流儀」を読み、「情熱大陸」を観ると、伊集院氏の男としての潔い生き方を感じると共に、弱さや純粋さ、豪快さもビシビシとこっちにやってくる。
と同時に、自分とは正反対な生き方に憧憬を覚える。男の理想の生き方をしているのかもしれない。常に財布の中身を気にしている自分とは大きく異なる。(ああ~情けない・・・)
だから、ファンも多いのだろう。
結局、人は一人では生きられない。誰かに頼る事もあるし、頼られる事もある。助けを求めなくても手を差し出されることもある。その逆も・・・。
その中で生きていくことで、大切なものを理解し行動していく。言葉だけではなく、何気ない態度も含めて。
人との触れ合いの大切さを感じた小説だった。
やっぱり、たまには小説も読まないと・・・。

Facebookで就活に成功する本

Facebookで就活に成功する本-ソーシャルメディアを活用して希望の会社に入る法 Facebookで就活に成功する本-ソーシャルメディアを活用して希望の会社に入る法
(2011/07/28)
高橋暁子

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まずこの本を見つけての正直な感想、「遂にここまできたか・・・」
Facebook関係の書籍も出版数が増えているのは目に付いていたが、就活本もこんな対策本までも出たか・・・。
時間の問題だとは思ってはいたが・・・。
以前は就活マニュアル本を情報収集のため、読むことのあったが、ここ最近はサッパリ。随分、久しぶりに読んだ事になる。
読後の感想だが、ちょっと性急に作りすぎた感がある。Facebookやtwitterの入門とも言えなくもないが、就職活動において対象が曖昧である。
現役の4年生を対象とするなら、ちょっと出版の時期が遅いし、3年生を対象とするなら2013卒の新卒環境をあまり理解していないようにも思える。
それは批判をしているのではなく、それだけfacebookと2013年卒新卒採用は旬な素材であるため、その生かしどころは難しいのではないかと思うからだ。
今後、就職活動でfacebookを活用する学生は確実に増えるだろうし、採用活動に利用する企業や我々同業者も増え、熾烈な争いにもなるだろう。
そう考えると、もうfacebookはアーリーアダプターが使用するメディアとは言えない。必須アイテムにもなってしまうのだ。そうなると本年の成功サンプルがどこまで通用するかはとても難しい判断となる。
しかし、この本書に書かれているような学生へのメリットが大きいのも事実だ。このソーシャルメディアを通して、学生と社会人、学生と学生が繋がる事により、より正確な情報が伝わり、メディアが発する情報だけでない自分にとっての有益な情報を得る事も可能となる。
そこには自分を信頼できる存在として、回りが評価しないといけないが・・・。
学生が就職活動の時期においてだけ、自分自身を演出するのではなく、普段の生活からそれを意識して、いろんな言動に心がけるのは、むしろいいのではないか。
そんな意味では、学生がこの本書からキッカケをつくるのはいい事だ。
就職活動にソーシャルメディアを有効活用するには課題も多いが、その取り組み次第で、プラスにもマイナスにも影響を与えるだろう。

若者はなぜ「就職」できなくなったのか?

若者はなぜ「就職」できなくなったのか?―生き抜くために知っておくべきこと― (どう考える?ニッポンの教育問題) 若者はなぜ「就職」できなくなったのか?―生き抜くために知っておくべきこと― (どう考える?ニッポンの教育問題)
(2011/02/19)
児美川 孝一郎

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著者は現役の大学の教授。
大学教授がキャリアについて語ることは結構あるだろうが、就職のあり方まで突っ込んで著しているこの本書は珍しいのではないか。大学教授が就職について書く場合、企業に対して否定的な表現が一般的には多いかと思うが、この本書では、大学自らの存在も否定しているのが興味深い。
特に大学内におけるキャリア教育の在り方について疑問を投げかけている点は大学関係者のみならず、企業の人事担当者も同様な思いがあるだろう。
確かにここに書かれているようにキャリアデザインは押しつけでは何も解決せず、主体性がなければ単なる自分探しで終わってしまう。それは学生を迷路に導いてしまい、必ずしも有効的なキャリアデザインとは言えないかもしれない。
大学がキャリア教育に力を入れる背景には、日本型の雇用スタイルが崩れたことも理由にある。
終身雇用が当然の時代であれば、新卒で採用した学生を社内で醸成し、企業側の意向に沿う人材に育てる。そこは低賃金であっても、将来のポストと安定した仕事が下支えとなり、下働きとも考えられる割の合わない仕事にも耐えることが可能な時代であった。
僕が社会人デビューした頃もそれを前提にした時代だった。
それが大きく変わったのだ。日本型の雇用が崩れた今、従来通りの普通高校から大学へ進学し、新卒で入社するという当たり前な考え方も本当は当たり前でないのかもしれない。
ましてや大学数が増え、進学率が高まった今は尚更のことだ。
そう考えるとこの本書に書かれている著者のアイデアに賛同することは多い。特に賛同したのは、職業的レリバンスのアイデアだ。僕自身もキャリア教育の実施は大学からでは遅いと考えていた。だからと言って、高校時代に積極的にインターンシップをさせるのも正しい方法とも思えなかった。
大学進学を前提とした高校時代であっても、職業教育課程を選択させ、”職業的な専門の学び方”を学んでおく”構え”を持たせることは有効的な手段だと思う。
そこには振り返る時間もあれば、その道を選択する将来も芽生える。
いい案だと素直に感じた。
僕たちは今の若者の現状を嘆くだけでなく、より良い将来が描ける環境作りを行わなければならない。それは手厚い教育を手取り足取り行うのではなく、本人に自ら考える機会を与え、自律を促す行為のこと。
今の教育体制を大幅に変更するのは至難の業だが、これからの日本が、これからの日本を支える若者が育っていくには、必要なことだとも思う。

たった4ページの人生ドラマ

「日経ビジネス」にしては人間臭いなと感じた特集 旗手たちのアリア。
今回は豚骨ラーメンの一蘭の社長吉冨氏の記事であった。僕よりも2歳年上。同じようにバブル時代を経験しながらも、その修羅場の数は比べ物にならない。
日経ビジネスのたった4ページの企画では伝えきれないと思うが、それでも要所要所を捉え上手くまとめ上げていた。
このボリュームで人生の重さを表現するには限界はあるが、その壮絶な生き様は、へなちょこ経営者の自分には十分刺激的だ。
次から次へと手掛けるビジネス、社員の1/4にあたる30名のいきなりの辞表、一晩で数千万を賭博で使い切る金使いの荒さ、孤独で追い詰められた状態で走り続ける精神性。
自分と近いところと言えば、走り続ける事しかないが、何故か納得してしまう。その生き方には相通じない面が多いが、思いや行動には共感してしまう。
そのリアルさが人生の深さを教えてくれるのだ。こういった読み物を読む度に、僕自身の苦労知らずの人生を痛感し、もっと修羅場経験の必要性を認識する事になる。
(単なるマゾなのか・・・)
数ヶ月前に博多にお邪魔した時も一蘭のラーメンを食す事はなかった。きっとこの記事を事前に読んでいたなら、意地でも食べに行っただろう。
まだまだ知らない事が多すぎる。
今思うと後悔する事実である。

「マイクロソフトで学んだこと・・・」を読む

マイクロソフトで学んだこと、マイクロソフトだからできること。 マイクロソフトで学んだこと、マイクロソフトだからできること。
(2011/05/02)
樋口 泰行

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随分と長いタイトルである。ブログのタイトルとしては収まりきらなかった。
それはともかく、今回、この本書を読んだのはマイクロソフトに興味を持ったからではない。著者の樋口泰行氏に惹かれていたからである。
僕が最もお会いしたい経営者の一人で尊敬するのが、この樋口氏。講演会の場ではお会いするチャンスはあるかもしれないが、ビジネスの場においては遠い存在にしかならないだろう。きっと・・・。
今から6年前に初めての著書「愚直論」を読んで感銘を受け、次作「変人力」でも感動した記憶が強い。目指すべき経営者像だと憧れの存在となったのだ。
その当時の僕は、自分が経営者になることは全く想定しておらず、こんな経営者になれたら素晴らしいなと夢物語的に描いていたに過ぎない。それが通じたわけではないが、今は経営者の端くれであるから、世の中は不思議なもんだ。
これで樋口氏の著書を3冊読んだわけだが、彼の経営に対する姿勢は一貫している。
それが日本ヒューレットパッカードだろうが、ダイエーだろうが、マイクロソフトだろうが同じである。企業のあり方も文化も置かれる環境も全然異なるが、自分と向き合う会社、社員への接し方は全く変わらず、ブレがない。立場や地位に関係なくフラットなのだ。
理系出身でロジックに強く、MBAホルダーでもあるのに、それを感じさせる面がないように思えてならない。
今回の著書も樋口氏の取り組み姿勢が随所に表れている。ほとんど本書の感想は書いていないなあ~。
個人的には「愚直論」「変人力」の方が好きだが、彼の取組みの集大成はこの本書になるのかもしれない。
仕事において大切なのは、マインドだ。
それを教えて頂いたのも樋口氏。やはり一度お話を伺いたい。

スターバックス再生物語

スターバックス再生物語 つながりを育む経営 スターバックス再生物語 つながりを育む経営
(2011/04/19)
ハワード・シュルツ、ジョアンヌ・ゴードン 他

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今から10年以上前に「スターバックス成功物語」を読んで、感動した記憶がある。その当時はまだ名古屋にスタバはなく、オープン前のJR東海島屋に出店するのではと噂が流れている頃であった。
営業の第一線だった僕は、早速、日本法人に「名古屋で是非仕事をさせて欲しい」というような手紙を書き送った。ここで仕事が成立すれば、名古屋地区での感動的なストーリーが展開するのだが、結果は玉砕。仕事には至らなかった。
今は名古屋でもスタバは当たり前の存在となり、あちらこちらに店を構えているけど。
「スターバックス成功物語」を読んで、12、13年が経過。その実情はビジネス誌などで軽く触れる程度だったが、この本書を読んで、改めて知らされることが多かった。
数多くの成功体験を持ち、全世界に名を馳せたといっても、その成長には必ず陰りが来る。
それは傲慢とか、胡坐とかではなく、誠実にビジネスを行ったとしても訪れることなのかもしれない。
傍から見れば順調そうに見えても、知らず知らずのうちに蝕まれてしまう。誰が悪いというわけではないのに・・・。
ここ1か月ぐらいは僕自身も会社のことで悩むことは多かったが、それとオーバーラップさせながら読んだこの本書。だから、思いのほか、この1冊に時間を要してしまったのだ。
結果的、スターバックスも再生を果たし、新たな可能性に向かっている現状があるが、再び、同様の危機が訪れることも考えられる。反面教師として読む必要もあった。
先日、スタバに寄った時に、たまたまサンプルで頂いたVIA。売出し中のインスタントコーヒー。
スタバVIA
まだ机の中に眠っているが、ちょっと気が滅入った時に飲むと元気が出るかもしれない。

映画「マイ・バック・ページ」

昨日、名古屋駅前のミッドランドスクエアシネマのレイトショーで鑑賞。根拠はないがレイトショーで観るには相応しい映画であった。
この映画の原作を読んだのが大学4年生の時。
今から23年も前の話である。卒業間際の時期で社会に対する期待感や不安感をこの原作に投影していたような気がする。その情景を覚えているくらいで、肝心な中味はすっかりと遥か彼方へ飛んでおり記憶にない。
ただ妙に感傷的になっていたと思う。
原作の川本三郎氏はその当時書いていたキネマ旬報のコラムに惹かれ、発売間もない頃に購入し読んだはず。そんな記憶だ。
それから20年以上経過した後の映画化である。何故この時期に映画化されたのか全くを持って不思議であった。今更、全共闘でもないなという思いもあった。
しかし、映画を観て、ワイシャツの下のランニングや、やたらめったらタバコを吸うシーンから時代的ギャップは感じるのだが、その若者が発するフラストレーションは違和感を感じなかった。
(僕自身も70年代はよく知らないが、その時代背景の映像は見事だった。)
時代に対する閉塞感という意味合いにおいては共通するのかもしれない。それだけでもこの時期に映画が公開されたのは意味があるようにも思える。
そして、ラストシーン。
原作を覚えていないので映画の通りであるかは定かでないが、そのシーンが示すものは大きい。
オフィシャルサイトを見ると「大ヒット公開中」と表示されているが、きっとそれはないと思う。いくら人気二大俳優を使おうとも・・・
(失礼!)
だが、時代が繰り返される中で、その時々に発せられるメッセージとして必要な映画だとも思う。

無趣味のすすめ

無趣味のすすめ 拡大決定版 (幻冬舎文庫) 無趣味のすすめ 拡大決定版 (幻冬舎文庫)
(2011/04/12)
村上 龍

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村上龍氏の著書を読むのは実に久しぶり。
中田英寿氏との共著「文体とパスの精度」の以来だろう。小説においては思い出せないくらいだ。
TV番組「カンブリア宮殿」はその時のゲストによって観たりするが、その番組での発言ぐらいしか著者の考え方は理解していない。しかし、作家とは思えないくらいビジネスチックな鋭いコメントには共感を持つことも多かった。
それが、この本書を読む理由とも言える。
TV番組のコメントよりも、本書の文章はよりストレートで世間に対して批判的だ。特に政治に対しては・・・。
きっとここに書かれているほうが本心に近く、TVについては本音の半分くらいなのかもしれない。
エッセイとして読むよりもビジネス書として読んだ方が、読後の心の静まり方は違ってくるだろう。
(エッセイとして読むとストレスが溜まるかもしれない・・・)
「GORTHE」というちょっと軟派なビジネス誌に連載していることを考えるとこの著書のターゲットはバリバリ働くビジネスマンであるのは明らか。
だとすると、これはやはりビジネス書か。
企業経験はない著者であるけれど・・・。
そこも含め、村上龍氏の作品を更に触れてみる必要があるかもしれない。

なぜ、国際教養大学で人材は育つのか

なぜ、国際教養大学で人材は育つのか (祥伝社黄金文庫) なぜ、国際教養大学で人材は育つのか (祥伝社黄金文庫)
(2010/12/09)
中嶋 嶺雄

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経営者のひとりとして、ここの学生を採用したいし、ひとりの親として、子供をこの大学に入学させたい。
自分のことはすっかり棚に上げているが、素直にそう感じたのであった。
(叶わない夢だろうけど・・・)
僕の大学生活は、ほとんど授業に出ず、成績も最低ランクで、クラブとバイトに明け暮れた日々だった。それが自分にとっては貴重であり充実した時間であったのは間違いないが、卒業して10年くらい経った時に、もっと学生時代に勉強すればよかったと後悔したのも事実であった。
(その思いを持ってタイムスリップしたところで、本当に勉強するかは不明だが・・・)
そんな思いを持つようになってからは、何故だか自主的に勉強するようにもなり、キャリアカウンセラーの資格を取ったり、ビジネススクールにも通うようになった。
勉強の必要性に気づくのが遅かったのだ。だから、このレベルなんだけど・・・。
今、メディアで取り上げられることが多くなった国際教養大学ではあるが、その理由はこの本書を読めば明確だ。就職率100%という実績も、それを目的にしていたわけではなく、日本人が目指すべき方向性を導いたから出た結果に過ぎない。
それは今後の大学のあり方だけでなく、今後、日本人がグローバル社会の中でどう戦っていけばいいのかも示唆している。
主体性や自主性を期待する前に必要なのは強制力であり、その強制力の中で鍛えられた後、真の主体性が芽生えるのかもしれない。
24時間365日開放されている図書館は、気軽さや自由さを表すのではなく、学生にとっては逆にプレッシャーを与えているとも言える。
著者である学長の理想を追求した姿には大いに感銘を受けた。
いつかこの大学に訪問し、実際の学生の学習態度、職員の働きぶりを覗き、その素晴らしさを実感してみたい。