時々、大型書店を覗く。
Amazonでは見つけることのできない書籍と出会うことがある。
本書を書棚で見つけた時は「お~」と唸ってしまった。

中身を確認することなく手に取ったが、
一体、他にどんな人が購入するというのか。
ベストセラーになることはない。
売れても数千部だろうか。
しかし、僕にとっては大きな収穫。

メチャ面白かった。
僕が映画に熱狂したのは80年代。
まさにタイトルそのまんま。
高校、大学時代がド真ん中で、頷きながら当時を思い出し読んた。

今ほど情報は溢れていない。
限られた情報を基に周辺状況を探り、映画を観ていた。
本書読み初めて知る内容も多かった。

80年代は今と比べれば自由でおおらかな時代。
映画も監督やプロデューサーの想いと勢いで制作したケースが多い。
思わぬ大ヒットを生み出すこともあれば、
大コケしてプロダクションが倒産するのが普通の時代。

本書は名プロデューサー岡田裕氏を中心に躍動した監督、俳優陣が描かれる。
紹介される作品も「復活の日」から始まり、
「桃尻娘」「遠雷」「家族ゲーム」「お葬式」「コミック雑誌はいらない」など。
最後は「天と地と」で僕が影響を受けた作品ばかり。

根岸吉太郎、金子修介、滝田洋二郎監督などが制作秘話も明かし、
当時では知る由もなかったとんでもない話も知れた。
若手監督がいかににっかつロマンポルノを踏み台にしてやりたい作品を作ってきたか、
アイドル映画で実績を上げどう次に繋げるか、
松田優作が最後までこだわったことは何か、
プロデューサーの視点を中心に映画が語られる。

当初「家族ゲーム」は桑田佳祐を主演にし、
松田優作は次の候補であったことも初めて知った。

コンプラなんて完全無視、お金を引っ張ってきた人が偉い、
そんな時代だった。

情報のない僕らはそこから何かを嗅ぎつけて作品を絞った。
今のようにSNSで評判をチェックし、作品を慎重に選ぶことも少なかった。
「バント・ワゴン効果」も少なかった。
僕自身が評価サイトを気にする面もあり、ちょっと反省。
もっと嗅覚を研ぎ澄ます必要があるかもね。

同世代、いや上も下も映画ファンなら読んでもらいたい。
映画がワクワクする存在なのかが確認できる。
そして「キャバレー日記」とか「ピンクのカーテン」とか、
今ではお目にかかれない作品も観たい。
U-NEXTの会員になるしかないか・・・。

本書を読んで、80年代の魅力を改めて感じることができた。
感謝!