これからも前向きに 名大社会長ブログ

カテゴリ「本を読む 映画を観る」の記事一覧:

キネマ旬報ベストテン2010

先日の新聞に2010年のキネマ旬報ベストテン結果発表が掲載されていた。
毎年、この発表を大変楽しみにしている。学生時代は映画を制作していた事や相当量の映画を観ていた事もあり、一時期は愛読していたこのキネマ旬報。卒業後は映画を観る本数もすっかり減り、キネマ旬報もベストテンの特集号を購入する程度になってしまったが、これが今は僕と映画を結びつける唯一の存在でもあった。
そして、今年の結果はこの通り。
■日本映画
1位 悪人
2位 告白
3位 ヘヴンズ ストーリー
4位 十三人の刺客
5位 川の底からこんにちは
6位 キャタピラー
7位 必死剣鳥刺し
8位 ヒーローショー
9位 海炭市叙景
10位 ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う
■外国映画
1位 息もできない
2位 インビクタス/負けざる者たち
3位 第9地区
4位 白いリボン
5位 ハート・ロッカー
6位 冷たい雨に撃て、約束の銃弾を
7位 クレイジー・ハート
8位 冬の小鳥
9位 スプリング・フィーバー
10位 インセプション
この中で見た映画は、寂しい事に「インビクタス/負けざる者たち」と「ハート・ロッカー」のみ。
日本映画はゼロである。僕はどちらかといえば日本映画ファンであり、いくら本数が減ったとはいえ、これまではベストテンの2~3本は観ていた。
これが何と今年はゼロ。タイトルを聞いても全く知らない映画もある。外国映画なんて半分も知らない。昔は映画に詳しいのが自慢であったが、全くを持って情けない状態である。
「悪人」や「告白」も観たかったが、ドタバタのうちに機会を逸してしまった。これでは感性が衰えるのも無理もない。話題にもついていけない。
仕事を言い訳にするのではなく、今年は秀作といわれる映画をせめて5~6本は観たいと思う。
これも目標のひとつかな。

[実学・経営問答]人を生かす

[実学・経営問答]人を生かす [実学・経営問答]人を生かす
(2008/07/15)
稲盛 和夫

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今や日本航空の会長も務める稲盛和夫氏。外部者として、この旧態的な大企業に関わるのはかなりしんどいであろうと思う。ここに書かれている内容を実践する事も容易ではなさそうだ。
この著書では、稲盛氏が主宰する盛和塾の塾生となる経営者の悩みに対してアドバイスする形式を取っている。そのためか、一般的なビジネス書に比べるとかなり読みやすい。
ここでは主に二代目、三代目にあたる経営者のそれぞれの会社で業務を遂行する上で発生する悩みや課題に対して、自己の経験から辿りついた哲学や考え方を指南している。
評論家的やコンサルタント的に回答しているわけではないので、非常に説得力がある。
京セラの経営理念にもなる「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」が、哲学の基本となっているため、全ての回答にブレがない。その哲学とは心の座標軸を言い、これがあるかないかが最終的な決断の決め手になるという。
「心の座標軸」。
奥の深い言葉である実感すると同時に、自分の座標軸はどこにあるのか、明確にできていない自分の未熟さを感じることとなる。悩み抜く経験を更に積み重ねないとその領域には届かないという事であろう。
ここでは、最後にリーダーの役割10か条が著されている。
1.事業の目的意義を明確にし、部下に指し示すこと
2.具体的な目標を掲げ、部下を巻き込みながら計画を立てる
3.強烈な願望を心に抱き続ける
4.誰にも負けない努力をする
5.強い意志を持つ
6.立派な人格を持つ
7.どんな困難に遭遇しようとも、決してあきらめない
8.部下に愛情を持って接する
9.部下をモチベートし続ける
10.常に創造的でなければならない

手帳にも貼り付けて、常に意識する必要もありそうな10か条である。

就活エリートの迷走

就活エリートの迷走 (ちくま新書) 就活エリートの迷走 (ちくま新書)
(2010/12/08)
豊田 義博

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著者はリクルート出身。リクルートブックの編集長を経て、リクルートワークス研究所の主任研究員を務める。
ある意味、いまの就職活動の流れを作ってきた一人だ。
この著書を読む限り、これまでの自らの事業を否定し自戒しているようにも思われる。
就職活動がインターネット中心の時代となって、10年ほど経過する。学生にとってのメリットとしては、容易に情報収集ができ、容易に興味ある企業へ応募ができる。
学生に以前のせっせとハガキを書く時代の事を話をしてもピンとはこないようだし、何故そんな面倒な事を・・・と思うくらいである。
その容易さがもたらしたものは効率的な活動とともに、企業との重要な接点や魅力の理解度を不足にさせている面も多いと思う。これが、就職してからのその後に影響しているようだ。
最近は就職戦線や環境の弊害ばかりがクローズアップされるが、ここではその先にある就職戦線勝ち組、すなわち就活エリートの苦悩を描いている。就活エリートが第一希望の企業に入社したものの、その企業でヤリガイを見出せず離職する姿は想像以上に多いという。
いくつかの原因が考えれるが、その一つに自己分析やエントリーシート、面接のあり方もあるようだ。
「やりたいこと」を追求するばかりに、会社には入ってからのギャップが大きな理由なのだ。大企業であろうと中小企業であろうと自分のやりたい仕事にありつけるケースはほとんどないのが現実である。
全ての新入社員が希望する部署に配属されるのはあり得ない話だし、それを理解して入社するのが当然だと思うが、昨今はそうでもないようなのだ。
自己分析で「やりたい事」をあぶり出し、面接でも「やりたい事」をトコトン突き詰めて答えを出す。それは何十年も働くビジネスマンからみても理想の姿になっている。それを追い求め、社会に出て挫折するのだ。
理想を追い求めるのは大切だが、理想の仕事ができる環境なんて、すぐには与えられる事はない。
こう考えると、我々就職情報に携わる者は、自分達のコンテンツの提供や情報の伝え方も考え直さねばならない。それがクリアされれば上手くいくという単純な問題でないのは承知の上でも情報のあり方を見直さなければならない。
今すぐ取りかかれる事として、少なくとも自社の採用については「やりたい事」のギャップを正直に話し、その中で仕事を学び、キャリアを積む重要性を伝える事だ。
「最近の若い奴は・・・」と言うばかりでなく、仕事の本質、無駄とも思える行動の価値をしっかり理解させるのも我々大人の役割と感じた1冊であった。

20歳のときに知っておきたかったこと

20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義 20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義
(2010/03/10)
ティナ・シーリグ

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名大社の年末年始休暇の課題図書である。
率先して一番に読んだ。
勇気を与えてくれる一冊。自分次第でどんなチャレンジでも出来るし、可能性も持てる。それは心持次第で大きく変わるのだ。
どうしても厳しい環境下の日常を送っていると自らのプランやアクションに消極的になることも多い。
人にはピンチをチャンスに代えろと言えても、自分の中では保守的だったりする事もある。それを上手い具合に優しい言葉で否定してくれ、前へ進むために背中を押してくれる。
成功と失敗、革新と保守、基本的に人はその両方を兼ね備え、その時々の状況や心境でその比重が変わってくるように思う。
常に希望を持ち続け、決意し続けるのは難しい事なのだ。しかし、それは相手がある難しさではなく、自分の中だけに存在するもの。となると、その難しさは自分の中の壁ということ。

「まず必要なのは、問題は必ず解決できる、という気概を持つこと」
「たったひとつだけルールがあるとすれば、あなた自身がエネルギーと想像力を解放してあげればどこでも行ける」
「訪れた機会を歓迎をする、チャンスが舞い込んだら最大限に活かす、身の回りの出来事に目を凝らす、できるだけ多くの人たちとつきあう、そして、そのつきあいをできるだけいい方向で活かす」
「光り輝くチャンスを逃すな」
「光り輝くとは、いつでも期待以上のことをすると決意することです」

こんな文章で勇気を与えてくれる。
そう、まずは個人として光り輝かなくてはならない。そうすれば、自ずと回りも光り輝いてくる。まだまだ閉塞感の中に縛られ、一定の枠内でしか発想ができない自分がいるのも事実。
しかし、いくつになっても変えられると信じなければならない。
全く話はずれるが、本日、NHK「日本の、これから 就職難をぶっとばせ!」に出ていた学生らにも読んでもらいたい。

自分らしいキャリアの作り方

自分らしいキャリアのつくり方 (PHP新書) 自分らしいキャリアのつくり方 (PHP新書)
(2009/08/18)
高橋 俊介

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著者の高橋俊介氏は「人材マネジメント論」を読んで以来、ファンというレベルではないが、ちょくちょく作品を拝読している方。
自分の仕事に対して向き合う時や仕事の価値観について考える時など、参考にさせてもらうことが多い。
今回の著書も自分自身の勉強にもなった。また、学生や若年者にキャリアの捉え方を話す場合にも役立ちそうである。
以前、拝聴した講演でも同じような話があったのだが、キャリアアップしていく段階で、無駄のない合理的なキャリア形成などないということをここでも強調されていた。
キャリアは目標で作られるものでなく、習慣で作られるのいう考えにも賛成だ。人との出会いや世界経済の動向など、様々な要素が複雑に影響し合って、作られるのがキャリアだという。
自分を例に例えるならば、まさにその通り。今の自分がこのような場で存在するのも、日々の習慣であり、多くの人との出会いであり、目の前の景気・不景気を経験してきたからこそだ。
それが正しいかどうかはともかく、スキルアップ=未来への目標設定=キャリアという多くの方が抱く考えに違う観点を入れなければならない。
特に就職活動における学生にはそのような点が見られがちだし、やりたいことを決めないといけない強迫観念が、学生を縛りつけているのかもしれない。
著者が書かれているように、やりたいことを絞るのではなく、やりたくないことを減らし、いろいろと経験しながらやりたいことはこれだったのかと気づくのが、理想的なキャリアの築き方なのだろう。
そんなことを今の学生や若年層に伝えていくのも僕らの仕事になるのであろう。
今回の「自分らしいキャリアの作り方」は、BOOKOFFで購入した。暇があるとぶらっと立ち寄るのだ。
また、これまで自分が新刊で購入した本をBOOKOFFに売ることも多い。中には、赤線を引きまくった本も多く、それは現金化できない悲しい取り扱いを受けていた。(当たり前だが・・・)
今回の著書、なんとページのある部分が所どころきれいに裁断されていた。見た目には全くわからない。きっと検品する担当も気づかなかったのだろう。
「やられた~」という思いと同時に、どんないいことが書いてあるのだろうと気になって仕方がない。
勉強にはなったが、中途半端な思いも残った1冊であった。

知的財産法入門

知的財産法入門 (岩波新書) 知的財産法入門 (岩波新書)
(2010/09/18)
小泉 直樹

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前社長に紹介いただいた書籍である。この手の書籍は誰かの紹介なり、推薦がないと手に取ることがないだろう。現実の僕の視野の範囲では、中々入ってこない。
まだまだ未熟な面が多いということだ。
知的財産法という言葉は聞いたことがあっても、普段の生活の中では馴染みがないのが事実ではないだろうか。しかし、馴染みがないからといって放っておけないのが、この知財法になるのではないだろうか。
知財法の範囲は、特許法、商標法・不正競争防止法、意匠法、著作権法であり、主に企業のテクノロジーやブランド、デザインなどの保護するための法律である。
名大社のような中小企業では、世の中を驚かせるような技術的な製品やサービスを生み出すことは考えにくいが、仮にそんなことが偶然の交通事故にでもあったのならば、すぐにこの知財法を意識せねばならないだろう。
世の中を驚かさなくとも、我々が提供するサービスには、常に著作権が付いて回ることもあり、最低限の知識も身につける必要は重々承知している。
この著書は、基本的な考え方を含め、それについての事例が分かりやすく書かれている。
しかし、定量的な物の見方のように、○×で簡単に判断できる内容ではないため、実際に何らかの事例が起こらないとその適応の範囲も難しいのではないだろうか。
幸いにして、これまで著作権を始め商標権に関するトラブルはないが、だから安心というわけでもなく、Webがどんどん進化すると、過去の事例さえも全く参考にならないということも多くなるだろう。
入門書とはいえ、1度読んだだけでは全てを理解するのは難しい。
この手の分野は眠たくはなってしまうが、色んなタイミングで広げる必要のある著書である。

くたばれ!就職氷河期

くたばれ!就職氷河期  角川SSC新書  就活格差を乗り越えろ (角川SSC新書) くたばれ!就職氷河期 角川SSC新書 就活格差を乗り越えろ (角川SSC新書)
(2010/09/10)
常見 陽平

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最近、就職活動に関わるニュースが飛び交う事が多い。
現4年生の就職事情、新卒一括採用、大手商社の採用選考時期の変更など・・・。どちらかといえば、ネガティブな情報が多い。そんな状況を察してか、今回の常見氏の著書は、現状の就職戦線の問題点をクローズアップさせながら、その対策方法について書かれている。
新書の帯には「これを読めば、納得する、内定が取れる」と大げさに表現されているが、この著書は単に学生やその親を読者の対象としているのではなく、就職に関わる全ての者が対象となるだろう。
それは、就職情報会社と呼ばれる我々も含まれ、その我々の業界に対しても、ストレートに厳しい意見も述べられている。反省すべき点は真摯に反省する。しかし、それでも我々がやらなければならない事、地域に特化した名大社がやるべき事も大いにあると、改めて痛感したのも事実だ。
今回の著書では、6月に拝聴したHRプロのセミナーから引用されている面もあり、いい振り返りと同時に、その時の3氏の熱い想いを思い出した。
いくつかのテーマに沿って構成されている著書の中に「こんな学生は要らない」と6つの要素が書かれている。
1.社会貢献志向、エコ大好き人間
2.単なるファン
3.福利厚生をやたらと気にする人
4.安定を期待する学生
5.配属先や部署や勤務地に異常にこだわる学生
6.研修制度についてしつこく聞く学生
これを読んでうなずく採用担当者は多いだろう。僕自身も同感だ。
学生はこの6つの要素を参考にすべきだが、気をつけなければならないのは、この文章の言葉じりを単純に受け止めるのではなく、そこに隠されている本質をしっかりと掴んでほしい。
この言葉通りに行動するだけでは、ただのマニュアル人間にすぎず、もっと先にある大切なものは見えてこない。
これ以外にも、これから就職活動を行う学生が参考にするべき内容が多く表現されているが、僕自身が常見氏が学生に対して本当に送りたかったのは、
「就活だけで人生のゴールは決まらない。環境の変化を意識しつつ、人生のゴールも考えつつ、眼の前の事に没頭しながらも、息抜きしながら生き抜くことが大切である。」
というメッセージではないだろうかと感じた。あくまでも個人的な感じ方ではあるが・・・。
就職活動は確かに重要である。今後の人生を左右する面も大きいかもしれない。でも、この行動は、将来においてのステップに過ぎないとも思うのだ。
そして、最後のあとがきには、パフの釘崎氏の他にも、キーカンパニーの下薗氏が感謝する人の名前で紹介されていた。普段、接している方が紹介されているのは、なぜか自分のことのようにうれしかった。

堀江貴文氏「拝金」

拝金 拝金
(2010/06/17)
堀江 貴文

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普段、小説を読むことはほとんどない。
最近で言えば、「レッドゾーン」(真山仁著)以来である。それも「ハゲタカ」好きの流れで読んだまでの話だ。
リアルな世界ではそれほど話題になっていないように思えるが、インターネット上ではかなりの話題になっていたため、手に取ったこの著書。それも堀江氏らしいのかもしれない。
一人のフリーターがオッサンと呼ばれる出資者と出会い、ゲーム事業を成功させ、株式上場、M&Aを繰り返し、時価総額を上げ、プロ野球球団買収、TV局へのTOBと自らの行動とオーバーラップさせるよなストーリーが展開していく。
フィクションとノンフィクションとの狭間で、実在の人物をイメージさせながら、痛烈にメディアを批判する姿は、堀江氏のしたたかさと強さを感じさせた。決して権力に屈しない底力も持っているのだろう。
著者が第一線で活躍している頃に「100億稼ぐ仕事術」を読んだ時は、意外なほどの堅実さを感じたため、おそらく実情とは異なる姿をメディアは映していたのだろう。それに対しての復讐とも思えなくはない。
この著書を読んで、なぜか10年以上前に読んだ「アイドル、冴木洋子の生涯」(松野大介著)を思い出した。その理由はわからない。多分、フィクションの中にリアルを感じさせる面が共通していたのだと思う。
ブログやtwitterを通して、堀江氏は自らの考えを堂々と語っている。メディアの力を利用するのではなく、より自分を正しく伝えてくれる媒体を活用しながら、今後も情報を発信していくのではないか。
いずれにせよ、自分とはかけ離れた能力を持つ人物には違いない。彼の今後の発言や行動も気になってしまう。ただの野次馬なのかもしれないが・・・

「若者のための仕事論」を読んで

負けてたまるか! 若者のための仕事論 (朝日新書) 負けてたまるか! 若者のための仕事論 (朝日新書)
(2010/04/13)
丹羽 宇一郎

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この著書のアマゾンの書評を読むと賛否両論の意見が飛び交っている。若い読者からは、時代が違うとか、その働き方は古臭いとか否定的な意見が多かったように思う。
僕は、この著書の内容に基本的には賛成だ。
「まずはアリのように泥まみれに働け!」などの過激な言葉が、ワークライフバランスが叫ばれる昨今では、反発を招くのだろう。
しかし、若者が社会人として一人前になる過程においては、それくらいの気概が必要だろうと思う。結果的に無駄に思えることもガムシャラに取り組む時期がある期間あってもいいのではないだろうか。
僕自身もそんな期間を過ごしてきたからこそ、今があることも否定できないし、著者も自らの経験から学んだ成果を、今の若者に対してメッセージとして発していると言えるからだ。
そして、人は仕事して磨かれると同時に読書でも磨かれると書かれている。僕は、最近でこそ、コンスタントにいろんなジャンルの本を読むようにしているが、若い頃は小説かノンフィクションくらいであった。
それは今となっては大きな反省となっている。どこまで吸収できるかは別として、もっと多くのジャンルの書物を読んでいれば、今よりはもっとマシな大人になっていたのではないかと思う。
自戒を込めて、著者同様、読書もお勧めしたい。
著者の丹羽氏は名古屋市出身。それも中川区。現在、僕の住まいからから車で5分程度の場所だ。もちろん実家にお邪魔したこともなければ、知り合いでもない。
それが理由でもないが、尊敬する経営者の一人でもある。その歯に衣着せぬ発言は、聞いていて気持ちがいい。それも、自分自身の軸がぶれていないので、違和感もない。
いつか機会があれば、握手くらいさせて頂きたいと願っている。
それはともかく、これから立派な社会人を目指す方には、精神論な要素も含め、読んで欲しい。就職活動中もしくは終えた学生も社会へのイメージも抱ける著書だとと思う。

ビジョナリーカンパニー3 衰退の五段階

ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階 ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階
(2010/07/22)
ジェームズ・C・コリンズ(James C. Collins)

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飛躍し将来が約束されたかに思える企業も、いつの日か衰退の時が訪れる。それを分析に基づいて教えてくれる良書だ。
著者は企業の衰退の実態を調査し、調査結果として五段階の枠組みで表現している。
1.成功から生まれる傲慢
2.規律なき拡大路線
3.リスクと問題の否認
4.一発逆転策の追及
5.屈服と凡庸な企業への転落か消滅

衰退の道はどんな企業にも共通する一定の順序があるようだ。
今回の著書では、世界的有名企業でありながら衰退し、今は存在すらなくなってしまった企業から何とか回復の兆しが見え始めている企業までを取り上げ、その衰退の過程における問題点をクローズアップしている。
世界でも名を馳せた経営者であり、時代の寵児として取り上げらた方が、衰退の一途を辿る時には、同じようなプロセスでバットサイクルを繰り返す実態を目にすると一つ一つのジャッジの難しさやメンタリティの維持の大変さを痛感する。
そして、どんな優秀な人物でも過去の成功体験を捨てる事は、自己を否定とつながり、その個人的な見解を優先してしまう現実がある。気がつくと企業として致命的なダメージを受ける事も多いようだ。
積極的な拡大は、時にはメディアにも賞賛され、コンサルタントは成長戦略を描き提案し、企業としては正しい選択として認識するのだろうが、後にそれが無理な拡大での失敗とわかり、大きな損失を抱える時には手のひらを返したように非難の対象となる。当然のようにメディアやコンサルは責任は取ってくれない。
偉大なる経営者と称えられた人物は、いとも簡単に解任される。
ここに描かれる企業の多くは欧米中心のため、ドラスチックな人事は当たり前なのかもしれないが、一つの失敗で簡単に切り捨てられる背景があるとすると、ここに書かれている一発逆転策の追求をより求めてしまうのかもしれないとこの著書を読みながら感じた。
ただここに書かれている内容は他人事として捉えるのではなく、自分自身の事と置き換えて考える事も必要である。
そして、全体を通して、ドラッカーの著書に書かれている企業のあり方に近いのではないかと感じた。いつの時代も企業のあるべき本質は変わらないのかもしれない。
この著書の締めくくりには、こんな事が書かれてあった。
永続する偉大な組織は、基本的な部分で二面性を持っている。
時代を超える基本的価値観と基本的な存在理由を持ち、この基本理念は変わらない。
他方では、変化と進歩を常に求めており、創造性を発揮したいという強い欲求がときにBHAG(組織の命運を賭けた大胆な目標)の形であらわれている。
偉大な組織は、基本的価値観(組織にとって不変の主義)と戦略や慣行(世界の変化に対応して絶えず変えていくもの)とはっきり区別している。

これは世界的な大企業であろうと名古屋のちっぽけな企業であろうと何ら変わらない。
そう思うと、この締めくくりの文章は、その時々の自分の置かれた状況でつぶやく必要がありそうだ。