これからも前向きに 名大社会長ブログ

カテゴリ「本を読む 映画を観る」の記事一覧:

「日本を壊す政商」を読む

paso1512

日経新聞の書籍広告を見て、ミーハー的に購入してしまった。
書籍の帯には
”安倍総理の政策ブレーンにして、ASKAと愛人が出会った秘密パーティの主催者・・・。”
とやや過激に書かれている。

実際にパソナの南部さんには一度もお会いしたことなければ、雲の上の存在でしかない。
パソナグループの社長との面識はあっても、そのグループと代表とは別次元の話。
本書に書かれていることがすべて真実かどうかはわからない。
確かに国の助成金をことごとく入札で落とし、ごっそり持っていく手腕はここに描かれている背景がある
と想像できるが、まるでドラマのような世界は本当に実現するのだろうか。

それは半径10km以内で世の中を見ている僕の視野の狭さを物語っているだけかもしれないが、
実際、全く他人事の世界でしかない。
著者は南部氏をどちらかと言えば否定的に書いているが、トップ企業の座を確保しようとすれば、
少なからずこのような政治的な才能が求められるのであろう。
その時点で僕の描ける事業領域は決まってしまっているのかも・・・。
う~ん、それは仕方のないことですね、残念だけど(苦笑)。

しかし、一方でこの手の書籍を読むことで、事業を推進していくためには経営手腕だけでなく、
別の能力を求められる必要があるとも感じる。
それはここに書かれているように秘密の場所でパーティーを繰り返すとか、
落選した議員を囲って恩義を売るということではない。

人とのネットワークを大切にするにしても、もっと打算的な付き合い方をしなければならない。
お金の使い方をしなければならないということ。
その点でいえば僕は全くの未熟者で、もっと計算高くならなければならない。
実現可能性が高いかはともかく、もっといろんな橋を渡れという話ですね。
円頓寺あたりに秘密のパーティールームでも作ってみるかな。
冗談はともかく、政・官・民の間にはそんなことがうごめき合っているみたいだ。

誰しも表の顔と裏の顔を持っているのかもしれない。
自分がその存在になれないとしても、それで世の中が成り立っていることの現実を理解し、
その中で戦えるだけの人間力を養うことは必要ありそうだ。

いい意味でも悪い意味でも参考になった一冊。
勉強させてもらいました。

映画「杉原千畝 スギハラチウネ」

sugi1512

杉原千畝氏の存在を少なくとも30歳くらいまでは知らなかった。
それは知識不足もあるだろうが、
僕が日本史を学んでいた時代には登場したことはなかったはずだ。
見方を変えれば、ルールを破り自分勝手な行動をした官僚。
認められるべき存在ではないだろう。

きっと海外からの称賛の声にやむを得ず、
その実績を称えた面もあるのではないだろうか。
もう周知のことかもしれなけど・・・。
本来であれば、もっと早い段階で映画化されてもよさそうなものだが、
そんな理由もあるのかと素人ながら思ってしまう。

僕が映画を観た理由も単純。
あえて国の方針に異を唱え、
自らの考えを通した方の生き様はどんなもんだろうという興味。
その時代の日本の置かれた状況を確認する意味もあるが、それほど深い理由はなかった。
観た感想はなるほど~というもの。
観ておくべき映画だとは思う。

150分という長さは妥当だが、
すべてを描き切れたかと言えばそうではないようにも思える。
もう少し人物像を落とし込んでいけると、
よりその想いがこちらにも伝わったのではないだろうか。
そのあたりはもったいない。
せっかくなら日本人監督にこの映画を撮ってもらいたかった。
日本と関わりの深いチェリン・グラック監督の方が
客観的な視点を持ち合わせているかもしれないが・・・。

流れる音楽はどうも聞き覚えがあるように感じた。
ドラマ「ハゲタカ」の音楽に似ていたのだ。エンドロールで理由が明らかになった。
共に佐藤直紀氏が担当されている。近い音楽になることは当然こと。
これもよかった。久々に「ハゲタカ」が観たくなった。

そして、奥さん役の小雪。
役作りなのか、子供を産んだせいなのか、
以前より、ちょっとふっくらしたような・・・。
余計なお世話ですね(笑)。

まだまだ日本映画には題材にすべき実話は多い。
映画を通して、もっと勉強したいものだ。

「新しい道徳」を読む

doutoku1511

もしかしたら物事の本質をついているのかもしれない。
普段、何げなく生活し良し悪しを考えずに過ごすことも多い。
それはいい事、悪い事を考えないのではなく、
これまでの常識に沿った行動をしているだけで、自分なりの正解は持っている。
それは過去から植えつけられた価値観でもあるかもしれない。

自分自身でも自分の中にある価値観が古いと感じたり、他人と異なると思うことは、しばしば。
今のところ、それを押し付けるような行為はしないし、否定するような発言もしない。
厳密にいえば、酔っぱらって議論する時は引っ張られている気はする。
それで何度かケンカしたのも事実だし・・・。
やっぱ、ありますね(苦笑)。
そこも含めて道徳と言えるのかもしれない。

本書を読んで改めて思ったのは、「道徳」と「良心」はどう違うか、
「道徳」と「倫理」はどう違うかということ。
「良心」や「倫理」は道徳に当てはまるかもしれないが逆はどうだろうか。
道徳には個人差はないように思われるが、良心や倫理は個人に委ねることは大きいように思う。
だとしたら、どちらを大切にしていけばいいのだろうか。
日常ではそんなことを考える機会はまるでないが、本書のおかげでそれを意識することができた。

やはり北野武氏は天才なのか。
デジタルやインターネットに対する考え方には奥の深さを感じた。
ネットは個人を自由にするものではなく、国全体や地球規模で管理されること、
ネットで手軽に知識を得てもそれは手軽な知識でしかないということ。
ウィキペディアで簡単に調べるが、すぐに忘れてしまう僕自身もそう。
深さがない。反省である。

結局は自分自身の考え、自分自身で正しい答えを出していかないと
最後の最後に自己を確立することはできない。
本書でそんなことを教えてもらったような気がした。

No.1トヨタ7つの仕事魂

toyota15111

著者の志賀内さんはやはりトヨタの回し者ではないかと思ってしまう(笑)。
前作「レクサス星が丘の奇跡」もレクサス星が丘店のいい宣伝になっていたし・・・。
あれのせいで僕もお店の前を通る時はかなり気にしているし、
レクサスを買おうかなんて本気で考えたりした。
実際にそんな読者もいたんじゃないだろうか。

本書ではトヨタ・スピリッツともいうべき5章7つのエピソードについて書かれている。
僕らが普段の生活では知る由もない開発の裏側だったり、
新規事業への挑戦だったり、顧客満足を追求する営業手法だったりと、
トヨタの魅力あふれる苦労話があちこちに溢れている。

カーナビが1980年代後半からあったなんて全然知らなかった。
その画像は今から思えばちゃっちくて仕方ないが、
世の中に初めて何かを生み出す瞬間はきっとそんなことだろうと思わせる。

その技術があったからこそ、より便利で使いやすい製品へと進化していく。
同じようなことをドラマ「下町ロケット」で佃社長が裁判所で訴えかけていたような気がするな(笑)。
今話題になっている「MIRAI」にしても超文系人間の僕には理解しがたい面は多いが、
その情熱だけはヒシヒシと伝わってくるし、仕事への魂を感じる。
(タイトルそのまんまですね・・・笑)。

そんな中で僕が一番響いたのはレクサスNo.1セールスマンの章。
営業出身だから共感できる面も多いし、自社へオーバーラップさせることもできる。
ここに書かれてあることを早速社内にも取り入れようとも考えている。
目新しいことが書かれているわけではないが、
「当たり前」のことを徹底して行うことが顧客満足に繋がり、結果として売り上げも伸びていく。
凡事徹底なんだよね。
もっと足元を見て全員が仕事をしていかないといけないことを痛感。
僕がそれだけではダメだけどね(笑)。

僕が本書の中でもう一つ響いたこと。
三年に一度、全社員を海外旅行に連れて行ったんですが、
たまたま、その年にリーマンショックが起きてしまいました。
六割減産です。部長会で「海外旅行は取りやめにしよう」と決まって報告がありました。
でも、私は「行ってきなさい」と言いました。
すると社員は安心するんですね。みんなが不安になっている時、大きく構えること。
これも愛社精神を生むことに繋がります。

経営者は器が大きくなければならない。
いざというとき覚悟をもって、それでも余裕な顔をして臨まなければならない。
僕もそんなことを身につけなければならない。
そんなことを感じた一文。

メイダイシャ・スピリッツを持って、臨んでいこうじゃないか・・・。

鈴木さんにも分かるネットの未来

スズ15101

現カドカワ株式会社の代表である川上量生氏の著書。
川上氏と言えばニコニコ動画を運営するドワンゴの創立者で、
ちょっと前まで株式会社KADOKA・DOWANGOの代表取締役会長。
この時点でかなりややこやしいし、会社が変化するのが早すぎる(笑)。
一体、今は何屋さんになるんだろうか・・・。

本書が発行されたのが今年6月でまだ4か月しか経っていないんだけど、
会社名も肩書も変わっている状態。
目まぐるしく変化する中で、この社長は毎日どんな業務をしているんだろう。
きちんと休みは取れるのだろうか。
大きなお世話ですね(笑)。

スタジオジブリの鈴木さんに向けて書かれた本書だが、鈴木さんは全く登場しない。
これも販売戦略と捉えればいいだけかもしれないが、そのあたりの視点も含め新しいのかも。
インターネットの現実と将来について分かりやすく、時に難しく書かれているが、納得できる点は多い。
プラットフォームがあってのコンテンツなのか、コンテンツあってのプラットフォームなのか、
普段僕らが何も考えずに使用するサイトやSNSも、
この点を明確に押さえたものが勝者へと向かうのは間違いなさそうだ。

先日観た「マイ・インターン」の主人公ベンは電話帳を作る会社のかつて幹部だったが、
映画の中ではもう存在しない会社になっている。
ネット社会が進化すれば、いずれ印刷物のタウンページも消滅してしまうのか。
世の中から紙媒体が無くなることはないと思うが、
その特徴を活かせなければ淘汰される時代は遅かれ早かれだ。
ネットが台頭してきた時代から、紙媒体(印刷物)の必要性については議論されてきた。
現実は減少すると言われながらも減らなかったわけだが、それもまた変わっていくだろう。

僕は相変わらず紙の本を読んでいるわけだが、著者にいわせればそれも時間の問題。
電子書籍を売るための書店の存在も遠くない将来。
TVが果たす役割も将来的には大きく変わるとも予測している。

著者は「今後のネットのコンテンツビジネスの成否は、コンテンツをプラットフォーム化するための
プラットフォームの進化にかかっているというのが僕の考えです。」という。
じっくり考えないと何が言いたいのか理解できない(汗)。

全く例えにならないが、僕のブログの1日のPVは1000~1500。
これが多いか少ないかは不明だが、スタッフブログの数倍あるのは事実。
大きな理由としては実績年数の違いとストックされている量の違い。
それだけでもPVは大きく異なる。
だからと言ってこれが成功しているとは限らない。
ブログの円頓寺シリーズのファンは多いが、円頓寺商店街の売上が上がったとは聞いたことがない。
そんなもんだ(笑)。
な~んとなく動いてるに過ぎないのだ。
しかし、その積み重ねが重要じゃないかと思う点もある。

僕らは常に「ネット」の状態を見ながら、「リアル」を考えねばならない。
ネットがあってのリアルとか、リアルがあってのネットとか、どっちが先だみたいな話はあるが、
それとは別に今、ネットで起きている事実を肯定的に捉えることが大切。
もはやネットがない生活は考えられない。
それを前提に僕たちはこれからを考えていかねばならない。

勉強になりました。
まだまだ知識は足りないけど・・・。

映画「マイ・インターン」

myintern15

かなり浮いていたんじゃないかな。
僕が映画館に入った時、お客さんのほとんどは女性。
大半は数人のグループで来ており、場内はほぼ満席。たまに見かけた男性はカップル。
男一人でこの映画を観るなんて、かなり異常に思えた。
なんとなく居心地が悪いまま、指定の席に座った。

そもそもこの映画を観た理由は中年男子のインターンシップのストーリーだったから・・・。
いわば職業病的に本作品を選んだのだ(笑)。
しかし、観客の中に僕と同じ理由の人なんて、まずいない。

宣伝文句も明らかに女性をターゲットとしている。
ましてや女性も憧れるアン・ハサウェイの存在とファッションサイトを巡る映画なので、
女性が集まることは当然。
だが、果たして本作は女性向けの映画なのだろうか。男性には不向きなのだろうか。
女性に囲まれ窮屈な思いをした映画だが(ほんとは嬉しかったりして・・・)、
映画を観終わった感想は、NO!。
これは男性が観るべき映画である。

それも僕のようにこれから老いぼれていくであろう男が観るべき。
ロバート・デ・ニーロがカッコよすぎる。
ただそれは今までのデ・ニーロ像とは180度異なる。
これまでの作品は圧倒的にハードな男を描いていたが、本作はまるで違う。
上手い俳優の役作りと言ってしまえばそれまでだが、今までのイメージは完全に崩れるだろう。
しかし、それがいい。

映画のストーリーも温かくて面白かったのだが、僕が感じたのはこうだ。
70歳を超えて、僕はこんな男になれるのだろうか、ということ。
その年齢になればきっと第一線は退いている。
何をしているかは想像できないが、こんな生き方ができればステキだと思う。
大人の振る舞い、男の嗜み、培ってきた経験をこのようにイヤミもなく愛らしく表現できたら、
どれだけ幸せだろう。
これはまさしく理想の男を追及する映画でもあると感じてしまった。

そして、僕はこんな70歳になりたいと思ってしまった。
僕はこの先、大して世の中の役に立つとは思えないが、デ・ニーロ役のベンのように生きてみたい。
女性の映画の見方とは全く異なるかもしれないが、本作を理想の70歳像として捉えた。

そこらの50歳周辺を彷徨うオッサンたち、一緒に見習おうじゃないか(笑)。

地方消滅 創成戦略論

tihou15101

元岩手県知事増田寛也氏とIGPI代表の冨山和彦氏との対談集。
冨山氏の前著「なぜローカル経済から日本は甦るのか」 に共感し、内容が近い本書も手に取った。
最近、行政でも地方創生という言葉が飛び交い、ジャブジャブと予算も使われている。
その使い方が正しいかどうかはともかく、それだけ地方に注目が集まっている。

僕らのビジネスの基盤となる愛知、岐阜、三重もそう。
「ここが地方といえるのか!」とハゲタカらしき人が迫ってくるかもしれないが、
このエリアも首都圏に対しては地方。言い換えればローカルな地域となる。
そこではそこで成り立つ産業や盛り上げるサービスを作っていかねばならない。
ついて回るのは雇用。
僕たちが大切にしていることと都合よく考えればリンクしているわけだ。

この類の書籍に共鳴したこともあるが、最近、大学のガイダンスで講演させてもらう時は、
地元就職(=ローカル)のメリットを強調するケースが増えた。
それはグローバルを否定するのではなく、その両方が上手く機能することで、
働き手の満足度も向上することを言っている。

冨山氏の発言はドラスティックな面もあるとは思うが、本質を突いている。
ローカルであればこそ、2.5次産業みたいなものが需要を満たしていくだろうし、
最近、よく耳にするドローン、人工知能、IoTもローカルだからこそ活かせる技術になり得るという。

僕の幼稚な頭ではドローンをローカルで活かしていく想像力は湧いてこないが、
技術の進歩が地方の距離感を失くし、イノベーションを起こしていく可能性は十分にあるのだろう。
IT企業がド田舎に会社を移転させる例も増えているようだし・・・。

ローカルの中でもこの東海地区はとても恵まれた地域。
天下のトヨタ自動車もあれば、工作機械、航空機などの製造分野も突出している。
そのため経済も安定しているし、全国的に見て求人倍率は高い。

名大社が元気でいられるのはこのローカル性があるからこそ。
そこに感謝をしなければならないし、さらに発展するよう努めなければならない。
これからもローカルの中での差別化を徹底し、
より活性化する仕組みを作っていくのも僕たちの役割だろう。

佐治敬三と開高健 最強のふたり

saikyou1591

素直に感動できる一冊。
読み終えた時、幸せな気持ちになってきた。
同時に思ったことがある。こんなステキなストーリーをなぜ今頃発売するのか。
もっと以前に書籍になっていてもいいのではないかと・・。

著者のあとがきによると最初は「佐治敬三伝」を書こうと考えていたらしい。
しかし、結果的には作家開高健氏との友情・交流を中心に描くことになったとのこと。
上司部下の関係であるが、お互いを想う友情はこれほど素晴らしいものなのか。
男が男を愛する(変な意味ではない)ことがどういうことかを本書は教えてくれた。
システマチックになりすぎた現代の企業社会では考えにくいが、
こんな関係性があるからこそ、人が会社で働く大きな意味や魅力もあるのだと思う。

本書は500ページ近い大作。
この二人の交わりを中心に描いているが、二人が最初に出会うのは200ページを過ぎた頃。
それまではサントリーの前身、寿屋の歴史が描かれている。
僕は全然知らなかった。

鳥井家と佐治家の繋がり、
サントリーの社名の由来、
松下幸之助との関わり、
名古屋がサントリーには重要な土地であること・・。
本書を読んで初めて知ることが多かった。

サントリー宣伝部の歴史はいろんなところで報道されているので、
開高健氏や山口瞳氏、彼らがどんな活躍をしてきたかは大まかには知っていたけど・・・。
羨ましい時代。

羨ましい時代と築こうとすれば相当数の試練や逆境を越えなければならない。
そうしなければそんな時代を自分たちの手で作ることはできない。
二人の笑顔で酒を飲み交わす写真が印象的ではあるが、
その笑顔の奥にある生き様をほんの少しだけ感じることができた。

表面的に企業を識るだけでは意味がない。
この商品のシェアがどうとか、売上の伸び率がどうとか、
そんなことを知っていても何の意味もなさない。

もっと企業の本質を知らねばならない。
本書はノンフィクションのジャンルになるかとは思うが、最高のビジネス書といえる。

sakyou1592

毎日ありがたく飲ませてもらうお酒。
もっと感謝しなければならない。

「ALLIANCE」を読む

2015-09-04 10.29.19

少し前のブログで年功序列や終身雇用を必要とする会社でありたいということを書いた。
その考えは変わらないが、その一方で本書に書かれているような
新しい雇用形態も取り入れるべきだと考えている。
なんとも優柔不断で軸がないと思われるかもしれないが、
その両方を取り入れることのできる企業があってもいいと思う。
実際はそんな簡単な問題でなく、高いハードルがあるだろうが、
会社と個人の考えが合致すればその両方を活かすことは可能ではないだろうか・・・。

それはうちのようなちっぽけな会社であっても多様な受け入れ体制は整えるべきだろう。
一つは働く側にメリットが生じる。
安心して働ける環境を提供すると共にロイヤリティが生まれ、企業人としての使命感が醸成される。
一方で個人の生活はあくまでも個人主体。会社の意向に影響されることなく、
時間やスキル、成果を提供していくパートナー、提携としての在り方。
それも働き手の立場でいえばメリットと言えるだろう。

トップが柔軟な考えを持ち、それに対応しうる仕組みを作れば可能だし、
それが会社の成長にもプラスをもたらすのではないか。
本書では終身雇用の時代は終わったと書かれているが、すべてを捨ててしまう必要もないし、
逆にそこにこだわり続ける必要もない。
これはやっぱり優柔不断などっちつかずの考え方なのだろうか・・・。
いいとこどりと思われるのだろうか・・・。

果たしてその考えか機能的に動くかはともかく、
人と企業の関係性を見直される時代が今ということは痛切に感じる。
見直される点でいえば、愛知県は遅れているのかもしれないが、徐々にシフトはしていくであろう。
僕の自分勝手で理想的な想いでいえば、名大社に関わる人がシアワセであればいいということ。
それはガッチリ組まれた正社員雇用でも、アライアンス的な関係性でおいても・・・。
いうのは簡単だけど。

本書では退職した退職した社員を「卒業生」として捉え、その関係性も強く求めている。
それも今後、大切な考え方になるかもしれない。
かつて名大社は多くの社員が辞める会社だった。
いろんなタイプの人材がおり、中には自分で会社を立ち上げトップを務める後輩もいれば、
著名な老舗企業で役員を務める先輩もいる。
優秀な人材が結構流出している。
僕が振り返っても、
アイツがいてくれたら会社はもっと発展しただろうと思う人材が何人もいる。
そんな連中と新たな関係性が結ばれるのであれば、会社は継続して成長していくであろう。

企業と人との信頼関係は簡単ではない。
しかし、そこから目をそらすことなく、互いのメリットを真剣に考えることで
両者ともよりハッピーになれるのかもしれない。

映画「日本一幸せな従業員をつくる!」

associa013_large

正式なタイトルは「日本一幸せな従業員をつくる!ホテルアソシア名古屋ターミナルの挑戦」。
赤字にあえいでいたホテルを建て直し、
そのホテルが閉館されるまでを描いたドキュメンタリー映画。
映画館での一般公開ではなく、様々な会場での上映会で公開されていた。
昨年から何度となくお誘い頂たりしたが、
先日「あいち国際女性映画祭」で、ようやく観る機会を頂いた。

この映画の主役にあたるのは総支配人の柴田秋雄氏。
以前、講演を拝聴し感銘を受けた。その時のブログはこちら

鉄道会社の労働組合から52歳の時に送り込まれ、ホテルの再建を託される。
その時、ホテルは4期連続赤字と最悪の経営状態。
従業員を第一に考え、その従業員の扱い方、役割、制度を大きく変え、
最終的には日本で最も愛されるホテルに育て上げた。
そのホテルが名古屋駅前の再開発に伴い、閉館されることとなり、
最後の数日間を追っかけたのがドキュメンタリーの内容。
ストーリーは簡単に言ってしまえばそんなこと。

名古屋で仕事をされる方にとっては周知の事実かもしれないが、
それは映画が話題になってからの事ではないだろうか。
少なくとも僕は閉館までのホテルの実態は知らなかった。
これだけ長い間、名古屋で仕事をしているのに・・・。
1階のカフェにも何度となくお邪魔しているのに・・・。
まだまだですね(苦笑)。

このドキュメンタリーは総支配人を中心にホテルを支えるスタッフとの熱い信頼関係や
日々繰り広げられるお客様とのやりとり、
そして、閉館までの数日が感動的に描かれている。
その映像は涙を誘うだろうし、仕事の素晴らしさも伝えてくれる。
それだけで十分だ思うが、僕はどうしてもトップの立場として、
柴田氏の発言や行動を注意深く見てしまう。

あんな態度を従業員の前でストレートに示せるだろうか。
あのような人事を断行できるだろうか。
あれだけ熱い想いを持って接しているだろうか。
そんな風に自分と比較しながら映画を観てしまう。

勇気と照れと情熱は柴田氏に比べ、全然足りない。
”日本一幸せな従業員をつくる”というのは簡単だが、
それを実際の行動に落とし込むのは難しい。
目の前には売上、利益が常にあり、その想いとズレることも多いはず。
まだまだ未熟な僕もその間を彷徨っている。

しかし、この映画は明確に教えてくれる。
どうすれば会社が良くなるかを。
(ここではホテルだけど・・・)
どんな業態でも通用することだとは思う。

また、理不尽で悲しいのはどれだけ順調に物事が運んでも、
外部環境一つで全てが吹き飛んでしまうこと。
自分たちの努力だけではどうにもならないのはやるせない。
ホテルに関わった人は感謝の気持ちがあるとはいえ、無念でならない面もあるだろう。
誇りだけは忘れないでほしいと思う。

大きな会場でドキュメンタリー映画を観ることは滅多にないが、たまにこんな場も大切。
習字を習おうかなと思ってしまったし・・・(笑)。

貴重な機会を頂き、ありがとうございました。