これからも前向きに 名大社会長ブログ

カテゴリ「本を読む 映画を観る」の記事一覧:

映画「しあわせのパン」

昔のアイドルが歳を取るパターンは3つあると思う。

1つはいい年齢の重ね方をするパターン。
キョンキョンや薬師丸ひろ子はそれにあたる。
美しさを残しながらも母親役あたりでいい味を出す。

もう1つは見るも無残なパターン。
大きく姿を変えてしまいイメージすら難しい。

そして、最後はアイドル時代と何ら変わらないパターン。
それは誰か。

本作を観て改めて感じた。
原田知世である。

大袈裟に言えば、「時をかける少女」や「愛情物語」と何ら変わらない。
30年以上経った今も変わらないのだ。
(本作の公開は5年前だが大差ないだろう。)
あの愛くるしい笑顔、ショートカットが似合うヘアスタイル。
10代の頃のままと言える。

僕は角川三人娘の薬師丸ひろ子も原田知世も好きだが、両者の今の見方は異なる。
薬師丸ひろ子の母親役は許せるが、原田知世は許せない。
いくら結婚しても彼女はピュアなままでいて欲しい。

この作品も観る方によっては、原田知世のアイドル映画と捉えることも可能。
そういってしまうとチープな感じになってしまうが、
ドラマの温かさを感じることができる。
女性監督らしい柔らかさを随所に醸し出している。

手入れされた木製を基本とした家具やテーブル。
木綿や絹をベースとした自然に近い服装。
その一つ一つのぬくもりがいい演出となり映像美として反映される。
北海道の四季も美しい。

それが水縞夫婦の優しさとマッチする。
大泉洋扮する旦那役もいい。
余計な会話はせず温かく見守る二人が何より安心感を与える。
毎日焼き上げるパンも美味しそう。
コーヒーのいい香りもこちらまで届きそうだ。

そして、コーヒーを淹れる水縞夫人の原田知世。
とても可愛らしい。いや、美しい。
彼女はいつまでアイドルを続けられるのだろうか。
あまり露出されないからこそ処女性もキープできるのだろう。

公開時は全く知らなかったが、このような穏やかな映画を忙しい合間に観るのもいい。
これもAmazonプライムだったけど・・・。

「ニトリ 成功の5原則」を読む

なぜか嫁さんが持っていたので手にした一冊。
この写真のポーズはよく見るポスターに似ている気がする(笑)。

もはやこの業界では一人勝ちなのではないか?
他に競合があるか考えても思い浮かばない。
最近、愛知県に進出してきたイケアがそれにあたるくらいだろう。

そんなニトリの似鳥会長のことを詳しく知ったのは、
2015年4月の日本経済新聞「私の履歴書」。
痛快ハチャメチャですこぶる面白かった。
カンニング、裏口入学、家出など名誉あるトップなら
葬り去りたいような過去を悪びれることなく堂々と著していた。

当時のブログには愚か者本部の名誉顧問にお迎えしたいなどと失礼なことを書いていた。
その言葉に嘘はなく、その潔い生き方は何よりも学びになる。
一度、似鳥会長の著書は読まなければと思っていたので、この偶然はいい機会。
これも運がいいということだね。

本書は似鳥会長の生き様を含め、経営に対する考え方を余すことなく書かれている。
平易な文章なので読みやすく、腹落ちもしやすい。
対外向けというよりはむしろ社員さん向けに書かれているのではないだろうか?
社員研修の場でも使用できるだろうし、幹部を集めた会議の場でも共有することも可能。

似鳥会長の言われる「成功の5原則」とは、
①ロマン(志)
②ビジョン(中長期計画)
③意欲
④執念
⑤好奇心

特にロマンとビジョンというワードは本書の中では至るところで登場する。
きっと社内でも口癖のように言われているのだろう。
名経営者であれば共通していることだと思うが、
自分の想いはくどいくらい何度も何度も繰り返して言う。

一度話したくらいでは理解したとしてもすぐに忘れてしまう。
もうこれ以上聞きたくないと思わせるまで言わなければ
真に伝わることはない。
僕の場合は自分でくどいのは嫌がられると思っている節があるので、
名だたる経営者からしてみれば未熟でしかない。
ロマンもビジョンも足りない。
もっとしつこく同じことを明るく豪快に言わねばならないのだ。

本書に目から鱗が落ちるような特別なことが書かれているわけではない。
松下幸之助氏に近い原理原則が中心。
それでもその生き方を知るだけでも勉強になり価値がある。
伸びる会社には間違いなく理由がある。
それを理解できただけでも感謝しなければならない。

映画「ミックス。」

単純に楽しめる映画。
何も考えずに観ることをおススメする。
以上。

とブログを終わりたいが、そうはいかない。
ただそれでもいいんじゃないかと思えるのが本作。

ストーリーは単純明快。
そして、現実的にかなりあり得ない展開。
それでも映画の中に引っ張り込まれ感情移入してしまう。

まずガッキーがかわいい。
まあ、これは当たり前のこと。
あんなかわいい子を弄ぶこと自体考えられないが、映画はそれが前提。
弄ぶ男を日本の全男性は許せないので、おのずとペアとなる瑛太も応援してしまう。
男は至って単純で浅はか。
それをすべて見透かされているように・・・。

映画の構成は予想を裏切らない。
きっとこうなるだろうと思うように映画は展開する。
観客を驚かそうとする映画が多い中、ある意味、分かりやす過ぎる。
しかし、それが却って心地いい。
と僕は思う。

そんな映画だから、第一線級の役者さんがズッコケた役を楽しんでいるのだろうか。
母親役の真木よう子然り、中国人役の蒼井優然り。
堂々とぶっ飛んでいる。
そんな役者さんが脇を固めているので、中心的な存在の「フラワー卓球クラブ」の面々が生きる。
それぞれ抱える悩みを卓球を通して解消していく。

上手くCGを駆使しているとは思うが、かなり卓球も練習したことを感じさせる。
経験者として言わせてもらえば、素振りだけで素人か玄人かは判断は可能。
その中できっちりとしたフォーム(完ぺきとは言えないけど)で戦い続けるのは努力の証だろう。

しかし、強いて言えば迫力はいま一つ。
映画「ピンポン」と比べると見劣りするのは事実。
あそこまでの別次元の迫力があれば本作はもっと盛り上がったのかもしれない。
欲張りすぎかな・・・。

たまにはこんなお気楽な映画もいい。
多分、評価としては高くはならないだろうが、それで十分。

公式サイトを観るまでは中村アンがどこに出ていたかが分からなかったのは残念。
結構、好きなんで・・・(笑)。

一体、何を目的としているのかな。
僕は・・・。

LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略

この1冊を読むのに随分と時間を要してしまった。
最初の方の章はすっかり忘れてしまったな(笑)。

かなり話題性の高い書籍なので、読んだ方も多いだろう。
ここに書かれていることを参考に今後の人生設計を見直しをしている方も多いだろう。
僕自身も何となくそんな気持ちになっている。

ここに書かれているのは大袈裟ではなく、近い将来のこと。
100年の人生戦略を立てることが本当に必要になるのかもしれない。
とても考えられない。
イメージも全くつかないのが正直なところ。

僕はそれほど長生きを望んでいるわけではない。
今は75歳くらいまで生きれば十分と思っている。
太く短い人生の方が刺激的で楽しいんじゃないかと心のどこかで思っている。

75歳の生涯を前提に逆算すると、60歳で社長交代、
65歳まで会長をやり、会社からは完全に引退。
残りの10年を趣味などに費やす。
多分、それだけでは時間を持て余すだろうから、時々バイトして小遣い稼ぎをする。
ちょくちょく勉強もしたい。
そんな10年を過ごし、人生を全うする。
そんなもんでいいのではないかと今まで思っていた。

体も酷使しているので健康状態もそれほど持たないと思うし、
周りに迷惑は掛けたくはない。
いくら長くても80歳がギリギリ。
そんな考えだった。

本書を読んで仮に100歳まで生きるとしたらどうだろう。
引退してから35年の隠居生活。
それはとても考えられない。
たくさんの趣味やそれに付き合ってくれる友人を作っても、
毎日そんな生活はできない。
金銭的にも厳しいはず。
今は仕事中心の毎日なので、たまの休みは充実するが、
毎日休みだと退屈してしまうだろう。

そう考えると引退の時期をずらすことになる。
65歳から75歳へ伸ばす。
果たしてそれは正しいことだろうか。
少なくとも会社経営は止めた方がいい。
後輩たちがやりにくくて仕方ない。

では、ずっとバイトするか?
まず雇ってくれるところがあるか心配。
じゃあ、個人で会社でも立ち上げるか。
今の段階では何をやればいいかさっぱりイメージできない。
何となくできても75歳までやれるとは到底思えない。

そう考えると長生きするというのも大変なこと。
それこそ嫁さんにも捨てられるような気もするし・・・。
今はモテまくっているからいいけど、
(ウソです・・・笑)
捨てられた時は誰も相手にしてくれない。
う~ん、長生きを考えるとどんどん不安が募ってくる。

少し真面目に言えば、企業もそれを踏まえた雇用や役割を考えなければならない。
確実に平均寿命は長くなる。
定年の年齢も変わってくるだろうから、
どこまでの仕事を任せるかを今の段階から考えなければならない。
やっぱり会社中心に物事を考えてしまう。
きっとそれは正しいんだけれど、これではいけないと感じたり・・・。

いかん、いかん、どうしても仕事中心でそれだけしか取り柄がないと
いざという時に困ってしまうな。
今からLIFE SHIFTを考えなきゃいけないな・・・。

映画「紙の月」

いかん、いかん、秋の夜長。
ついAmazonプライムをチェックすると気になる映画が・・・。
外には忙しい、忙しいとほざいているくせに、
映画を観る時間はあるんだと呆れられてしまう。
いかん、Amazonプライム地獄に堕ちていきそう。
まるでこの映画の主役宮沢りえさんのように・・・。

この作品は前回書いた「百円の恋」と同じ年に公開された映画。
今思うと2014年は日本映画の秀作が多かった年かもしれない。
宮沢りえさんと言えば少し前に観た「湯を沸かすほどの熱い愛」の演技で
ホロホロになるくらい感動したが、本作の演技も負けず劣らず。
役柄は180度異なる。
強くて正しい日本のお母さんと日本一愚かな奥さんを演じ分けている。
両方とも魅力に感じるから不思議な話だ。

話題になった映画なのでご覧になった方も多いだろうし、
今更ネタバレもないと思うので、感じたことを感じたままに書いてみたい。

簡単に言えば銀行の顧客のお金を横領した女子行員が
若い男に貢ぎ使い込んだというとんでもない話。
素直に共感することはない。

明らかに犯罪でその心理描写や駆け引きはゾクッとするのだが、
弱い人間がしでかすこと。
映画途中までは「熔ける」的なスパイラルが人間を貶めていくと感じていたが、
ラストを迎えるのあたり印象が大きく変わっていった。

主人公は最終的には何ら罪の意識はなく楽しんでいたのではないか。
銀行のガラスを割り逃げだす宮沢りえの表情は満足に満ちているように見える。
捉え方は様々だが、罪悪感は一瞬のものでしかなく、
根源的に抱く感情は、後ろめたさと対極になるのではないかと思ってしまう。

その点では「熔ける」とは大きく違う。
寂しさなんてほんのキッカケでしかなく、
それがいいタイミングで訪れただけのこと。
一般的には人の寂しさや孤独が事件を起こす理由になるとは思うが、
これは偶然の事故。
そんなふうに思えてならない。

それを感じさせる恐ろしい映画だった。

映画「アウトレイジ 最終章」

3連休の初日に鑑賞。映画の公開日でもある。
昨日、本当は別の映画を観る予定であったが、
中日新聞の記事を読み、急きょ、観ることにした。

北野武監督へのインタビューでこんなコメントがあった。
「やくざの世界を描いているけど、官僚や会社でも成り立つ話なんだよ。
そして、ことが起きた時に割を食うのは正義で突っ走る大友みたいなヤツなんだよね。」

比較的北野作品は観てきたが、このシリーズは観ていない。
どうしようかと思っていたところの記事だったので、いいきっかけとなった。
映画の見方もやくざ映画というより社会派ドラマに置き換えて観ることにした。

確かに北野監督の言われる通り。
リーダーの在り方ひとつで組織は良くも悪くもなる。
トップのリーダーシップ次第で右にも左にも動くものだ。
組織として一体感がどう出るのかも作品の中にヒントはある。
ポジションだけでは誰も付いてこないということですね(笑)。

それにしてもやたらめったら撃ちまくる映画。
予告編を観た段階で予想はできたが、その予想を裏切ることはない。
そこにはなんの感情もない。

厳密に言えば、バカヤロー、コノヤローと怒声が飛び交うので、
感情は働いてるが、同情なんてものは微塵も感じさせない。
ビートたけし氏演じる大友はその感情を裏で抱いているんだろうけど。

それにしてもこれだけ悪い顔をした俳優陣を揃えたものだと感心。
前2作でかなりの悪い顔が殺されても、まだまだ出てくる。
そして、バッタバッタと殺されていく。
痛快と言えば痛快だが、出番少なく死んでしまう有名俳優が多いこと、多いこと。
北野作品に出演できるだけでも光栄なんだろう。
実際あんな世界が身近にあったら、夜も眠れない(笑)。

作品を通して感じたことだが、戦国時代の武士の戦いに近い。
義を貫き最終的には自ら責任を取る姿も武士といえる。

インタビューであったが、
悪徳非道のやくざのフリをして正義を描きたかったのかもしれない。
そんな中、私利私欲の走る者、傲慢な者は許される存在ではない。
この映画はそれを明確に示しているとも捉えられる。

この映画には女性がほとんど登場しない。
ピエール瀧さんが部屋に呼ぶくらい。
それにしても本来ミュージシャンであるピエール瀧さんは何でもやりますね(笑)。

今や、やくざ映画は北野武監督の代名詞。
しかし、僕が一番好きなのは「あの夏、いちばん静かな海。」。
両極の感性だと思うが、両方持ち合わせる監督はやはり天才なんだろう。

いい緊張感がありました(笑)。

映画「百円の恋」

Amazonプライムビデオの策略にすっかり嵌ってしまいそうだ・・・。
いや、年会費を払えば見放題なので、お金をそれ以上むしり取られることはないのだが、
貴重な時間を奪われていく。
本当は読書をしたり、勉強をしたりとそちらに時間を使いたいのだが、
つい魔の手の乗ってしまい、このAmazonプライムビデオ利用してしまう。

ちょっと空いた時間に「孤独のグルメ」を観たり、
なぜか「仮面ライダー龍騎」を観たりしている。

「仮面ライダー龍騎」は息子が3歳の頃、リアルに観ていた。
息子より夢中になって観ていた。
13人の仮面ライダーが登場し、ライダー同士が戦うというあり得ない設定。
それぞれの人間模様が面白かった。

今回のブログはそれを書きたいわけではない。
龍騎のことはいずれ別の場で・・・。

この「百円の恋」もAmazonプライムビデオで先日観た。
安藤サクラさんが凄い女優であることがこの1本で確実に理解できる。
半分ニートのだらしない女性がふとしたきっかけからボクシングに出会い、
のめり込んでいく映画だが、その変わっていく姿が半端ない。

主演女優賞を総ナメしたのもうなづける。
まるでロッキーのスタローン並み。
スポーツど根性映画のジャンルでも間違いではない。
闘うシーンでは素直に感動してしまった。
世界を目指すわけでも、チャンピオンに挑戦するわけでもないんだけど・・・。

はっきり言って、それほど美しい女優さんではない。
目立つ目鼻立ちはしていない。
特に映画冒頭の怠惰な日々を過ごすあたりは、かなり酷い。
顔、表情だけでなく全身が酷い。
それがバイトし始め、男と出会い、生まれ変わっていく。

ストーリーとしては単純でありがちな展開だが、
それを奮い立たせるのは演技力と演出なのだろう。
撮り方を間違えるととてつもなくくだらない映画になったかと思うが、
それが上手く回ると上級の娯楽作品、スポーツ映画になる。

登場人物もそのほとんどがろくでなしばかりなのに、
なぜこんなに爽やかなんだろうか、そんなことを感じてしまう。

Amazonプライムビデオを検索していると、同様に面白そうな作品が引っ掛かってくる。
これでも僕は忙しい。
秋の夜長を楽しんでいる場合でもなかったりする。
それでも引き込まれそうで少し怖い(苦笑)。

シンギュラリティ・ビジネス

僕は現在51歳。周りには同世代の経営者が多い。
もし、生まれるのが10年早ければ61歳。
そろそろ引退の時期。
逆に生まれるのが10年遅ければ41歳。
41歳だと、好景気の経験がなく大きな挑戦ができなかったかもしれない。

何が言いたいのか。
この世代に生まれ、変化の激しい時代に自らの意思に関係なく
多くの経験をさせてもらえる。
それはとてもありがたいこと。

もし、10年生まれるのが早ければ、本書のことは全く理解できない。
また、Web中心のサービスにも付いていけなかっただろう。
この世代だからこそギリギリ間に合い、何とか時代とも寄り添うことができる。
時代を享受できることは、なんとありがたいことだろう。

と感謝すると同時にいつまでこの変化についていけるかと不安にもなる。
その不安を解消する一つの方法として、この類の書籍を貪るともいえる。
どこまで理解しているかは別として・・・。

一般的に「シンギュラリティ・ビジネス」と言われても明確に答えられる人は少ない。
ましてやシンギュラリティが予測どおり起きるだろうと考えている「シンギュラリアン」
なる方を周りで見たことなんてない。

そもそもシンギュラリティって、なんなのか?
そんな疑問を抱く人も多いと思う。
「テクノロジーの進化のスピードが無限大になる」ことをいうが、具体的なイメージは難しい。
シンギュラリティと並んでもう一つ重要なキーワードが「エクスポネンシャル」。

この2つのキーワード、通常変換ではすぐにカタカナにならない。
僕のデスクトップPCも時代遅れだ(笑)。

ちなみに「エクスポネンシャル」とはテクノロジーの進化が指数関数的なことをいう。
これまた難しいのだが、ただ、この2つのキーワードを覚えていけば、
ギリギリなんとかなるのかもしれない。
常に意識することを前提として・・・。

もうお分かりかとは思うが、
僕も最新のテクノロジーやその先にあるものにはついていけない。
本書で描かれる2045年なんて分かるわけがない。
しかし、ここで大事なのは諦めないこと。
自分が使う使わないはともかく触れる状態にしておくことが重要。
好む好まざるに関わらず、生き方、考え方を変化させていくことだろう。
いずれ人が書くブログもAIでなくなってしまうのかな・・・。

理解が難しいブログになってしまったが、
感性だけは磨いて人として生き残るようにしていきたい。

映画「三度目の殺人」

それにしても是枝監督って、ここ最近、やたら精力的ではないだろうか。
数年に1本しか映画を撮らない監督だと思っていたが、ここ数年は毎年撮っている。
一昨年「海街diary」、昨年「海よりもまだ深く」と温かくも儚い話題作を連発させている。

オファーが多いのか、急にヤル気が出てきたのかは知らないが、
僕としてはブログのネタが増えてありがたい。
その前の「そして父になる」も含め、4本のネタが提供できた(笑)。
それだけ魅力的な作品であるのは間違いないけど・・・。

本作は過去3本とは明らかに作風が異なる。
家族を描いているのは確かだが、これまでのような温かさとか親子愛を感じることはない。
せつない気持ちがずっと続いていく。

これが狙いなんだろうか。
家族愛に飽きてしまい、もっと人間の嫌らしい奥の方に眠る価値観を描きたくなったのだろうか。
どんどん追い込まれていく主人公福山くんが露になってしまうのがその象徴。
いい男すぎる彼もたまには痛い目に合わないと不平等(笑)。
さらに好感度が上がってしまったのかもしれないが・・・。

それにしても役所広司さんなる役者の存在感はなんなんだろう。
2週間前に観た「関ヶ原」でも主人公を食っていたし、本作にしても同様。
得体のしれない恐ろしさを当然のごとく演じていた。
二人がガラス越しで話し合うシーンの迫力は、その辺のアクション映画をはるかに超える。
撮影的にも演出的にもとても難しいシーンだと思うが、
その場面があるからこそ、この映画の怖さがジンジンと伝わってくる。
さすがですね・・・。

いつも書いているように僕のブログを読んだところで、
どんな映画かはさっぱりわからない。
一応、褒めているつもりだが、それすら伝わらないのかもしれない(苦笑)。

ただ僕のブログのおかげで格段と観客動員数が増える。
格段といっても数人という話もあるけどね(笑)。

ネタバレ的に言えば、タイトルにある「三度目の殺人」はない。
せいぜい二度だ。
ではこの三度目は何を指すのだろうか。
映画を観た後でも分からない。
分かったような気もするが、その事実は分からない。
だからこそ、多くの方に観てもらい、解説して欲しい。

映画「幼な子 われらに生まれ」

近江八幡の映画評論家ヤブさんの映評がなければ、観ることはなかった映画。
その存在すら気づかなかったかもしれない。
名古屋で上映された映画館はセンチェリーシネマ。
名古屋パルコにあるマイナーな劇場でマニアックな作品の上映が多い。
こんな機会がないと中々お邪魔することもないので、
本作はそんな意味でもありがたかった。

監督は三島有紀子氏。
独特の映像感覚を持つ監督だと思う。
一昨年観た「繕い裁つ人」の街並みの映像も美しかった。
主役の中谷美紀さんも久々の美しさだった。

本作は前作とは違う映像美。
デジタルの時代では考えにくい、きめの粗さが特徴的だった。
それが演出としては効果的に表れていた。
言葉では表現しずらいし正しくはないだろうが、
心の内を露にする映像の粗さだった。

本作の良さは「間」にあるのではないかと思う。
独特の間がこの映画には存在する。
それが観る者に考える余裕を与える。
あるシーンとあるシーンの間は静かに時間が流れる。
主人公である浅野忠信氏は何の台詞を吐くこともなく佇んでいる。
その時間、観る者は感情移入をし、自分に置き換えて考える。
そんなシーンが多いような気がした。

本作はバツイチ同士が再婚し、連れ子と幸せに暮らしながらも
妊娠をきっかけに家庭が崩壊していくストーリー。
ここで既に僕は未体験ゾーン。
しかし、自分が父親としての役割を問われているような感覚に襲われる。
不思議だが、そうなる。
自分とオーバーラップして主人公のダメさ加減と重なってしまう。
それが狙いかどうかはわからないが、僕が映画の中に巻き込まれていく。
この映画を観ることで、僕の父親としてのダメさ加減が露になってしまう(笑)。

時に感情は爆発する。
それはとても人間らしいことではあるけれど、同時に人を傷つけてしまう。
そして、その爆発した感情を反省し、取り戻すための行為を繰り返す。
いや、償う行為なのかな・・・。
誰しも経験しうることをこの映画が代弁してれるような気がした。

ヤブさんが書いていたように主人公の浅野氏は昨年の「淵に立つ」を思い出させる。
ポロシャツのボタンを一番上までしっかりと留める姿は
真面目な性格の印象を与える共に恐怖心も与えてしまう。
少々の爆発でよかった(笑)。

今後、このような家庭はリアルに存在していくのではないだろうか。
観ておくべき作品だと思う。