これからも前向きに 名大社会長ブログ

カテゴリ「本を読む 映画を観る」の記事一覧:

映画「カムイのうた」

僕らは日本のことを知っているようで知らない。
海外で犯した出来事は自国で伝えなくても、勝手に他の国が伝えてくれる。
それにより愚かさも賢さも知ることができる。

しかし、国内で起きた出来事はどうか。
海外からは伝わらない。
自らを語らない限りは知る術がない。
知識不足ともいえるが、教育として片手落ちともいわざるを得ない。
臭い物に蓋をする傾向は多かれ少なかれあるのだろう。

僕らはアイヌの置かれた実態をどこまで理解していたのか。
僕が無知なのは100%認めるとして、初めて知り得ることが多かった。
こんなに虐げられてきたとは・・・。

本作は実話を基に制作された作品。
「アイヌ神謡集」を日本語訳した知里幸恵の人生を描いている。
彼女は生涯は短い。
いくら辛い思いをしようともアイヌ人の誇りを捨てず懸命に生きてきた。

僕は映画を通して彼女の存在を知り、自分の無知さを改めて嘆いた。
北海道旅行で買った伝統的な木彫りのお土産は何だったのか。
歴史的背景も知らず、ただのボンクラじゃないか。

本作の舞台は大正6年。
日本がひたすら西欧諸国に追いつくために多くを犠牲にしてきた頃。
僕が当事者であれば、もちろん正論を吐き理不尽な行動を当然のこととして捉えていた。
それがアイヌの人たちを傷つけようが関係なく。

成長のための犠牲は仕方がない。
そんな判断だと思う。
反対側の当事者ならどうだろう。
そんな想像力もなく自分の正当性だけを主張していたはずだ。

映画を通して学んだため客観的な理解に繋がるにすぎない。
思い出したのは「福田村事件」
僕も同調圧力に加わった一人で酷い言動を繰り返したと思う。
彼女が亡くなった一年後にこの事件は起きているし。
まさにそんな時代。
うむ・・・。

そんな意味ではいろんなことを教えてくれた作品。
「ゴールデンカムイ」を観た人は多いかもしれないが、本作を観る人は少ない。
「ゴールデンカムイ」を観ていないが、こちらは観た方がいい。
いや本作を観た後だからこそ「ゴールデンカムイ」も観ないと。

同じ日本でもまだまだ知らないことは多い。
映画を通して学べるのはありがたいこと。
それに留めていてはいけないと思う作品だけど。

静かに退職する若者たち

今週、毎年依頼を頂く高校で保護者向けの講演を行う。
本書は新たなネタを提供するために読ませてもらった。
タイトルの内容が中心と思っていたが、中身の大半はサブタイトルにある方。
「部下との1on1の前に知ってほしいこと」だった。

そんな意味では著者の「先生、どうか皆の前でほめないで下さい」の方が役に立ちそう。
僕も大学で教える立場や企業の採用支援で感じる面もあり、
本書も参考にしながら普段思っていることを伝えていきたい。

いずれにせよ今年も超売り手市場。
保護者の心配は尽きないと思うが、環境的には大卒も高卒も恵まれている。
恵まれているからこそ気をつけることを伝えなきゃいけない。

本書の第5章は「退職代行サービスを使う若者たち」。
会社に何も伝えず辞めていく若者の動向が描かれている。
2年ほど前は違和感を感じていたが、もやはひとつの方法として定着したと感じる。
会社が合わず辞めるのは致し方ない。

立場的にはそんなサービスを使わず、お互い誤解のないように話をしてほしいが、現実はそうでもない。
最近のニュースでも報じられることが増えた。
特に今年は4月入社で利用する新入社員が相当いるという。

確かに企業側はウソは言ってはいけない。
給与や休みが違うという数字面はもってのほかだが、
無意識に行うパワハラも今は許されることではない。

それが理由で退職代行サービスを利用するのは100歩譲って認めるが、その他はどうだろう。
誤解を恐れずにいえば幼稚さが残る面がないとはいえない。
人手不足や売り手市場がもたらしたマイナス面もある。

転職を否定するつもりはない。
自分の目指すキャリアがあれば突き進めばいい。
厳しい局面も乗り越える覚悟を持ちチャレンジすればいい。

残念ながらそうではない。
大した理由でもなく辞めるケースも多い。
面の皮が厚いオッサンとうぶな若者の差といえば身も蓋もないが、勿体ない面があるのも事実。

昨今、20代半ばの転職者を求めるケースは多い。
だが、ここは2種類に分けられる。
どこからも求められる人材とそうでない人材。
そうでない人材は20代前半で既に4~5社退職しているケースが多い。

いろんな事情はある。
それも否定しない。
ただ採用側からすればリスクと捉えるケースは未だ多い。
そこは注意しなきゃいけない。

僕の立場としてはそんな事実も保護者に伝える必要がある。
3年3割の離職はいつの時代も一緒なんだけど・・・。

本書には今もてはやされる1on1の弊害も書かれている。
目的ばかりが先に立ち、実態が追いついていない現実も・・・。

どんな時代も若者は難しい。
僕が若い時も昭和のオジサンたちは手を焼いていた。
平成で育った中堅が令和の若者に手を焼く。
まあ、順番なのかもね。

静かに退職する若者たちを嘆くだけでなく、迎合せず向き合っていきたいね。
なんとかなると思うから・・・。

映画「あまろっく」

ポスターを見て想像したのが、「江口のりこが尼さんになってロックでもやるのか」
という次元の低い考え。
それはそれであり得なくもないが、実際はそのかけらもない。
尼崎市にある「尼ロック」と呼ばれる「尼崎閘門(こうもん)」のこと。
この水門が水害から守ってくれるので、地元ではそう呼ばれている。

映画の冒頭で明かされるが、後々まで重要な意味を持ち、そのタイトルに救われる。
日本映画は重厚で闇を描いた人間ドラマをよく観るが、人情味溢れるライトなドラマも好きだ。
誰もがほっこりし温かい気持ちになれる。

ストーリーも先が読めたりするが、却って好感に繋がる。
人を裏切ることはない。
笑いと涙を繰り返し堪え、流れるような作品も日本映画の良さ。

ネタバレしない程度に解説すれば、優秀すぎてリストラにあい実家に戻ってきた娘優子と、
父親の再婚相手として嫁いできた20歳の嫁早希との日常を描いた作品。

娘役は江口のりこでこれがはまり役。
優秀だが空気を読めず嫌われる女性を見事に演じる。
優子の小学生時代、中学生時代も描かれるが、これが江口のりこ本人を想像させる。
彼女に似た子供をオーディションで選んだというくらいイメージがぴったり。

映画は現在と過去を行き来しながら家庭環境を描き、
笑福亭鶴瓶演じる能天気な父親が明るい家庭を作る。
亡くなった母親役の中村ゆりもステキだ。
そんな家族に育てられた優子はむしろ真っすぐすぎて他人に厳しい。

そこに現れた中条あやみ演じる早希。
この早希はあり得ないくらいできた嫁。
自分よりはるか年上の娘を持ったわけだが、その接し方は到底20歳には思えない。
本来なら相容れない2人になるはずだが、それが、それが・・・。

尼崎が舞台なので当たり前だが関西弁。
あまりにも役者陣が達者なので調べてみたら、全員が兵庫や大阪出身。
絶妙な会話や人間味ある行動で観る者はドキドキしながらもほっこりする。
ラストも期待を裏切らない。

大きな話題作にはならない。
歴史的に残る優秀作品でもない。
しかし、その時代には必要で大切になる作品。
こんな作品があることで日本映画のバランスも維持される。

65歳のオッサンが20歳の美人と結婚するのは許せないけどね(笑)。

アメリカ 流転の1950ー2010s 映画から読む超大国の欲望

映画コラムニストとして映画を鑑賞して、ブログやnoteに書くだけではいけない。
自称であっても幅広い活動が求められる。

「映画は時代を映す鏡」ともいわれる。
どんな時代にどんな映画が作られ、どんな意味を持つか。
それを理解しておくのも仕事。
そう捉える必要もある。

本書は1年以上前に購入したが積読状態。
最近、ようやく読み終えた。
映画からアメリカの時代背景を読み取り、1950年代から2019年までの作品を紹介。

「赤い河」「ローマの休日」から始まり「ジョーカー」まで。
その間、「俺たちに明日はない」「卒業」「タクシードライバー」「スター・ウォーズ」
「愛と青春の旅たち」「ウォール街」「パルプフィクション」などなど。
全部で48本の映画と共にアメリカが歩んできた時代が描かれている。

僕が観た作品は半分にも満たないが、
解説を読むとどこかのタイミングで観たいと思わせてくれる。
作品の魅力よりも監督の意図であったり、時代との繋げ方であったり・・・。

現在進行形に映画を観る場合、時代背景を考えて観ることは少ない。
しかし、俯瞰して捉えるとその時代だからこそ、
その作品が求められる、そんな意味合いもある。
アカデミー賞を獲得した「オッペンハイマー」もそんなことが言えるのか・・・。

僕が生まれる前に公開され、今でも人気な「ローマの休日」も多くの意味を持つ。
ウィリアム・ワイラー監督の代表作だが、本作が制作される時期は「赤狩り」が映画界も襲っていた。
関係者に共産主義者がいたため、
それがバレないように撮影はすべてイタリアにしたという。

それまでハリウッド映画は国内のスタジオで制作されていた。
「ローマの休日」はハリウッド初のオール海外ロケだが、そんな理由があったとは・・・。
業界内では知られた話かもしれないが、初めて知った。

当時を皮肉った有名なセリフもある。
教えてもらわなきゃ、知らないままだった。
世界的ヒット作を生み出すことで批判を封じ込めてしまうが、不穏な空気がアメリカ社会に流れていた。
50年代、60年代、70年代等、各年代のアメリカ経済や政治を映画と照らし合わせながら解説。
理想や喪失、分断が描かれ、とても興味深い内容だった。

最近でいえば「ワイルドスピード」シリーズ。
僕は1作も観ていないが、単なるアクション映画ではない。
ダイバーシティという観点でもハリウッド映画を象徴している。

こう考えると映画を観ることは時代を知る重要な学習。
なんだ、僕は一生懸命、勉強していたんだ。
自分勝手に正当化しながら、これからも学んでいこうと思う。

いい勉強になりました。

映画「Gメン」

2023年キネマ旬報ベストテン読者選出1位の作品。
昨年の公開時に見逃し、Netflexで鑑賞。
ブログにも書いたが、読者選出で1位になっているものの、評論家の評価では1点も入っていない。

完全なランク外。
普通に考えればあり得ない評価だが、本作を観てなんとなく理解できた。
圧倒的なファンは50回以上映画館で観たという。

単純明快なストーリーに共感したのか、
主役の岸優太のアクションに感動したかは不明だが、なんとなく納得できる。
素直に面白い。
何も考えず楽しむことができる。

僕ら世代に分かるように例えると「令和版ビーバップハイスクール」。
不良高校生が強い相手に喧嘩しまくる。
リーゼント姿の詰襟の学生服が長髪のブレザーに変わったくらい。
基本的に昭和も令和もやっていることは同じ。
友情や仲間を前面に押し出し、そのために喧嘩する。

冷静にみればおかしな話だが、なぜか感動してしまう。
爽やかな青春映画だと勘違いする。
学生時代、ビーバップハイスクールシリーズを欠かさず観ていたことを思い出す。
公開していた映画館でバイトしていたので、何度も観ていた。
全然飽きなかった・・・。
時代は変化するが、求めるのは変わらないのかな。

ネタバレもへったくれもない。
問題児のクラスに転校してきた転校生がいろんな連中に喧嘩を売られ、バッタバッタと倒していく。
相手は徐々に強くなり、最後は凶悪組織の連中と戦うことに。
それも拉致された彼女を救うために・・・。

凶悪組織の割に普通の高校生にいとも簡単にやられる。
それも大人数でかかっていくのに。
そこもスカッとするんだろうね。
ツベコベいう必要もない。

まあ、出演者も楽しんで演じているようだし。
田中圭や高良健吾が高校生役を演じるのは無理があるが、それも楽しいんだろうね。
先生役の吉岡里帆のぶっ飛んだ弾け方も可愛かった・・・。

たまにはスカッとする作品で日頃の疲れを飛ばすのもいいかもね。
楽しませてもらいました。

日本の会社員はなぜ「やる気」を失ったのか

経営者にとっては辛い書籍。
日本企業では「やる気の無い社員」の割合が70%に達し、「熱意溢れる社員」の割合はたった6%。
そんなデータが示され、その原因は企業のトップにあるという。
自社は該当しないと思いたいが、こんな数字をぶつけられると経営者としては非常に辛い。
そして、だから日本の企業は生産性も低くダメなんだと非難を浴びる。

経営者の端くれとして反発する面と反省する面と介在。
また、本書で書かれている内容に共感する面と批判する面も介在。
責任を認めつつも、現実問題としてどうなんだと反論したくもなる。

確かな実績を上げ続ける経営者から言われるのであれば、納得せざるを得ない。
しかし、単なる評論家や何の実績もない無責任な外野から言われると腑に落ちない。
人間が小さいのかな(汗)。

世の中にはとんでもない経営者が存在するのも事実だが、ほとんどは懸命に経営に向き合っている。
結果を出なければ市場から追い出されるだけ。
至ってシンプル。

本書ではコストカットが日本の成長を止めた要因だと責めている。
否定はしない。
しかし、それはこの状況下だからいえること。

その当時は賞賛もしていたし、恩恵も受けていた。
僕でも厳しい時にはコストダウンの努力をしバランスを保ってきた。
安価で提供されることでラクになったことも事実。

特に飲食なんて分かりやすい。
僕が学生時代の牛丼の価格とほんの数年前までの牛丼の価格はほぼ変わらない。
そこには相当な企業努力があったからこそ成り立った。
単に値下げ要求をしたのではなく、様々な改善を繰り返し実現できたこと。

その行為を全否定されると悲しくなるし、文句もいいたくなる。
言わんとすることは理解できなくはないが、違和感も感じる。

一方で会議のための会議や過度なマイクロマネジメントなど、
無駄な仕事がやる気を失わせることには大いに共感。
無意味な書類もなくていい。
それは小さな仕事だが大きな仕事でも同じ。

おかげさまで前例主義がはびこる会社ではない。
必要ないと思えば、どんどん変えていくことができる。
変化を繰り返しながら会社は55年生きてきた。
これからもそう。
次世代の社員を育て、彼らに活躍してもらうしかない。

うちのような小さな会社でやる気のある社員が6%しかいなかったら、とうに消えている。
やる気があるのにその程度かと言われれば言い訳できないが、会社の源泉は「やる気」。

まとまりのないブログになってしまったが、本書は反面教師として捉えておきたい。

映画「アイアンクロー」

「RHEINGOLD ラインゴールド」に続いて実話を基にした作品を鑑賞。
侮っていた。
映画評論仲間からも評価の声は届いていたが、侮っていた。

プロレス一家の悲劇を描きながらも、単純明快なスポコンドラマと想像していたが、
その想像をはるかに超えていた。

80年代、プロレスはかなり人気があった。
中学、高校時代の友人もプロレスファンは多く熱く語っていた。
僕はアニメのタイガーマスクは好きだったが、プロレスは話題についていく程度。
さほど興味はなかった。

金曜のヒマな時(確か)に古舘伊知郎さんのアナウンスで見ていたくらい。
アントニオ猪木から藤波辰巳や長州力に人気が移った頃。
外国人レスラーもスタンハンセンあたりしか知らない。
その裏側でこんな世界があるなんて、知る余地もなかった。

今、アメリカでプロレス人気はどうなんだろう?
この時期に公開されるには何らかの意味もあるとは思う。
偉大なる父親の存在が家庭崩壊に繋がる等、
家族の結びつきが今のアメリカ社会を反映させているとか。
映画は時代を映す鏡でもあるし・・・。

何かを信じ、取りつかれたように懸命に励み、結果的に呪縛となり不幸を招く流れ。
本作はプロレスというエンタメと努力と根性をごちゃ混ぜにした世界だが、
どこの世界でも見られることかもしれない。

親の理想が一家を破滅の道へと進めてしまう。
親として子供に期待しすぎるのは、却って子供を苦しめる材料。
反面教師として捉えておくのもいい。

しかし、本作はそんな生ぬるい親の戒めを訴えたいのではない。
一人一人の葛藤を表現した重厚な人間ドラマ。
かなりヤバい。

それを演じる俳優陣、プロレスラー役の4兄弟が素晴らしい。
筋肉隆々の体もそうだがプロレス技も見応えがあり、まるで本物。
鍛え方も尋常じゃないと思わせる。
舞台となる80年代も懐かしさを感じさせてくれた。

ほとんど悲劇でしかないドラマだが、それで結末を迎えると救いようがない。
呪縛から解き放たれ、人らしく生きることで明日への希望に繋がる。

映画評論仲間の声がなければ見逃していた可能性は高い。
プロレス好きはもちろんだが、むしろ嫌いな人に観てもらいたい。
貴重な経験ができるのは間違いない。

映画「パスト ライブス 再会」

解説には「海外移住のため離れ離れになった幼なじみの2人が、
24年の時を経てニューヨークで再会する7日間を描いた、
アメリカ・韓国合作の大人のラブストーリー」と案内されている。

普段なら「ふ~ん」と素っ気なく通り過ぎる。
この年齢になると恋愛映画に興味を示さない。
あまり気が向くこともない。

しかし、なぜか観てしまった。
アカデミー賞ノミネート作品というのも、その前評判の高さもその理由。
また、何度となく予告編を観て、感情を抑えた演技に惹かれたのもその一つ。

恋愛映画は得てしてうるさくなりがち。
泣いたり叫んだり、飛び出したり暴れたりすることもい多い。
盛り上げるには必要な要素だが、いいオヤジになると却ってシラケてしまう。
予告編を観る限り本作にそんなシーンはなかった。

その期待感で映画館に足を運んだ。
僕の予測はほぼ的中。
こみ上げる感情を抑えながら物語は静かに進んでいく。

最初の別れから12年。
そこからまた12年。
お互い恋心を抱きながらすれ違う人生。
それを否定することはしない。
相手を責めたり、傷つけることもない。

自分の気持ちに素直に従いながら、気持ちを抑制する。
これが大人のラブストーリーということか。
激しいキスシーンや衝動的な行動を起こせばドラマは盛り上がるが、そんな必要はない。
じっと見つめ合うだけでお互いを理解し、優しい言葉でお互いを認める。

ストーリーとして奇抜さがあるわけじゃない。
ありふれたテーマのようにも思える。
それでも新鮮。
清々しい気持ちにもなれる。

一年に1回くらいはラブストーリーを観てもいいと思ってしまった。
会話もせずお互い見つめ合うだけの長回しがむしろ効果的。
その時間が心地よかった。

主演女優のグレタ・リーはこれまで見てきた韓国系美人とは異なる。
アメリカで生き抜く強さを感じる。
本作同様、両親が韓国へ移民。
韓国内での生きづらさをある種、表現しているとも思った。
そんな見せ方もありかな・・・。

本作を韓国映画と捉えるなら、日本映画がまた一歩先を越されてのかもしれない。
心温まる作品にもなるけどね。

映画「RHEINGOLD ラインゴールド」

本作はドイツ・オランダ・モロッコ・メキシコ合作。
お互いどんな接点があるんだろうと不思議に思ってしまう。
映画の舞台となるドイツ、オランダは理解できるが、
メキシコは一体どんな絡み方か。
どうでもいいことを考えてしまう。

映画が始まり15分ほど経過した時、重厚な社会派ドラマと錯覚した。
イスラム革命により迫害された音楽家家族が痛々しく映し出される。
紛争に巻き込まれた最中に子供を一人で出産するシーンはまさにそう。
観る側も辛くなる。

その後ドイツに亡命し、新たな生活がスタートするがそこから物語は一変する。
国家間の紛争を描く世界から暴力や犯罪を中心としたアウトローを描く世界へと移る。
独特のリズムで展開していくため、いつの間にか社会性は消え、
一人の若者の生き方にフォーカスされる。

その若者が主人公のカターことジワ・ハジャビ。
実在するラッパーで本作は彼の破天荒な半生を描いたもの。
「事実は小説よりも奇なり」とはよく言ったものだ。
描かれる世界がフィクションでないのが恐ろしい。

100%忠実に映画化しているとは思わないが、その行動は一般的な想像力をはるかに超える。
いや、過度な想像力をはるかに超える。
実際にカター本人が本作のセリフ監修をしているのも驚き。
僕は9,000km先の世界を何も知らない。
小さくはあるが世界の広さを改めて知ることになる。

ただそれは知っていればいいこと。
現実問題としてその世界には足を踏み入れたくないし、カターには関わりたくもない。
遠い国の話で留めておきたい。
まあ、それだけ過激でヤバい。
白石和彌監督のヤクザの世界に近い。

ただいえるのは蛙の子は蛙。
音楽家の父親の息子の音楽的才能は高い。
センスや能力は努力だけで身につくものではない。
反発しあう親子でも肝心な面は繋がっているし、影響力も持つ。

そのあたりの構成は絶妙。
ヒップホップのリズムに乗るように流れ、勝手に吸い込まれる。
なんとも不思議な作品。
それでもかなり面白い映画。

まだまだ知らない世界は多いな・・・。

映画「オッペンハイマー」

本年度のアカデミー賞の主要部門を独占した話題作。
何も考えずに映画館に足を運べばいいが、そうはいかない。
180分の超大作であり、難解作品の多いクリストファー・ノーラン監督。
気軽な気持ちで行くときっと後悔する。

素直な感想でいえば、予習は怠らない方がいい。
解説やあらすじを叩き込んで臨んだ方がいい。
僕は事前情報を頭に入れずに臨んだが、少し後悔。

僕の理解力もあるが、登場人物の関係性や会話の内容は余程の集中力がないとついていけない。
もしくは2回、3回、観るつもりでまずは慣らしで初回を観るのはOKだけど・・・。
クリストファー・ノーラン監督作品を制覇しているわけではないが、
やはり彼らしさが出ているのではないか。

オッペンハイマーの頭の中も気になるが、
クリストファー・ノーランの頭の中はもっと気になる。
一体どんな思考で映画製作をするのか。
脚本も演出もオーソドックスさの欠片もなく、全てがチャレンジに思える。

それが無謀ではなく巧みに計算されたチャレンジ。
そうなると観る側にも覚悟が求められる。
映画を観るのに覚悟がいるなんておかしな話だが、そんなことを思う。
3時間呼吸を止めずに向き合う覚悟を持ってもらいたい(笑)。

ストーリーとは関係ない話ばかりしてしまった。
本作は「原爆の父」と呼ばれたアメリカの物理学者ロバート・オッペンハイマーを描いた歴史映画。
抜群の頭脳を持ち合わせた天才。
彼の導き出す理論を僕のような素人は100%理解できないが、それは他の人も同様。

その頭脳も持って核開発に突き進む。
自分の専門分野の研究没頭するだけないいいが、
そんなはずもなく戦時中のアメリカ政府に利用される。
当然のように葛藤と戦いながら開発を行う。

真面目一辺倒かといえばそうでもない。
だらしのない男の姿を晒したりとある意味、健全。
スケベはスケベだ。
表現がよくないな(笑)。

人間らしい点でもあるが、その人間らしさがオッペンハイマーを苦しめる。
それがアメリカが歩んできた紛れもない真実。
彼らの正義は日本にとっての最悪な出来事。
その描き方に賛否両論はあるようだが、これもまた今の状況を表す姿。
そのあたりも含め観てもらうのがいい。

本作は時間が許せばもう一度観たい。
名作「ダークナイト」も2回目の方が良かった。
理解度も進むだろうし、クリストファー・ノーランの頭の中も少しは理解できるかもしれない。