これからも前向きに 名大社会長ブログ

カテゴリ「本を読む 映画を観る」の記事一覧:

映画「すばらしき世界」

どうだろうか。
本作は先週紹介した「ヤクザと家族 The Family」と併せて観ることをおススメする。
両作ともヤクザの生きづらさを描いているが、対象的で面白い。

そして、一本はヤクザの若頭を演じ、
一本は役所の職員を演じる北村有起哉氏の比較も面白い。
これってワザと演じてる?と思ったのは僕だけか。
映画マニアの間では話題になっているはずだ。
多分(笑)。

関係ない話が先行してしまったが、
本作は役所広司演じる殺人犯三上正夫の社会復帰を描く人間ドラマ。
社会復帰なんで安易な言葉は似合わない。
ちょっとした失業から就職した社会復帰とは訳が違う。

そこには僕らが想像しがたい世間とのギャップが生じる。
自分と照らし合わせてみれば分かりやすい。
いきなり僕が13年間、社会との接点を閉ざされ、戻ってきたらどうなるだろうか。

家族、友人、生活、仕事と全てにおいて不安しかないはずだ。
それも社会から白い目で見られる存在であるとするなら・・・。
耐えがたい世界でしかない。

些細なことでブチ切れるのも、
その本人に問題があるというより社会に問題がある。
それを西川美和監督はさりげなく演出し、役所広司はさりげなく見事に演じる。

「すぐにキレるなよ」という僕の想いは届かず、
三上の葛藤を生み、暴力性に歯止めがかからない。
誰にとっても辛い。
それが生きづらさなのか・・・。

そこに正義を装ったマスコミが無責任に絡む。
最近、マスコミを悪く映画って多くね?
いいね、長澤まさみのねじ曲がった正しさ(笑)。
いや、これが正直な姿か・・・。

逃げ出す仲野大河はあのままだったら、
情けないエセジャーナリストか売れないままの作家だが、
ああいった展開で映画をある方向へ持っていった。
いいアクセントになっていたし、彼の存在がより感動を生んだといってもいい。
ストーリーテーラー的な役割を担っていた。

「すばらしき世界」というタイトルに相応しい作品にしようとすれば、
思いもよらぬ展開や感動を生む劇的なシーンを持ち込むべき。
しかし、そんなものは必要ない。

自らと戦いながらも世間と向き合い平穏に過ごそうとする努力。
実話に近かったのだろう。

その中で小さな幸せを見つけるのがすばらしき世界。
主人公三上は周りの温かさを感じてその世界を全うした。
いつどんな状況でも前を向けば何かが訪れる。

それは偶然ではなく必然。
それを感じさせてくれる映画。

三上正夫の笑顔が忘れられない。

また、訳の分からないブログになってしまった。

映画「ヤクザと家族 The Family」

一昨年観た日本映画の中で僕が一番評価したのが「新聞記者」
この作品で藤井道人監督を知った。
1986年生まれなので僕より20歳も若い。

若手が活躍する日本映画界。
なかなか、いいじゃないか・・・。
今後の活躍を期待したい。

というわけで本作。
先日の「日本独立」は予備知識を持つべきだが、この作品に関してはほぼ何も知らず。
人間臭いドンパチのヤクザ映画のつもりで映画館に足を運んだ。
確かのその要素は含んでいた。

しかし、いい意味で大いに期待を裏切られた。
ヤクザ映画に間違いはないが、その枠を大きく超え、
人としてどうなすべきかを教えてくれる映画だった。

タイトルとポスターと綾野剛の目つきを見せつけられたら、後ずさりしてもおかしくない。
だが、ここは前に一歩進んで欲しい。
この作品を感じて欲しい。
そう思える作品だった。

これは僕の短絡的な予測にすぎないが、
藤井監督は今後日本映画を背負っていく存在になるんじゃないか。
「新聞記者」とジャンルは違うが、
映画に最も重要な緊張感を両作とも巧みに引き出している。

それは迫力ある暴力シーンも落ち着いた食事のシーンも、
いい緊張感を醸し出している。

そして時代の描き方も上手い。
本作では1999年、2005年、2019年を繋ぐドラマだが、その時代の特徴が絶妙。
携帯電話は一つの分かりやすさの象徴だが、
ヤクザの価値が変化する流れはもの悲しさと共に街の景観さえも訴えかける。
プリウスが残酷に感じたのも僕だけではないはず。
煙突だけが変わらない。

そして、SNSの存在は今や特殊社会も凌駕する。
先日の「ミセス・ノイズイ」でも同様だが、一般人の何気ない行動が全てを破壊する。
藤井監督は一体何を言わんとするのか。

褒められない世界を美しく魅せ、平凡な世界を醜悪な世界へと導く。
なぜ僕は人を殺すシーンで、ジーンとしてしまうのか。
おかしいじゃないか。

本作は136分。
最近の映画では上映時間が長い。
しかし、その長さを感じることも、退屈することもない。
ヤクザ映画のイメージを外して観て欲しい。

それにしても隣町出身の綾野剛は「日本で一番悪い奴ら」といい、
「そこのみにて光輝く」といい、ろくでなしを演じさせたら右に出る者がいない。

そこだけでも観る価値があるかもしれない。

キネマ旬報は変わっていくのか

毎年、この時期だけ購入するキネマ旬報。
(そもそも僕のような半端な読者がいけない・・・)
2月下旬号は2020年の映画ベストテンが発表された。

僕は各所存在ずるベストテンの中でキネ旬が一番権威があると思っている。
その想いは変わらないが、同時にこのままでもいいのかな?
と今月号を読みながら、少し感じたり・・・。

日本映画の1位は「スパイの妻<劇場版>」
外国映画の1位は「パラサイト 半地下の家族」
まあ、これは予測通りというか順当。

日本映画の2位は大林監督の遺作「海辺の映画館ーキネマの玉手箱」。
昨年逝去された大林監督への敬意の念も票に含まれてもいるだろう。
外国映画は「はちどり」。
なんと外国映画はワンツーと韓国映画。
そのあたりが時代と共に製作者の力の入れ具合を感じる。

自ら映画コラムニストと名乗る僕が2020年映画館で鑑賞した作品は28本。
残念ながら映画コラムニストとしての本数ではない。
自称だから許されるだけ(笑)。

せめて日本映画は抑えておきたいが、大林監督作品しかり、
4位アンダードックしかり、ベストテンのうち7本を観ていない。

それが読者選出ベストテンとなるとちょっと違う。
観ていないのは4本。
やはり目線は評論家よりも一般の方に近い。
公開される劇場の問題もあるが、評論家ウケするしないも影響する。

その中で気になったことが2つ。
読者選出で1位になった「天外者」。
三浦春馬の遺作で五代友厚を描いた作品。
この作品は評論家が選ぶベストテンに入るどころか、1点も獲得していない。

1点から1位になった204点まで計125作品の中に入っていないのだ。
そんなことあり得るのか?
何度も目を凝らして確かめたので間違いはないと思う。
過去の記憶を引っ張り出してみても、こんな稀有なことはない。
この作品を僕は観ていないので何とも言えないが、読者と評論家でそんなに差が出るものか。

そして、もう一つ。
読者の感想やベストテンも載せられているが、50代、60代で占められる。
40代は一人だけ。
20代、30代はゼロ。
投票者はいると思うが少数派であるのは間違いない。

これは如実に今の出版業界、キネマ旬報の置かれた状態を表している。
少なくとも僕は10代からこの雑誌を読んできた。
ターゲットの移行はあるだろうが、20代の硬派な映画好きはいるはず・・・。

と本誌の訴求したい点とは異なる点が気になってしまった。
そういえば昔はよくチェックしていた新聞の「映画演劇案内」欄。

今や載っている映画館は名古屋シネマテークのみ。
これも時代の流れだね。

時代を描き反映させるのが映画の役割だとは思っているが、その周辺でも確実に起きている。
今号のキネマ旬報を読みながらそれを実感。
本誌に日本映画、外国映画の総評がないのも寂しい。

昨年は書いた僕のベストテン
今年はどうかといえば、それはまた、どこかのタイミングで。
思いのほか、文字量が多くなってしまったので・・・。

見逃した作品でいえば8位の「喜劇 愛妻物語」は早く観たい。
主演女優賞を獲得した水川あさみさんもね。

と読み手にとっては分かりずらいブログになってしまった。

カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方

いい組織を構成するのは難しい。
5~6年前のブログを振り返ると苦労しながらも、いい感じの組織を作れていた。
(自分勝手にそう思う。)
確かに全体の満足度は高かった。

では、それが完璧かといえばそうではない。
時間が経過すればすぐ陳腐化する。
また、人数が増え、部門の立ち位置やメンバーのポジションが変われば、すぐ古くなる。

一つは根本的な組織作りができていなかったことが問題。
ビジョン、ミッションの明確さの浸透でその度合いも変わる。
なんとなく通じていたことが難しくなるのはどこの会社でもいえるはず。

名大社だけの問題ではない。
だからこそこんな書籍が重要であり、そこから学ぶ必要もあるのだろう。

30年以上、同じ会社で働き、10年以上、経営者のポジションにありながら、
いかに曖昧模糊としていたか責任を痛感する。
今思えば、いい組織を作っていたと錯覚していたのだろう。

思い切り卑下するのも本書を読んで、必要以上に感じてしまったため。
それだけ著者の唐澤さんに納得し、学びも大きかった。
特にカルチャーの7Sは参考になり、自社にあてはめてみることに。

Stance:スタンス(組織としてのあり方)
Shared Value:シェアドバリュー(行動指針)
Structure:ストラクチャー(組織の構造・形態)
System:システム(制度)
Staff:スタッフ(人の採用や育成)
Skill:スキル(組織としてのスキル、強み)
Style:スタイル(組織風土)

とても分かり易く、自社の課題点も導きやすい。
これを知るだけでも本書を読んだ甲斐があった。

それにしても復活した日本マクドナルドのきっかけが入社5年目の女子社員からのメールとは・・・。
一人の若手社員の行動で大企業のカルチャーが変わる。
その衝撃は大きかった。

原田体制の成功体験も決して間違いじゃない。
(タイホは残念ですね・・・)
サラ体制でいきなり変わったわけでもない。
自社の「経営スタンス」を見直し、ブレずに取り組んだ結果が今の好業績に繋がっている。
過去最高益だもんね。
素晴らしい!

商品戦略だけでなくカルチャーモデルを作り上げたのが成功の要因。
うちも学ばねばならない。

唐澤さんはグロービス経営大学院の学びが大きかったという。
なるほど。
ここにも成功者がいるわけだ。

刺激は常に外と内に持たねばならない。
僕も周りからもっと吸収すべきなんだろうね。

ありがとうございました。

ほんとうの事業承継 「伝承」と「変革・適応」の教科書

本書は僕も所属する日本ファミリービジネスアドバイザー協会がこの1月に発刊した新刊。
理事長をはじめ協会に属する23名の方が専門分野についてまとめている。

僕のパートは・・・と紹介したいところだが、今回は著していない。
そんな表現だと次回ありそうな感じだが(笑)、それはない。
僕にはここで語る専門領域はなく、広報的な役割でその存在を知らしめているに過ぎない。

いずれ違うカタチを・・・と虎視眈々と狙っているんだけど(笑)。
実際は浅く広くしか知識がないため、この場で多くの方を納得させるスキルは持ち合わせていない。
もっと学ばねばなりませんね。

そんな意味で本書はタイトルにもあるように教科書的な役割。
ファミリービジネスに関わる方もサービスを提供する方も該当する。
ファミリービジネスど真ん中の方が自らの経験を語る章もあれば、
コンサルタントの立場からクライアントの事例紹介もある。

いずれもアドバイザーとして機能を果たし、全体像でファミリービジネスが何たるかが掌握できるのだ。
大半の執筆者が面識があるため、僕自身はその方を照らし合わせながら読み進めることができた。
その分、親和性が高いともいえるが、そうでなくとも身近な事例として参考にすべき点は多い。

以前よりファミリービジネスのイメージは向上しているが、まだ後ろ向きなイメージが強いのも事実。
サラリーマンでは分かり得ない世界だし、当事者としても自信を持って語れる方はまだ少ない。
だが、本書から得る情報でプラスに転じていく要素は強い。
それはアトツギといわれる存在は尚更。

コロナ禍の時代になり、事業承継はより重要になっていく。
事業が順調に成長するケースは少なく、
いかに持続させるかが目的となると継ぐ側も継がせる側も慎重にならざるを得ない。
悩みどころも環境で全く違うものになるだろうし・・・。
そんな時に必要になるのが各分野で活躍するファミリービジネスアドバイザー。

僕もある部分ではそのニーズには答えられるだろう。
だからというわけではないが、来る2月24日にはファミリービジネス向けセミナーを開催。
テーマも「事業承継とM&A」と本書とダブる。
興味ある方はこちらから

最後は宣伝になってしまったが、ファミリービジネスが日本経済を支えているのは事実。
コロナからの復活もここの頑張りに依る面が多い。
もちろん僕もね・・・。

より多くの方に読んでもらいたい1冊。

映画「日本独立」

映画館で予告編を観た時に一瞬、「えっ」と思ってしまった。
伊藤俊也監督・・・。
大変失礼で申し訳ないが、まだご健在だったわけですね。

僕の中では1980年代に活躍した監督で、すでに現役引退されたと思っていた。
まだまだ映画を作る力を持っていたわけですね。

それが本作の第一印象。
予告編を観る限り社会派人間ドラマ。
そんな監督のイメージもなかった。
大変失礼しました。

本作は第二次世界大戦後の日本を描いている。
登場人物は主に二人。
白洲次郎と吉田茂。

大学の先輩でもあり名古屋市会議員の吉田茂さんではない。
それは単なる同姓同名。
説明しなくてもわかるか(笑)。

白洲次郎を演じるのは浅野忠信さん、吉田茂を演じるのは???。
予告編を観た段階ではどんな役者さんかさっぱり分からなかった。

調べてみると小林薫さん。
「ウィンストン・チャーチル」のゲイリー・オールドマン並み、
もしくは「バイス」のクリスチャン・ベール並みのメイク。
かなり実物に近く、声からしか小林さんを想像できない。

ということは白洲次郎は比較的近いということか。
まあまあダンディぶりはそうなのかも・・・。

戦後の内閣とGHQの交渉事は僕らは意外と知らない。
日本国憲法が出来上がるまでの互いの葛藤も。

本作は映画を楽しむよりは歴史を学ぶ感覚で捉えたほうがいい。
その描き方に思想が入っているかは不明だが、
今の日本へのある種のメッセージと受け止められなくもない。
それは観る人次第。
思ったほど話題にならず、大きな劇場で上映されないのも理由の一つか。
単純に配給会社の力もあるかもしれないが。

映画を通して歴史を学ぶことも重要。
吉田茂が本当に喋ったかどうかは知らないが、
GHQの意味はGo Home Quicklyというのは皮肉っぽくて面白い。

確かに柄本明扮する松本大臣が怒り狂うのも理解はできるが、それは敗戦国だしね。
もっと鬼気迫る緊迫感があればもっと魅力は上がっただろう。

僕は本作でようやく白洲次郎の日本における役割が理解できた。
ただのダンディおじさんじゃなかった。
もっと知るべきだろうね。

数ある書籍の中で何を読めば一番いいだろうか?
おススメがあれば教えて欲しい。

一昨日のランチはカレー台湾まぜそば。それでは。

ビジネスの未来

これを読もうかどうか思っていたところ、
盟友であり、昨日も「Clubhouse」をご一緒した櫻山さんが絶賛していたので手に取った。

山口周氏はここ最近では好きな作家の一人。
著書も読みオンラインの講演会も参加したりしている。
作家というよりはビジネスセンスのある哲学者なのかもしれない。
本書もその表現にあう作品ともいえないか。

「ニュータイプの時代」を読んだ時も「意味がある」ことを強調されていたが、本書もそう。
さらにパワーアップ。
改めて自分の存在に問いを立てることにもなった。

僕らは、いや、ここでは僕はというべきだろう。
僕は常に上を目指して頑張ってきた。
あまりいい時代とは表現されない平成という時代のど真ん中で勝負をしてきた。
少しでも自分も他者も成長することを期待し努力してきた。

それでも日本のGDPは伸び悩み、失われた30年と揶揄された。
目標はいつも前年比110%とか120%を課せられ、それが当たり前と認識していた。
目標達成が成長だと思い込んでいた。

そのためには勉強をしなきゃいけないし、多くの出会いを求めなきゃいけない。
それを繰り返すことが正解であり、他者にもそれを要求してきた。
それが僕の「べき論」。

平成はそれが正しかったかもしれない。
実際はそうじゃないが、そう思いたい。
そんな自分がいるのは確か。
今もその価値観に縛られているのは否定できない。

しかし、そんな価値観もそろそろなのかも。
山口氏に「山田さん、そんな時代はとっくに終わったよ。」と鼻で笑われそう。

これから向かう先は「高原社会」。
その社会の前提がエコノミーとヒューマニティーを両立させることになる。
僕自身のこれまでの理想をリセットし、新たな理想を作り出すのが今のタイミングといえそう。
あまり成長を臨むのはエゴと解釈した方がいい。

資本主義にどっぷり漬かった自分を壊すことは容易ではないが、
この先を考えるのであれば確かにその方が生きやすい。
「若い時の苦労は買ってでもせよ」も違う意味になるかも。
いや、死語になるかもね。

本書では「新卒一括採用」の弊害にも言及している。
表面的に捉えれば山口氏の書かれる通りだと思う。
しかし、実態は少しずつではあるが本質的な行動に向かっている。
急には変わらないが少しずつ変化が生じているのも事実。
そこは敢えてそんな表現をしておこう。

はたして山口氏の唱える「ユニバーサル・ベーシック・インカム」の時代がくるかは分からない。
ただそうなったとしても当たり前でいられる自分でありたい。

いい勉強になりました。

映画「ミセス・ノイズィ」

あのようなエンディングで本当に良かったと思った良作。
それはある程度、予想できた終わり方。
先が読める映画が果たして秀作かどうかと疑問になるかもしれないが、
それが正しいと思える映画だった。
そのあたりが一般的な高評価に繋がっているのかも・・・。

自分の中の正義と世の中のズレを痛感できる作品。
いかに普段の自分がバイアスが掛かっているかを教えてくれる。
それは自分の価値観があればあるほど感じられる。
価値観が自分の中の正義とイコールになり、結果的に周りに迷惑を掛ける。

この映画に悪人は登場しない。
誰も自分の行動を正しいと信じ、その正しさを追求しようとする。
誰もが善人。

それは本作でいう隣同士に住む家族が互いにいえるし、
その善人さが誤解を生み不幸を招く。
そこに無責任な善人たちが集まり、火に油を注ぐ。

映画はその現実を面白おかしく伝えているが、決して他人事ではない。
気をつけなければ僕も当事者になり得る。
誰もが加害者にもなるし被害者にもなるということ。

ここまで書いたところで、何の映画かはさっぱり分からないと思う。
まあ、それでいい。
注目の話題作でもなければ、有名な役者陣が出演するわけでもない。

僕は主役の篠原ゆき子さんは「罪の声」の不幸な母親役で知る程度。
相手役の大高洋子さんはその存在すら知らなかった。

この二人がとにかくいい。
特に決して演技が上手とは思えない大高洋子さんが抜群にいい。
いかにも勘違いを生みそうな顔立ちをしているのだ。

人は大体第一印象で判断する。
それは間違いではない。
僕も第一印象を上げるべき努力をしている(笑)。

しかし、世の中にはそこまで気が回らない人たちがほとんど。
些細な行為で勘違いを招き、それが深みにはまっていく。
当の本人はそんなことは露知らずで、気づいた時に手遅れになるんだけど・・・。

そして善人を装う人たちは間違いなく無責任。
本作もマスコミがその代表として描かれる。

それには問われる理由はあるはずだが、最近はそんな作品が多いと思う。
「よこがお」であり「望み」であり・・・。
やはり振りかざす正義はあてにならない。

マスコミがSNSに踊らされるのも残念だが、きっとそれが現実。
天野監督はそのあたりを笑いと涙で巧みに描いている。
状況次第では酷い作品になりそうな映画を感動作に仕上げてくれた。

どちらにしても弟くんは反省しなきゃいけないね。
そんな意味ではキャバ嬢が映画の中で一番まともな人物だったりして・・・。

どんな作品かは全く分からないままブログが終わるが、観て損はない映画。
時代を上手く反映した一本だった。

映画「この世界に残されて」

映画評論仲間のBushさんのオススメがなければ観ることがなかった作品。
存在にすら気づかずスルーしていた可能性も高い。
持つべきは見識高い仲間ですね。

感謝!
タイミングよくミリオン座での公開も運が良かった。

本作はハンガリー映画。
昨年が観た「サウルの息子」も2年半前観た「心と体と」も結構重い。
重い作品がハンガリー映画の特徴なのか、はたまた重い作品が国内で上映されるのか、
その背景は分からない。

しかし、アメリカや韓国以外の外国映画を観る機会を作った方がいいのは事実。
歴史的な背景や政治色、その文化も学ぶことができる。
多分、ハンガリーに旅行に行くことない。
あれっ、娘は行ったのかな?

特に本作はその歴史的背景を知っているか否かで感じ方が違う。
僕のような疎い人間も感動できるが、歴史の詳しい方の感動は別次元へと誘うだろう。
その点が僕とBushさんの視座の高さの違いか・・・。
このあたりに人としての深みの違いが出ますね(笑)。

僕らは第二次世界大戦を日本中心で考えがち。
日本とアメリカ、日本とドイツ、その関係において両国間の立ち位置を語る。
ではハンガリーの立場で語ることができるか。

多くの人はその事実すら知らない。
ホロコーストといわれるナチス・ドイツが行ったユダヤ人の虐殺の舞台がハンガリーだったことも・・・。
無知は罪。
もっと歴史を知らねばならない。

国内の悲惨さを知るだけが戦争を反対する理由ではない。
同様に外国でも深い傷を知ることが反対の理由にも繋がる。
本作を反戦映画と捉えるのはナンセンス。
僕もそんな語り口だが、それを主張したいわけではない。

傷つきながらもどうすれば希望を持てる人生を歩むことができるのか。
感情を捨てた人間が人と関わりで大切なものを取り戻していく。
小さな変化の積み重ね。
そのありがたさを映画は教えてくれる。

このコロナ禍の辛さがほんのちっぽけな出来事といい錯覚を与えてくれる。
そして、気づかせてくれる。
守るべきは守ると・・・。

とても小さな作品だが、この時期に公開されるのは大きな意味があるのかもしれない。

創業家一族

しばらくこの分野をしっかりと学びたいと思う。

「名古屋ファミリービジネス研究会」を主催して、
多くの同族経営の経営者と懇意にさせてもらっている。
また、経営者仲間もそのほとんどが同族企業の二代目、三代目。

有難いことにみなさん優秀で人間性も優れた方ばかり。
いわゆるボンクラ息子と呼ばれる人は皆無。
それなりの方が集まる場しか参加していないので、当たり前かもしれない。

一方で僕が知らない正体とやらを持っているのかもしれない。
本音と建て前を上手く切り分けているのかもしれない。
実態は不明だが、少なくともそれを感じることはない。

そんな中で僕は異色の存在。
創業家でもなければ親戚筋でもない。
起業家でもない。
大企業のサラリーマン社長ならありふれた存在だが、中小企業の生え抜き社長は少ない。
雇われ社長でもない。
オーナーの意向にビビることもない。

だからこそと自分自身で思うのかもしれない。
創業家やその企業の辿った道のりを学びたいと・・・。
まあ、僕も由緒正しき山田家の長男なんだけど。
ちょっと違うか(笑)。

本書は日本を代表する企業を中心に44社の後継の流れが描かれている。
必ず家系図も掲載されているので、
じっと眺めながら企業の歴史を確認するとより興味深くなる。

大塚家具のようにワイドニュースにもなるような骨肉の争いもあるが、
ほとんど表面化しない創業家と経営陣との争いや家族間の揉め事も垣間見える。
それだと野次馬的な要素になってしまうが、僕が知りたいのはそんなことではない。

その経営者がどんな気持ちで後継者を選び、周りとの関係性を保ちながら譲っていくかということ。
きっと身近にも多いだろうから、今後はそのあたりも直接話を聞く場を作りたい。

本書に登場する立派な企業も必ずし順調ばかりではない。
必ずといっていいほどクーデターや更迭、解任、
突然の死などがあり、その都度、解決に向け奔走する。

また、カリスマ経営者であるばあるほどその後継者の立場は難しい。
名経営者のご子息が優秀とは言い切れない。
いくら帝王学を小さい頃から学ばせても期待通りに育たない。

経営者なら一度は読むであろう小倉昌男氏の「経営学」。
小倉氏の息子は結果的に追放されている。
その哲学は理解していても実践できるかは別。

これからでいえば本書の表紙の真ん中に載る経営者。
モノクロの写真ではない。
65歳で社長引退を公言し、それを撤回し、70歳で会長就任も流れたという。

いつまで経っても経営者が一番優秀なのは実は困ったことなのかも。
その最たる例がこの会社になってしまうのかな・・・。

順風満帆な経営者でも悩みは尽きることはない。
順調でなければよりそうだろう。
ここに描かれる背景もいい学び。

できれば晩節を汚すことだけはしたくない。
そんなことを考えながら読み終えることとなった。