これからも前向きに 名大社会長ブログ

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映画「パスト ライブス 再会」

解説には「海外移住のため離れ離れになった幼なじみの2人が、
24年の時を経てニューヨークで再会する7日間を描いた、
アメリカ・韓国合作の大人のラブストーリー」と案内されている。

普段なら「ふ~ん」と素っ気なく通り過ぎる。
この年齢になると恋愛映画に興味を示さない。
あまり気が向くこともない。

しかし、なぜか観てしまった。
アカデミー賞ノミネート作品というのも、その前評判の高さもその理由。
また、何度となく予告編を観て、感情を抑えた演技に惹かれたのもその一つ。

恋愛映画は得てしてうるさくなりがち。
泣いたり叫んだり、飛び出したり暴れたりすることもい多い。
盛り上げるには必要な要素だが、いいオヤジになると却ってシラケてしまう。
予告編を観る限り本作にそんなシーンはなかった。

その期待感で映画館に足を運んだ。
僕の予測はほぼ的中。
こみ上げる感情を抑えながら物語は静かに進んでいく。

最初の別れから12年。
そこからまた12年。
お互い恋心を抱きながらすれ違う人生。
それを否定することはしない。
相手を責めたり、傷つけることもない。

自分の気持ちに素直に従いながら、気持ちを抑制する。
これが大人のラブストーリーということか。
激しいキスシーンや衝動的な行動を起こせばドラマは盛り上がるが、そんな必要はない。
じっと見つめ合うだけでお互いを理解し、優しい言葉でお互いを認める。

ストーリーとして奇抜さがあるわけじゃない。
ありふれたテーマのようにも思える。
それでも新鮮。
清々しい気持ちにもなれる。

一年に1回くらいはラブストーリーを観てもいいと思ってしまった。
会話もせずお互い見つめ合うだけの長回しがむしろ効果的。
その時間が心地よかった。

主演女優のグレタ・リーはこれまで見てきた韓国系美人とは異なる。
アメリカで生き抜く強さを感じる。
本作同様、両親が韓国へ移民。
韓国内での生きづらさをある種、表現しているとも思った。
そんな見せ方もありかな・・・。

本作を韓国映画と捉えるなら、日本映画がまた一歩先を越されてのかもしれない。
心温まる作品にもなるけどね。

映画「RHEINGOLD ラインゴールド」

本作はドイツ・オランダ・モロッコ・メキシコ合作。
お互いどんな接点があるんだろうと不思議に思ってしまう。
映画の舞台となるドイツ、オランダは理解できるが、
メキシコは一体どんな絡み方か。
どうでもいいことを考えてしまう。

映画が始まり15分ほど経過した時、重厚な社会派ドラマと錯覚した。
イスラム革命により迫害された音楽家家族が痛々しく映し出される。
紛争に巻き込まれた最中に子供を一人で出産するシーンはまさにそう。
観る側も辛くなる。

その後ドイツに亡命し、新たな生活がスタートするがそこから物語は一変する。
国家間の紛争を描く世界から暴力や犯罪を中心としたアウトローを描く世界へと移る。
独特のリズムで展開していくため、いつの間にか社会性は消え、
一人の若者の生き方にフォーカスされる。

その若者が主人公のカターことジワ・ハジャビ。
実在するラッパーで本作は彼の破天荒な半生を描いたもの。
「事実は小説よりも奇なり」とはよく言ったものだ。
描かれる世界がフィクションでないのが恐ろしい。

100%忠実に映画化しているとは思わないが、その行動は一般的な想像力をはるかに超える。
いや、過度な想像力をはるかに超える。
実際にカター本人が本作のセリフ監修をしているのも驚き。
僕は9,000km先の世界を何も知らない。
小さくはあるが世界の広さを改めて知ることになる。

ただそれは知っていればいいこと。
現実問題としてその世界には足を踏み入れたくないし、カターには関わりたくもない。
遠い国の話で留めておきたい。
まあ、それだけ過激でヤバい。
白石和彌監督のヤクザの世界に近い。

ただいえるのは蛙の子は蛙。
音楽家の父親の息子の音楽的才能は高い。
センスや能力は努力だけで身につくものではない。
反発しあう親子でも肝心な面は繋がっているし、影響力も持つ。

そのあたりの構成は絶妙。
ヒップホップのリズムに乗るように流れ、勝手に吸い込まれる。
なんとも不思議な作品。
それでもかなり面白い映画。

まだまだ知らない世界は多いな・・・。

映画「オッペンハイマー」

本年度のアカデミー賞の主要部門を独占した話題作。
何も考えずに映画館に足を運べばいいが、そうはいかない。
180分の超大作であり、難解作品の多いクリストファー・ノーラン監督。
気軽な気持ちで行くときっと後悔する。

素直な感想でいえば、予習は怠らない方がいい。
解説やあらすじを叩き込んで臨んだ方がいい。
僕は事前情報を頭に入れずに臨んだが、少し後悔。

僕の理解力もあるが、登場人物の関係性や会話の内容は余程の集中力がないとついていけない。
もしくは2回、3回、観るつもりでまずは慣らしで初回を観るのはOKだけど・・・。
クリストファー・ノーラン監督作品を制覇しているわけではないが、
やはり彼らしさが出ているのではないか。

オッペンハイマーの頭の中も気になるが、
クリストファー・ノーランの頭の中はもっと気になる。
一体どんな思考で映画製作をするのか。
脚本も演出もオーソドックスさの欠片もなく、全てがチャレンジに思える。

それが無謀ではなく巧みに計算されたチャレンジ。
そうなると観る側にも覚悟が求められる。
映画を観るのに覚悟がいるなんておかしな話だが、そんなことを思う。
3時間呼吸を止めずに向き合う覚悟を持ってもらいたい(笑)。

ストーリーとは関係ない話ばかりしてしまった。
本作は「原爆の父」と呼ばれたアメリカの物理学者ロバート・オッペンハイマーを描いた歴史映画。
抜群の頭脳を持ち合わせた天才。
彼の導き出す理論を僕のような素人は100%理解できないが、それは他の人も同様。

その頭脳も持って核開発に突き進む。
自分の専門分野の研究没頭するだけないいいが、
そんなはずもなく戦時中のアメリカ政府に利用される。
当然のように葛藤と戦いながら開発を行う。

真面目一辺倒かといえばそうでもない。
だらしのない男の姿を晒したりとある意味、健全。
スケベはスケベだ。
表現がよくないな(笑)。

人間らしい点でもあるが、その人間らしさがオッペンハイマーを苦しめる。
それがアメリカが歩んできた紛れもない真実。
彼らの正義は日本にとっての最悪な出来事。
その描き方に賛否両論はあるようだが、これもまた今の状況を表す姿。
そのあたりも含め観てもらうのがいい。

本作は時間が許せばもう一度観たい。
名作「ダークナイト」も2回目の方が良かった。
理解度も進むだろうし、クリストファー・ノーランの頭の中も少しは理解できるかもしれない。

映画 マイホームヒーロー

予定はなかったが、映画コラムニスト仲間が評価していたので、観ることにした。
原作漫画も知らなければ、ドラマ化も知らなかった。

過去の描き方がえらく雑だなと思っていたが、それはドラマで描いていたのが理由。
特別出演の吉田栄作の扱いが瞬間的なのもそう。
あとで確認して分かった。
どうやらドラマでは7年前が中心のようだから。
ドラマを見ていたら、本作はもっと楽しめたはず。
今更いってもおかしいが・・・。

映画だけだと粗が目立ちツッコミどころも多いが、大衆ドラマとしては及第点。
飽きることなく面白おかしく観ることができた。
警察になった娘が、なぜ半グレと付き合っていたか疑問だが、
(他にも疑問点は多数)
原作やドラマを知っていたら不思議に思うこともない。

僕は事前情報を仕入れずに映画を観ることが多いが本作は逆。
映画自体がドラマ鑑賞を基本にしている。
そんなように感じた。
これから予定される方はドラマを観てから臨んだ方がいい。

シリーズ化された映画を途中から観るようなものなので・・・。
「デューン 砂の惑星 PART2」も気になっているが、まずは前作から(笑)。

あえて注文を付けるのなら警察官で娘役の齋藤飛鳥。
頑張っているとは思うが、警察としては迫力がない。
アイドルの域を越えない。
もう少し鍛えた方がいい。

上官のインパルス板倉俊之もちょっと。
ドラマではコミカルな役だったのかな?
ドラマ「不適切にも程がある」は悪くないけど・・・。

あと警察の裏切り者大東駿介も。
現職のままで、あんなリスクある役割は担わないはず。
と気になった点を挙げてみた。
これはあくまでも個人的な視点。

一人で観るのではなく、家族や夫婦で観るにはお手軽でいい。
感動するシーンも緊張するシーンも用意され、ラストシーンも理想的なので満足度は高い。

本作の「マイホームヒーロー」は家族思いのお父さん。
家族を守る姿には共感するが、僕はあそこまでできるだろうか。
早々に諦めてしまうかも・・・。
ヒーローにはなれないかもね。

映画「ビニールハウス」

ポスターに書かれたキャッチコピー「半地下はまだマシ」。
半地下とは4年前に公開の「パラサイト 半地下の家族」を指すだろう。
その生活がまだマシというのは韓国はどれだけ負を抱えた国なのか。

最近、目にする韓国内の報道も暗いニュースが多い。
日本の出生率なんて比較にならないほど低い。
そんなに将来に希望が持てないというのか。

低所得層がビニールハウスで暮らす実態はあるという。
そこまで貧富の差が広がっている事実を映画は教えてくれる。
原題は「Greenhouse」で日本語訳は「温室」。
そのままだと実態が伝わらないのか・・・。

1月に観た「コンクリート・ユートピア」も恐ろしい作品だったが、リアルさでは本作が上回る。
現実問題としてあり得る世界。
いや、実際はここに至ることはないが(ないと思いたい)、
近い世界があるのかもしれない。

本作には一人として幸せな人物は登場しない。
すべて何かを背負い不幸に向かって生きている。
幸せを掴むには誰かの犠牲の上に乗るしかない。
それがとても辛く悲しい。

これを隣国の作品と対岸の火事として観るのは危うい。
同じような出来事が日本でも描かれる可能性は少なくない。
自分事として観る必要はあるかもね・・・。

エンターテインメント作品が目立つ韓国映画だが、時々、強烈な社会派ドラマを送り込む。
嬉しくはないが、こういた社会問題を提示してくれるのはありがたい。
孤独や介護、貧困問題は日本でも同じだし、
僕の20年後がこの舞台にならないとも限らない。

重くて辛いが、観ておきたい。
万人にはおススメしないが、社会派ドラマが好きな方は観た方がいい。

それ以外のおススメポイントは主演のキム・ソヒョン。
自虐的で不幸な母親で暗い表情ばかりが目立つが、時折、美しく映し出される。
全く知らなかったが、とてもタイプの女優さん。
韓国って、奇麗な女優さんて多いよね。
他の作品も観たくなってしまった。
すみません、個人的な嗜好で・・・。

本作を観た方で語り合いたいのがラストシーン。
ハッピーエンドと捉えるか、最悪の結末と捉えるか。
ぜひ、語り合いましょう。

映画「アバウト・ライフ 幸せの選択肢」

まず映画館に入って驚いた。
お客さんの大半が高齢の女性。
どうだろうか、60代から70代ではないだろうか。

映画に関して敏感なのか、
シニア向けの情報誌からおススメされたのか、理由は不明。
出演者がダイアン・キートン、リチャード・ギア、スーザン・サランドン、
ウィリアム・H・メイシーら往年のスター俳優も原因かもしれない。

失礼な言い方だが、80年代に最も人気のあった俳優。
懐かしさが劇場へと足を運ばせたとも考えられる。
いつまでも最前線で活躍されるのは嬉しいことだけど。
リチャード・ギアは年を取ったが、昔とほぼ変わらない。
優しくなった印象。

ストーリーは結構ありがち。
新鮮味はない。
それが却って年配者の安心材料になるのかもしれない。

不倫関係にある熟年カップルが偶然にも自分の子供同士が婚約者という設定。
そのドタバタを面白おかしく描く。
時に張り詰める場面もあるが、暴力を振るったり、相手を大きく傷つけることはない。
あくまでも面白おかしく、悲壮感は漂わない。
そして最終的にはハッピーエンド。

最近、人が傷つき救いようのない作品が多かったが、そんな世界とは真反対。
不倫を描いても人間らしさが伝わり温かい気持ちになる。
褒められた行動ではないが、決して悪くはないと・・・。

熟年夫婦を描く作品を観ると、いずれ足を踏み入れる世界と自分とダブらせる。
どこの夫婦も何十年も寄り添えば話すこともなくなり、不満もたまる。
そのまま放置するのか、改善する方向に向かうのか、
刺激を求め外に飛び出るのかは、人それぞれ。

遠くない将来、子供も結婚するだろうし、そうなると自分たちはどう向き合うのか。
あまり想像できない。
自然体でいこうと思うが、映画のような世界にならないとは限らない。
ハッピーエンドが予め分かっていれば、そんな世界も悪くはない。
適当に楽しい生活が続けばいいのかと・・・。

そんなことを思ったり。
たまには肩ひじ張らず吞気な気分で映画を観るのもいい。
そんな作品だった。

異端のチェアマン 村井満、Jリーグ再建の真実

本書のモデルとなっている村井さんには数度、ご一緒させて頂いた。
お酒を共にする機会も頂いたが、とても謙虚な方。
本書に描かれるJリーグの再建はまさに真実だが、
それを誇ったり、偉そうに語られることは一切なかった。

著書「天日干し経営」と被る箇所もあるが、自ら書かれた方が控えめな表現。
とてつもないことを成し遂げたにも関わらず、ごく普通の出来事のように書いている。
本書で改めてその実績の凄さを確認。
本当の大物や本物の経営者はきっと村井さんのような方。

世の中には自分の功績をかなり盛って自慢する方も多いが、
(それはそれで立派だけど)
こんな事実を見せつけられると尊敬すべきはどちらかは明確。
出会いに感謝するしかない。

僕は野球よりもサッカーの方が好きだ。
ドラゴンズも応援しているが、グランパスの方が気にはなっている。
今シーズンはかなり心配。
降格なんてないよね・・・。

そんなことをいいたいのではない。
サッカーといえばJリーグ。
この10年の取り組みは間接的に理解していたが、詳細までは知らなかった。
安泰に思えるJリーグもいくつかの危機を超え、次のステージへと向かう。

長年同じメンバーと一緒に仕事をする会社とは異なる。
多種多様な人材が集まり組織を構成し、一定期間が過ぎれば、また新たな組織が作られる。
そんな環境でリーダーシップを発揮するのは、過去の実績があるからとはいえ容易ではない。
想定しない様々な困難が待ち構えている。

本書に紹介される差別問題、DAZNとの交渉、コロナ禍での対応もそう。
ほぼ前例のない課題に向き合い、ひとつずつクリアにしていく。
そんな中、チェアマンであった村井さんは柔軟に対応するが信念は曲げない。
僕には到底無理。
(大丈夫、期待してないから・・・)

いつも言われる「魚と組織は天日にさらすと日持ちが良くなる」を徹底。
より緊張する方を選択し物事にあたる。
詳細は本書を読んでもらえればと思うが、
もし、村井さんがチェアマンでなければJリーグは別の道を歩んでいたかもしれない。
悪い意味で・・・。
より多くの方に本書を読んでもらいたい。

著者の宇都宮徹壱氏は本書で初めて知った。
同じ1966年生まれ。
全く関係ないが、価値観も近いため共感する点が多かった。

それもおススメする理由だったりして(笑)

映画「ゴールド・ボーイ」

僕は密かに日本映画界で一番いい男は岡田将生と思っている。
軟派で軽薄な二枚目を演じさせたら右に出る者はいないんじゃないか。
しかし、演技はそれほど評価されていない気もする。

本作は軟派で軽薄とは真逆。
東昇という残忍な娘婿を演じ、それもはまり役。
ある意味、恐ろしかった。

彼が主役で物語が進むと思ったが、途中から様子が変わってきた。
映画的には岡田将生が主役だが、実際はその東昇を脅迫する中学生朝陽役を演じる羽村仁成。
どこかで見たことある顔だと確認したら「リボルバー・リリー」に出演していた。

映画後半は完全に主役の座を奪い、彼中心に物語は進んでいく。
だからポスターの顔は岡田将生と羽村仁成と半々なのか。
なんだか単純だな(笑)。
まあ、2人とも「ゴールド・ボーイ」だし・・・。

本作は沖縄を舞台としたサスペンスドラマ。
原作は中国で人気の小説だという。
エンドロールにやたら中国人名が連なるのが不思議だったが、それが理由。

むしろ韓国映画にありがちな作品。
物語は二転三転し、思わぬ方向に進む。
韓国映画の十八番かと思わせる展開に、グイグイと引っ張られた。

その構成に吸い込まれ、面白く観ることができた。
映画としての完成度はそれなりに高い。
上手く繋がっていると思う。

しかし、冷静に考えればとても恐ろしい話。
完全犯罪を狙ったのは確かだが、それを考えたのは中学生。
それもクラストップの優等生。

犯罪と結びつけるだけなら不思議じゃないが、その精神性は異常。
スリラーでもホラーでもないが、とても恐ろしい。
そんなことを考えているなんて・・・。
そりゃあ、岡田将生も困っちゃうよね(笑)

監督は金子修介氏。
久しぶりに名前をみた。
監督作品を観たのは1995年の「ガメラ」以来じゃないか。
ほぼ30年ぶり。

最も活躍していたのは僕の大学時代の37~38年前。
日活ロマンポルノでデビューし、当時のアイドル映画を何本も撮っていた。
バブル期の就活を描いた「就職戦線異状なし」も金子作品。
過去の存在かと思っていたが、
(失礼でスミマセン)
本作を観る限り力は衰えていない。

沖縄が舞台ならパーッと明るくしてほしいが、意外とそうならない。
思い出しても暗い作品が多い。
本作も街並みや背景がマッチしていたし・・・。

タイトルの「ゴールド・ボーイ」の意味はぜひ映画で確認してほしい。

映画「52ヘルツのクジラたち」

結構、評価が高いので観ることにした。
同様に評価の高い「夜明けのすべて」とは真反対の作品。

片方は日常で、片方は非日常。
僕にはそう映った。
どちらに感動するかは観る人によるが、感動させやすいのは非日常。
あり得ない世界の方が人の心は動かしやすい。

畳みかける展開が痛みや驚きや喜びを生み、心を動かす。
最終的に感動を呼び込む。
そんな点で本作は成功だろう。

物語は相当、辛い。
今も過去も虐待が一貫している。
そんな時に必要ないだろう暴力も。
それが映画を引っ張るのだから、日常を描く「夜明けのすべて」とは大きく異なる。
どちらが好みかは大きく分かれそう。

2021年本屋大賞を受賞したベストセラー小説の映画化。
ストーリーの面白さは映画でもそれを反映している。
のめり込んで鑑賞できる作品であるのは間違いない。

監督は成島出氏。
こんなテーマの作品は得意領域。
僕は特にファンではないが、ここ数年の作品はすべて観ている。

2020年の「グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇」
2021年の「いのちの停車場」
2023年の「ファミリア」「銀河鉄道の父」
こうして作品を並べてみると監督のカラーが理解できる。
日本映画界で安定度抜群の監督。

主演は杉咲花。
何もいうことはない。
「市子」でも凄かったが本作も見事。
らしさが伝わってきた。

僕が驚いたのが志尊淳。
ちょっとかわいい男優くらいに思っていたが、そうじゃなかった。
本作における役どころは神秘性や抱える闇、それを超える優しさを含め素晴らしかった。
難しい葛藤を演じていた。

タイトルである「52ヘルツのクジラたち」は何度となく象徴するシーンで腑に落ちる。
目にしたクジラはどうなんだと思ったり(笑)。
いい演出なんだよね・・・。

正直な感想でいえば、こんなテーマの作品はそろそろ終わっていいんじゃないかと思う。
それは日本映画に限らず外国映画も。
しかし、見渡せば同様のテーマは絶えることがない。

悲しいかな、どの時代でもついて回る。
その度ごとに子供を不幸にするのは親だと悲しくなる。
啓蒙活動として必要なら大いに受け入れるが。

ハッピーエンドだが、こんな世界はあってはならない。
そんなことを感じた作品だった。

「仕事の辞め方」を読む

たまたま新聞の書籍広告をみて、気になり手に取った一冊。
放送作家として活躍する著者は知っていたが、どんな番組を手掛けたかは知らない。
番組もほぼ見てはいない。
たまにインタビューに答えられているのを無意識に見たくらい。

僕は2か月もすれば58歳。
昔であればあと2年で引退といったところ。
おかげさまで体は元気。
食欲もあり毎日飲んでもへこたれない。
老眼が進んでいるのと記憶力の低下は気になるが生活に支障はない。

まだまだ大丈夫だと思っている。
しかし、本当のところはどうなんだろう。
自意識過剰なだけで、周りからみればうざいオッサンかもしれない。

僕が早めに社長を交代したのも「老害」になりたくないのが理由の一つ。
実際、そうならないように極力余計なことは言わないが、
著者からすれば40代で「ソフト老害」は始まっているという。
会社にとっての「必要悪」であればいいが、「老害」では困る。

僕は努力と根性でここまで辿り着いたといっていい。
動物占いにもそう出ていた(笑)
自分だけがそれなら問題ないが、同じことを若者に求めてしまう。
口には出さないが、自分の価値観としてその節があるのは否定できない。

多分、その時点で「老害」。
著者は自身の行動に例えながら、潔くバッサリと斬る。
それが50歳にして仕事を辞める一つの理由のようだ。

そこに対して共感する。
想像するに「老害」にはなっていないと思うが、その危機感がそちらに向かわせる。
本当の「老害」は自分が「老害」であることを気づかないだろうし。

もう一つ共感した点でいえば、「人とつながる」ことに好奇心を持つこと。
人脈が一番の宝という。
もしかしたら僕もそうかも。

なんの専門性も能力も持ち合わせない自分が何とかなったのはその力が大きい。
だとすればもっと「勇気」をもって「図々しく」なった方がいい。
なるほど。
そんな考え方もあるわけね。

本書ではお金についても言及している。
仕事を辞めとなると今後のお金が気になるのは当然。
夢や希望を持ち、未来を考えて仕事を辞めるならお金に執着しない方がいい。
夢や希望もなくボーっと過ごすなら、お金は必要に決まっているけど・・・。

この類の書籍を読むことはほとんどない。
たまには別世界の方の著書も読むと新しい気づきもある。
分野が違えども考え方が近かったりすることも・・・。

僕自身も「仕事の辞め方」を真剣に考えないといけないかもね。