これからも前向きに 名大社会長ブログ

カテゴリ「本を読む 映画を観る」の記事一覧:

スマホが神になる

sumaho1611

書店で新刊のコーナーを何の気なく眺めていると目に飛び込んできた本書。
どんなことが書かれているか全く理解しないまま購入してしまった。
こういった衝動的な出会いは書店でないと難しい。
ネットで書籍を買うのも便利でいいが、こんな偶然の出会いも大切。
著者の島田裕巳氏はTVではちょくちょく拝見するが著書を読むのは初めて。
この偶然がなければ読む機会がなかったかもしれない。

この意味深なタイトル。
本書を読むとあながちウソではない。
今のスマホの存在が神といえるのも納得できる。
そのあたりを宗教学者らしい視点で書かれている。
僕に限らず、スマホがない生活は考えにくい。
生活していく上でないと困る物の大きなひとつであるのは間違いない。
インターネットが繋がっていないと何もできない世の中に
なってしまったことは自分の行動パターンもみてもわかること。
スマホとの関係性は深い。

著者は「スマホはまさに孤独を癒す道具として機能している。」という。
この孤独を癒すことが宗教にも結び付くようだ。
新宗教が信者を増やす背景には孤独を癒すことがあった。
それが現代はスマホに代わり、新宗教の信者は減少しているという。
客観的に捉えてみるとイメージできないことではない。
となると神的存在をスマホに求めるのも分からなくはない。
本書ではスマホを神扱いすることだけではなく、別の切り口も設けられている。

「自撮り」によって自らが英雄になり、神的存在になるのも可能なようだ。
facebookだけでも年間700億枚の写真がアップされているらしい。
Instagramでも相当数だろう。
写真が拡散されていけば、その可能性は十分あり得る。
「自撮り」という行為もスマホが当たり前になってから。
世界の中心に自分がいるというわけだ。
未だに自撮りは上手くできないけど・・・(笑)。

本書では「ポケモンGO」がもたらした効果についても述べている。
引きこもりを外に出したとか、健康的になったとか、
プラスの側面を捉えている。
同時に毎日のようにニュースで見る悲しい事件も多いけど・・・。

そして、何といっても暇つぶしにはもってこいなのがスマホ。
スマホがなければ通勤時間が退屈でつまらなくなり、
勤労意欲にも影響すると筆者はいう。
ちょっと大げさかもしれないが、そうなのかもしれない。
う~ん、スマホが神になっていくのか・・・。

いずれこのブログもスマホで書くようになり、巨大な影響力を生んでいくのかな。
いや、それはあり得ないな・・・(笑)。

映画「永い言い訳」

nagai16111

この映画は伏見にあるミリオン座のレイトショーで観た。
レイトショーは1300円で通常より500円安い。
この浮いた500円でハイボールを注文した。
ここはギネスビールも置いてあり映画館にしてはアルコールの種類が多い。
映画館の宣伝をしているわけではない。

ジャンルによってはアルコールを飲みながら鑑賞するのもいい。
本作品もアルコールとの相性は悪くない。
軽く酔う程度であれば、むしろ感傷的になれる。
それを感じさせてくれる映画であった。

西川美和監督は邦画界において最も注目すべき女性監督。
公開される作品が何かと話題になる。
僕は「ゆれる」と「ディアドクター」しか観ていないが、これが恐ろしいほど面白い。
いずれもDVDで観たのだが、映画館であればまた違った感じ方をしていただろう。
人を描くのが本当に上手い。

そして、本作を観て思ったのが、更に男を描くのが本当に上手い。
男性、男子ではなく男。
女性監督がここまで男の気持ちを理解できるのかと恐ろしくなるほど。
いやあ、西川監督は恐ろしい監督だ。

容姿は女優さんでもおかしくない。
力強さよりもむしろ可愛らしさを感じる。
しかし、こんな女性が男を手玉に取り、好きなように転がしてしまうのだろう。
それはこの作品にも言える。

主役であるモックンも監督の意のままに転がされている。
そこには男の軽薄さ、単純さ、純粋さ、幼稚さ、傲慢さ、ズルさ、弱さが描かれている。
すべて見透かされているかのようだ。
それが恐ろしい。
そして、はかない。

きっと男は鈍感で大切なことに気づかないまま時間が経過する。
気づいた時には手遅れになっていることがほとんど。
悲しいかな、そんな生き物なのかもしれない。
最後の最後になって教えられる。
それも自分よりも遥か下の世代に・・・。

この作品も池松壮亮クンがいい脇役として出演している。
「海よりもまだ深く」では阿部寛さんの相棒だったように
どうやらダメ男を支えるのが得意なようだ。
つい数か月前に観た映画は高校生だったのに・・・。
人の成長は早いものだ(笑)。
その時のブログでも絶賛したが、益々将来が楽しみだ。

どこに真実があるのか。その真実はいつわかるのか。
それは正しいことなのか。
それは人によって違うと思う。

世の中のダメ男は観るべき。
僕を含め、自分では頑張っていると勘違いしているダメ男は観るべき(大汗)。

映画「ボクの妻と結婚してください。」

boku16111

やはり歳を取ってきたと痛切に感じる。
一昔であれば、ここまでウルウルすることはなかった。
もっと冷静に映画を観れていたはず。
感情にもそれほど流されなかったはず。
しかし、それがまんまと作品の戦略に乗っかってしまった。
50歳にもなると人は弱くなるなあ(笑)。

僕は「生きる」とか「死ぬ」とか、
そういったシーンで泣かせる映画はズルいと思っている。
観客を泣かすには分かりやすい手法だが、
ぞれは演出として安易な選択をしているように思えてならない。
そんな斜に構えた見方を映画ではしている。
ちょっと嫌なタイプだ。

本作もいわゆるお涙頂戴もの映画といっていい。
20分間隔くらいでそんな状況に追い込まれたのも事実。
そんな作品だ。
しかし、そこにいかにも泣かせてやろうというシーンは少なく、いつも爽やか。
勝手にこちら側が感じ取っているだけのように思えてくる。
実際、あり得ないストーリーだし、息子もデキすぎだ。

だが、それが素直に受け止められるし、イヤミがない。
なぜここまで感情移入してしまうだろうと自分でも不思議なくらい。
やはり歳を取ってきたのだろう(笑)。
そして、自分が同じ立場だったらどんな行動を取るだろうか
とどうでもいいことを考えてみたり・・・。
引っ張られる映画のようだ。

何より妻役の吉田羊さんがいい。
とてもキュート。
最近の活躍はハンパないが、僕が今ステキに思う女優さんのひとり。
本作でも愛らしい奥さん役を演じており、グラッときてしまった。
夜は「真田丸」に出てたので、ゾッとしたけど・・・(笑)。
強さも優しさも演じられるその表情と自然体に近い喋り方がいい。
この映画はスッピンに近かったんじゃないかな。

お涙頂戴ものと言っても、最終的に辛いシーンは出てこない。
あくまでも温かいままだ。
それがイヤらしい映画とは異なり好感が持てたのかもしれない。

独裁力

doku16111

著者の川渕三郎氏は現在80歳。
とてもその年齢には見えない。若々しく映る。
若さを保つそれなりの努力はされているのだろうが、
最大の秘訣は仕事に対する情熱ではないだろうか。

その熱い想いが結果として若さを維持しているのではないと本書を読み終え、そう感じた。
本書は川渕氏の半生を綴っている面はあるが、
大半はバスケットボールのプロ化についてである。
門外漢であった川渕氏が分裂していた日本のバスケットボール界をまとめ上げ、
一つの形を作った道のり。

Jリーグ創設も相当苦労があったかと思うが、
分野外の世界で力を発揮するのは想像するだけでも体が震える。
しかし、それが真のリーダーの姿として証明なのだ。

僕は川渕氏は嫌いではない。
だが、あの高圧的な話し方や声のトーンは正直、耳触りのいいものではない。
とても失礼な話だが、同じことを思う人は少なくないだろう。
それが悪い意味で誤解を生み、
タイトルのある「独裁力」ではなく「独裁者」的な印象を与える。
ニュースでしか見たことのない人は嫌悪感を覚えても仕方ない。
現Jリーグチェアマンの村井満氏とは180度違うのではないだろうか(笑)。

そんなことを踏まえても、僕は川渕氏は嫌いではない。
その考え方、生き様には素直にリスペクトする。
あそこまで堂々となれたのなら、どれだけいいだろうと羨ましく思うのだ。

今でも強く印象に残っている言葉がある。
Jリーグが発足する前、プロ化に向け活動されていた時代に多くの方から批判や反対を受けた。
時期尚早という声が多かった。
その時に「時期尚早と言う人は、100年経っても時期尚早と言う。」とキッパリと言われた。
物事を先送りする一つの理由がこれで、結局何もしないことが多い。
それに対して、的確に反論した言葉がその発言。

その言葉があったからこそ、現在のJリーグが成り立っているのだろう。
言葉の持つ影響力は大きいし、それが歴史を大きく変える。
信念があるからこそ、そんな言葉を当然のように使われるわけだが、
その信念の強さがどこから生まれてくるのかはわからない。

その答えはどこにも書いていない。
仮に書いてあったとしても何の参考にもならない。
彼の考え方を知ることで吸収するしかないのだ。

川渕氏は元サッカー日本代表の選手であり、元代表監督でもある。
そして、企業でも管理職経験者である。
リーダーシップのみならず、マーケティングも組織構築にも秀でた能力を持っておられる。
その総合的な力が「独裁力」を生み出す基になっているのだろう。

しがらみの多い世界のトップに立つ人は、専門バカではきっとやっていけない。
特にスポーツの世界ではいくらそのスポーツにたけた人でも、
人を見抜く観察力や発信する語彙力がないと真のリーダーシップは発揮できない。
そんなことも感じてしまった。

なかなかbリーグを観る時間は取れない。
ただ川渕氏が束ねてきた世界を知った上で観ると違う面白さを感じれるかもしれない。

映画「何者」

nanimono16113

原作を読んだのは3年半前。
随分、遠い過去のような気がする。
本の中身もすっかり忘れてしまった。

当時のブログを読み返しても、何の参考にもならない(笑)。
そのため、どこまで映画が原作に忠実かはあいまいのままだ。
ただ僕はその当時、大学や人事担当者向けの講演でこんなスライドを使っていた。

nanimo16112

この感覚は映画でも変わらない。
漠然とした不安感が映画全体を覆っていたのは原作と同じ。
現代の若者の姿を巧みに映画も描いていたのだと思う。
それは僕が思うということで、本当にそうかはわからない。
映画で描かれる就職活動の姿はある意味リアルで、僕らが日々接している学生像に近い。

リクルートさんの協力を仰いでいるせいか、そのあたりにズレはない。
しかし、現実の就職活動は毎年のように環境が変わる。
映画で描かれる世界は昨年(2015年)を表現している。
原作は2011年か2012年を描いているはずだ。
このわずか3年の間に学生の置かれる外部環境は大きく変わり、
それに伴い学生の行動や思考も変化している。

2015年はかなりの売り手市場になっているため、選考の難易度は描かれている世界と微妙に違う。
業界人っぽく、その点だけを捉えていえば、
外部環境の好転により悩みの種類も変わってくるんだよね。
なんかイヤな奴ですね・・・(笑)。

しかし、そんな些細な指摘は本質ではないだろう。
今、若者が抱えるホンネとタテマエの使い分けの難しさ。
SNSが生活の一部になることにより、その呪縛から逃れられない現実は恐ろしい。
僕のような人からどう思われようがどうでもよくなったオジサンは不感症になり、
この若者たちに付いていくのは難しい。
しかし、自分の学生時代とオーバーーラップさせれば、少なからず近い面はあったのかと思う。

半径5メートルが気になって仕方がない現実。
情報伝達手段が限られていた分、鈍感にならざる得ないが、
きっと世代的には共感すべき点はあるのだと思う。
だから、映画を観ながら、妙にしんみりしてしまったのかもしれない。

僕は原作を読んでいたので、あまり本作を観るつもりはなかった。
原作でお腹いっぱいの状態だった。
(中身を完全に忘れているくせに・・・笑)。
映画のメッセージも予告編から何となく窺えた。

しかし、観てしまった。
そして、観てよかったと思う。
こんな感情を持っていることや理解することがいくつになっても必要かと・・・。
悩むことが若者の特権なのだ。

この映画を観て、就職活動に嫌気がさしたらどうすればいいか。
それは直接、聞いてもらいたい。
解決方法を伝授して差し上げよう。
あくまでも学生限定で・・・(笑)

映画「淵に立つ」

futi1610

残酷だが、微かな希望を見い出せた映画。
しかし、気持ちは重い。
映画「怒り」よりも個人的には重い。

ロングショットを多用し、正面からずっと捉える映像が
映画の重さを象徴しているようにも思えた。
HPでもポスターでも主役は浅野忠信氏だが、僕はそうだとは思わない。
この映画の主役は母親役の筒井真理子さん。
どっかで見たことあるようで、どんな映画に出ていたかが全然思いつかないのがこの女優さん。
しかし、今年、僕が観た映画の中では主演女優賞を取るべき存在。
それだけ印象が強かった。

愛くるしい姿から自分を叩きつける姿まで、
彼女の存在をなくして映画は語れないだろう。
なんだか映画評論家のようなコメントだな・・・(笑)。

この作品に対して、どこまで説明すればいいのだろう。
書きたいことを書いてしまえば明らかにネタバレになる。
ネタバレになったところで「君の名は。」程の興行成績は収められない。
多分、観客は限定的だ。
だとすれば、ネタバレOKということか。
やっぱ、止めておこう(笑)。

映画全体を漂う絶望感がこの映画の見どころ。
いかにも日本映画らしいし、
カンヌ国際映画祭「ある視点部門」で受賞したのも日本映画の特徴と表れ。
玄人好みの映画。
これから深田監督は是枝氏のように独自路線を歩んでいくのだろう(笑)。
よくわからんけど・・・。

本作のテーマは家族。
一見、平和そうに見えてバラバラな状態がどこにでもある家庭の姿。
夫婦の会話を聞きながらヒヤリとしてしまった(苦笑)。
小さな闇が絶望へと導くのが主張であるならば、
僕も僕の周りも気をつけなければならない。
崩壊なんていとも簡単。
最後に叫んだところで何の意味もない。
それを教えてもらったような気がした。

なぜか園子温監督の「冷たい熱帯魚」を思い出した。
全体の構成も描かれ方もまるで違う。
しかし、繋がっているように思えた。
それは僕だけのこと?

赤いシャツが示す意味。
もっと深く考えたいと思う。

プレゼン伝え方のルール

pure16101

著者の森本曜子さんから頂いた本書(間接的ではあるが・・・)。
名古屋では有名な方でラジオのパーソナリティを長く務められている。
僕も20代の頃は森本さんが出演する番組をよく聞いていた。

前社長と懇意にされており、
イベントのMCをお願いしたり、食事会でもご一緒したりした。
僕の時代になってから、すっかり若手のパーソナリティに目が移ってしまい、
(本当にすみません・・・)
ご無沙汰状態。

この度、本書を出版されたことでお祝いの一言でも言わなければならないが、
それもワザとらしいので、このブログでお祝いを含めコメントを述べさせてもらう。

今回は出版、おめでとうございます。
とても読みやすく分かりやすい内容でした。

これはお世辞でも何でもなく、僕が感じたこと。
森本さんのこれまでの経験から得た知識やスキルをこの本書で披露されている。
また、最近はプレゼンテーションの講師としても活躍されており、
そこでのノウハウも提供されている。

特別難しいことは書かれていない。
基本に忠実。
特に初心者は本書に書かれたことをそのまま実践すれば、
上手くいくことは間違いない。

僕自身、いろんな場でプレゼンしたり、講演させてもらう機会は多い。
偉そうに言って恐縮だが、僕が講演をする際、
注意すべき個所がそのまま取り上げられている感じだ。
それに加え、今後役立ちそうな点も多い。
今月末、部下の結婚式で主賓のスピーチをするが、すぐに使えそう。
タイミングとしてもとてもありがたい。

最近はパワポを使っての講演がほとんどだが、パワポを使うことで原稿を書く必要性がなくなった。
元々、原稿は書かず(デビュー当時は作ってました・・・笑)、
要点だけ頭の中に叩き込んで本番に臨むわけだが、
森本さんの勧める原稿の作成方法は参考になった。

①声を出してしゃべりながら書く
②センテンスを短くする
③接続詞をあまり使わない
④プレゼンの頭とお尻だけを暗記する
⑤大事なことは2~3回繰り返して言う

これは原稿を作る作らないに限らず、意識しなければならない。
名大社で外部から講演依頼を受ける場合、僕が登壇するケースが多い。
レベルはともかく数だけはこなしてる。
しかし、いつまでも僕が中心なのもいかがなものか。
そろそろ次にバトンタッチをせねば・・・。
そのためには本書を読んでから始めてもらう必要がありそうだ。

プライベートバンカー

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基本は実名をそのまま記したノンフィクション。
しかし、読み進めていくうちに真山仁か池井戸潤のビジネス小説かと錯覚してしまう。
この2人の作家を例に出すのはあまり相応しくないですね。
同じビジネスでもちょっと分野が違う。
両氏とも結構、銀行員が登場するが分野は違う。
誰に近いのだろう?思いつかない。
この2人以外の小説を読んでいないから当たり前か(笑)。

それだけ名古屋の田舎者はリアルで起きた出来事とは思えない。
架空の世界のように思える。
むしろ今年観た「マネーショート」に近い。
著者の清武氏は「切り捨てSONY」から連続で読んでいることになる。
確かな表現力と筆力である。

ジャイアンツのオーナー代行を解雇されたイメージしかなかったが、
読売新聞の記者を長年務めたいたわけだから、当然のこと。
社会派のノンフィクションライターとしては注目すべき存在なんだろう。

今を思えば、ジャイアンツとのゴタゴタは売名行為として
最高のパフォーマンスを発揮したと言えるのではなかろうか・・・。
そんなことを書くと叱られるな。
冗談です。すみません・・・。

本書の主役は大垣市出身。時に岐阜弁も出る。
最近は映画でも書籍でも何かと岐阜県が取り上げられることが多い。

話は変わって申し訳ないが、
先日、飛騨古川でインバウンド向けの旅館を営む経営者と話をした。
映画「君の名は。」の影響で一気に観光客が増えたという。
作品がもたらす影響は大きいですね。

話を元に戻すと、野村証券出身の主人公はシンガポールに渡り、
富裕層向けのプライベートバンカーとして資産管理を行う。
そこには税金逃れ、資産隠しなどお金のドロドロとしたシーンが克明に描かれている。
お金持ちとは無縁な世界にいる僕としては
あまりにもかけ離れた世界のため現実感は乏しい。
また、それがあったとしても羨む世界ではない。

いい表現をすれば、大きな財産を守るために的確な運用を行うのがプライベートバンカーの仕事。
しかし、あまりにもドロドロ。
小心者の僕はあまり関わりたくない分野。
その生活が楽しいとは到底思えない。
今も多額の税金や保険料を払っている気もするが、僕はこの状態でシアワセだ。
金の亡者にはなりたくはない。
反面、お金を気にしない場面も想像できない。ないと困る。

そんなお金に惑わされる人物が本書には数多く登場する。
そこで臭いを嗅いでいるのがいい。
客観的にお金を取り巻くシーンを見ることでお金の恐ろしさを知ることができる。
また、こんな世界がリアルにあるのを近く現実の世界から見受けられる。

それはそれで勉強になる。
僕自身はこの手の会社には関わりたくはないけど・・・。

映画「ハドソン川の奇跡」

hado16101

「ハドソン川の奇跡」という邦題を見て、監督クリントイーストウッドは何を思うのだろうか。
原題は「SULLY」。
トムハンクス扮する主役のパイロットのニックネーム。
こちらの方がシンプルで監督の想いが伝わるような気がしてならない。

邦題は監督の許可を取って名付けられるものなのか?
とどうでもいい疑問が湧いてきた。
調べてみると「ハドソン川の奇跡」という言葉は
その事故が起きた時のニューヨーク州知事が賞賛の言葉として使ったもの。
理解はできなくはないが、安易な気もするし、作品がどうも軽くなってしまう。
これは僕の勝手な意見で、何十時間も議論を行った上、決まったことであれば、スミマセン。

今年に入って洋画は9本観ているが(10月1日時点)、そのうち7本が事実を基にした作品。
あえて選んでいるつもりはないが、結果的に多い。
もしくはアメリカ映画自体がフィクション作品のネタ切れで、
こっちばかりを描いているのだろうか。
やたらヒーローものというか特撮アクション系が多い気もするし・・・(笑)。

本作もアメリカの正義と暗部を両面を捉えているように思える。
あらゆる場所でコンプライアンスとかセキュリティとか事実確認・検証とか、
人間的感覚が許されなくなっていく。
それが時代と言ってしまえば身も蓋もないが、
その浸透度と反比例するかのように人の温かみが失われる。

国民的英雄から容疑者へ移り変わるのも瞬間だ。
マスコミも正義を振りかざし、プライバシーを侵し始める。
そこに罪悪感は存在しない。

その姿を無駄な感情を入れず、あくまでも当事者の視点でクリントイーストウッドは描いていく。
前作「アメリカン・スナイパー」の時も書いたが、あえて何も言わない。
映画の結末が「答え」だと思うが、そこにあるのは「問い」だろう。
自国に対してのメッセージとも言えるのかもしれない。
ちょっとカッコつけて書いてみたが(笑)、そんなことを感じてみたり。
アメリカはいろんな事件が起きますね・・・。

この作品、意外と短い。96分。
長い映画がもっと短くていいと思うことは多いが、その逆は稀。
もっと長くてもいいくらい。もう少し観ていたかった。

クリントイーストウッド作品は僕がいわなくても、周りの人が勝手におススメするだろう。
それでいい。間違っていない。

芸術の秋。
映画を観るにもいい季節になってきた。

映画「怒り」

ika1691

ネタバレしない程度に言っておく。
松山ケンイチ、綾野剛、森山未來の似ても似つかないこの3人。
撮影の手法や写真を合成すると同じ顔に見えてくる。
同一人物だ。
これは作品にとって物凄く重要だとすると、この配役はお見事。

元々個性的で演技派の3人がそれぞれを巧みに演ずると
ギリギリまでこちらの気持ちが引っ張られる。
これが映画の主張したい点ではないが、監督の演出力が反映されていた。

李監督の前々作「悪人」がかなり衝撃的だった。
何度となく観た予告編の渡辺謙さんの悲痛な表情も相まって本作を観ることにした。

一つの殺人事件をテーマに3つのストーリーが展開していく。
僕はこの3つの線(ストーリー)がどこかで絡み合って繋がっていくのかと当初思っていたが、
そうではなかった。
人間が抱える闇や社会的な問題点が共通項として存在するが実際の関係性は何も持たない。
しかし、映画はそれを関連付けるかのように時間的なタイミングをずらしながら、
オーバーラップさせていく。

いきなりスイッチを切り替えられ、また戻される繰り返し。
それが集中力を散漫にするのではなく、反対に集中力が増していく。
145分という比較的長い映画であったが、長さを感じることはなかった。

タイトルの「怒り」。
僕は原作を読んでいないので、その意味は想像の範囲でしかないが、
世間に対しての怒りと自分に対しての怒りが混在している。
これは主役に限らず、主要な登場人物に全ていえること。
叫んだり泣いたり暴れまくったり、怒りは自分に向かう。
そんなふうに感じた。

俳優陣も素晴らしかった。
スッピンの宮崎あおいさんも、かなり頼りない渡辺謙さんも、あの2人の絡みも良かった。
強いていえば沖縄の少年くんの演技がもう少し上手ければ、もっと重厚な映画になったと思う。
あと、妻夫木くんの涙は理解できるが心を揺さぶるまではなかった。

人を信用する大切さと人を信用する危うさをこの映画は教えてくれた。

本作は名古屋駅前のレイトショーで観た。
いつもレイトショーで観る時は空いているのだが、今回は混んでいた。
チケットを購入した時は、3列目の端っこが一番まともな席だった。
目の前すぎる迫力あるスクリーン。
却ってこの状況が映画の印象度を高くしたのかもしれない。

人の重さを知る上で観ておくには損はないと思う。