つい5年前の出来事を基に制作された作品。
配給はワーナー・ブラザース。
なぜこんな価値のある作品が日本の配給会社じゃないのか。
できればこんな作品は日本の会社に配給してほしかった。
官僚批判ともマスコミ批判とも受け取られることにリスクを感じているのか。
もっと正々堂々とあぶり出せると日本の配給会社の価値が上がると思うけど。

2020年2月のダイヤモンド・プリンセス号におけるコロナ感染のニュースは間近で見ていた。
世の中がコロナに振り回され始めた時期。
僕も忘れようにも忘れられない。

大いに悩んだ時期。
大型イベントを開催するか否か。
命を懸けて奮闘する医師や看護師らに比べれば、僕の闘いは小さいだろう。
2月のイベントは万全な体制を作り上げ開催したが、3月以降は中止。
会社も大きなダメージを受けた。
多くの方に迷惑を掛けたが、トップとしての正しい判断と今でも捉えている。

場所は異なるがお互い葛藤を繰り返してきた。
そう思うと無責任な外野が自分の都合だけでとやかくいうのは許しがたい。
自分では何もしない。
それも匿名で一方的に叩く。

その裏で懸命に仕事を続ける苦労なんて関心がない。
そんなシーンを見せられるだけで辛くなるし、
一方でそんな言動に屈することなく自らを信じて行動する方々には敬意と共に感動する。

本作のさりげないセリフにグッとくることが多かった。
本当は旦那には行ってほしくない。
しかし、使命感を止めることはできない。
どんなに非難を受けても正しさを優先する。
もちろん演出された面はあるが、その勇気を映画を通して改めて知る。
僕が見ていたニュースは一体何だったのだろう。
自分の力不足と捉えるしかない。

作品では実名で登場した藤田衛生大学。
愛知県を代表する医療系大学だが、当時のニュースでは軽く受け流していた。
どれだけ重い決断だったか。

非難と感謝も紙一重。
本当に大切なことは後から気づかされる。
本物のヒーローも当初は悪者だったりする。

錚々たる役者陣が派手に動き回る作品は得てして表面的に終わる場合が多い。
観る前は危惧していたが、全くの杞憂。
見事に役柄を演じ、深く感情移入をさせてくれた。

それは小栗旬や松坂桃李、池松壮亮だけではない。
イヤな上司の光石研もその一人。
僕が適役だと思ったのが窪塚洋介。
DMATの医師で感情に流されることなく重責を担っていた。
こんなに上手い役者だったのね・・・。

今年の日本映画は不作と思っていたが、最近になって「国宝」といい素晴らしい映画が続々と公開。
これから期待していいのか。

時にはルールを無視してでも優先しなきゃいけないことがある。
映画はそれを教えてくれるし、日本映画もそんな存在になってほしい。