日本映画にしては珍しくほぼ3時間の上映時間。
かなり長い。
観終わって思ったこと。
時間はまだ足りないんじゃないか。
もう1時間足して、前編、後編に分けての上映でもよかったのではないか。
そうすれば喜久雄も俊介もより深堀でき重厚さは増したのではないか。
そう思ったのだ。
主役喜久雄を演じるのは吉沢亮、俊介を演じるのは横浜流星。
大河ドラマで主役を張る2人が作品をグイグイと引っ張った。
カギとなる俊介の父半二郎を演じた渡辺謙も同じか(笑)。
大河ドラマ「べらぼう」では親子じゃないけどね。
若手俳優代表の2人だが、本作がこれからの活躍を更に加速させるのではないか。
それだけ2人の演技には圧倒された。
特に吉沢亮はここまで才能溢れる役者とは思っていなかった。
すみません・・・。
昨年の「ぼくが生きてる、ふたつの世界」も良かったけど。
歌舞伎には疎いので、歌舞伎役者としてのレベルは分からないが、素人には圧巻。
一年半の稽古を積んだというが見応え感も十分。
演技の中の演技に吸い込まれた。
横浜流星は吉沢亮の陰に隠れるが彼の万能さも十分伝わった。
役者の演技ばかり書くのもよろしくない。
本作に触れよう。
描かれるのは歌舞伎の名門の当主に見いだされた父親を亡くした喜久雄の半生。
ざっと1964年から2000年代まで。
細部にこだわる時代背景が同時代を生きる自分たちともオーバーラップしていく。
想定すると僕より15歳ほど上かな・・・。
実話をベースにしたといわれても誰も疑わない。
歌舞伎界は純然たるファミリービジネス。
その血が全てという世界。
生まれながらに跡継ぎになる者も才能を見出され後継者に選ばれた者も
それぞれの葛藤が互いの関係にひびを入れる。
一般的な事業承継より厳しい世界。
伝統や文化を継承するとはそんなことなのか。
究極のファミリービジネスといえるだろう。
だからこそ一筋縄ではいかず、壮絶な人生を生み出す。
最後の最後はどこまで自分に向き合えるかだが、芸にも反映される。
そのシンクロが素晴らしく観る者を魅了する。
今年の日本映画は見応えのある作品が少なかった。
そこそこ面白い作品はあるが、グッと押し迫り感動を呼ぶ作品はなかった。
ようやく今年もそんな作品に出会うことができた。
やはり日本映画はいいね。
瀧内公美があんなシーンで登場するのも日本映画ファンは喜ぶ(笑)。
3時間の予定を都合つけてもらいたいね。