これからも前向きに 名大社会長ブログ

カテゴリ「本を読む 映画を観る」の記事一覧:

ユニクロ帝国の光と影

ユニクロ帝国の光と影 ユニクロ帝国の光と影
(2011/03/23)
横田 増生

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ここには、普段、ビジネス誌やマスメディアでは取り上げられていない柳井氏の経営者の非情な姿が描かれている。
しかし、僕はそれに違和感を感じたり、不思議に思うことはない。
経営者というのは(というよりも大きく会社を伸ばす経営者)、多かれ少なかれ、この著書で書かれている面は持ち合せていると思うからだ。
それは柳井氏であれ、孫氏であれ、三木谷氏であれ、自分で創業し新たな領域でマーケットを築いてきた方は、僕の想像以上に自己に対して厳しいだろうし、同等に他人に対しても厳しく要求をするだろう。時として、その他人を退職まで追い込むことも多い。
そこまですべきか、と批判的になる面は理解できなくはないが、僕は自分自身の持ち得ない力として、その経営者の姿に憧憬を覚えることもある。
その世界で頂点に立とうとすれば、得るものよりも失うものが多く、名声も名誉も途中段階は切り捨てる行為を取らねばならないと思う。
この著書でも、今現在の柳井氏の立場を、ダイエーの中内氏やマクドナルドの藤田氏らのかつてのカリスマ経営者とダブらせている。それはかつてのカリスマ経営者が没落の一途を辿るシーンと柳井氏が近い存在であると表現したいようにも思える。
それがあてはめる事ができるかは不明だが、それに値する象徴的な存在であるのは間違いない。
多くのカリスマ経営者が次代の経営者を育てられない点が柳井氏にも共通するのであろう。
いい意味でも悪い意味でも今後のユニクロからは目が離せない。
自分の反面教師としての捉えながら、その本質である経営も学んでいかねばならない。
最後のZARAとの戦略の違いもマーケティング的要素として面白かった。同じSPAのアパレル企業であっても、互いのスタイルは全く異なる。
トップの在り方を学ぶと同時に、グローバル展開の戦略も感じ取る事ができた。
一気に読めてしまう1冊である。

SOMEWHERE

ヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞したソフィア・コッポラ監督の映画「SOMEWHERE」
たまたま頂いたチケットで観たのだ。決して関心がないわけではないが、きっと自腹では観る事はなかった映画だろう。
でも、観て良かった。
男はいつまで経ってもダメなのが良く理解できた。
ファーストシーンの長回しは、ジムジャームッシュの映画を思い出した(全く違うかもしれないが)。確か今から25年位前の話だし。
モノクロかどうかはともかく「ストレンジャー・ザン・パラダイス」をイメージ。全然覚えてないんだけれど・・・。(ストーリーが進めば全然違うのはわかります。)
少し観て気づいたが、主役は人気俳優の設定。
だらしがないそのスケベ男優とその娘の交流を描いたほんわかしたストーリー。僕とは環境は異なるとはいえ、父親の心境として、このダメダメ男優の主人公には共感する。
時に切ない。そして、美しい。
いろいろ起こるが何も起きていないのがこの映画だ。プールサイドでシートを倒し、娘と一緒に日光浴を楽しむ。そこには洒落た会話や行動があるわけではない。ボーッとするだけ。結局、男はそれくらいしかできない。
これも切ない。
ここに書いていることは、さっぱり理解できないと思うが、少しだけ自分とオーバーラップさせて観ることができた映画であった。
くどいと思うが、やっぱり切ない。

大人の流儀

大人の流儀 大人の流儀
(2011/03/19)
伊集院 静

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伊集院氏の著書を読んだのは、実に久しぶり。20代の頃は、小説であったり、エッセイであったりとちょくちょく読んでいたのに。
30代になると専らビジネス書ばかりで(この頃からつまらない人間になったのかもしれない)、小説は全く読まなくなり、著者の本も縁遠くなった。週刊誌もビジネス誌以外はほとんど読まないので(だから本当につまらない人間になった)、今回の著書の連載もにも全く触れたことはなかった。
久々に読んだ著者だが、抱いている気持ちは以前と同じ。
うらやましい。
自分とは真逆の生き方をしている。実に自由で束縛されず、自分のやりたい事だけをこなし生きているように思える。(決してそんなことはないはずだが・・)。そう思えてならない。
だからこそ、憧れてしまうのだろう。
自分もこんな生き方が出来たら、どんなにいいだろうかと・・・。
かと言って、考え方が全く異なるのではない。
人との接し方であるとか、若者に期待することであるとか、企業の価値は何であるかとか、共感する面は多いのだ。
それが本当の惹かれる理由なのかもしれない。
ビジネス書ばかり読むのではなく、この類の書籍も読まないと本当につまらない大人になってしまうかもしれない。
大切な大人の流儀も身につかない。
そして、読んで本能的に思ったこと。
銀座に行きたい!
それがどうした。(終り)

映画「告白」

告白 【DVD特別価格版】 [DVD] 告白 【DVD特別価格版】 [DVD]
(2011/01/28)
松たか子、岡田将生 他

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中学生の娘を持つ身としては、体によくない映画であった。
フィクションで現実味のない物語でありながら、現実の世界もオーバーラップさせてしまう恐ろしさが潜んでいるようでならない。
それは、いじめを起こす集団心理や匿名性の高いネットの影響、人間のエゴなど、今、実社会が抱える問題を暗く尖った映像を通して映し出しているように思えたからかもしれない。
それだけの緊張感とインパクトがこの映画から発せられていた。う~ん、やはり怖い。
映画評を読んだりすると、原作の素晴らしさが忠実に描かれた傑作と評されているケースもあるが、小説をほとんど読まない僕にはそれはわからない。
ただ思うのは、確かにストーリーの構成も巧みな映像も、松たか子の感情を押し殺した演技もとても良かったし、映画賞総ナメも理解できるが、これが傑作となるとちょっと困るなということ。
あまりにも絶望すぎる。作品の意図としては「な~んちゃって」というセリフでその絶望感から脱しているのかもしれないが・・・。
凄い映画だったと思うと同時に気分も暗くなった。
しかし、見なければならない映画だとも思う。子供には見せたくない映画でもあるが・・・(R15だから大丈夫だけど。)
何だか書いていることはメチャクチャだな。
これで、松たか子の印象も随分と変わった。
CMで見せる穏やかな表情とは全く異なり、これまで見たことのない冷酷な表情。
きっとドラマでは演じないんじゃないだろうか。
よしっ、次は「悪人」だ。もっと気分が暗くなるかもしれない。
一人で深夜にこっそり見るとしよう。

「挫折力」を身につけよう!

挫折力―一流になれる50の思考・行動術 (PHPビジネス新書) 挫折力―一流になれる50の思考・行動術 (PHPビジネス新書)
(2011/01/19)
冨山 和彦

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3月23日に行われた学生支援を行うためのワークショップ型のイベント。
ここには、就職活動がうまくいかなかった学生や一旦は働いたものの会社と噛み合わずやめてしまった若者が参加していた。どちらかといえば、就職活動や働くことに挫折感を覚える方が多かったように思える。
そんな若者の前でイベントのスタート時に挨拶をさせてもらった。
何の気休めにもならないかもしれないが「世の中で成功している人は、みんな失敗している。多くの挫折を経験している。だから自信を無くす必要なんて全くない。」というような内容の挨拶を。
どう響いたかはわからないが、失敗したからこそ成長につながる人生があるというのも事実。
僕自身も3年前に大きな挫折を経験している。
(そのことは何れブログにでも書きたいと思う。)
それでも何とかやってこれているのだ。
そんな挫折を経験することが重要だと示してくれるのがこの著書。著者の冨山和彦氏は、以前に「会社は頭から腐る」を読んで感銘を受け、機会があれば話を伺ってみたい方だ。そこでもすさまじいことが書かれている。
その冨山氏が自らの挫折経験を経て、今の立場を築いてきたそのリアルさは説得力がある。冨山氏に比べれば、まだまだ挫折力を磨き足りない自分ではあるが、これを読む限り、僕がこれまで経験した挫折は決して無駄ではなかったのではないかと思わせてくれる。
この著書を読んだ直後のイベントであったため、あんな挨拶をしたのかもしれない。
実際にこのイベントを運営してくれた連中の話を聞いていると彼らもいろんな挫折を経験していた。そして、その挫折をバネに乗り越え、今のイキイキとした人生を送っているように思える。まさに挫折力を磨いて強くなっていたのだ。
そうだとすると、この著書はキャリアがある方だけでなく、これから社会に出ようとする、もしくは社会に出たばかりの若者が読むのもいい学びになるはずだ。
書籍の冒頭に書かれているように、「挫折力」を磨くと、打たれ強くなる。過去をリセットできる。敗因を分析し、次に戦いに活かせる。自分という人間がよくわかる。
挫折に対して、とても前向きになれそうじゃないか。何も恐れることはないじゃないか。
失敗し自分はもうダメなのかなと感じた時に読むのもいいのかもしれない。

やめないよ

やめないよ (新潮新書) やめないよ (新潮新書)
(2011/01/14)
三浦知良

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カズが連載する日本経済新聞のスポーツ欄のコラムをまとめた1冊。
この書には掲載されていないが、最近の「黒いカバン」のコラムもとても面白かった。現役を続ける以上、このコラムも連載してもらいたい。
キング・カズこと三浦知良氏と僕は、同じ44歳、同級生である。
生まれがカズが昭和42年になるため、9ヶ月ほど僕が先だが、同級生であるのは変わらない。それも理由だろうか、とても刺激を受け学ぶ対象だ。
しかし、カズの存在を20代の頃は、正直なところ、あまり好きではなかった。パフォーマンスも鼻についたし、その言動も好感が持てなかった。むしろ、ゴン中山のひたむきさの方が共感できた。それが30代の後半あたりから応援するようになり、今では好きなサッカー選手の一人である。
そんなカズが連載を続けるコラム(この書籍)は、変わりゆく心境や環境が手に取るようにイメージでき、実に面白く読める。また、同世代のビジネスマンへのエールとも受け取れる。
とことん前向きなのだ。
この書籍を読む限り、カズは2014年ワールドカップ ブラジル大会の代表メンバーに選ばれる事を真面目に狙っているし、もっと上の選手になるためのトレーニングを積んでいる。その思いや行動だけでも尊敬に値するのだ。
そして、どんどん顔も良くなっていく様な気がしてならない。この著書の帯に掲載されている写真も若くカッコいい。このまま進めば、本当に50歳になっても現役を続けているのではと思ってしまう。
最近、凹むことも続いたが、この言葉にも励まされた。
「上を向いている限り、絶対にいいことがあるんだ」
まだまだやめられないよね。

「新ソーシャルメディア完全読本」も読んだのだ。

新ソーシャルメディア完全読本 フェイスブック、グルーポン・・・これからの向きあい方 (アスキー新書) 新ソーシャルメディア完全読本 フェイスブック、グルーポン・・・これからの向きあい方 (アスキー新書)
(2011/01/08)
斉藤徹

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先日の「キュレーションの時代」から、つながって読む書籍である。
この2冊とも同時にアマゾンで購入したことも、つながっている証拠であるだろう。
(本が届いた日は違っていたが・・・。売れ方はやはり違うんだね。)
立て続けにソーシャルメディア系の本を読むと、ここ最近ソーシャルメディアを通して世の中で起きている出来事が何となくイメージできる。いろんな意味において大きな可能性を感じる。
我々のビジネスにも無限の可能性を感じると同時に、方向を誤れば瞬く間に淘汰されてしまうであろう恐ろしさも感じる。これまで培ってきた信用を継続させるか、または失うかもこのソーシャルメディアの使い方次第で大きく変わってくるだろう。
そう考えると導入は比較的優しいとはいえ、マスメディアへの取り組みを行う以上に神経を尖らせないといけないのがソーシャルメディアだろう。全体的な企業の意識はまだまだ低いのだろうけど・・・。
この書籍はそんな意味合いにおいて、新たなマーケティング手法としても勉強になる。そして、これまで学んだマーケティングの手法は段々と過去のものへとなりつつあるのかもしれないと感じてしまう。
ただ、最終的な物事の判断は人が決めるものであり、パソコンやシステムやソーシャルメディア自体が判断するものではない。
ここにも書かれていた
「商いの原点回帰。ソーシャルメディア活用における本質的価値は、まさに古き良き時代への回帰なのです。」

「電脳化によって人と人、人と物がつながる未来は、むしろサザエさんに描かれるような暖かな未来ではないでしょうか。」
が大切であると考えたい。そして、それを信じて、このソーシャルメディアへの取り組みを行っていきたい。
勉強になりました。

キュレーションの時代

キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる (ちくま新書) キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる (ちくま新書)
(2011/02/09)
佐々木 俊尚

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【キュレーション】
無数の情報の海の中から、自らの価値観や世界観に基づいて情報を拾い上げ、そこに新たな意味を与え、そして多くの人と共有すること。
恥ずかしながら、この【キュレーション】という言葉は、この著書で初めて知った。
他にもビオトーブ、アンビエント化、セマンティックボーダーなど、初めて耳にする単語がいくつも存在する。
自分が似非アーリーアダプターであることを痛感したが、そんな事はどうでもよく、この著書から学んだ点は多かった。
著者の佐々木氏は、いくつかの著書の中でマスメディアの消滅を予言している。その根拠を今回の著書では一番明確に著していると思う。
この作品を書き上げたのは、あとがきから推測すると昨年10月頃となる。その段階で、今、中東を中心に起こっている民主化運動は予測していなかったのではないだろうか。しかし、ここに書かれていることは、Facebookから始まった一連の行動に十分結びついていると感じる。
人と人との「つながり」が引き起こした最大の事実としての証明とも言える。
一年前には考えくかった著者のコメントが、すぐ目の前まで来ているのだ。
人と人とのつながりという点で言えば、僕がようやく使い方を覚えたFacebookもその象徴と言えるだろう。もう20年も会っていない仲間を発見し、お互いの近況に「いいね!」ボタンを押す事で、その20年の距離感を短縮させている。共有する話題からお互いに信頼関係を築いているのだ。
この事実だけでも、キュレーションと言えるのかもしれない。
これは個人の感覚ではあるが、今後ビジネスにおいても、このキュレーションというキーワードが大きな変化をもたらすであろう。
著者はあとがきの中でこう述べている。
広告も広報も販売促進もやがては一体化し、「どのようにして的確なビオトーブに情報を投げ込むのか」「どのようにして情報を発信するのか」といったことをポートフォリオを組んで分散させ、的確にコンサルティングできるような広告企業だけが生き残っていくのではないか。
なるほど・・・。
業界の関係者がこの文章にどれだけ危機感を抱くかは分からないが、少なくとも僕は、その可能性は高いものとして認識し、これから自分達が進むべき方法を考えていかねばならない。
佐々木氏の著書にはいつも考えさせられる。
その難解な(?)単語も含めて・・・。

孫正義の白熱教室

どこかで聞いたことのあるようなフレーズ。
ハーバードではなく、正義でもなく、東京大学でもなく、プレジデントである。この雑誌もタイトルに惹かれ、ついつい買ってしまった。ネーミングに弱い今日この頃である。
同じ経営者として全く別の世界の存在であることは重々承知している。それも手伝ってか、その動向や発言は気になり、つい手に取ってしまうのだ。
今回の特集では、孫氏がこれまで経験した激しいビジネスのシーンをケーススタディとして、自らが出題している。思考力を磨く30問の問いだ。
既に結果を知っている問いはどうしても結論から入ってしまうので、回答にはならないが、問題の中には全く無知の問いもあり、自分だったらどうするかな?と考えならが読んでいった。
「不振の合弁事業を解消しるさい責任はどうするか?」
「海外から強敵が参入した場合、組むか?戦うか?」など、グルグル頭を回しても、どちらが正しいか判断つかない問題も多い。きっと正解は結果からしか判断できないと思うが、その結果も本当はもっといい結果が出る場合も考えられる。
そう考えると孫氏の判断が全て正しいとは言えないと思うが、そのロジックが明確であるかないかは判断基準にはなる。
僕自身の正解率は、ざっと70%くらい。
正解率が高くても、そのビジネスがうまくいく保証はないし、むしろ決断の後の交渉を含めた実務に困難が待ち受けていることは容易に想像できる。
いずれにせよ今の日本では最ものパワフルな経営者。以前も書いたが爪の垢を煎じて飲まなければならない。
この特集の中で面白かったのは、堀江貴文氏のコメントである。
彼の発言がどんどん過激になっているような気がしないでもないが、逆にそれがストレートで個人的には潔いと感じる。誰に遠慮することもなく、正直に答えていると思うのだ。
「自分とは逆のタイプ」であるとか、「孫さんのスピード感は自分と比べると遅い」とか、「苦労しているおっちゃんは嫌われない」とか、本人が聞いたらどう感じるかなんてお構いなしのようだ。この発言だけでも精神的なタフさが伝わってくる。
また、何かでかいことをいつかやりそうな気がしているのは自分だけだろうか・・・・。
孫氏にしても、堀江氏にしても揺るぎない軸がある。これだけでも理想的な姿だ。
そんな孫氏が率いるインパクトの強い会社ソフトバンクであるが、就活生の就職人気ランキングでは、なかなか上位に挙がってこない。
これだけ経営戦略もCMもスマートフォンも注目されているのに、人気が上がっていないのは不思議だ。

「あしたのジョー」を観てしまった。

一昨日にレイトショーで映画「あしたのジョー」を観た。
この映画の感想はブログに書くのは止めようと思っていたが、2日ほど経過し、何だか無性に書きたくなってしまった。尊敬するパフの社長のブログの影響もあるだろう。
CGを駆使した映画でありながら、生身の体は鍛えられた本物。多くの批評にあるように、力石徹こと伊勢谷友介の肉体には感動すら覚える。矢吹丈と対戦のシーンでは、映画の中の観客と共に「おお~っ」とため息が漏れてしまった。
それくらい観る者に強い印象を与える。散々叩かれたいる白木葉子役の香里奈も僕自身は決して悪くなかったと思う。
打ち合いのシーンでは、映画「ピンポン」を思い出してしまった。窪塚洋介と中村獅童のラリーのシーンを・・・。監督が同じ曽利文彦であることが大きな理由だが、打たれた顔のグニャッと曲がった姿は、この監督の得意とするものだろう。
全体通して、娯楽作品としては楽しめた。ただ、どうしても僕らの世代はアニメの「あしたのジョー」で育っているため、違和感を覚えることも多かった。
矢吹丈役の山下智久も丹下段平役の香川照之も好演はしているのだが、やはり「声」が全然違うのだ。
矢吹丈はあおい輝彦であり、丹下段平はあのダミ声なのだ。60年代後半あたりの時代設定は秀逸であったけれども。
その中で、力石徹は違和感を感じなかった。伊勢谷友介の眼差しは、いかにも力石徹を思わせ、あの語り口もストイックな態度も雰囲気を漂わせていた。
伊勢谷友介の存在を知ったのは、映画「雪に願うこと」だった。それまで全く知らなかったが、その映画で挫折した若者を好演し、何故か印象に残っていた。
あまりTVドラマに出演するわけではないので、一般的な認知は少ないかと思うが、昨年の高杉晋作役あたりから、注目度が高くなったのではないかと思う。活躍のフィールドも俳優だけではないようなので、個人的にも今後の活躍に期待したい。
それにしてもこの映画、ちょっと間違えれば下手なアイドル映画になってしまっただろうが、そこはしっかりとエンターテイメントの作品に仕上がった。
何より若い女性の観客だけでなく、僕よりも先輩の50歳代のオジサンたちが映画を観に来ていたのが、何よりの証しだろう。