これからも前向きに 名大社会長ブログ

カテゴリ「本を読む 映画を観る」の記事一覧:

映画「キネマの神様」

松竹映画100周年の記念の作品。
監督は松竹を支えてきた山田洋次氏。
「男はつらいよ」シリーズがなければ、松竹の経営はかなり厳しかっただろう。
貢献度でいえば100周年は山田監督しかない。

ふと、思った。
この作品は松竹がやりたかったのか、
山田監督がやりたかったのか。
いかにも松竹っぽく山田監督らしいので、キッカケが気になってしまう。

スタイルは山田監督の定番中の定番で昭和的。
何かがあった時になんかが起きるとルールが守られている。
よく分かんない表現ですね(笑)。
監督に詳しい方は納得してもらえるはずだ。

僕の本作の事前知識は主役が志村けんから沢田研二に変わったことと、
昔の映画を題材にした作品であることくらい。
(敬称略ですみません)
ある種、活況だった日本映画へのオマージュかと・・・。

確かにその要素は含まれるが、主張は微妙に違う。
そこは観て確認してもらいたい。

ネタバレにならないことでいえば、
主役の若かりし頃を菅田将暉が演じ、老いぼれを沢田研二が演じている。
相方の若かりし頃を永野芽衣が演じ、献身的な老婦を宮本信子が演じている。
超個人的な感想だが、若かりし頃の永野芽衣はメチャ可愛い。
あんな態度で接すれば誰でも惚れてしまう。

昭和の大女優を演じた北川景子が一目を置くのも理解できる。
ちなみに昭和の銀幕ヒロインを演じた北川景子も見事。
昭和30年前後の雰囲気を上手く醸し出している。

勝手な想像でいえばリリーフランキーが小津安二郎で北川景子が原節子か・・・。
それは僕の乏しい想像力でしかないが、そんなイメージがノスタルジックに僕を襲う。
よき日本映画を懐かしんでいるようにも思える。

往年の日本映画ファンならそれでいい。
年配者のみを観客とするのであれば問題ない。
しかし、本作にはこれから日本映画を支えるであろう
菅田将暉や永野芽衣が重要な役を演じている。

配給側は理解をしていると思うが、その客層を掴めているのか。
少々心配であったり・・・。

いい意味でも悪い意味でも本作は日本映画のこれまでとこれからを占う作品。
松竹が次世代の作り手をどう育てていくのか。
楽しみに待っていたい。

ブログを書いているうちに違う方向に向かった。
これは映画評といえるのか。
そのあたりはキネマの神様に聞いてもらいたい(笑)。

映画「アウシュヴィッツ・レポート」

例年、この季節になると戦争の悲惨さや愚かさを伝える特集番組が組まれる。
意味があり、続けることで同じ過ちを繰り返さない戒めにもなる。

映画も同様。
この時期には反戦要素の強い作品が公開される。
それも大切なこと。

ただ僕らが見る世界は日本が舞台で、その悲劇を伝えるのがほとんど。
あくまでも自国の目線が中心。
それは間違ってはいないが、視野を広げれば、
同じように悲劇を繰り返さないために作られた海外の作品も多い。

本作もそう。スロバキア・チェコ・ドイツの合作。
アウシュヴィッツ強制収容所で起きた実話を描いている。
自国を否定する映画を作るドイツは尊敬に値するし、
僕らが知らない世界を映画という媒体を通し歴史認識が深まるのは感謝すべき。
ホロコーストの事実をおぼろげに認識しても、実態を知る機会はあまりない。

本作を通して、戦争の悲惨さを改めて学ぶことができた。
簡単にいえば、アウシュヴィッツ強制収容所を脱走した若者が、
真実を伝えることで12万人のユダヤ人の命を救ったストーリー。

しかし、そこに感動はない。
厳しい事実を見せつけるだけ。
演出された映画ではあるがドキュメンタリーの再現ドラマにも思える。

余計な感情を排除し、真実に基づいた出来事を忠実に伝える。
それがメッセージとなり、僕らはアウシュヴィッツ収容所の恐怖を認識する。

昨年、観た「サウルの息子」はハンガリー系ユダヤ人からの角度だったが、
本作はスロバキア系ユダヤ人の角度。
角度を広げれば解釈も広がる。
映画は楽しむものであり、学ぶものだと改めて実感。

脱走する主役の2人は、「逃げる」ことが目的ではなく「伝える」ことが目的。
その方が危険度は高い。
肉体や精神が破壊してもおかしくない極限状態が続く。

それを支えるものは何なのか。
ラストの長回しでまざまざと受け止めた。

映画の冒頭で「過去を忘れる者は、必ず同じ過ちを繰り返す」と
哲学者ジョージ・サンタヤーナの言葉が紹介される。
エンドロールには各国の首脳の発言が・・・。

それが映画の最大のメッセージなのか。
この時期に日本で公開されるのも大きな意味があるのだろう。

映画「サマーフィルムにのって」

主演女優は元「乃木坂46」の伊藤万理華さん。
僕は知らないが、プロフィールを見ればアイドル映画と思う。
しかし、それは映画を観る前段階で否定できた。

僕が観た映画館では年配のお客さんが多い。
若いお客さんからすれば僕もそこに属するが、僕から見ても年配者は多い。
元乃木坂46を好きなお年寄りは少ないはず。
それが本作の評価を明確にする指針になるのではないか。
男性客中心なのでアイドル要素が強いかもしれないが(笑)。

本作は映画ファン、それも自主映画に関わった人なら特別な存在になる。
なんせ舞台は高校の映画部。
僕も大学時代とオーバーラップさせながら、自分勝手に一喜一憂していた。
気持ちはメチャクチャ分かるのだ。

ネタバレしない程度に紹介すると主役は映画部の女性部員。
ハダシという名の監督志望の元乃木坂46。
自分たちで制作した作品を文化祭で披露する。

それは僕の学生時代と同じ。
学園祭に向け映画を作り、そこで発表するのが大きな目的となっていた。
そのために製作費をかき集め、ロケハンをし撮影(その前に脚本だけど)、
そして編集して1本の映画を仕上げる。
当時を思い出しながら映画を観ていた。

大きく違うのは制作もデジタル化。
本作では撮影もスマホで行っていた。
それには正直びっくり。
当たり前だが編集もPC。
時代の進化を感じた時間だった。

いいたいことはそんなことではない。

高校生が自らの夢に向かいながら葛藤する青春映画。
55歳を迎えた僕はこの手の作品に自分の気持ちが揺れ動かないと思っていた。
しかし、GW中に「アルプススタンドのはしの方」を観て、感受性が残っているのに気付いた。

青春映画で感動できる自分を・・・。
本作もまさにそれ。
自主映画出身者ではなくても主人公や巻き込まれる仲間に共感し、ウルウルしてしまう。
青春映画としてバッチリな作品。

それも10代、20代を喜ばせるのではなく、
50代、60代を喜ばせる青春映画にあたるだろう。
松本監督は自分たち世代をターゲットに置いていないはずだが、
結果的に観客をみれば間違いではない。

いい意味でターゲットを広げたね。
ある意味、不変のテーマなんだよ。

キラキラした好きとか嫌いはないが、
(いや、イヤミでそう演出してるか)
その真っすぐな向き合い方に僕は素直に感動。

ただ本作はごく一部の映画好きが評価する作品だと思う。
たまにはそんな作品があっていい。

僕が純粋に楽しめた映画だったから・・・。

映画「イン・ザ・ハイツ」

当初は本作ではなく「返校 言葉が消えた日」を観る予定だった。
社会派ドラマよりホラーの要素が強いと思い、
観賞日直前でこちらに切り替えた。
近くの映画館で時間帯が合ったというのが映画を観た正直な理由。

僕はミュージカルに心を踊らされることはなく、
3年前の「グレーテスト・ショーマン」程の話題性がないと観ない。
本作はそこまでの話題性はないと思うが、
時間の余裕のある時に何も考えず観るには最適な作品。

本作を非難しているのではない。
夏休みに弾けたい気持ちがある時に観るには相応しいということ。
この季節にマッチした一本といえるだろう。

上映時間は143分と少々長い。
通常の映画なら途中に中だるみするケースは多い。
2時間を超える時間で集中力を維持するのは意外と難しい。

作品の持つ緊張感が重要。
しかし、本作に緊張感があるかといえばそうではない。
むしろ一般作に比べて、ないともいえる。
それでも維持できるのは定期的に訪れる美しく楽しい音楽とダンスがあるから。

映画に登場する全ての役者陣が一糸乱れることなく、
最高のパフォーマンスを発揮する。
そのシーンを切り取って観るだけでも十分な価値はある。
それが肝となるシーンで繰り広げられ、観ている者を楽しませる。

そうして映画は流れていく。
そして、大切なのは必ずハッピーエンドで終わること。
この類のミュージカルで絶望的なラストシーンを迎えるとなると、
これまでの時間が無駄になる。

盛り上がった宴会が締めの社長の挨拶でドン引きとなり場が凍り付くのと同じ。
あっ、僕はそんなことはしないからね。
空回りはあるけど・・・。

ミュージカル映画のラストシーンは定番でなければならないのかも。
僕は日本映画のファンだが、こういった作品を日本で作るのは難しい。
英語だから堂々と作品を打ち出せる。
人種の気質もあるとは思うけど・・・。

アクションやアニメのいいが、こんな作品を家族で観るのもいいかもね。

安いニッポン 「価格」が示す停滞

刺激的なタイトルと刺激的な帯に惑わされ購入してしまった(笑)。
日本のGDPの伸び率の低さはあちらこちらで目にする。
生産性が低いということも耳が痛いほど聞く。

実際、日本人は労働時間が長い割に収益性が低いとも・・・。
懸命に働く身としては納得しがたい面もあったが、
本書を読んでようやく納得することができた。

そこにも大きな要因があったかと・・・。
帯にも書いてあるように、ディズニーもダイソーも世界で最安値水準。
ダイソーは何となく理解できるにしても、
ディズニーランドは高いと思っている人は多いんじゃないだろうか。

ただそれは日本人の感覚。
日本の8200円に対し、フロリダ州では約14500円だし、パリでは約18000円。
他国のディズニーランドと比較すると格安。

僕が初めて行った大学時代はいくらだっただろうか。
確か5000円弱だったような。
今から35年前。
そう思うとそれほど変わらない。

僕が働き始めた頃と多くを比較するともっと変わらないことが言える。
当時ランチは700円程。
今とほとんど変わらない。

スーツは6~7万だった。
バブル期だったとはいえ、新人でその値段のスーツは今よりも遥かに高い。
適正な価格をみても3~4万。
むしろ今の方が安いのではないか。

回転寿司はあったが、100円のクオリティはなかった。
そんな例だけ見ても日本はこの30年ずっとデフレ。
平均世帯年収が変わらないのも当然といえよう。

そこには行き過ぎた価格競争がある。
今でも価格競争は続いているが、そろそろそれもお終いにした方がいいと
本書を読みながら、つくづく感じた。

それが幸せだと感じる人も多いし、物価が安い方が生活はしやすい。
だとしたら給与が上がらないことに対しても文句をいっちゃいけない。
そんなふうにも思う。

海外の方がモノが安いなんて幻想で、それは内側しか見ていない証。
自戒を含め、現状認識が必要。
日本人が裕福だと思うのも過去の話なわけね。
もちろんバイアスが掛かっている面はあるだろうが・・・。

商売柄気になったのが、海外人材の報酬や転職者の賃金。
ここで完全な差がつく。
最近日本でも優秀な人材であれば新卒でも1000万を提示する企業があるが、海外では当たり前。

自社ができない力不足は棚に上げて、その賃金の上がり方の差は理解しておく必要がある。
一時期、積極的に展開していたベトナム辺りからの高度人材も
日本には魅力を感じなくなってしまうかもしれないし。

国内の競合だけ考えれば給与差はあまり競う材料にならない。
せいぜい数百万の世界。
それが海外企業だと2~3倍となるから勝負にならない。

優秀な人材は持っていかれる。
もちろんロイヤリティがあるので、すべてにはならないが、
いずれロイヤリティでは戦えなくなる。

他人事では済まされない。
そう、すべてにおいて自分事と捉えないといけない。

京都あたりのホテルに安く泊まることばかり考えてちゃいけない。
思考停止と同じ。
簡単に抜け出せることではないけれど(汗)。

映画「海辺の金魚」

監督は25歳の女性。
それも主演作もある立派な女優さん。
こんなカワイ子ちゃんがこんな映画を撮るのか・・・。
そんな表現をすると、ダイバーシティの時代では偏見と非難を浴びる。

それは時代の象徴ともいえるし、若い世代が活躍の場を広げる可能性でもある。
アイドルがブームに乗って自分勝手に作品を作るのではない。
才能ある者が豊かな表現力で時代を切り開く。

何の知識を持たずに本作を観れば、
中堅社会派監督が撮った作品と勘違いするだろう。
それだけ映画には落ち着きと貫禄がある。
細かな演出はとても初の長編作とは思えない。
最近は国内外問わず女性監督の活躍が目立ってきた。

映画界も徐々に変化している。
変化するといえば、映画の制作現場も変化がみられるようだ。
先日の日経新聞にも掲載されていたが、
制作現場の働く環境も改善されているという。

昔は働く時間は有無をいわさず、セクハラ、パワハラの横行が当然の職場。
しかし、それでは辞める人が後を絶たず、
現場に残るのはベテランだけになってしまった。
環境改善で若い才能を活かす場を作らなきゃいけない。

そんな記事が掲載されていた。
本作の小川紗良監督も改善された現場だからこそ、生まれた存在かもしれない。
それを考えると過酷さの必然性を言い訳に若いの才能の芽を摘んできたともいえる。
どんな業界でも改善が求められているわけね。

話が逸れた。
本作は実際、日本のどこかで起きていそうな話。
無縁であって身近な出来事。
こんな環境を作らないのが、僕は親の責任と思うが、
何らかの理由によりその責任を放棄してしまう人も存在する。
意外と身近に・・・。

映画から現実の辛さを味わうことはできるが、間接的でしかない。
ただここで大切なのは間接的な経験をいかに自分事に落とし込むか、
いかに当事者の立場として理解することができるか。

その点において、小川監督の演出は素晴らしい。
とても25歳の女性とは思えない。
おっと、また、非難を浴びそうな発言。

とても小さな作品であるのは間違いない。
残念ながらローカルな映画館でしか公開もされない。
しかし、僕らは一定量、そこに目を向ける必要がある。

世の中は決して楽しいことばかりじゃない。
勧善懲悪な世界ばかりではない。
小さな希望を抱きながら自分と向き合うことも大切。

それを感じた作品だった。

映画「プロミシング・ヤング・ウーマン」

この映画を観ながら思い出した作品があった。
4年前に観た「愚行録」
ある部分が似ている。
そのある部分が主役の行動を過激なものにしていく。

そこだけが似ていて、あとは何も被らない。
「愚行録」は憂鬱になったと締めくくったが、本作はむしろ逆。
爽快な気分で映画を観終えることができた。

ポスターや予告編からは過激な復讐劇を想像させ、
残酷さが頭に焼き付きそうだがそうではない。
捉え方はマチマチだが、僕は爽やかな友情物語と受け止めた。
その見方も怪しいものだが・・・。

映画の内容に触れたいが、本作は何も情報を入れずに観た方が楽しめる。
作品の紹介や評論を読まないことをおススメしたい。
僕はそれを読んだ上で観ることを決めたのだが、
中身を知らない方が驚きと感動を覚えるだろう。
騙されたと思って、何も知識を入れず映画館に足を運んでもらいたい。

そんなことを書いたら、ブログであと何を言えばいいのか。
作品の紹介も評論も読むなといいながら、映画コラムニストとしてブログをまとめなければならない。
困った・・・。

どうでもいい話だけしておこう。
本作は今年のアカデミー賞で、5部門にノミネートされ脚本賞を受賞。
巧みな構成が脚本賞に値したのだと思う。
メチャクチャ斬新というわけではない。
世にはもっと難解で脚本賞に相応しい作品もあるが、
エンターテイメント性において感じることもできる。

主演女優賞にもノミネートされたキャリー・マリガンはこの作品で初めて知った。
最近の海外の女優さんはほとんど分からないので、大体は初めて・・・。
彼女の豹変ぶりも素晴らしい。
素の可愛らしい女性から異常な世界へ自らを誘うその表情。
本性でもあり演技でもあるその演技は時に人を辛くさせる。
こちらの感情移入を巧みにコントロールする。
きっと何を言っているのか伝わらないので、やはり映画館に足を運んでください(笑)。

ずっと日本の女優さんに似ていると思っていたが、香里奈さんに似ていないか?
そう感じたの僕だけ?
最近、見ないけど何をやっているんだろうか?
名古屋市出身だし、頑張ってほしいけどね。

なんとか作品の内容に触れることなくブログを終えれそう。
「プロミシング・ヤング・ウーマン」とは明るい未来を約束された女性のこと。
日本語訳をタイトルにするわけにはいかない。
僕の好感度は高かったけど・・・。

逆・タイムマシン経営論

先月、SQUETのオンライン講演会で一橋ビジネススクールの楠木健教授の講演を拝聴。
やたら面白く、その流れで本書をポチっとしてしまった。

彼は作家で大学の先生だが、喋り手としても上手い。
そしてとても痛快。
その低音の声も魅力的だ。
あの声でオチャラけた話をされるとなぜか高尚になる。
不思議だ。

4年前に参加したイベントも刺激的な内容だった。
こんな先生ばかりなら授業も面白いだろう。

本書のタイトルだけでは中身を想像するのは難しい。
変に勘ぐるよりも素直に受け取った方が納得感は強い。
分かりやすくいえば映画「バックトゥザフューチャー」みたいなもの。
いや、違う、全然的確な表現じゃない。
未来ではなく過去が重要といっているだけのこと。

楠木氏の解説では、
逆・タイムマシン経営論が、「新聞雑誌は寝かせて読め」を標榜するのは、
新聞や雑誌の記事が、一定の期間を置いてみると、
良書に勝るとも劣らぬスローメディアへと変質するからです。

といっている。

特に本書で取り上げられていたのが、日経ビジネス。
刺激的な特集タイトルが賑わせる。
●●革命、●●は消える、●●時代の終焉など、未来に対して脅しとも受け取れる内容に
僕らは危機感を覚え、時代遅れにならないように焦る。

10年後消えると言われてたものが消えたかといえばそうではなく、
実際はその当時より伸びてる場合もある。
それが真実かどうかは昔の記事を読み返してみると判明する。
だから著者は寝かせて読めという。

日本でも「人口増が諸悪の根源」といわれた時代があった。
しかし、今は「人口減少が諸悪の根源」的な要素が強く、
あちこちのニュースで取り上げられている。
増えても減っても諸悪の根源ということ。

今の議論が20年後本当に当てはまるかはわからない。
そんなことが僕らの周りには多く、振り回され将来への悲観や楽観を繰り返す。
歴史をじっくりと眺めることと自分で判断を下す思考力を身に付けることは必要。

常に振り回される身としては肝に銘じなければならない。
著者はそれを「激動期トラップ」と面白おかしく表現する。
他にも「飛び道具トラップ」とか「遠近歪曲トラップ」とか・・・。

シリコンバレー礼賛のイメージもそう。
シリコンバレーでベンチャー企業が続々と誕生し、
世界の先端を走っているように思うが、全てではない。
当然、消えていく企業も多いし、そこを拠点としないと世界の先端を走れないわけでもない。
しかし、数々の記事を読むと勝手に信じてしまう。
「遠近歪曲トラップ」に陥るわけだ。

そして、「テンゼロ・オジサン」にならないようにも気をつけないと・・・。
「●●3.0」から「●●4.0」に移ったなどというが、その決定的な違いは何か、
さらにその先はあり得るのか、変化の本質を論理的に考えることも必要。
言葉だけで踊らされていないか。

僕も「テンゼロ・オジサン」の一人かもね(汗)。
そんなことも含め。本書は逆・タイムマシンに乗れというのだ。

ドイツの文学者、シュレーゲルがこんな言葉を残している。
「歴史は後ろ向きの預言者である」と・・・。

「今こそ激動期!」と無責任に振り回されないようにするのも大切。
確実に前に進むにしても、一旦立ち止まり、過去を振り返る作業もね。

僕は「シナジー・オジサン」にならないように気をつけます。

映画「ライトハウス」

僕はホラー映画はまず観ない。
怖いのが嫌いだというのが大きな理由だが、
そこから得るものがなさそうというのも理由のひとつ。

映画の好き好きは人それぞれなので、
単純にホラー映画を楽しみたいという人を否定するものではない。
あくまでも個人的な好みの問題。

そんな点では本作を観たのは異例中の異例。
僕はサスペンス映画という認識で本作を選んだが、
見方によってはホラー映画と受け止めれられてもおかしくはない。
ゾンビが出てくるわけでも、異常な殺人犯が次から次への惨殺を犯すわけでもない。

2人の登場人物が過酷な労働環境の中で精神的に追い詰められていく話。
日本でいえば明治時代にあたる頃。
孤島の灯台を守る人物を描き、実話がベースという。
事情を知らない僕は、そもそもこんな場所の灯台が必要なのか、
だれも使っていないのに守る必要があるのかと思ってしまうが、
それは歴史認識が足りないだけかもしれない。

周辺には誰もいない島。
共同生活の男2人が灯台を守るわけだが、今でいえば完全にブラックな職場。
労働環境も劣悪であれば、パワハラが当然のように横行している。
いわゆる上司部下の関係だが、その異常性で関係性が崩れ、
それを救う唯一の存在がアルコール。

その中で起きる事件・・・。

映像はモノクロ。
フレームも今どきのワイドではなく正方形に切り取ったスタイル。
70年前の作品を観ている錯覚にも陥る。

繰り広げられる映像や会話は神秘的。
幻想の中で登場する人魚は艶めかしい。
あまり多くは語らないが、想像しがたい世界が展開していく。

だからだろうか。
玄人の方の評価は高く、それに引っ張られ僕も観るに至った。
捉え方によってはホラー映画のジャンルだけど。

主役の一人ウィレム・デフォーを久々に観た。
「プラトーン」や「スパイダーマン」のイメージが強いかもしれないが、
僕の中では「ストリート・オブ・ファイヤー」の敵役。

学生時代、この映画のオープニングをパクって映画を作った。
カッコいい作品だった。
ウィレム・デフォーはどの作品も異常性を上手く発揮するが本作でもそう。
それに叩きのめされてしまう。

たまにはこんな作品を観るのもいいが、
しっかり睡眠をとり体調を整え臨むことをおススメする。
好きな人は好きだろうね。

今年も「仕事映画」を学びました

先週、土曜日まで「『仕事映画』に学ぶキャリアデザイン」を受講した。
一昨年は学習院大学まで出向いて受講したのだが、今年はオンライン。
その時のこともブログに書いている。

前回は4コマ、3時間×2だったが、今年は3コマ。
オンラインで1日2コマは無理。
先生も生徒も集中力が持たない。
それは今、非常勤講師を務める身として感じること。
90分がちょうどいい。

キャリアを学生に教える講師であり、
映画コラムニストである僕として授業の学びは大きい。
自分の視点と先生や他の受講者の考えを重ねると新たな気づきが多くなる。

キャリアの授業に使えないかと姑息なことも考えたが、そんなに甘くない。
相手が社会人か学生かでコンテンツも変わるし。

今回、題材となった映画は第1回「何者」、
第2回「川の底からこんにちは」、
第3回「この自由な世界で」「優しくキスして」。

第3回の2本は観ていない。
いずれもケン・ローチ監督のイギリスの労働問題を題材としている。
この監督はこの路線を徹底的に描くね。
僕はそれなりに鑑賞している。
「わたしは、ダニエル・ブレイク」
「家族を想うとき」

授業の作品も予習するためAmazonプライムで探すが公開されておらず。
残念・・・。

「何者」に関しては就活ど真ん中な映画なので、僕もキャリアの授業で紹介するが、
担当の梅崎先生は学生が落ち込むので勧めないという。
確かにそうかも・・・。
気をつけよう。

第2回の「川の底からこんにちは」を観たのは10年以上前で、かなり忘れている。
復習のつもりで観ようとしたが、Amazonプライムにはなかった。
もう、何とかして欲しなあ~。

担当の脇坂先生の授業を受けながら、僕なりに感じるところが多かった。
地方企業の生き残りを描いているが、
僕が感じたのはリーダーシップのあり方とファミリービジネスの事業承継の視点。
特にファミリービジネスとして中小企業の後継者問題を上手く描いている。
この作品をキッカケに石井裕也監督と主演の満島ひかりは結婚したと思うが、
なかなか、やるじゃないか。

キャリアの授業には使えないが、今日から始まる名古屋ファミリービジネス研究会では、
ちょっとしたネタとして提供できそう。
映画コラムニストなのにすぐに自分の仕事に繋げるなんて、オレって流石!。
そんなふうに思ったり・・・。

どっかで探してもう1回おさらいしないと語るに語れない。
人に勧めるのにAmazonプライムにないのは致命的。
もう、何とかして欲しいなあ~。

仕事映画でキャリアデザインを語るだけでなく、
仕事映画でファミリービジネスを語るなんて、これは僕しかできない。
お~、やれることが増えたぞ・・・。

そんなことを感じた。
それが世の中のニーズに合致するかはともかく自分なりに腹落ちし、
学びの多かった今回の授業。

大人もどんどん学ばねばならないね。