先月、SQUETのオンライン講演会で一橋ビジネススクールの楠木健教授の講演を拝聴。
やたら面白く、その流れで本書をポチっとしてしまった。

彼は作家で大学の先生だが、喋り手としても上手い。
そしてとても痛快。
その低音の声も魅力的だ。
あの声でオチャラけた話をされるとなぜか高尚になる。
不思議だ。

4年前に参加したイベントも刺激的な内容だった。
こんな先生ばかりなら授業も面白いだろう。

本書のタイトルだけでは中身を想像するのは難しい。
変に勘ぐるよりも素直に受け取った方が納得感は強い。
分かりやすくいえば映画「バックトゥザフューチャー」みたいなもの。
いや、違う、全然的確な表現じゃない。
未来ではなく過去が重要といっているだけのこと。

楠木氏の解説では、
逆・タイムマシン経営論が、「新聞雑誌は寝かせて読め」を標榜するのは、
新聞や雑誌の記事が、一定の期間を置いてみると、
良書に勝るとも劣らぬスローメディアへと変質するからです。

といっている。

特に本書で取り上げられていたのが、日経ビジネス。
刺激的な特集タイトルが賑わせる。
●●革命、●●は消える、●●時代の終焉など、未来に対して脅しとも受け取れる内容に
僕らは危機感を覚え、時代遅れにならないように焦る。

10年後消えると言われてたものが消えたかといえばそうではなく、
実際はその当時より伸びてる場合もある。
それが真実かどうかは昔の記事を読み返してみると判明する。
だから著者は寝かせて読めという。

日本でも「人口増が諸悪の根源」といわれた時代があった。
しかし、今は「人口減少が諸悪の根源」的な要素が強く、
あちこちのニュースで取り上げられている。
増えても減っても諸悪の根源ということ。

今の議論が20年後本当に当てはまるかはわからない。
そんなことが僕らの周りには多く、振り回され将来への悲観や楽観を繰り返す。
歴史をじっくりと眺めることと自分で判断を下す思考力を身に付けることは必要。

常に振り回される身としては肝に銘じなければならない。
著者はそれを「激動期トラップ」と面白おかしく表現する。
他にも「飛び道具トラップ」とか「遠近歪曲トラップ」とか・・・。

シリコンバレー礼賛のイメージもそう。
シリコンバレーでベンチャー企業が続々と誕生し、
世界の先端を走っているように思うが、全てではない。
当然、消えていく企業も多いし、そこを拠点としないと世界の先端を走れないわけでもない。
しかし、数々の記事を読むと勝手に信じてしまう。
「遠近歪曲トラップ」に陥るわけだ。

そして、「テンゼロ・オジサン」にならないようにも気をつけないと・・・。
「●●3.0」から「●●4.0」に移ったなどというが、その決定的な違いは何か、
さらにその先はあり得るのか、変化の本質を論理的に考えることも必要。
言葉だけで踊らされていないか。

僕も「テンゼロ・オジサン」の一人かもね(汗)。
そんなことも含め。本書は逆・タイムマシンに乗れというのだ。

ドイツの文学者、シュレーゲルがこんな言葉を残している。
「歴史は後ろ向きの預言者である」と・・・。

「今こそ激動期!」と無責任に振り回されないようにするのも大切。
確実に前に進むにしても、一旦立ち止まり、過去を振り返る作業もね。

僕は「シナジー・オジサン」にならないように気をつけます。