以前から気になっていた作品。
この夏に終戦80年企画として4K版が公開されたのでミリオン座へ。
50年以上前の作品だが、意外と映画館は混んでいた。
「生とは何か」というテーマはどの時代でも不変ということか。
当時どれだけ話題になったのかは分からない。
1973年のキネマ旬報ベストテン外国映画ではスケアクロウに続いて2位。
読者選出ベストテンでは1位で、監督賞はダルトン・トランボ氏。
ベトナム戦争に被っている時期なのでより敏感だったと考えられる。
そんな点では今年、公開される意味は大いにあるのかもしれない。
終戦80年はひとつのキッカケにすぎない。
本作は第1次世界大戦でほぼすべての身体機能を失った青年兵士の視点から、
戦争の本質を描く。
戦闘シーンは皆無に近い。
大半はベッドに横たわるジョーの悲痛な叫びがほとんど。
身体機能を失ったジョーの叫びは医師にも看護師にも届くことはない。
声を上げていても心の叫びとしか受け止めることはできない。
病室を中心とした現在はモノクロで描かれ、回想シーンはカラーで描かれる。
「オッペンハイマー」もこれに近い。
目の前が何も見えないからモノクロなのか、
過去の記憶が鮮明だからカラーなのか、
監督の意志が映像で表現されるが解は観る者に委ねられる。
記憶が鮮明なカラーであっても幸せとは言い難い。
その瞬間は幸せであってもモノクロの現在に塗り替えられる。
オセロが白から黒に変わるようにカラーはモノクロに凌駕される。
もしくは鮮明な記憶は存在せず、夢がカラーになっていたのかもしれない。
考えるととても恐ろしいこと。
それが戦争ということか。
ダルトン・トランボ監督は赤狩りでハリウッドを追放された脚本家。
名作「ローマの休日」は名義を借りて書いたと以前読んだ書籍に書いてあった。
監督作品は本作のみ。
個性的であり万民受けもしそうにない。
本作を観てツラさを感じても希望や喜びを得ることはない。
考えさせられるが正直面白いとは言い難い。
そんな作品のため監督として実績を積み上げるのは難しかったのだろう。
しかし、今になって公開されることに価値がある。
ポスターにもあるピースサイン。
Vサインとも呼ぶべきか。
さりげないシーンでピースサインは登場するが、
そのシーンにどんな意味が隠されているのか。
僕には自信がないように映ったけど。