泣ける。
爽やかに泣ける。
いいこの感じ。

55歳の誕生日を迎え、こんな感情に共感できるとは思わなかったが、
まんまと引っ張られてしまった。
そう、今日、僕は誕生日なんです。

本作は2020年キネマ旬報ベストテンの10位の作品。
公開時は全く知らず。
このベストテンの発表で初めて知った。
ただ他の話題作に目が移り、素通りしそうな地味さ。
俳優陣も誰一人ひとり知らない。

しかし、映画コラムニストとしては見落としてはならない。
こんな作品にこそ秀作で、今後日本屈指の映画監督を生み、
有望な役者が活躍の場を広げる。

映画コラムニストとしては外せないポイント。
その点、僕の着目点は間違っていなかった。
さすが!
と言いたいところだが、正直に告白しよう。

映画仲間が提供するBush映画アカデミーで絶賛していたので鑑賞に至った。
う~ん、まだまだですね。

今はAmazonプライムでも有料版だが、ちょっと空いた時間で観て欲しい。
76分なのでサクッと観れる。
先日の「砂の器」のような重たい空気にもならない。
自分の中に爽やかな風が吹く。
お~、なんとも青春っぽい表現。

本作は夏の甲子園に出場した野球部の1回戦を描いている。
しかし、野球のシーンは一切出てこない。
選手が懸命にプレーするシーンはない。

そこに感動はない。
いや、違うな。
間接的に大いに感動を生む。
気がつけばアルプススタンドのはしの方にいる生徒と一緒にスタンドのはしで応援している。
応援する生徒を応援しながら・・・。

一緒になって、ガンバレーと言いたくなる。
グランドに対してもスタンドのはしに対しても。
なんかいい、この感じ。

僕は俳優陣も知らないと書いたが、どうやら演劇界で知られた存在。
文部科学大臣賞を受賞した演劇を映画化した作品。
その舞台に出演する役者陣が本作にもそのまま出演。
だからこそ細かな表現も上手く演じているのだろう。

舞台の設定如く、一試合の3時間程度を描ているのみ。
他の世界はなく、映像もほぼスタンド。
そこで繰り広げられる青春群像。

抱える挫折は小さいが、本人にとっては大きな挫折。
他人の力を借りながらも自分で乗り越えるしかない。
その姿が愛おしく映る。

いいね、若さって。
たまには青春映画も観ないと。

そして、自らの言葉を気をつけよう。
「仕方ない・・・」って、言わないように。

55歳も頑張ります。