高橋俊介氏の著書はこれまで何冊か読んできたし、講演も伺ったことはある。キャリアに対しての基本的な考え方は変わらないのだろうが、働き方の多様化や求められる人物像の変化に伴い、微妙にメッセージも変わってきているような気がする。あくまでも主観で・・・。
本書では、序章で
「職業経験もない状態で、自分のやりたいことなどわかるはずがありません。それに、キャリアというのは目標を定め、そこから逆算して最短距離を行こうと思っても、決してうまくいくものではないのです。」
とバッサリ。
また、文中にも
「日本国憲法に、国民の三大義務のひとつとして定められていることからもわかるように、勤労というのはその能力を持ったすべての成人に課せられた社会的な役割であり、責任なのです。
だからまず、その役割と責任を果たすのが先であって、自分がやりたいとかやりたくないとかを優先させるというのは、大いなる勘違いと言わざるを得ません。」
と厳しい言葉も。
就職活動を始める学生に啓蒙する「やりたい仕事を見つけること」を完全否定していると言える。
僕もやりたい仕事なんて幻想に過ぎないと思っていることもあり、高橋氏の言葉には共感する。
それは自らの半生を語っても言えることだ。自分が就職する段階で、今の主たる業務である採用支援事業をやりたいなんて、これぽっちも思っていなかった。
日々の経験とその中で学んだことが背景にあり、その積み重ねにより今の立場で仕事をしているだけだ。偶然に導かれ、運が良かっただけとも言える。
しかし、ただ風に流されるまま適当に仕事してきたわけではなく、時代に適応しながら、目の前のことに真摯に取り組んできた結果はあるのだろうけど・・・。
自分ではまだプロフェッショナルとは言い切れないと思っているが、歩んできた過程だけを捉えれば認めてもいいのかもしれない。プロフェッショナルとは所詮そんなもんだと・・・。
プロフェッショナルという言葉は、いかにもハードルが高く厳しいことと捉えがちだが、決してそうではないと教えてくれるのも本書。どう行動をすべきか、今、何をしなければならないのかを考えてもらうことに主眼を置いている。ヒントはあるが、明確な回答はない。それで十分。
僕としては、大学生あたりの読んでもらいたいが、却って悩んでしまうかもしれない。背骨を作ることが重要だと言っても・・・。
しかし、背骨があるとないとでは随分、人生は変わるのだろう。
同級生経営者の櫻山さんが推薦していたので手にした一冊。
知り合いがおススメしなければ、自ら読むことはなかったと思う。自分で選ぶ本はどうしても偏ってしまうので、知り合いの意見を聞き参考にしなければならない。
現に今年読んだ本の中で女性の著書は「破壊と創造の人事」(楠田祐、大島由紀子共著)があるだけで、それ以外は見事に男性の作品。なんて視野の狭い人間。気が付かなかった・・・。
著者は郵便不正事件で巻き込まれた官僚。
当然ながら僕はマスコミの報道で、その顛末を知るくらいで、検察って恐ろしいなあ~と感じていた程度。しかし、本当の恐ろしさはその当事者しかわからないこと。本書の半分近くはその検察とのやり取りが書かれている。
その壮絶な状況は、もっと深く切り込んでもよさそうではないかと思ったが、現時点で書けることは本書が限界なのかもしれない。
著者の視点はあくまでも女性で、今後キャリアを積み重ねたい方にエールを送っている。そのため作品の半分は著者の仕事の半生が著されており、事件にだけ関心がある人にとっては物足りないのかもしれない。だが、仕事の半生があったからこそ、事件を乗り越えられてきた強靭な精神力を感じさせ納得させられる。
人は仕事を通じて、もっともっと苦労しなければいけないのだ。
巻末資料には著者が勾留生活164日間で読んだ149冊の書籍が紹介されている。ほぼ一日一冊。佐々木譲から塩野七生、稲盛和夫まで・・・。幅広い見識が窺える。
沢木耕太郎は「危機の宰相」。そういえば、この作品読んでいないな・・・。

予備知識を全く持たず観た映画。もちろん原作も読んでいない。かえってその方が良かったのではないだろうかと映画を観終わった後の気怠い気持ちがそう思わせた。
森山未來が扮する主役 北町貫多は昭和42年生まれの19才の設定。僕は41年生まれなので、ちょうど大学時代を過ごした時期にあたる。
まさにその時代を写した映画であり、自分の青春時代とオーバーラップする。その当時を記憶しているせいもあり、時代考証の素晴らしさに感動する。
山下監督の前作「マイバックページ」の描き方も素晴らしかったが、本作はよりリアルに感じることができる。
NCAAの缶ジュースやもみあげを斜めに切るテクノカット、ストーンウォッシュのジーンズなど80年代の香りがプンプンし、流行が忠実に映し出される。それだけで唸ってしまう。
ヒロイン役の前田敦子も普段感じることのない昭和チックな姿も魅力的だった。
肝心な映画はどうだったか・・・。
ある者にとっては大いに共感するだろうし、別の者には全くつまらない映画と真っ二つに評価が分かれるのではないか。僕自身は世代的共感もあり、あのモヤモヤ感はすごく理解できた。
しかし、ちゃんとした大人が見ると情けない人物でしかないだろう。それは自分達の親の世代であり、もしかしたら現代の若者も同様な受け止め方をするのかもしれない。全く参考にならない批評だな・・・。
主役の森本未來のファンではないが、彼の作品を「ALWAYS三丁目の夕日64」「モテキ」と立て続けに見た事となる。上手い!。全く異なる役柄を期待したい。
それにしても映画の中では、ずっとタバコを吸っている。あんなにみんな吸っていたかな・・・。
極端な言い方をすれば、僕もこんな感じで経営を任されたに近い。(実際は、そんな簡単ではないが・・・。)経営者としての薫陶をしっかりと受けたわけでもない。
しかし、本書に書かれている「経営の20の課題」については概ね正しい方向で答えられた。それは少なからず2年間社長として、多くの事象で決断を迫られ、考えてきた結果に過ぎない。3年前にこの本書を読んでいたら、どこまで比較的正しい解を導けたかどうかは何とも言えない。
この書籍はジュンク堂に立ち寄り、ビジネス書コーナーでぶらぶらと書棚を眺めながら偶然手にしたもの。著者も知らなかったし、「インバスケット・トレーニング」という手法も全く知識がなかった。
ゲーム感覚で経営思考を身に付ける本書の流れは中々面白い。休日にガッツリ仕事の事は考えたくないけど、少しは勉強したいという気分の時にピッタリだ。数時間でインバスケット体験も終了することができる。休日にそんなことをしている時点でワーカーホリックかな・・・。
実際に経営を任されている者やMBAホルダーには物足りないかもしれないが、20~30代の将来経営層を目指す方には楽しく学べる一冊だ。より深く考える必要はあると思うが。
そして「社長なんて、いつもボーッとしていて脳天気。お気楽だなあー」と思っているうちの社員にも読んでもらいたい。
少しは僕の苦労がわかるはずだ・・・(笑)。
小説は一年に数冊しか読まない。
今年に入って何を読んだかを調べてみたら「もしドラ」に続く2冊目。小説はその世界にどんどん惹き込まれていくので、手に汗握る時間を過ごせるのは事実だが、ノンフィクションの世界を中心に考えていきたいので、どうしても優先順位は後ろになってしまう。
そんな意味では、貴重な2冊目が本書。拙い表現で言えば、涙が出そうなくらい感動したし、面白かった。
読み終えた時はスタバに居たのだが、ウルウルとした格好は情けないオッサンに映っていたかもしれない。おこがましいが自分とオーバーラップさせていた面もあった。
業種や事業内容も異なる、会社規模も異なる、歩んできた環境も異なる、その才能も異なる。共通点と言えば、中小企業の経営者という一点のみだが、何故か感情移入もしてしまったし、共感する箇所も多かった。
ストーリー展開の面白さや丹念にリサーチされたロケット製作過程の表現力にも感動を覚えたが、やはり一番は中小企業の経営者としての共感だろう。自分が下した判断への葛藤や揺れ動くさまは実に的を得ている。心理描写をを含め、大いに感心させられた。
仕事をする上で「お金」は最も重要な動機にはなるが、人はそれだけでは動かないし満足しない。その先にある夢や達成感があってこそ、真摯に仕事に向き合える。自分が夢を持つこと、そして、夢を持たせることは必要不可欠だ。
著者の池井戸氏は僕と同じ岐阜県出身。年齢は3歳上。もちろん存じ上げないが、それだけでも身近に感じてしまう。申し訳ないが・・・。
もしかしたら、どこかですれ違ったことがあるかもしれない。
と勝手に思わせてもらった。
ちょうど今から1ヶ月前にベンチマークツアーに出掛けた際、記念に頂いた本書。なんと山田相談役のサイン入り。書かれていることもお約束通り。言われたいことは実にシンプルで分かりやすい。

本書を読みながら、山田相談役の講演内容や工場見学をオーバーラップさせていた。全くブレがない。本書の中味と自分の目で確認した現場にずれが見当たらない。
こういう言い方は失礼にあたるかもしれないが、一般に経営者が出版されるビジネス書の場合、その本人の理想と現場の実態が乖離していることが少なくない。トップの思想が途中段階で歪曲化されてしまったり、現場の想いを吸い上げられていなかったりするケースはあるように思える。
しかし、本書の場合、僕が自分の目で見た実感値もあるだろうが、それを感じない。
多くの取り組みは先のベンチマークツアーのブログで書いた通りだし、周知の事実でもあるが、それ以外にも山田相談役らしい取組みも紹介されているのが本書。新たな気づきもあるのだ。
マネできる面はまだ少ないが、少しでも社員が働きやすい環境、なおかつヤリガイを持って仕事に臨める環境を作っていかなければならない。
そして、山田相談役が言われている戦略を実行せねばならない。
「社長の仕事は、彼らに頑張ってもらうために”餅”をどうやって与えるかを考えることだ。これを戦略という。自分が現場に出ていて、それができるのか?」
まだまだ現場に出たいと思ってしまう自分は、この言葉を自分に言い聞かせなければならない。
もう一つ。
日本の97%の会社は4000万の経常利益が上げられていない。儲かっていない会社を参考にしても意味がないという。間違いない。自社の取り組みにおいても同様である。
本書を読むことで、自社の課題も見えてくる。
いや、自分の課題か・・・。少しずつ実践するしかないな。
「え~っ、今まで読んでなかったの?ダメじゃん!」と言われそうだが、まさにその通り。
経営者のバイブル的な書籍であり、発行から13年も経過しているのに、ようやく手にしたのがつい最近の話。読後は、もっと早く読んでおくべきでだったと素直に反省。
僕がとやかく感想を述べるまではないが、多くの方の支持されていた理由は一目瞭然。
経営者としての考え方、心構え、論理的思考力、勇気、決断力、倫理観、学習能力、リーダーシップなど全ての事が自らの実践と共に書かれている。
最も説得力を生むのは、実践に実践を積み重ねた生き様であり、その中で培い学んだ考え方なのだ。自分たちより大きな組織に戦いを挑み、可能性を信じて行動し続ける。まさに手本中の手本。
42年間、企業を牽引してきたトップだからこそ、語れる面があるのだ。
うちの会社でも、コスト面、サービス面からヤマト運輸を利用することがほとんど。個人的にも先日はゴルフバックの宅配もお願いした。当たり前のサービスの背景には、すさまじい努力と苦悩があったのだ。
もし、宅急便が誕生していなかったら、今の宅配サービスのモデルも全然違うもの、もしくは旧態依然としたものだったかもしれない。
このようにして革新的なサービスは生まれていくんだな・・・。
最終章に書かれている「経営リーダー10の条件」。
これは手帳にしっかりと貼り付けておかねばならない。

常に学ぶ姿勢を忘れないことだ。

昨日は朝から雨。
息子の少年野球も中止となり、朝の早い時間から暇を持て余す状態。家にいてもゲームばかりしているので、映画を観に出掛けた。
TVCMで予告編な流れている時から、息子の話題はこの映画の事ばかり。前作のシリーズも何回観たかわからない。かなりのファンのようだ。
映画公開から2日目で混雑も予測されたので、近くの映画館をWebで初めて予約をした。なかなか便利。「映画の日」の入場料1000円も適用されていたし・・・。得した気分だ。
映画は公開されたばかりで、これから観る方も多いと思うので、多くは語らない。
僕は2Dで観たのだが、3Dで観るとかなり疲れてしまうだろう。それだけ迫力がある。前作からそれほど年数も経ってはいないだろうが、CGの技術も格段に進歩したようで、その動きは目まぐるしい。スパイダーマンの動きに付いていくのが、やっとである。
子供はこの手の映画は喜んで観る。息子も観終わった後、既に次回作も観たいと言っていた。まだ製作されるかわからないというのに・・・。
(もう製作されているのかな?)
オバサン役の女優がずっと気になっていた。かつてよく見た女優だ。
帰宅後、調べてみると、そう、サリー・フィールド。懐かしい~。皺が増え歳を取ったなあと思ったが、65歳というから当然。いい味を出していた。
天気の悪い日に、気分をスカッとさせてくれる映画である。
つくづく男は情けない。格好をつけるばかりで、だらしがない。そして、言い訳ばかり・・・。
映画を観た直後の感想はそんな感じ。それは昭和20年代だろうが現代だろうが、原作が太宰治だろうが村上春樹だろうが同じこと。結局、男が女をダメにし、世の中を悪くしているのだ。
しかし、文学的な香りの作品に仕上がっているため、そのダメ男に卑屈さを感じないし、存在も許してしまう懐の深さがある。映画の解釈は全くなっていないが、これが根岸吉太郎の演出の巧さと田中陽造の脚本の奥深さなのだろうか・・・。大きなストーリーの展開があるわけではないが、どんどん映画の中に自分が引きづりこまれてしまった。
この手の日本映画は、きっと国内よりも海外で評価されるのだろう。特にヨーロッパあたりでは・・・。
(モントリオール世界映画祭で監督賞を受賞したことを知っていて、そんなことを言っているんだけど。ズルいな・・・。)
それにしても女房役の松たか子は、強い意志を持った耐える女の役が良く似合う。どこまでが本気で、どこまでが女を使った演技なのかわからないのがいい。ドラマ「運命の人」の奥さん役も完璧だったし、この映画の役も見事だった。数々の女優賞を受賞したのもうなずける。
映画の後が存在するなら、主役の作家はきっと同じような行動を繰り返し、迷惑を掛け続けるのだろう。しかし、そんなダメ男に何故か憧れてしまう自分は何なのだろうか・・・。
ダメダメ男を望んでいるということなのか・・・。よくわからない・・・。
サッカー関連の書籍はかなりの量を読んできたつもり。
「オシムの言葉」や「中田英寿 鼓動」は今でも名著だと思うし、仕事のモチベーションに繋がった書籍は多かった。選手側や監督側の立場で書かれたのがほとんどであったが、本書はGM(ゼネラルマネジャー)側。初めてのケースではないだろうか・・・。
僕は自称グランパスファン。
ユニフォームの袖のスポンサーになることが壮大な、かつ個人的な夢である。(社員は反対するだろうなあ~)。しかし、著者である名古屋グランパスGMの久米一正氏のことはほとんど存じ上げなかった。これでファンの程度がばれてしまうが・・・。
GMという言葉は、プロ野球であれ、他のプロスポーツであれ、耳にはしていた。しかし、どんな役割をこなし、チームに対しどんな貢献をしているかは、映画「マネーボール」で観た程度で、具体的なイメージはあまり持っていなかった。
本書を読んで、選手との距離感やチームの方向性、最大のテーマである勝つチームにするために何をすべきかが、おぼろげながら理解できた。一般企業でいう組織を束ねる責任者のポジションと同じだが、構成されるメンバーが一匹狼ばかりになるだろうから、精神的な苦労は多いはず。
対外的に目立つ存在ではないが、フロント、監督、コーチ、選手を繋げ、上手く紐を引いたり、緩めたりしなきゃいけない立場。組織の肝でありながら、いつクビになるかわからない存在。この職種もれっきとしたプロと言えるだろう。
敬愛するピクシーとの関係も興味深い。
お互いの信頼関係があって、はじめてあのような行為となるのだろう。
本作品が出版されたのが、今年の3月末。グランパスが今のように低迷している時期ではなかった。万が一、グランパスの成績が今のままの状態でリーグが終了すれば、本書の価値は奈落の底に落ちるだろうし、サブタイトルにある「名古屋グランパスの常勝マネジメント」も戯言にしか聞こえない。
それが理由ではないが、早々に浮上してもらいたい。いや、浮上してもらわないと困る。ここ1~2年の感動を引き続き与えて欲しい。
「人を束ねる」。サポーターも束ねて、歓喜の渦に巻き込んで欲しい。