この作品をどう捉えるかは非常に難しいと思う。
阪本順治監督、石橋蓮司主演の段階で観ることを決めたが、
その評価は決して高くない。
むしろ期待外れ的な感想が多かった。

そんなコメントは映画コラムニストでも惑わせる。
ここ最近は映画館に通う回数も減り、
観るべき映画が限られた状況では無駄な時間を過ごせない。

だから戸惑ったのだが、それは映画の関係者に一蹴されそう。
「お前は分かっていない」と低い声で睨まれそう。
まるでハードボイルドの世界のように・・・。

どうだろう、今、この令和の時代にハードボイルドは存在するだろうか。
昭和の遺産でしかないのか。
昭和の時代は当たり前にタバコを吸い、ウイスキーをストレートで飲み、
静かに語り合い、時には激しく踊り合い、気がつくと朝を迎えていた。
それは40代であっても、50代であっても・・・。

それが今はどうだろう。
僕はタバコは吸わないし、ウイスキーのストレートは稀にしか飲まないし、
12時前には自宅に戻り寝る。
実に真っ当な生活。

見方を変えれば、実につまらない生活。
映画で主役を張る70代の役者連中から、
今のオヤジや若者にダメだしを食らっているような錯覚に陥る。

そんな作品。
それを糞マジメに説教するのではなく、悪ふざけでたしなめる感じ。
この時点で何を言っているのか、どんな映画なのか全く理解できないだろうが、
僕は映画の魅力に引き込まれながら、
カッコつけるあまりカッコよくない爺さん達をカッコよく思うのだ。

それは脇を固める豪華な役者陣が静かに物語っている。
僕は作品を観るまで誰が出演しているか知らなかったが、いやいや本当に豪華。
ミリオン座で上映するような作品じゃない(笑)。

佐藤浩市、江口洋介、妻夫木聡、井上真央、柄本明親子。他にも・・・。
親子といえば佐藤浩市も親子で出演。
それも上司部下の関係で・・・。
息子でなければ佐藤浩市にあんな失礼な態度は取れないだろう。
そのあたりを確認するだけでも映画を観る価値はある。

映画業界も進化を続けている。
最新のテクノロジーを駆使してとんでもない世界を当たり前のように描いていく。
それも間違いなく映画の魅力。

同時に昭和の時代に持っていた大事なものが失われていく感覚も。
オマージュなのか、アンチテーゼなのか、本当にただの悪あがきなのか。

真意は不明だが、この感覚を大切にしたいと思ったのは僕だけだろうか。