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(2011/10)
沢木 耕太郎

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好きな作家は誰ですか?と聞かれれば、迷うことなく”沢木耕太郎”と答えるだろう。
(今までそんな機会はないが・・・)
よくありがちだが、「深夜特急」で初めて著者を知り、それからむさぼり読むようになった。20代後半なので遅咲きではあると思うが、そこからは全てに近い作品を読んでいるのではないだろうか。「一瞬の夏」も最高の作品だった。
金子達仁や小松成美あたりのスポーツノンフィクションにはまったキッカケも沢木氏の影響であろう。
そうは言っても、ここ数年は読んでいない。本書は3年ぶりぐらいに読んだ作品じゃないだろうか。(となると、あまり忠実なファンとは言えないかもしれない。)
作品自体に惚れる要素もあるが、僕が惹かれる大きな理由として沢木氏の生き方に憧れている面も多い。自分とは真逆の人生なのに、その考え方や行動はなぜか共感する。本書においても、それを感じる箇所は多かった。酒場のシーンであり、人を想うシーンであり・・・。
そして、偶然に恵まれた作家ということも好きな理由な一つだろう。
本書を読んで気づいたことがあった。少し前に伊集院静氏の「いねむり先生」を読んだのだが、それには主人公である色川武大との深い親交が書かれている。
一方で沢木氏も色川武大との親交が深い。伊集院氏も沢木氏も酒飲みでギャンブル好き。その共通点があるからこそ、親交が深いと思うのだが、二人の性格は似ても似つかない。二人とも手元のお金は全て使ってしまうタイプだと思うが、伊集院氏は更に借金をして使うだろう。
しかし、沢木氏は使い切ったらそれでおしまい。潔く次の欲望を抑えるだろう。あまり良い比較ではないが、そのように性格は全く違う。その違いがお互いの作品にもよく反映されている。僕としては、伊集院氏の作品も好きだが、沢木氏に惹かれる要素が強い。
今までそんな比較を考えた事はなかったが、本書読んでなぜかそんな事を考えてしまった。
組織に頼らす、企業との接点も少なく、あくまでも個人の世界で生きる。そんな人生がうらやましくもある。
だからこそ、大いに惹かれるし、憧れるのだ。
やっぱりビジネス書ばかりでは、つまらない大人になってしまうな。