本作は青春映画というジャンルに該当するのだろう。
しかし全編通して観ると青春という言葉がチープに感じてしまう。
好きとか嫌いとか、挫折とか成功とかをうたう訳ではない。
その要素がないわけではないが、物語のごく一部に過ぎない。

僕らが人生を過ごすにあたり、少なからず挫折や成功を繰り返す。
その瞬間を捉えれば大きな出来事だが、後で振り返れば些細な出来事の場合が多い。
そんな経験を繰り返し、歳をとる。
それだって見方を変えれば青春。

57歳になった今でも僕は青春を謳歌している。
そういえなくもない。
本作を観ると人生そのものが青春のように思えてくるのだ。

舞台は北イタリアのモンテ・ローザ山麓。
どのあたりかも知らない。
そこで出会った少年が大人になり、自分と葛藤しながら自身の生き方を模索していく。
それを自然豊かな山麓と共に描かれる。

どうでもいいことだが、この作品はどれくらいの期間を掛けて撮影したのか。
美しい春の光景、
湖に飛び込む夏、
沈む夕日が山々を映し出す秋、
そして大雪に包まれた冬。

自分たちで作った山小屋(まあこれも住まいですね)で時間を重ねながら、過去と未来を探る。
親子、家族の関係に向き合っていく。
正解など何一つない。

正解に向かうことに周囲が認めてくれるわけでもない。
それでも自分の信じる道を愚直に歩むしかない。
正解は自然が与えてくれるしかない。
温かく迎えてくれることもあれば、残酷に訪れることもある。

描かれている時代は現在。
田舎育ちの僕も最近は季節感がない。
もちろん夏に向かう毎日に季節を感じる。
そんなものは季節感とは呼べず、本当の季節感とはもっと壮大で生活を左右すること。
映画で描かれる大自然を目の当たりにすると僕が感じる季節はちっぽけなものだ。

ここまで書いたところで、どんな映画かさっぱり分からないと思う。
まあ、いつもの通り(笑)。

イタリアの作家パオロ・コニェッティの世界的ベストセラー小説を映画化で、
2022年カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した作品と紹介しておこう。
こんな小説を映画化するのはかなり難しいと思うが、美しい風景を見るだけでも一見の価値はあり。

やはり視野は広めておきたいね。