最近の三谷作品は必ずしも評価は高くない。
昨年の「スオミの話をしよう」もそうだし、6年前の「記憶にございません!」もそう。
そこそこ面白いが三谷幸喜の才能が溢れ出るまでには至らない。
大河ドラマの方が数倍面白い。

このままだと才能を生かせないばかりか、
映画を撮る機会もなくなってしまうかもしれない。
そんなことを思ったり・・・。

そんな時に本作の存在を知った。
(な、わけないか・・・)
劇場版ということなので、確認したらWOWOW放送のドラマ。
そりゃ、知らない。
迷ったが、全編をワンカットワンシーンというのに引き寄せられ観ることにした。

ワンカットで思い出されるのが「1917 命をかけた伝令」
2020年公開のアカデミー賞ノミネート作品。
全編ワンカットだが、あきらかにデジタル技術を駆使した作品で時間軸としてもあり得ない。
却ってそれがいい緊張感を生み優れた作品。

本作もそれに近いかと思ったが、そうではなかった。
どちらかといえば舞台を見ている感覚。
一つの物語が同じ目線でずっと展開されていく。
多分、カメラは2時間回しっぱなしで、出演者もずっと演技しっぱなし。
「ほー、なんか三谷っぽい」と舞台は観たことないくせにそんなことを思った。

簡単に解説すると、太宰治を敬愛する夫婦がひょんなことから
昭和にタイムスリップし太宰治に遭遇するという物語。
夫婦を演じるのは田中圭と宮澤エマ、太宰治役は松山ケンイチ、
その愛人は小池栄子、そして三谷作品必須の梶原善。
映画に登場する役者は5人のみ。
梶原善は一人三役なので登場人物は7人ということになる。

それだけで映画が出来るのも流石だが、
ワンシーンワンカットでぶっ飛ばしてしまうのも凄い。

物語は至って単純なので語ってしまうと身も蓋もないで割愛。
とにかく昭和に戻って太宰ファンの田中圭の絡みが唸らせる。
これまでただの二枚目と思っていたが、そうではなかった。
かなり達者な役者。
そういえば永野芽郁はバッシングに合っているが、彼はそうでもないような・・・。
僕が知らないだけ?

田中圭だけでなく登場する役者はみんな作品を楽しんでいるよう。
小池栄子のイヤホンをつけて踊る姿は最高だったし、
宮澤エマの豹変する態度も見事だった。
上手く三谷カラーに染まったのだろう。

劇場版とWOWOWドラマとの違いを映画鑑賞後、調べてみた。
なんだ、最後のシーンだけか。
あとはそのままか。
WOWOWドラマを観ることはないので問題ないけど。

エンドロールが終わっても席を立ってはいけないね。