本作の主役はオダギリジョー。
エンドロールで知ったが、プロデューサーも兼ねている。
頻繁に彼の映画を観ているが、意外と主役は少ない。
肝心な役どころが多いので、主役と錯覚してしまうのか。
最近の作品は「茜色に焼かれる」にしろ「月」にしろ「劇映画 孤独のグルメ」にしろ
一癖ある旦那役、それも主役の相方が多い。
自分の中に迷いや闇を抱えている。
全てはまり役だが、それは彼がやりたい役柄かもしれないとプロデューサーを兼ねることでそう感じた。
本作では働いていた造船所が潰れても仕事を探さずフラフラしている小浦治を演じる。
過去につらい経験があり奥さん(松たか子)とは別居状態。
中途半端だが周りから愛される人間を演じるのがオダギリジョーの持ち味で、演じたい役柄。
そんなことを映画を観ながら感じた。
松たか子のちょっとイヤな感じも良かったし、
ここにも登場するかという光石研の脇役も冴えていた。
そして何より姪・優子役の髙石あかり。
今年知った女優で「ゴーストキラー」を観る限りアクション女優を目指すと思っていた。
「ゴーストキラー」も良かったが、本作での掴みどころにない役を上手く表現していた。
いかん、出演者のことばかり語ってしまった。
僕は原作も知らず事前情報も入れず鑑賞。
タイトルの「夏の砂の上」とは長崎の街のことか。
雨が降らずカラカラ状態の長崎のひと夏を描く。
大きな事件は起きない。
泣き叫ぶことはなくはないが、至って冷静。
静かに時間は流れ、それぞれが持つ悩みや苦しさは時間と共に変化していく。
乾いた状態では前に進みずらいのかもしれない。
全体がしみわたることで少しだけ心に余裕が生まれる。
それを淡々と描く。
長崎の街は坂が多い。
常に上ったり下ったり。
そうして毎日が過ぎていく。
仮に今が絶望だったとしても明日には変わるかもしれない。
変わらないかもしれない。
それでいい。
時々、自分を爆発させ抱えている重しを外す。
気がつけば夏が終わっている。
これではどんな作品かさっぱり分からないだろう。
それでいい。
本作には答えがない。
治はこれからどうなるか。
優子の将来は大丈夫か。
自分の中に答えを作っていけばいい。
きっとそれが正解になる。
僕は夏の砂の上の経験を通してしシアワセになってほしいけどね。