karyu1671

本書をどの立場で読むかは難しい。
帯に書いてある「誰もが転落予備軍」というように、自分もその立場になる可能性はある。
今の生活が先々も保証されているわけではない。
また、就職・転職を支援する立場として、
雇用を創出する場がどこまでできているのかとも考えてしまう。
若者の失業率や下流老人という言葉が話題になっているが、肝心なのはこの世代らしい。

35歳~54歳で非正規労働者が年々増え続け、2015年には780万人に上っている。
非正規労働者のうち、78.2%が月収20万円未満。
10万円未満も36.7%でとても生活できる水準ではない。
一方で人手不足に困る企業も多く、人材難が課題なのも正直なところ。
アンバランスなのは僕がいうまでもない。

うちの会社にもいろんな方が転職相談に来られる。
トントントンとなんの苦労もなく決まるケースもあれば、
本人の期待に沿えないケースもある。
残念だが、我々のような民間企業が全ての方をマッチングさせるのは現実的に不可能。
事業モデルが変わらない限り難しい。
キャリアアドバイザーは少しでも求職者の立場を理解し話は進めるが、簡単ではない。
中高年に対してはどうしても経験を求められてしまう。それが現実と言わざるを得ない。

以前の僕であれば、頑張った者とそうでない者との差は仕方ないと切り捨てたであろう。
しかし、現状を理解すればするほど、それができなくなっている。
かといって、打てる手段を持っているわけではない。
今後に向けて、「下流中年」と呼ばれる方を生み出さない流れを
作っていくしかないだろう。

新卒者や第二新卒者が見誤らない就職ができるよう、
より多くの機会を設け、仕事選びの重要性を啓蒙していくしかない。
また、自社において働くスタッフが厳しくも安心でき、
満足できる空間を作り上げるしかない。
本書の実例で書かれる会社内での陰湿ないじめや
精神的苦痛を与える労働はアホらしくて悲しくなる。
実際、そんな企業がまだまだ多いんだな。

少なくともまず自社はそれをクリアにしなければならない。
当たり前だけど・・・。
トップがそう意識するだけで、ずいぶん数字は好転するとは思うのだが、いかがだろうか。

本書を読みながら、少し前に中日新聞で連載されていた「新貧乏物語」を思い出した。
本書もそうだが、中日新聞の連載でも痛感したのが、親の役割。
虐待を含め放棄しているケースが目立つ。
結局、本人は被害者だが、世間はそう見てくれない。
満足いく教育を受けていないので、自分で判断する能力も持ち合わせていない。

本書は労働環境の劣悪により貧困の方向へ向かっていくが、
根本は同じように感じる。
環境だけの問題ではない。人災が大きな原因なのだ。
そう考えるとインフラを整備すれば解決できる問題でもなく、
一人一人の在り方が問われる。

難しくないようで難しいことは理解できる。
だが、身内も他人も含め、人に優しくなることで少しは解決できるのではと思ってしまった。

すいません。
中途半端な表現で・・・。