本作を観て、ジム・ジャームッシュ作品を思い出す人は多いようだ。
確かにそんな雰囲気は漂う。
ただ僕が観たのはもう40年近く昔のこと。
ほとんど覚えていない。
当時、「ストレンジャー・ザン・パラダイス」が話題となり、新たな時代の監督ともてはやされた。
モノクロの映像に時々挿入される真っ黒なカット。
映画通たちはその意味について議論していた。
僕もカッコつけてそんな話をしていたと思うが、内容はすっかり忘れた。
その程度のこと。
なぜ、ジム・ジャームッシュなのか。
モノクロ作品という共通点の他に、正面から捉えた長回しや抑揚のないセリフが喚起させるのだろう。
今でもジム・ジャームッシュ作品を愛する人がいるならぜひ、解説してほしい。
フォーチュンクッキーといわれてもピンとこない。
踊りも覚えたAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」くらい。
この時は何の意味もなくアホみたいに歌っていたが、
フォーチュンクッキーっておみくじ付きのクッキーのことなんだ。
本作を観て初めて知った(笑)。
原題「Fremont」はアフガニスタン移民が多く暮らす地域のこと。
少なからず名の知れたタイトルを引用し話題性も高めたのかも。
本作はアフガニスタンから移民したフォーチュンクッキー工場に勤める女性の日常を描く。
不眠症に悩む彼女や本国との関係性に戸惑う住民をみると一見、社会派映画のよう。
しかし、その要素を感じさせることなく、日々の些細な変化にフォーカスし物語は進む。
ちっぽけな世界でもあり、チャレンジングな世界でもある。
全く知らない国に一人で住むことになれば、それだけでもチャレンジだし悩みは多い。
それでも感情に揺さぶられることはなく、毎日は坦々と過ぎていく。
思わせぶりな一筋の涙が流れるだけ。
そのあたりもジム・ジャームッシュ的か。
本作が面白いかどうかは分かれるところだろう。
誰しもが共感するとは思わないが、一部に大ファンも出そうな作品だったり。
インディペンデント映画はそれでいい。
時にはそんな作品に触れるの大切だろう。