あの予告編からの三池崇史監督。
過激でヤバい作品と想像し鑑賞。
その想像は裏切られた。

超まともな作品だった。
ある意味で三池監督らしさがなく、ある意味で三池監督らしい。
きっと分かる人には分かる表現だろう。
それが素直な感想。

本作は事実に基づいて製作。
この事件のニュースが流れたのはかすかに記憶している。
単純な僕は酷い教師がいるもんだ程度に見ていただけ。
事件を疑うこともなければ、それ以降の顛末も知らない。
無責任に犯人扱いをする一人。

演出はあるだろうが、その事実に驚かされた。
簡単に解説すると小学校教諭が児童に体罰をし、その保護者から告発される。
マスコミもその体罰を報道し、教師は世間のバッシングを受けていく。

いろんな解釈はあるが真実は一つしかない。
その真実は自分で判断されることはなく、第三者が勝手に決めていく。
もしかしたら似たようなケースは他にもあるかもしれない。
事件としてクローズアップされ、初めてその恐ろしさを知る。
他人事ではない。
気づいた時には修復不能の可能性も高い。

第三者の存在がカギになるが、それはほぼ無責任。
自己保身的に物事を語る。
象徴的に映しだされるのが教育現場とマスコミ報道。
あと数年で校長を勇退するのなら波風立てずに穏便に進めたい。
子供のためと言いながら自分のため。
そんな校長先生ばかりじゃないが、学校で起きる事件を見る度、そう思う。
それもマスコミに踊らされているのか。

校長先生役は光石研。
先日の「フロントライン」も良かったが、本作も見事な演技。
名バイプレイヤーだね。

教師役の主役綾野剛も改めて上手いと思った。
どっちが本物?と思わせる教師像もよかったが、裁判所や食卓の長回しのシーンが抜群。
抑えた演技と絶妙の間がリアルな状況を醸し出していた。

食卓といえば奥さん役の木村文乃。
彼女の存在が教師を勇気づけ立ち直させる。
2人のシーンは涙を誘った。
実にステキな奥さん。

一方で教師を陥れる保護者の柴咲コウは対照的。
ホラー映画より恐ろしい。
説得力のある無表情だった。

本作は最初から最後まで緊張感が続く。
途中だれることもない。
気が抜けない分だけ疲れるが十分楽しむことができた。
最近の三池作品では抜群じゃないかな。

ひとつだけ解せないのは、柴咲コウの動機。
そこは曖昧さを感じた。

こうした事実が判明すると、今度は校長や訴えた保護者がマスコミの餌食になったりして。
自分の首を絞めることになるか。
その前に謝罪が必要だとは思うけど。