自分が愚か者だからだろうか。
なぜか愛おしく感じてしまった作品。
主役を務める3人は確かに愚か者。

というよりはハンパ者。
共感する要素は1ミリもない。
世の中的にみれば憎むべき対象。
しかし、憎むことはできないし、完全否定することもできない。
少しばかりの同情が働く。

基本的に愚か者には完全な悪人はいない。
(これは僕の勝手な決めごとです・・・)
登場する人物は愚か者以外はほぼ悪人。
こちらは憎むべき対象。
同情のかけらもない。

その違いは何か。
一つは犠牲者であるということ。
本人の意志とは別に与えられた環境で不幸になってしまった。
落ち度がないわけではないが、
気づいた時には嵌められた世界に閉じ込められてしまった。
だからもがく。
だから新たな生き方を探す。
ヒシヒシと伝わる感情に愛おしさを感じたのかもしれない。

本作の主役は3人。
北村匠海演じるタクヤ、林裕太演じるマモル、そして綾野剛演じる梶谷。
闇社会に放り込まれた3人が現在と過去を行き来しながら自分の居場所を求めていく。
闇社会である以上、簡単に見つかるわけもなく逃げ出すことさえ難しい。

「愚か者の身分」はここだと顔を地面に押し付けられている状態。
とても切ない。
関係性でいえばタクヤの兄貴分が梶谷で、弟分がマモル。
糸と糸を繋ぎ3人は成り立っている。

そこで事件が発生。
あらぬ方向にストーリーは展開する。
先行きに期待はできないが、わずかな希望を抱き突き進む。
理想通りにはいかないことは誰もがわかっている。

と書いたところでどんな映画か理解できないだろう。
愚か者が出口に向かい彷徨う映画といっておこう。
果たしてハッピーエンドなのか。
そうじゃないのか。

個人的な解釈はハッピーエンド。
多分、訪れるだろう不幸なんてどうでもいい。
少しでも日が射せばいいんだ。

本作で林裕太という俳優を初めて知った。
最近、露出が増えている役者だが、
怯えながらもチャラさを併せ持つ表情は見事。
幅の広い役者になるのではないか。

そして主役の北村拓海。
表情が乏しさからあまり僕の中では冴えなかったが、本作は素晴らしい演技。
その実力を理解した。

闇社会を描いているが現代日本の縮図ともいえる。
誰しもあちら側に陥る可能はある。
もし、タクヤ、マモル、梶谷に未来があるのなら、その可能性を諦めないでほしい。