これからも前向きに 名大社会長ブログ

カテゴリ「本を読む 映画を観る」の記事一覧:

映画「私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?」

ビックリするくらい話題になっていない作品。
「映画.com」のようなサイトは新作が公開されると必ずビューがアップされる。
迷っている作品はビューの内容や評価点を確認して観るかどうか決める。

本作は僕が通う「ミリオン座」での上映が決まっていたので気になっていた。
公開日の翌週に別の作品かどちらかに行こうと予定していた。
しかし、公開されてもビューは全くアップされない。
上映されて1週間経過した26日現在で1件のみ。

なぜ、こんなにも話題にならないのか・・・。
解説には
「フランスの原子力会社の労働組合代表が国家的スキャンダルに巻き込まれていく姿を、
実話を基に描いた社会派サスペンス。」
と書かれている。
これに興味を示す人も多いはず。

実際に僕は重厚な社会派ドラマだと感じた。
より多くの人が観るべきとも思った。

調べてみると上映館が少ない。
「ミリオン座」は1日3回ほど上映するので、
その力の入れ具合が分かるが全国的にはそうではない。

なにか不都合があるのだろうか。
映画の中にもフクシマという言葉は登場する。
東日本大震災の翌年からのフランス原子力会社を描いているため過度に反応しているのか。
でも、それは日本にはあまり関係ないことじゃないか・・・。

本作では目に見えない圧力や影の力を感じることになる。
主人公モーリーン・カーニーはそれに立ち向かう。
その正義は日本ではあまりウケないと思われているのか・・・。
そんなことも感じてしまった。

今年観たフランス映画は本作を含め3本。
「すべてうまくいきますように」
「シモーヌ フランスに最も愛された政治家」
これまでフランス映画にさほど注目してなかったが、今年は素晴らしい作品が並ぶ。
あまり表沙汰にしたくない世界を堂々と描く。

「シモーヌ」もフランスでは大ヒットしたし、本作も同様。
大ヒットしたようだ。
国のマイナス面を露わにしているといえなくもない。
本作の事件はまだ未解決だというし。
その姿勢に拍手を送りたい。

日本でもこの類の作品が堂々と制作され公開されることを願う。
まずは本作がもっと話題となり、上映されることだろうけどね。

映画「アナログ」

本来、僕の鑑賞リストには入っていなかった。
この年齢になるとラブストーリーにはさほど興味を示さない。

しかし、周りのざわつきが僕を映画館に向かわせた。
一つは映画情報サイトの評価の高さ。
ただ、それだけでは動じない。

決定的になったのは映画評論仲間の声。
50代後半のオッサン達が胸ときめかせ絶賛していた。
もう、これは自分の眼で確かめるしかない。
この年齢で「胸キュン」なんていう現実があるのかと・・・。

やられてしまった。
映画評論仲間のオッサン同様、胸ときめかせてしまった。
このピュアなラブストーリーに汚れたオッサンが見事にハマってしまった。

なんかいい。
自分にもまだ純粋な心が残っていたことに少しホッとした。
いつまでもこんな気持ちを持ち続けたい。

原作はビートたけし。
やはり彼は天才なのかも。
次作「首」も観ないとね。

といってもストーリーに複雑さはなく、真っすぐに進んでいく。
今どき、携帯電話を持っていないこともあり得ないが、
持っていなければ自宅に電話すればいいと思うが、それもしない。

ただそれに違和感を感じない。
毎週木曜日に同じ場所で会う約束しかない。
かつてそんな時代もあったかと思わせてくれる。

その展開にときめきを覚える。
キスもしない、
その先も当然ない。
手をつなぐのがせいぜい。

それが美しい。
中学生でなく、いい大人だから美しい。

ヒロインは波瑠。
彼女の凛とした美しさと謎めいた雰囲気に惹かれる。
本作は彼女以外は考えられない。

好きな女優はたくさんいるが、僕がいざ付き合うとなれば、きっと彼女。
あり得ない話だが、そんな気がしてならない。
すいません・・・。

主役の二宮和也は泣いてばっかりだが、
同じように泣いていたオッサンも多いと思う。
こんなラブストーリーもたまには観た方がいい。

そして、ここにも登場するのがリリーフランキー。
「アンダーカレント」では饒舌だったが、本作では寡黙。
黙々とコーヒーを淹れ、笑顔で接するだけ。
舞台となる珈琲店「ピアノ」に絶妙なバランス。
助演男優賞かな・・・。

せつないし、悲しいし、嬉しい。
こんな映画も大切にしたい。
そう感じた一本。
スルーしなくてよかった。

映画「アンダーカレント」

今泉力哉監督は日常を描くのが得意な監督と思っていた。
ごく平凡な人の普通の生活にドラマを生み出す。
そんな監督と思っていた。

本作もその流れを組んでいる面はあるものの、独特の世界。
オープニングで紹介される「アンダーカレント」とは、
1.底流、下層流 
2.(感情・意見などの)底流、暗流
という意味。もっと長い文章だったけど・・・。

映画で意味を紹介されるとストーリーとの関連性を読み込みたくなる。
コミックの読者ならその必要性はないが、
その存在すら知らない者にとっては、
このタイトルは主役の真木よう子を指すのか、
それとも井浦新なのか、永山瑛太なのかと勘ぐってしまう。
まあ、複雑に絡み合ってはいるので、本作を観て感じ取ってほしい。

映画はゆっくりと流れていく。
淡々と描かれる毎日と些細な会話。
そこには表面と内面が介在する。

なんとなくお互いに何かあると感じながらも打ち明けることはない。
本当は打ち明ければラクになれるし、
互いに理解できるのは分かっているが、それができない。

それは銭湯の経営者かなえと住み込みで働く堀の関係性であり、
かなえと失踪した旦那との関係性。
あっ、住み込みで働く堀が井浦新で、失踪した旦那が永山瑛太ね。
結局は自分で話をしない限り相手のことは分からない。
いや、いくら話をしたところで相手のことは完全に理解できない。

それは映画の中だけでない。
自分自身もそう。
30年近く連れ添っている家人のことを僕はどこまで知っているのか。
映画を観ると自信をなくす。

言わなくていいことを言わないのは気遣いだが、本当にそれでいいのか。
すべて明かしたからこそ、あんなラストシーンとなる。
ハッピーエンドなのか、そうじゃないのかは観る人に委ねられている。

そもそも答えなんてない。
本当は答えなんて必要ないのかもしれない。
と感じた作品。

多分、これでは映画コラムニストの役割を果たしていない。
映画については意味不明。

それでいい。
心の中にある何かを言葉にするのは難しい。
言葉にしたところで正しく伝わるかは別。
ただその姿勢が気持ちを動かす。

本作ではリリーフランキーと康すおん(全然知らず…汗)がいいアクセント。
静かに流れる川に優しく石を投げこむように。
そこから広がる何かはあるよね。

今泉監督にはこれからも期待したい。
きっと彼しか撮れない作品は増えていくんだろうね。

映画「月」

144分の上映時間、ピーンと張り詰めた時間を過ごした。
観終わった後は疲れが残った。
それが心地よい疲れならいいが、そうではない。

自らを問いに向かわせる。
果たして自分はどっちの方向を向いているのか・・・。
自分の中で正解は出ている。
至極まっとうな判断。

しかし、それは偽善じゃないかと聞かれれば答えに窮する。
偽善じゃないとは言い切れない。
自分自身があらねばならないという気持ちがそうさせている。

僕だけの問題であれば、特に悩むことはない。
きっと多くの方が同じ感情を抱く。
答えのない映画を見せつけられた。
それも作品に疲れた理由の一つ。

本作は実際に起きた障がい者殺傷事件をモチーフにした小説の映画化。
ネタバレしない程度に解説すれば、
宮沢りえ演じる元有名作家の洋子が働く障がい者施設での出来事。

一般的な障がい者施設よりも重度の方が多い。
働く側はどうしても感情的になる。
仮に僕が当事者として常に冷静にいられるかは分からない。
ついカーッとなってしまうこともあるだろう。
そう考えればここで働く人を簡単に非難できない。

自分も加害者になり得る可能性はなくはない。
そこでせめぎ合いながら気持ちを整えていく。
そこで許せない気持ちが強くなってくると・・・。

4月に観た「ロストケア」は介護を描いた作品。
ここでも人を殺める行為が描かれ近しいが、根本的に考えは異なる。
人として扱うか、そうでないか。
客観的に冷静に考えれば誰しも答えは同じなはず。

しかし、そうじゃないよね?というのが石井裕也監督の問いだろう。
この年齢でこんな作品を撮ってしまうとは・・・。
すでに熟年監督の領域じゃないか。

また、本作はなんといっても宮沢りえと磯村勇斗。
これだけ美しくない宮沢りえも初めてじゃないか。
ほぼすっぴん。
この作品に賭ける想いがその表情から伝わってくる。

ここ最近の映画界の若手では磯村勇斗が一番かと思う。
個人的には「ヤクザと家族 The Family」が好きだが、
今年の出演作「最後まで行く」「波紋」も印象的だった。
更に期待が高まるだろう。

観る側が辛くなる作品。
しかし、目を背けることなく観る必要がある作品ともいえるだろう。

天日干し経営

発売日早々に購入。
著者は元リクルートエージェントの社長であり、
前Jリーグチェアマンであり、
現日本バトミントン協会の会長である村井満氏。

村井さんの著書となれば、迷うとか、書評を読むとか、
誰かに感想を聞くとか、そんな必要はない。
手に取るだけのこと。

僕が尊敬する経営者の一人。
といってもお会いした事は2回しかない。
僕が社外取締役を務める株式会社パフの釘崎会長と懇意にされておりキッカケを頂いた。
一度目は10年前。
二度目が今年6月。
いずれもブログに書いているんだよね。

2013年7月 就職について東京でちょっと考えてみる
2023年6月 本業も頑張ります!

初めてお会いした時、名大社を知って頂いており感激した。
2度目はゆっくりと飲ませて頂いたが、その時の発せられた言葉にも大いに感激。
内容は伏せておくが、本当に心の大きな人はこんな人のことをいうのだろう。

以前リクルートエージェントで働いていた知り合いは、
新人の時に村井さんから声を掛けられ、
それもほとんど接点もないのに名前を呼んでもらい、感動したという。
そのエピソードだけでも十分。

そんな方が唱える「天日干し経営」。
必ず村井氏が言われるのが、「魚と組織は天日にさらすと日持ちが良くなる」。
透明性を増していくことで組織は強くなっていくということ。

本書ではその理由について明確に書かれている。
それは机上の空論ではなく、村井氏の実体験から生まれたもの。
小学生時代から始まり、大学時代に旅を続けたこと、長きに亘るリクルート時代。
神田営業所での某氏とのエピソードは書かれていないが、
リクルート事件のど真ん中にいて経験されたこと。
その後、トップとして導いたリクルートエージェントやアジア関連企業の日々は詳細に書かれている。

僕もそれなりの経験をしているが、村井氏とは比べものにならない。
未知の分野で臨んだJリークチェアマンの仕事も波瀾万丈。
一つの困難を乗り越え、ホッと落ち着いたと思えば、別の困難が襲い掛かる。
どんな場合でも真正面から真摯に向き合い、信頼関係を作っていく。

その行動は「天日干し経営」そのもの。
あの温厚な表情からは窺い知れない苦労はあったかと思うが、
そう思わせないのも村井氏の能力なんだろう。

詳しくは本書を読んで学んでもらいたい。
村井氏だからこそ、世界で活躍するサッカー選手とも友好的な関係を築けたのではないか。
組織を引っ張る人はもちろん、
これからそんな存在になっていく方には是非、読んでもらいたい。

ありがとうございました。

映画「BAD LANDS バッド・ランズ」

原田監督は毎年秋に作品を公開するのが定番になっているのか。
大ヒット作や超優秀作は生まないが、
(大変失礼ですね、すみません)
安定した作品を提供し続けるのは配給側としても安心できる。

昨年は「ヘルドックス」、一昨年は「燃えよ剣」
危ない作品が続くが、
(「燃えよ剣はそうでもない・・・)
これも原田監督の特徴ではないだろうか。
そこからの岡田准一友情出演だったりして(笑)。

本作の上映時間は143分。
その前に観た「白鍵と黒鍵の間に」が94分。
約50分も長いが、その時間は感じなかった。
逆に白鍵~が長く感じたりして・・・。

本作を観た多くの方は言うように安藤サクラの魅力満載で、
彼女のための作品かもしれない。
立ち振る舞いや表情含め、なんでもこなせる女優なんだと改めて感心。

「百円の恋」でボクサーを演じるくらいだから、簡単なアクションはなんでもないか。
「怪物」の出演と合わせ、今年の主演女優賞をそうなめするかも。
キネマ旬報だとこの経歴で歴代トップになるんじゃないか?
日本映画を支える大女優になるんだろうね。

失礼ないい方だが、とびきり美人じゃない女優がこんな活躍をするのは貴重だし大切。
今後の幅をさらに広げてほしい。

俳優絡みでいえばもう一人。
元ヤクザ役を演じた宇崎竜童。
ドラマ「ハゲタカ」の旅館のオーナー並によかった。
あんな表情は彼しかできないのかもしれない。
「ハゲタカ」は序盤で重要な役割を担ったが、本作では終盤で要の役割。
いやいや素晴らしい。
こんな流れになるとは想像していなかったし。

とここまで書いてきたが、映画の内容には全く触れていない。
これでいいのか。
少しは本作の魅力を伝えなきゃいけない。

完全なフィクションだが、実話ベースのストーリーに思えてならなかった。
大阪西成地区のリアルさがそうさせたかもしれないし、
巧みなオレオレ詐欺の動きがそうさせたのかもしれない。

予告編の情報だけで観たので、安藤サクラと山田涼介の兄弟が詐欺事件を
繰り返すのかと思っていたが、そうではなかった。
複雑な愛情が絡み合った人間ドラマ的な要素も強かった。

映画にのめり込むが、一歩引いて客観的な視点で味わっても楽しめる。
本作のような事件が実際にあったら困ってしまうが、
起きてもおかしくないのが今の日本かもしれない。

そんなことを感じた作品。
秋に観るには相応しいね。

映画「白鍵と黒鍵の間に」

何が凄いって、本作で披露されるピアノは主役池松壮亮が弾いていること。
素人レベルの見方だが、こんなに上手いのかと思ってしまう。
調べてみると役作りのために半年間、猛特訓したという。

半年でこのレベルになるとは、その役者魂に感動。
令和の仮面ライダーを演じるだけのことはある。
多くの映画監督が使いたい役者の一人なんだろう。

映画自体はとても不思議な作品。
笑わせたいのか、心の内や葛藤を表現したいのか、その両方なのか、よく分からない。
池松壮亮が二役演じる必要性は映画を観ていくうちに徐々に見えてくる。

映画のモデルは実在するジャズミュージシャン南博でその回想録らしいが、
あえて監督はこんな演出をしているのか。
映画コラムニスト仲間や映画好き仲間にも観てもらい、感想を述べてもらいたい。

映画の舞台は昭和63年の銀座。
僕はちょうど大学4年生になる頃。
バブルのど真ん中の銀座はあんな感じだったのか。
想像していたよりも静か。
もっと華やかな世界かとと思ったが、そうでもない。
怪しい人たちは登場するが想像の域は越えない。
銀座だからパラパラ踊っているわけじゃない。

池松壮亮演じるピアニスト南は多分、20代前半。
音大を卒業し、夢を描きながらももがいている時期。
世代的に共感はできる。
夢と現実に挟まれながら、やるせない気持ちを夜の銀座が癒してくれる。

その癒しが諦めに向かうかどうかで人生は変わる。
なし崩し的に堕ちていくのか、這い上がっていくのか。
銀座という街にはその両方が介在し、酒や女性が翻弄していく。
一度くらいは僕も溺れてしまっていいかも・・・。

ヤクザの親分にも驚いたが、もっと驚いたのが主役南の母親。
洞口依子が演じている。
かなり歳も取ったし体形も変わった。
まあ僕より一つ上だから、そんなもんだろう。
重い病気もされているし。

思い出すのはピンク映画「ドレミファ娘の血は騒ぐ」。
大学時代に試写会で観たんじゃないかな。
ただのピンク映画じゃない。
相手役は伊丹十三で監督は黒沢清。
当時、かなり話題になった。
と同時に洞口依子はアイドル的存在だった。

そんな彼女がすっかりお母さん。
薬師丸ひろ子はどの年代でも演じているので母親役の違和感はないが、
こういきなり出てくると驚きとなる。

それも映画の楽しみ方か。
白と黒の間にはきっと何かがある。
その何かは本人しか分からないのだろう。

映画「パーフェクト・レボリューション」

「その日、カレーライスができるまで」に続いてAmazonプライムで観たリリーフランキー主演作。
公開は2017年だが、僕は作品自体知らなかった。
映画評論仲間のBushさんが絶賛したコラムを読み、本作の存在を知っただけ。

映画コラムニストとしてはまだまだですね・・・。
当時、名古屋で公開されていたのかな?
話題性はあるのに素通りしたか、名古屋で上映されなかったのか。
どちらにしても情報不足の自分に喝!

公開されて6年経過しているのでネタバレは問題ない。
重度の身体障がいがあるリリーフランキー演じる主人公クマと
人格障がいを抱えた風俗嬢のミツとのラブストーリー。
実話がベースのようだ。

ミツを演じるのが清野菜名。
今はトップ女優の一人だが、当時はまだ売れる前じゃないかな。

結論から言おう。
奔放で真っすぐで純粋でちょっといかれたミツがすこぶるいい。
惚れてしまう。
可愛くて仕方ない。
僕もコロッといってしまう。

しかし、近くにいたら迷惑だし、絶対に幸せになれない。
冷静に判断すれば一緒になることはない。
ただ冷静になれる自信はない。
どうなってもいいと思ってしまうかもしれない。

当初は迷惑がっていたクマもミツがいなければ生きる意味を失くしてしまった。
人なんてそんなものかもしれない。
そこに重度の身体障がいや人格障がいが重なる。

「パーフェクトレボリューション」なんて壮大なタイトルは2人のためだけにある。
実際にミツは同じようなことを説得力のないまま言い続ける。
でも、それが障がいという「偏見」から解き放たれる二人の向かう先。

本作でも障がい者として邪魔者扱いされたり、必要以上に同情されたりする。
そこに悪意はない。
偏見に満ち溢れているだけのこと。
多様性といいながら僕らはまだそんな目線を払しょくできていない。
僕もきっと同じ。
心のどこかではそんな部分が残っている。

それを痛快にぶった切るのが主人公の2人。
不幸だが爽快。
不安だが明るい。
こんな作品を通して、もっと僕らは世の中を知るべき。

もしかしたら公開が早すぎたのかも。
今年だったらもっと話題となり、評価も高かったかもね。

映画「バーナデット ママは行方不明」

すき間時間に鑑賞。
そうじゃなければ、観ないまま終わっていたかもしれない。
たまたま空いた時間に感謝。

まず映画を観て思ったこと。
英語が理解できれば、もっと楽しめたということ。
僕は英語は喋れないし、聞き取れない。
ふとした瞬間、英語を学ぼうと思ったりするが、本気じゃない。

この年齢になって覚えるのはしんどいし、
それなりの翻訳機があればなんとかなると思ってしまう。
しかし、本作を観ると日本語訳では伝わらない言葉があるはず。
もっと笑えたり、泣けたりすると思うし。

主役はケイト・ブランシェット。
最近では「TAR ター」が話題だったが、見逃してしまった。
3年前にAmazonプライムで観た「キャロル」はよかった。
こうして作品を並べてみると実に多彩な演技力を持つ女優さん。

本作でもその魅力を十分に発揮していた。
とにかく喋りまくる。
一人で勝手に妄想し、自分勝手に相手に喋り続ける。
字幕を追うのもしんどいくらい。
だから英語が理解できるとよかった。

ジャンルとしてはヒューマンコメディなので、笑いもあれば、ホロッとする場面もある。
特にラストはよかった。
タイトルにもなっているバーナデットはケイト・ブランシェットの役名。
結構いい暮らしをする専業主婦。
しかし、人付き合いが苦手で隣人とトラブルを頻繁に起こす。
それには理由が存在するが、かなり面倒。
本人なりの言い分はあるが、近所に住んでいたら、こちらがストレスを感じそう。

ただ本作ではそのバーナテッドがストレスや悩みを抱え行方不明になる。
タイトルが腑に落ちる。
彼女の葛藤がそんな行動を起こさせるが、能力が高いからこそ起きる問題。
才能ある人を専業主婦に留まらせておくとアメリカであれ日本であれ、
同じような行動になるかもしれない。

それは家族にとってむしろ不幸。
相手のことを理解し、それに合った生活をしないと家庭は崩壊する。
本作の場合、デキた娘の存在でそれは回避されるが、一歩間違えば崩壊への道。
子供の存在は重要だ。

つい自分にダブらせてしまった。
家人は行方不明にもならないし、近所でトラブルを起こすことはない。
しかし、ストレスや悩みがないかといえば、それは分からない。
僕が知らないだけ抱えているかもしれない。
打ち明けることもないだろう。

それは少し怖い。
もし、自分が原因であるなら、もっと怖い。
接し方ももっと考える必要があるとつい思ってしまった。
頼りにすべき子供は遠くだし・・・。

ヒューマンコメディはあまり観る機会がないが、
自分への戒めのためにも時々は観た方がいい。
笑ってごまかすこともできるしね。

映画「福田村事件」

日本人の行動はいつの時代も変わらないのかもしれない。
これまで主にドキュメンタリーを撮ってきた森達也監督は今の時代だからこそ、
この作品を世に出したのだろうか。

本作の舞台は大正時代。
1923年9月1日、関東大震災後の数日を描く。
実際に起きた虐殺な事件。

情けない話だが、僕は本作に出会うまでこの事件を知らなかった。
言い訳するなら、事件を知る機会がなかった。
単に情報不足なのかもしれない。
一方で情報自体が公にされていたとは言い難い。

これまで国内における残虐な事件は多く公開されているし、
第二次世界大戦時に犯した日本人の罪の重さも知らされている。
しかし、この福田村事件はその視点とは異なる。
ごく普通の日本人、何の権力も持たない日本人が犯した事件なだけに扱いは難しい。

客観的に映画を観て、冷静に判断すれば誰にも理解できること。
しかし、主観的に捉え当事者だとすればその行為は180度、異なる。
「愚かだ!」と思いながら、もし自分があの場にいたらと想像すると恐ろしくなる。

情報の乏しい大正時代であっても、
SNSですぐに情報が拡散される現代であっても、大した差はない。
僕ら日本人はいつまで経っても同調圧力に屈し、Echo Chamberに翻弄される。

そんなことを映画を観ながら感じてしまった。
それを鼻で笑いながら観れればいいが、そうではない。
本作は衝撃的に僕らに迫ってきた。

話題になってはいるものの、大手配給会社の製作ではない。
メジャーな映画館での上映ではなく、その公開は限定的。
観れないエリアも多い。
そのあたりも日本っぽいのかな・・・と思ってみたり。

2023年に公開された映画では強く心に残る。
この時期に本作を観れたことはとても価値がある。
映画を観た翌日に大学の授業でも紹介してしまった(笑)。

実話を描いたとはいえ、演出的に構成された面も多いと思う。
実際に永山瑛太扮する行商団頭の新助が発した言葉が本当かどうかは分からない。
しかし、その言葉がすべて物語っているような・・・。
一番、印象に残ったシーン。
そのあとの衝撃的な行動も。

できれば多くの方に観て欲しい。
そんな一本となった。
つらいけど。