予告編で観た岡田准一の立ち姿のカッコよさから観たくなった作品。
今、日本の俳優陣で一番時代劇が似合うのが彼じゃないかな。
その佇まいも雰囲気を感じるし、殺陣シーンは実に様になっている。

本人が殺陣の監修をしているから相当こだわってもいるのだろう。
何となく黒田官兵衛に見えたり、石田三成に見えたりするが、
いずれ違いを見せつける俳優になると思う。

残念ながら原作は読んでいない。
何度もドラマ化や映画化される人気作でもあるため、
そろそろ司馬先生をしっかり理解しなきゃいけないと思いながらも、なかなか・・・。
本作をいいキッカケにしたいね。

本作の上映時間は148分。
映画としては長いが、土方歳三の一生を描くには少々短い。
少し詰め込めた感はあったが、これ以上の長さで緊張感を保つのは難しい。

一定の緊張感を保ちながら、最初から最後まで映画を楽しむことができた。
それは本作のレベルの高さ。

もっと出来栄えを語るべきかもしれないが、僕はそこはどうでもいい。
ある意味、歴史に翻弄された一人の男の生きざまを感じることが僕の目的。
この幕末はどの視点から時代を見るかによって大きく人の描き方も変わる。

象徴的なのは徳川慶喜。
大河ドラマ「青天を衝け」で草彅剛が演じる慶喜と
本作の山田裕貴演じる慶喜はとても同じ人物とは思えない。
山田裕貴もなかなかの好演。
慶喜ファンは怒ると思うが・・・。

いろんな角度から歴史を知り、人の生きざまを感じるだけで映画を観る価値はある。
自分の人生と比較するわけではないが、一人の男として何に拘っていくかも考えどころ。

大河ドラマの土方役の町田啓太もクールでよかったが、
やはりドラマと違うのはスケールの大きさ。
そこは最大の映画の魅力といえるだろう。

そのあたりの演出は原田監督のお手の物。
いつも流石だと感心させられる。

僕は特別、原田真人監督のファンではない。
好きでもなければ嫌いでもない。
しかし、近年の作品はすべて観ている。
「日本のいちばん長い日」
「関ヶ原」
「検察側の罪人」

興味喚起させる腕が高いのか、なぜか琴線に触れ観てしまうことが多かった。
どの作品も安定感が高いのが印象。
映像美への細部のこだわりもあると感じるし。

これは個人的な意見だが今年は例年と比較して日本映画のレベルが高いと思う。
例年より多くの作品を観ているのが大きな理由だが、スケールの大小に限らず優秀作が多い。
来年、今年ほどの本数が観れるかわからないので、
日本映画ベストテンでもやってみようかと思う。
「名古屋の映画コラムニストが選ぶ2021年日本映画ベストテン」
なんて・・・。

本作は果たして何位なのか。
土方歳三の男らしさを感じた作品だった。