カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、
主演のビルジニー・エフィラと岡本多緒がそろって女優賞を受賞した話題作。
前評判の高さからずっと気になっていたのだが、実は観るのを少しばかりためらった。
理由は作品の内容ではなく、上映時間。
196分という長さ。
軽く3時間を超える時間に身体が耐えられるかどうかが不安だった。
恥ずかしい話だがこの年齢になると3時間もの間、トイレを我慢することが難しくなる。
映画館に入る前は相応の覚悟で臨んだが、
結果からいえば不思議なほどすんなりと我慢することができた。
それどころか、時間の長さすら全く感じさせないほど、作品の世界に没入してしまった。
本作は劇的な大事件やハリウッド映画のような大きな盛り上がりがあるわけではない。
二人の「マリ」が、日本語とフランス語を交えながら会話を交わすシーンがほとんどを占める。
それなのに彼女たちの口から放たれる何気ないセリフの数々に、なぜか深くグッときてしまう。
ドラマチックに仕立てられた場面ではない、
ごく当たり前の日常のひとコマに、気づけば涙腺が緩みそうになるシーンも多かった。
映画全体を包み込む、独特の心地よい空気感も素晴らしい。
ある時はパリの洗練された市街地であり、
またある時は京都ののどかな片田舎、
そしてパリ郊外の歴史ある介護施設。
それぞれの場所が持つ穏やかな風景と、そこに流れる時間に気持ちを持っていかれた。
濱口竜介監督の「ドライブ・マイ・カー」はとても好きな作品なのだが、
本作を観ている間、どこかあの作品に通じるような静かな強さを感じた。
映画としてのクオリティや余韻の深さは、間違いなくあの作品に匹敵。
僕の中では今年のベストテンの上位に確実に食い込んでくるだろう。
年末のランキングで日本映画として扱うべきか、
あるいは外国映画にすべきかで迷うだろうね。
主演の岡本多緒は本作で初めて知った。というより初めて観た。
凛とした佇まいとストレートなセリフ回しが魅力。
「新情報・・・」という何気ないセリフがよかった(笑)。
活躍する女優が多い中で彼女が選ばれた理由が映画の流れから分かる気がした。
3時間強の時間に自信のない方もトライしてほしい。


