少なからず衝撃を受けた。
実話ではないものの、これに近い過酷な現実に直面している人々が世界中に存在する。
ニュースでは流れない現実はもっと知った方がいい。
シリアのアサド政権下では1400万人が国外への避難を余儀なくされたという。
その避難はまさに命懸け。
国境を越える途中で、力尽き、命を落とした人がいかに多いか。
反政府組織と思われ射殺された人も多いだろう。
映画の背景にあるその凄惨さは、僕たちの想像を絶する。
国家の混乱によって最も深刻な被害を受けるのは、いつの時代も一般の市民。
本作では悲劇がさらに悲劇を呼び、負の連鎖が描かれる。
何より胸が痛むのはその難民の悲劇を「商売」と捉え、金儲けに利用するとんでもない連中。
そんな非道な人間にも守るべき家族がいる。
守る者のために本来は守るべき者を利用する。
人間の抱える深い矛盾を感じざるを得ない。
物語は、シリア、トルコ、ギリシャ、そしてアメリカの四カ国を舞台に進む。
それぞれ異なる背景を持つ5つの家族の生き様が国境を越えて複雑に交錯し、
やがてひとつの物語へと収束していく。
偶然が重なる部分がないわけではない。
しかし、それぞれの必死な行動の結果、巡り合わせは必然のように感じる。
本作がアメリカ、ヨルダン、パレスチナによる合作映画という点も非常に興味深い。
文化的、政治的にも複雑な背景を持つ国々が、どのように絡み合い製作に至ったのか。
調べれば分かることかもしれないが、その背景も気になるところ。
日本映画ももっと海外と手を組まないと・・・。
劇中には派手な戦闘シーンは少ない。
病院での手術中に外での銃声や爆音が恐怖を招く。
戦争や紛争がもたらす悲惨さが、じわじわとリアルに迫ってくる。
こう思うと日本で起きている中傷動画問題なんてどうでもよくなる。
政治や外交に疎い僕がいうのは説得力もないが、こんな作品を多くの人に観てもらった方がいい。
遠い国の出来事だと片付けるには、あまりにも無責任な気もするし。
映画は世界で起きる重要なことを教えてくれる。


