最初はスルーするつもりだった。
しかし、映画評論仲間から「観なきゃ映画コラムニスト失格!」と非難され、映画館に足を運んだ。
結果としてその言葉は正解だった。
本作は誰もが気軽に楽しめる娯楽作。
賞レースを席巻したり、キネマ旬報などの年間ベストテンで上位に食い込むことはないと思う。
だが、娯楽映画としての完成度や作品としての評価は高い。
社会派ドラマの要素はゼロ。
それでも登場人物の細やかな心の機微が、素直に観る者の胸に落ちてくる。
何より主演の舘ひろしがいい。
かつてのハードボイルドな格好良さを残しつつも、
いい意味で肩の力が抜けてチャーミングな魅力を振りまいている。
脇を固める役者陣も非常に魅力的。
言葉を選ばずに言えば、ピークを越えたベテラン俳優の存在感が素晴らしい。
宇崎竜童、南野陽子、西岡徳馬、中山忍らが効果的に配置され、その使い方の巧みさには唸らされた。
味のある演技で作品の厚みを支えている。
劇中に登場する少年は映画「国宝」喜久雄の少年時代。
黒川想矢も成長した。
見た目はあまり変わらないけど。
さらに西野七瀬演じるマネージャーも印象的。
あえて美しく見せないような地味なキャラクターに仕立てていたのだが、
それがかえって役のリアリティを生み出していた。
ただ映画のテーマである「70歳で免許返納」という設定は、
先日60歳を迎えた者としてはとして複雑な思い。
今の時代、70歳といえばまだまだ元気な世代。
それなのに10数年後には社会からこんな扱いを受けるようになってしまうのだろうか。
自分自身の未来と重ね合わせてしまい、少しだけ寂しい気持ちになったのが正直なところ。
それに車も運転したい。
70代後半なら免許返納を考えるが、70歳ではあり得ない。
とはいえ、映画全体に流れる空気はどこまでも温かい。
人生の晩年をどう生きるかという重くなりがちなテーマを、笑いと共感で包み込んでくれる。
「ハーレーライダー」という安直なタイトルもいい(笑)。
映画仲間のおススメは大切にしないとね。


