いい意味で裏切られた作品。
1950年代の戒厳令下、政治的弾圧が行われた「白色テロ」の時代が舞台。
観る前は重厚で息苦しいほどの社会派ドラマなのだろうと想像していた。
しかし、いざ始まってみれば、ユーモラスでコミカルなシーンが随所に散りばめられている。
重いテーマを扱いながらも、観客が極度の緊張感に陥ることはない。

このバランスが国内での大ヒットに繋がったのかもしれない。
台湾映画界最高峰の金馬奨にて最優秀作品賞を含む4部門を受賞しているわけだし。

日本人として1950年代の台湾の歴史を知る機会はまだ少ない。
恥ずかしながら「白色テロ」という言葉の背景をよく知らなかった。
教科書に載っているような大文字の歴史ではなく、
映画を通じて当時を懸命に生きた一般の人々の泥臭い歴史を学ぶことができたのは収穫。

ふと、最近よく観る韓国映画と比較してみる。
もしこれが韓国映画なら、もっと国家の独断を容赦なく描き、不条理な体制を批判しただろう。
しかし、台湾映画はそこまで辛辣ではない。
過酷な運命に翻弄される人々を見つめる眼差しに、ある種の温かさ、優しさのようなものを感じた。
主役を演じた少女・阿月と人力車の車夫・趙公道の関係性が気持ちを和ませた。
この2人の魅力が優しい作品に向かわせたわけね。

そして、ポスターにある「進む。ただ、未来へ。」という言葉が作品を象徴している。
どんなに霧が深く、先が見えない暗闇の時代であっても、人は前を向いて歩いていくしかない。
その力強さが、静かに伝わってくる。

ラストシーンについては、映画としては出来すぎではないか、と感じる部分もある。
ただ、そこに至るまでの想いに触れていたせいか、
まんまと感動してしまい、不覚にもホロッときてしまった。
だから、その出来すぎな点も快く許そうと思う。
(ネタバレじゃないよね・・・)

暗い歴史の影を描きながらも、観終わった後にどこか救われたような気持ちになる。
台湾映画の持つ懐の深さを、改めて感じさせてくれる一本だった。