映画サイトのレビューが高く、気になり観ることにした。
主人公は、カナダに移住した韓国人の母親とその息子。
物語の背景からてっきり韓国映画だと思い込んでいたのだが、実はカナダ映画。
そこがまず新鮮な驚きだった。

時代設定は1990年代。
息子が子供の頃と青年期を描く。
当時は何かと訳ありで、韓国から海外への移住者が多かったのだろうか。
劇中、アジア人が露骨に差別される環境が描かれるが、
これは間違いなく現実にあったことなのだろう。
韓国も日本も欧米から見れば同じアジア。
当時の日本人も現地では同じように「ライスボーイ」と呼ばれ、おちょくられる存在。

移民の苦悩や親子の絆というテーマ自体は、決して新しくはない。
しかし、いつの時代であっても、どんな国であっても、共通の認識を持てる普遍性がある。
自分自身のルーツ、根源が何なのかという問いは、
誰しもが人生のどこかで気にするものだからだ。

本作は2022年の製作。
4年を経て日本で上映されることにも、何らかの意味があるのだろう。
多様性が叫ばれる現代だからこそ、改めて見つめ直すべき大切な視点があるように思う。

少し細かい部分だが、食文化の違いも興味深かった。
以前「大丈夫、大丈夫、大丈夫」を観た時にも思ったのだが、
韓国人のお弁当や給食には、普通にキムチやキンパが入っている。
異国であっても、彼らにとってそれが当たり前であり、アイデンティティそのものなのか。
周囲から奇異の目で見られようとも、食の記憶は変えられない。
子ども心は複雑だが、食の誇りでもあるのかと。

映画全体としては大作ではない。
小粒ながらも、どこか懐かしく抒情的な雰囲気をじっくりと味わえる作品に仕上がっている。
劇的な展開に頼るのではなく静かに流れる空気感の中で、
観る側に大切な問いを投げかけてくる。
母親役のチェ・スンユンは感情的で騒ぐシーンは多いが、まあ、それもよし。

遠い異国の話でありながら、どこか自分自身の足元を振り返りたくなる。
16ミリの映像も効果的で、静かな余韻が心地よい一本だった。