初めて観たのは高校3年生の頃。
当時の国語の教師がTV放映されることを教えてくれ、
しきりに作品を勧めていた。

TVで放送された本作は肝心のラストの夕食のシーンはカットされていた。
その時はその事実を知らなかったが、森田芳光監督の強い意志が働いていた。
一番いいシーンをTVでは流さなかった。

それから数年後、大学時代にリバイバルで観たのが2回目だったと思う。
かすかな記憶だが・・・。

今、思い返すと国語の教師は家庭崩壊の映画をなぜ勧めたのだろう。
受験戦争に巻き込まれることなく、
自分の意志を示せとでも言いたかったのだろうか。
昭和の家庭像の過ちを間接的に教えたかったのだろうか。
その真相は分からない。

1983年のキネマ旬報ベストテンでは堂々の1位。
「戦場のメリークリスマス」よりも圧倒的に高い評価。
森田芳光監督が一躍脚光を浴びるようになった。
その年はピンク映画も撮っていたし・・・。

そんな作品をつい最近、Amazonプライムで観たわけだが、
今観ても色褪せることはなくとても面白かった。
時代感のズレはあるものの本質は何も変わっていないとも感じた。

今は亡き松田優作も伊丹十三も若かった。
責任感があるように見せて無責任なお父さんはとても良かった。
昔は思わなかったが、お母さん役の由紀さおりもどこか色っぽくて魅力的に感じた。

その空虚な家庭像を描くドラマは笑いの対象になるのだが、
振り返るとつい恐ろしくなることも。
僕と伊丹十三とどこが違うのか。
明らかに異なると思いながらも、随所に近しい点も感じてしまったり・・・。
う~ん、身につまされるなあ~。

この頃、森田監督は様々なジャンルの作品を送り出している。
一般的に映画監督は特徴があるとは思うが、
アイドル映画から芸術作品まで幅広く、こだわりがないようにも思える。
それが監督の特徴なのか。
もう一度、「それから」も観てみたいが、今は機会がなさそう。

そして、本作の製作・配給はATG(日本アート・シアター・ギルド)。
昔はカッコつけてその芸術性を追いかけていた。
これもまた懐かしい。

これからも時間を見つけながら80年代の作品を観るのもいい。
当時では感じ得なかった新しい発見もあるだろう。