荒井晴彦作品は結構観ている。
近年でも「この国の空」「火口のふたり」は押さえた。
ほぼ男女の恋愛。
それもR18+指定があったりと。
日本映画界では稀有な存在だが、本作も明らかに荒井晴彦的。
当然のようにR18+だし。
一方で吉行淳之介は一作も読んだことがない。
調べてみるとほぼ男女を描く作品ばかり。
純文学といっていいのか。
そんな監督と作家を掛け合わせるとこんな映画になる。
まあ、男と女って所詮こんなものというところ。
いくつになっても男は理屈ばかりでだらしなくあっさりと誘惑に負ける。
巧みな言葉使いで自分をごまかすだけ。
そこも監督と作家の掛け合わせ。
エロ映画も文芸作品に思えてしまうから不思議だ。
本作の舞台は1969年。
映像はモノクロ。
話し方も昭和40年代の映画そのもの。
それが時代を表す。
学園紛争のピークの時期だが、一部の大人は冷めている。
つまらない現実に向き合うことが新たな創造を生む。
時代の分かれ目でもあるのかな。
主役は綾野剛演じる43歳の小説家。
職業柄か、話す一言一言が文学的。
それに絡む女子学生も文学的。
その会話がエロティックな雰囲気を醸し出すが、実際のシーンはそこまででもない。
間違いなく成人映画の領域だが、イヤらしさは感じない。
(映画館は女性客が多かったが、さほど気にならず)
荒井作品は結構ドロドロな男女関係が多いが、本作は意外とあっさり。
ドロドロもドロドロと感じさせない上手さもある。
たわいもない小説家のみだらな生活を描いただけのような気がするが、
人間が本来持つ本性を饒舌に語っている気もする。
分かりやすくいえば、一部の高尚な批評家は絶賛するが、
一般的な批評家は大した評価はしない。
玄人好みの作品といえるのではないか。
本作で一番気になったのは大学生の紀子を演じた咲耶という女優。
初めて知ったが吹越満と広田レオナの娘さん。
いやあ~、大胆な演技。
しおらしい大学生かと思えば、悪女的な妖艶な大人になったり・・・。
綾野剛が振り回されるのも仕方ないか。
荒井晴彦ワールドに浸りたい方はぜひ、観てもらいたい。
年末年始には相応しくないかもしれないけれど(笑)。


