この90歳のジジイは今更、世の中に何を問いたいのか。
その飽くなき活力や精力はどこから生まれているのか。
最近の作品を観るとそんなことを感じてしまう。

特にここ数年はメッセージ性が強い。
実話を基に描く作品が多いのも最近の傾向。
意外と気づかないと思うけど。

昨年、僕がベストワンに選んだ「運び屋」もそうだし、
「15時17分、パリ行き」「ハドソン川の奇跡」もそう。
真実以上に真実を描くことのできるレアな監督だ。

現在は俳優が監督業も行い、成功した例だが、
30年後にはチャールズ・チャップリンと肩を並べる存在になっているだろう。
伝説的人物になっているのではないか。
違いは笑いに変えるか、真実を伝えるか。

その違い。
いずれアメリカ映画を代表する監督になるのか、その真逆。
反体制の作品も見受けられるしね(笑)。

以上、映評ブログでした。

といいたいが、そんなわけにはいかない。
ここまでのブログでは一切本作には触れていない。
どれだけ余計な文字数を稼ぐというのか・・・。

映画の背景は1996年に開催されたアトランタオリンピック。
僕は当たり前のように名大社で働いていて、
本作に登場するマイケル・ジョンソンは記憶にあるが、この事件は記憶にない。
日本ではそれほど話題にならなかったのだろうか。

そこをえぐり出すクリントイーストウッド監督の力はさすが。
大きな事件ではないが、見過ごしてはならない。
事件を救い上げるのも監督の特徴かも・・・。

そこに人間の真の姿が描かれている。
それは主役のリチャードジュエルであり、母親のボビであり、
弁護士のワトソンであり、FBIのトムである。
その真の姿が泣かせるし、人として忘れてはならない姿。

いや、違う、そう、
忘れるべき人の姿も描かれている。
それが大概は最も権力を持つ人間なので、始末にを得ない。

それはそれとして、とにかく響く。
監督はこれまで観る者を泣かせる行為はもたらさなかったが、
本作はところどころそれを見せる。
かなりズルいといえよう。

ただ僕らはそのズルさを受け入れるべきだし、自分の姿を考えるべき。
それは主役のリチャード・ジュエルのように・・・。

またもや素晴らしい映画を見せてもらった。