聞く力―心をひらく35のヒント (文春新書) 聞く力―心をひらく35のヒント (文春新書)
(2012/01)
阿川 佐和子

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105万部の発行部数で昨年一番売れた書籍。ベストセラーと呼ばれる書籍はあまり縁がなかったが、たまたまブックオフに並んでいたので手に取った。ちょっと失礼な表現ですね・・・。すいません。
最近、「~力」というタイトルの書籍がやたら目立つと思うし、この売れ行きから更に加速度的に「~力」本が発行されるのではないだろうか。話す力、読む力、書く力、見る力とか。何でも出てくるな(笑)。
本書を読みながら、営業時代を思い出した。
阿川氏のようなインタビュー形式ではないが、営業時代にはよく取材した。印刷物や求人雑誌、ネット媒体の原稿を作成するために、クライアントの社長や担当者に対して、企業理念や仕事内容をヒアリングしたのだ。
ライターと同行して取材するケースもあれば、全て自分で取材し原稿を作成することも多かった。下手なライターよりは自分の方がいい原稿を作るという錯覚もしたりして・・・。
ライターと同行する時は、基本は全てライターに任せ、自分は隣に座って聞いているだけのことが多かった。そうした客観的な状況でライターとクライアントとのやり取りを聞いていると取材の上手い下手がよく分かる。
クライアントの話したいことを上手く引き出し、更に内容を広げるライターと、ただ決められた質問を事務的に聞くだけのライターでは、結果として仕上がる原稿のクオリティに大きな違いが出るのだ。
通り一遍の話だけでは会社の魅力を引き出すことは難しい。いいライターというのは素晴らしい文章を作るだけでなく、素晴らしい取材力があると現場を通して感じていた。
この本書に書かれている一つ一つのヒントを読みながら、その当時をオーバーラップさせていた。なるほどと感心しながら・・・。
キャリアカウンセリングでも同様の事がいえる。
いかにクライエントの悩みを聞き出すかは、その傾聴力にかかっている。クライエントに寄り添うことで、いかに信頼して話が出来る環境を作っていくかがカギとなるのだ。本書にはそうした取材力とカウンセリング力を高めるためのエッセンスが十分に詰まっている。
また、本書を読むことで著者の人間性も垣間見ることができ、ふわーっとした感じが心地いい。
たまにはベストセラーも読んでみるものだ。