切ない作品だった。
何の罪もない9歳の娘がこれほどまでに切なく、
理不尽な経験をしなければならないという現実が、ただただ辛い。
そして、与えられた使命を果たすために、人を騙さざるを得ない極限の環境。
その中に身を置く人々の葛藤が、胸を締め付ける。

映画を観る前は、9歳の女の子が大統領のためにケーキ作りに奮闘するほのぼのとした作品と思っていた。
だが、実際に描かれていたのは、まるで真逆。
厳しく息の詰まるような世界。
よく考えれば、そんな世界も想像がつく。

描かれるのは、1990年代のイラク、サダム・フセイン政権下の時代。
当時、日本はバブルの末期で、世の中は浮かれた空気に包まれていた。
20代前半だった僕も同じ地球上の別の場所で、
このような過酷な現実が繰り広げられることなど何も知らず。
ニュースでフセイン政権の旗振り状況を知るだけ。

劇中に映し出される市民生活や街を走る車を見ていると、
日本で言えば昭和30年代前半のような、どこか物資の乏しい過去の光景に見える。
独裁政権下にある国では、これほどまでに世界の進むスピードが違い、
人々の自由が制限されてしまうのかと驚かされる。

正直にいって娯楽作として「面白い」映画ではない。
むしろ観ていて重苦しい気持ちになる。
しかし、だからといって目を背けてはいけない現実がある。
ほんの少しだけ2人の同級生の愛らしさを感じることができるが・・・。

上映する映画館もそれほど多くはない作品だが、
普段触れることのない世界の裏側を知り視野を広げることは必要。

本作をススメてくれたのは人生の先輩である映画コラムニスト見習い。
そのススメを素直に聞き、劇場に足を運んだのは正解だった。
自分一人では選ばなかった可能性も高い。
本作に出会えたことに感謝。
見習いの先輩にも感謝したい。

歴史の影に隠れた個人の悲劇を僕たちはどう受け止めるべきか。
ただの「過去の遠い国の話」で終わらせてはいけない。
混沌とした今の時期に公開されるのも大きな意味があると思う。